※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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今はまだ戻れない

日本帝国海軍の内部情報によって山風が行方不明になっている事を知る時雨と、時雨が穏健派連合と繋がりがあるとは知らなかった山風は、しばらくの間揃って言葉を失い愕然としていたのだが、それからまた少し時間が経過すると両者の頭の整理が追い付き、混乱が収まったところで互いの状況を説明し始めるのであった

 

「そうか……、そこの集積地棲姫の転生個体の方が山風を助けてくれたのか……」

 

「積 始だ。まあ名前は日本人のそれだけど、生まれも国籍もアメリカなんだよな」

 

山風の話を半分くらいまで聞いたところで、時雨はそう言いながら始の方へと向き直り、それに気付いた始は自己紹介をしながら、大した事はしていないとばかりに右手をヒラヒラさせ、それでも自分の親戚を助けてくれた事には変わらないと言って、時雨は始に向かって感謝の言葉を述べるのであった

 

その後山風が話を再開し、ガダルカナル島に辿り着いた経緯を話したところで……

 

「空さんが貴方達を此処に案内してくれたのね……」

 

「あの空って奴、お前らの知り合いだったのか?あいつは一体何者なんだ?パンツ調査とか言う訳の分からない事やってるクセに、転生個体の群れを武器無しで瞬殺するとか……。幾ら何でもクレイジー過ぎるだろ……?」

 

「あの人の考えは、僕達どころか彼の親友である戦治郎さんでさえも、分からない部分があるみたいだから……」

 

「正直……、あの人物凄く怖かった……」

 

山風達をガダルカナル島に案内したのが、当時パンツ調査を行っていた空であると知った陽炎は頭を抱え溜息交じりにこの様に呟き、その反応から時雨と陽炎が空の知り合いである事を察した始は、当時の事を思い出しながら2人に向かってこの様な質問をし、それを受けた時雨は苦笑しながら返事をし、自分達を助けてくれた空の事を思い出した山風は、その身をブルリと震わせながら、この様な事を呟くのであった

 

尚、その空が時雨のキュクロープスに蒸気カタパルトを取り付けた事と、艦娘用の蒸気カタパルトをこの世界で生み出した張本人であると知った山風は、愕然としつつも空に対して少々興味を持ったのだとか……

 

その話の後、山風は今度は今の自分達の状況について、ゆっくりと話し始めるのであった

 

ガダルカナルに到着した後、リチャードからこの世界の状況やこの世界にエデンが存在する事、そして自身の両親の仇であるプロフェッサーまでもがいる事を聞いた始が、この世界にいると言う剛と合流し、今度こそプロフェッサーを自身の手で始末する事を決意したのだが……

 

「リチャードから止められたんだ、僕の能力を駆使して剛達を後方から支援する形なら、問題無く今のまま送り出してもよさそうだけど、君がその手でプロフェッサーを殺すつもりでいると言うなら話は別、君の戦闘スキルが圧倒的に足りてない。今のまま剛達の所に行っても、君は足手まといにしかならないし、無茶してプロフェッサーに戦いを挑んだところで、あっという間に殺されるだけだ……、ってね」

 

その時の事を思い出しながら、始はばつの悪そうな表情を浮かべながら、この様な言葉を口にするのであった

 

「それから始はリチャードさんにお願いして、このガダルカナルで戦闘スキルを磨く為のトレーニングをする様になったの。その剛って人の足を引っ張らない様にする為に、そして始のお父さんとお母さんの仇を取る為に……」

 

始の言葉の後、山風は何処か複雑そうな表情を浮かべ、始の事を心配している様な声色で、この様に言葉を続けるのであった

 

そんな山風の言葉を聞いた陽炎が、ふと自分の中に湧き上がった疑問……、それなら如何して山風はそこで始と別れ、当初の目的通り鹿屋基地に帰還しなかったのか?と尋ねてみたところ……

 

「プロフェッサーって言う人の名前を聞いてからの始……、何か物凄く無茶しそうな雰囲気があったから……、どうしても放っておけなくなって……。それにあたしがガダルカナルに辿り着いたのは最近の事で、多分だけどあたしはもう海軍から除籍されてると思うから……」

 

山風はその表情を曇らせながらこの様に返事をし、それを聞いた陽炎と時雨は思わず言葉を詰まらせてしまうのであった……

 

実際のところ山風が行方不明になったのは桂島での騒動以前の出来事……、実に1年前に発生した事件である為、日本帝国海軍は山風をMIA認定し、彼女が言った通り既に海軍から除籍されているのである……

 

その事を実家に帰った際、山風と同じく鹿屋基地に所属していた白露や村雨から聞いて知った時雨や、時雨や両親から山風の件を直接聞いた江風から話を聞いていた陽炎は、思わず押し黙ってしまったのである……

 

こうして場の空気が沈みに沈んだタイミングで、今まで静かにしていたこの男が、遂に口を開く……

 

「そんな山風じゃが、健気にもそんな始の力になりたい、支えてやりたいつって行動を起こしたんじゃいや。ただまぁ、流石に山風じゃとリチャードさんのトレーニングには追い付けんって事で、此処にある戦車を使って始を後方から支援するって事になって、ワシの指導の下鍛え上げられた山風は、スーパーカラシンと新宿ウォーカーを状況に合わせて使い分ける、立派な戦車乗り(ハンター)になったんじゃ」

