「この子は封印しましょう」
グレートゼオライマースーツでの模擬戦を終え、不知火達が待つ浜辺に戻った直後、剛はスーツを脱ぎながら開口一番この様な事を言い放ち、剛の攻撃によって浜辺に強制送還されていた陽炎と時雨を大いに驚かせるのであった
グレートゼオライマースーツを纏った剛と実際に戦った陽炎と時雨は、浜辺に戻った直後はグレートゼオライマーに対して碌にダメージを与えられなかった事を非常に悔しがっていたのだが、これが後々自分達の戦力になってくれるならば非常に心強いと思い直し、剛が戻って来るまでの間、グレートゼオライオマーが加わった後の特警隊の様子などを想像したりして盛り上がっていた為、剛の封印宣言には思わず驚愕してしまったのである
そんな2人は当然の如く、剛にその理由を問い詰めようとするのだが……
「不知火も、これは封印すべきだと思います……」
陽炎と時雨が剛に詰め寄ろうとした直後である、まるで剛の事を守る様に、剛と2人の間に割って入って来た不知火がこの様な事を言い、再び陽炎達を驚かせるのであった
そして……
「このグレートゼオライマースーツは確かに強力な兵器であり、瑞穂達にとって心強い味方になってくれると思います……。ですがこの兵器を剛さんが保有する事は、今までの剛さんの頑張りのその全てを無駄にしてしまう……、瑞穂と不知火さんはあの模擬戦を見て、そう思ったのです……」
剛がグレートゼオライマースーツを封印しようと考えた理由と思わしき事を、不知火と同じく日頃から剛と行動を共にしていた瑞穂が、その表情をやや暗くしながら口にし、それを聞いた陽炎と時雨は一瞬怪訝そうな表情をするのだが、すぐに何かを思い出したかの様にハッとし、瑞穂同様表情を暗くさせながら剛の方へと視線を向ける
確かに瑞穂が言った通り、このグレートゼオライマースーツは非常に強力な兵器……、いや、あまりにも強力過ぎる兵器だ……。それこそ世界のバランスを崩しかねないレベルで、である……
「もしこの子を纏ったアタシがその気になったら、相手の拠点にワープで直接乗り込んで、核攻撃以上の攻撃をこれでもかってくらいに浴びせられるでしょうね……。でもね……、それをやってしまうと最悪の場合、アリーや他の転生個体の組織に対して、それと同レベルの虐殺行為を許す口実を与えてしまう事になりかねないのよね……」
「そもそも剛さんはこの世界のバランスを保つ為に、アリーさんが生み出した兵器、アリーズウェポンを回収して破壊して回っているのです。そんな剛さんがアリーズウェポン以上の脅威となりえる兵器を保有して戦う事は、剛さんの行動に矛盾を生じさせ、剛さんの行動に対しての説得力を失わせてしまいます……」
瑞穂の言葉に続く様にして、剛と不知火がグレートゼオライマースーツを封印しようとする理由について語り、それを聞いた陽炎と時雨は自分達の考えがどれだけ浅はかであったかを思い知らされながら、沈痛な表情を浮かべつつ押し黙ってしまうのであった……
そんな時である
「まあ、剛さんじゃったらそう言うじゃろうと思っていましたわ」
「確かに剛の気持ちは分かるよ……、けど今のこの世界の状況を考えれば、そんな事を言ってられなくなるんだよね……」
剛達の間に広がる沈黙を破る様に、伊吹が苦笑しながらこの様な言葉を口にし、それに続く様にしてメタルウルフスーツを脱いだリチャードが、難しい表情をしながらそう言い放つのであった
このリチャードの発言に対して、陽炎達艦娘4人は怪訝そうな表情を浮かべ、剛は異を唱える様に鋭い視線を向けるのだが、リチャードは彼等の反応を予想していたのだろう、それらに対して特に反応する事無く、この様に言葉を続けるのであった
「剛の考えは僕だって尊重してあげたいさ、けどさっきも言ったけど現状ではそんな事を言ってられなくなってしまったんだよ……。剛達も参加した戦い……、ミッドウェーでの戦いの後ではね……」
リチャードの言葉の意味を、剛達は最初こそ理解する事が出来ず、思わず不思議そうな表情を浮かべるのだが……
「この戦いからだろう?神話生物の存在が明るみになったのは……」
