剛達の下に戻る途中、グレートゼオライマースーツを乗せたトラックと並走するペーガソスを操縦する陽炎が、そう言えば聞きそびれていたとばかりににトラックの荷台に乗った始に対して、始が生前剛と出会った経緯について尋ねたところ……
「聞いても全く面白みのない、どちらかと言うと胸糞悪くなる話だから、興味本位で聞くもんじゃないぞ。まあそれよりも何よりも、説明するのが面倒臭い」
始は心底面倒臭そうに、顔を顰めながらこの様に返答し、そんな始の対応に少しだけカチンときた陽炎が、意地でも始の口から経緯を語らせようと躍起になって問い詰めていたその時であった
【始様は義父であるプロフェッサーの言葉にこのまま従い続けていて本当に良いのだろうか?と、ご自身の中に不意に浮かび上がった疑問の答えを探す為に今まで住んでいた場所を飛び出し、当ても無く彷徨っていたところをマスターに保護されたのです】
不意に合成音声の様な、陽炎や時雨には聞き覚えの無い男性の声が辺りに響き、突然聞こえて来た声に驚いた陽炎と時雨は、その声の主を探す様にキョロキョロと首を左右に振って、辺りを見回し始めるのであった
そんな陽炎と時雨の様子を何処からか見ているのか、その声の主は感情がまるで籠っていない様な無機質な声で、この様に言葉を続けるのであった
【初めまして陽炎様、時雨様。私はマスター……、稲田 剛様をサポートする為にグレートゼオライマースーツに搭載された高性能AIの『プルート』と申します】
「コラプルートッ!!何勝手に喋っとんじゃっ!!喋るのは剛さんにお前を見せてからって言うたじゃろうがいっ!!!」
【済みません伊吹様、しかしこのまま陽炎様と始様が言い争いを続けていれば、場の空気が悪くなってしまうと判断した為、始様の代わりに私の方から陽炎様にマスターと始様が出会った経緯について説明させて頂きました】
「プルートは場の空気が読めるのか……、僕はプログラム関係にはそこまで詳しくないんだけど、これが凄い事である事は何となく分かるよ……。それはそうとしてありがとうプルート、おかげで助かったよ」
件の声の主であるプルートが自己紹介を行い、声の主が現在自分達が運んでいるパワードスーツから発せられたものである事を理解した陽炎達が、驚きの余りポカンとしていると、トラックの助手席に座る伊吹がプルートを叱責、それに対してプルートは相変わらず無機質な声でこの様に返答し、そのやり取りを聞いていた時雨はすぐに我に返り、陽炎の事を止めないといけないと分かっていながらも、始と剛の出会いについて陽炎同様興味があった事も有り、陽炎を止める事が出来なかった自分に代わって陽炎を止めてくれたプルートに対して、感謝の言葉を口にするのであった
さてこれにより陽炎達の興味の矛先は、始と剛の出会いからプルートの方へと向けられる事となり、陽炎達はプルートに対してこれでもかとばかりに質問を投げかけるのであった
そうしている内にトラックは剛達が待つ浜辺に到着し、トラックの荷台に乗ったグレートゼオライマースーツを目の当たりにした剛は……
「このサイズ……、パワードスーツと言うよりも完全にマジンガーZみたいなロボットのソレよね……」
驚愕の表情をその顔面に貼り付けながら、思わずこの様に呟くのであった
尚、そんな事を呟く剛の両サイドには、これまでずっと剛の傍にいた不知火と瑞穂が、グレートゼオライマースーツに圧倒されたのか、驚きの余りポカンとした表情のまま棒立ちになっていた……
そんなグレートゼオライマースーツのサイズだが、剛が艤装ごとグレートゼオライマースーツを装着出来る様に大型化されている為、その全長は大五郎の8.8mには及ばないものの、リチャードのメタルウルフの2倍以上、戦艦棲姫や戦艦水姫の艤装よりも一回り大きい4mほどの大きさになっていたのであった
因みにこの時始はどうしていたかと言うと、まだ心の準備が整っていないせいなのか、浜辺に到着するなりトラックの荷台から急いで飛び下り、浜辺の近くに防砂林として植えられていた針葉樹の木陰に身を潜め、浜辺の様子を窺っていたりする