 

「待って、新宿ウォーカーは兎も角、そのスーパーカラシンって何よ?」

 

「あれじゃ」

 

伊吹が山風の現状を口にしたところ、陽炎が暗い表情を一転させ、不思議そうな表情を浮かべながらスーパーカラシンについて尋ね、それを受けた伊吹は格納庫の一角を親指で指し示しながら、短く返事を返すのであった

 

そんな伊吹の親指の先にある物を目にした時雨と陽炎は、思わずのその目を疑い、何度も目を擦ってみせたり、パチパチと何度も瞬きを繰り返すのであった……

 

それは戦車と言うには余りにも巨大だった……、いや、そもそも車輪も履帯も付いていない為、本当に戦車と呼んでいいのか躊躇ってしまいそうになる代物であった……。まぁ、陽炎達が駆る多脚戦車達も大概だと思うところだが……

 

以前にも若干触れたが、スーパーカラシンは大型ホバークラフト型戦車なのだが、そのサイズは実在するホバークラフトはおろか、原作であるメタルサーガ ニューフロンティアに登場したソレよりも明らかに巨大なものとなっていた……

 

具体的にどれくらい巨大であるかと言えば、伊吹の改造によって船体後部に取り付けられたと思わしき甲板に、車高を上げたワンボックスカー並の大きさがある新宿ウォーカーと水上バイクのケートス、更に哨戒ヘリコプターであるSH-60 シーホークを1機搭載しても、スペースにまだ余裕があると言う、現実では存在し得ないレベルのサイズなのである……

 

そして船体前部には様々な主砲と機銃に、バリエーション豊かなS-Eが取り付けられており、現在空達が作っている大黒丸ほどではないにしろ、海上を移動する拠点と言えそうな様相を呈していたのであった

 

「これだけ装備が充実しているなら、新宿ウォーカーはいらないんじゃないかな……?」

 

そんな巨大で重厚なスーパーカラシンを目にした時雨が、思わずこの様な言葉を口にすると、伊吹がその言葉を否定する様に首を左右に振った後、新宿ウォーカーが必要な理由を説明するのであった

 

「確かにこのスーパーカラシンは強力な戦車なんじゃが、元がホバークラフトである関係上、斜面の多い山岳地帯に突っ込む様な真似は出来んし、巨大過ぎるせいで森林地帯にも侵入出来なくなっとるんじゃ」

 

「「あぁ~……」」

 

伊吹の説明を受けた陽炎と時雨は、取り敢えずは納得したのか、少々気の抜けた声で返事をするのであった

 

普通に考えれば陸上戦など艦娘の専門外の分野なのだから、わざわざ想定する必要性は無いだろうと考えるところだろうが、この世界には普通の深海棲艦だけではなく、転生個体と言う明らかに普通ではない深海棲艦や、神話生物と言う超常の存在までもが跳梁跋扈しているのである

 

そんな普通ではない連中が、わざわざお行儀よくこっちのルールに則って海上で戦ってくれるとは考えにくい……、そもそも自分達が今こうして生きているのも、戦治郎達がそれらのルールを覆したり、ルールの穴を見つけて奇襲を仕掛ける事で、戦いを自分達に有利になる様に仕向け、勝利を何とかもぎ取って来たおかげなのだから、相手もその内似た様な事はしてくる、そう考えるのが妥当なところだろう……

 

ならばそれに備えるに越した事は無い、今までの経験でそう言った考えに至り、実際先日派手に陸上戦をやって来たばかりの陽炎達は、伊吹の言葉からスーパーカラシンが対応出来ない様な場所で戦車戦を行う為には、新宿ウォーカーの様なサブ戦車が必要になる事を察し、あの様な反応をしたのである

 

このやり取りの後、陽炎達は脱線した話を一旦戻し、今後山風はどうするつもりなのかについて尋ねたところ、山風からは始のトレーニングが終わり次第、1度鹿屋基地に挨拶をする為に向かい、それを終えた後にスーパーカラシンと新宿ウォーカーを引っ提げて、始の目的である剛との合流をするつもりである旨を伝えられ……

 

「と言う事は……、山風と始さんもウチに来るのか……。益々賑やかになりそうだね」

 

それを聞いた時雨は薄っすらと笑みを浮かべながらこの様な事を言い、時雨の言葉の意味がイマイチ分からなかった山風と始が怪訝そうな表情を浮かべていると、そんな2人の様子がおかしかったのか、陽炎はニヤニヤしながら剛は自分達と行動を共にしている事、此処に自分達がいるのは剛が伊吹の依頼を受けてガダルカナルに来る事になった際、此処の格納庫を改めて見る為に便乗する形で剛に同行を申し出た事を話し、その事実を今まで知らされていなかった2人を大いに驚かせるのであった

 

そうしている間にグレートゼオライマースーツを乗せたトラックに乗った2Pが戻って来て、グレートゼオライマースーツを目の当たりにした陽炎達はそれはそれは驚愕し、それが落ち着いたところで剛達の下へ戻るべく、移動を開始するのであった

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