この言葉を聞いた瞬間、あまりにもゾア達長門屋鎮守府(張りぼて)に住み着く神話生物達が周りに馴染み過ぎているが為に、神話生物に対しての感覚が麻痺していた剛達は、ここでようやくリチャードの言葉の意味を理解し、思わずハッとするのであった
「剛さんはさっき相手の拠点どうこうとか言っちょったが、そもそもそこが間違っちょるんですよ。このグレートゼオライマースーツの仮想敵は強硬派深海棲艦ではなく神話生物……、それもゾア達旧支配者なんかよりもより強力で凶悪な、咲作さんと同じ外なる神を仮想敵としちょるんですよ」
その直後にグレートゼオライマースーツの設計開発に携わった伊吹が、この場にいる全員に聞こえる様にこの様な事を言い、それを聞いた剛達は思わず愕然としてしまうのであった……
咲作から話を聞いた伊吹曰く、外なる神は人間など塵芥……、砂埃と同程度の存在くらいにしか思っていないものが大多数を占めているらしく、酷い者は汗と涙と涎で全身をグチャグチャに汚しながら悲鳴を上げて逃げ回る人間達を、嘲笑いながら超常的な力を使って虐殺すると言う遊びを興じる者まで存在するのだとか……
「特にその傾向が強い外なる神として、咲作さんはヒュドラっつぅ奴を挙げちょりましたわ」
「このヒュドラは自分が作り出した異空間に生物の魂を道標とするべく引き込み、その後魂と肉体の繋がりを辿ってこの世界に出現、或いは対象を自分の空間に引きずり込んで首から上を奪い去るらしいんだ」
「これ以外にも、異空間に関わる外なる神にはダオロスやらミゼーアやらおるらしいんですが、ここでの細かい説明はまあ省かせてもらいますわ。もしどうしても他の外なる神の事を知りたいと思ったんなら、咲作さんに直接聞くか、翔に頼んで教えてもらったらええと思います」
その後伊吹とリチャードは、正蔵の相棒となった流れで穏健派連合に所属する事となった咲作から聞いた話を剛達に話し、それを聞いた剛達は背筋に冷たいものを感じながら、変わらず愕然としながら立ち尽くしていたのであった
「こう言った連中がクトゥルフさんや咲作さんの様に、僕達に友好的に接してくれるとは考えにくい……。そう思ったからこそ、僕は伊吹達が君のスーツを完成させ、次元連結システムを取り外すべきか否かを尋ねられた時、次元連結システムは外なる神への対抗手段になると考え、そのままにしておいて欲しいと頼んだんだよ」
「剛さん達の所には神話生物対策本部っつぅのがあるんじゃろ?その性質上、剛さん達は恐らくこの世界のどの組織よりも、神話生物達とぶつかる機会が多くなるじゃろうからのう」
「そう言えばつい最近、ニャル何とかって言う神話生物が、光ちゃんが必死になって封印したアムステルダム泊地の元提督の頭を奪って行ったって話を聞いたわね……。その事を考えると、確かに世界のバランスが云々とか言ってる場合じゃないわね……。それに神話生物関連の事件の全てを、翔ちゃんに押し付けてしまうのも何か申し訳ないし……」
それからしばらくして、剛はこの呟きの後にグレートゼオライマースーツ封印宣言を撤回、次元連結システムを用いた攻撃以外でも相手を攻撃出来る手段を追加する事を条件に、微調整の終了とグレートゼオライマースーツに搭載された核ミサイルの問題が解決した後、グレートゼオライオマースーツを受け取る事を承諾するのであった
因みにこのグレートゼオライマースーツの追加武装は、グレートゼオライマースーツのサイズに合わせた2丁のパニッシャー改が採用され、更にオマケとしてΞ用のパニッシャー改も作られた模様
又、核ミサイルの問題だが、これは剛達が長門屋鎮守府(張りぼて)を発つ直前、その問題の事を知った空から手渡された、クロム・ドラゴンスーツの強化の際に偶々誕生した『レッドキャップ反応弾』のデータが入ったUSBフラッシュメモリーのおかげで取り敢えず解決するのだが、穏健派連合にデュラハライト粒子に関するノウハウが無かった関係で開発が遅れに遅れてしまい、最終的に伊吹達は英吉郎を巻き込んで尚、『レッドキャップ反応弾』を完成させるのに、半年以上の時間を掛けてしまうのであった……
尚、データ提供元である長門屋の場合、大五郎の能力のおかげで滅茶苦茶スムーズに開発出来た模様……