その後剛は伊吹の案内でトラックの荷台に上がり、伊吹からグレートゼオライマースーツの胸元にあるコックピットハッチ開閉用パネルの操作方法を教えてもらい、自身の手で実際にパネルを操作してハッチを開くと、伊吹に促されるままコックピットに乗り込み……
「それで伊吹ちゃん、ここからアタシはどうしたらいいのかしら?」
伊吹に向かってこの様に尋ねると……
「後はそっちの方で指示があると思うんで、それに従って進めてくださいな」
伊吹はニヤニヤしながらそう言うと、イソイソとトラックの荷台から飛び下りてしまうのであった。そんな伊吹の背中に向けて、剛が怪訝そうな表情を向けていたその時……
【マスター、このグレートゼオライマースーツを動かす為の準備として、先ずはマスターの左右と足元……、失礼致しました、真下にある穴にそれぞれ対応した腕を差し込んでください】
早速プルートがグレートゼオライマースーツに初めて触れる剛のサポートを開始し、突然話し掛けられた剛は一瞬ギョッとするものの、生前アリーもAIによるサポート機能が付いた兵器を開発しようとしていた事を思い出し、これもそう言った類のものだろうと思い至ると、すぐさまプルートの指示に従ってコクピット内部にある左右の穴にそれぞれ腕を通し、足元にある穴には艤装から1本だけ生えた両腕よりも太い腕を通すのであった
そうしてプルートの指示通りにそれぞれの腕を通したところで、プルートが操作したのかハッチが勝手に閉まり始め、コックピット内が一瞬真っ暗になったかと思ったその直後、グレートゼオライマースーツに搭載された様々なシステムが一斉に起動したのか、コックピット内部全体に周囲の映像が映し出され、それを見た剛はまるで自分が巨大化したかの様な感覚に陥るのであった
その後、プルートが先程陽炎達にした時と同じ様に、自身のマスターである剛に対して自己紹介を行ったところ……
「プルート……、ローマ神話の冥府の神の名前ね……」
【はい、このグレートゼオライマースーツの基となったグレートゼオライマーは、『冥王計画ゼオライマー』と言う漫画及びアニメ作品に登場したゼオライマーの強化型機体と言う設定を有していまして、この作品タイトルから伊吹様がこのスーツに搭載するサポートAIには冥王や冥界の神に関する名前を付ける事にしたそうなのです】
剛はプルートの名前に反応し、思わずこの様な事を呟き、それを聞いたプルートは淡々と自身の名前の由来について解説するのであった
因みにサポートAIの名前の候補には、アヌビスやオシリス、オーディンやヘルなどが挙げられていたらしいのだが、アヌビスはもっと別の物に付けたいから、オシリスは伊吹の中でカードゲームに登場する天空竜のイメージが強過ぎたから、オーディンは一応戦争と死の神ではあるが、一般的に考えると冥府や冥界との結びつきが薄いと感じられたから、ヘルはAIは男性型で作ろうと当初から考えられていた関係で、全て没になってしまったのだとか……
それからしばらくの間、剛はプルートからグレートゼオライマースーツの機能などの説明を受ける事となり、それによって粗方このパワードスーツの動かし方を理解した剛は……
「それじゃあ……、そろそろこの子のテストを開始しましょうか♪」
【Yes,my master】
流石にプルートと喋ってばかりでは伊吹達に悪いと思い、新しい玩具を手に入れた子供の様に心を躍らせながらこの様に言い放ち、それを受けたプルートは短く無機的に返事をし、それを聞いた剛は早速先程プルートに教えられた通りに操作を開始し、グレートゼオライマースーツを1歩前に、力強く踏み出させるのであった
この1歩こそが、【猟犬】と呼ばれていた剛が、後に戦った相手の身体に必ず銃弾痕を残す事と、このグレートゼオライマースーツ並びにとある出来事が切っ掛けで使える様になった能力などから、