グレートゼオライマースーツの追加武装の話だが、グレートゼオライオマー用パニッシャー改2丁が採用された後でも続いていた
パニッシャー改は現在剛も持っている為、その性能の素晴らしさはよく知っているのだが、これだけでは対応出来ない事もあると言う事で、剛は更なる武装追加を要求したのである
そんなパニッシャー改では対応出来ない事と言うのが、遠距離からの精密な狙撃と航空戦を展開する艦載機の補助を目的とした対空砲火である
狙撃に関してはパニッシャー改が長距離狙撃に適さない機関砲である為、まあ仕方が無いところがあるだろう……。しかし後者、対空砲火に関しては弾幕を張る分には、パニッシャー改は申し分ない性能を持ち合わせているはずではないかと思うところだろう
しかし此処で重要なのは、剛が『艦載機の補助を目的とした対空砲火』と言っている事である
そう、剛が言う対空砲火は現在では一般的とされている敵艦載機の妨害を目的とした防衛型対空砲火ではなく、防空棲姫の転生個体である護が最も得意としている対空砲火、敵艦載機を確実に撃墜する事で自陣営の損害や消耗を抑えつつ、味方艦載機が動き易い状況を作り出す攻撃型対空砲火の事なのである
つまり何が言いたいのかと言うと、剛は制空権争いで乱戦する艦載機達の中から正確に敵味方を判別し、敵機だけを間違いなく叩き潰せる誘導性能の高い対空ミサイルを付けて欲しいと言っているのである
剛が如何してこんな事を言い出したのかと言うと……、剛が水母棲姫の転生個体である事から大体察してもらえると助かる……
その結果、グレートゼオライマースーツにはそのサイズに合った狙撃用のライフル型ロングレンジキャノンが新たに作られる事となり、対空ミサイルはメタルマックスシリーズに登場した666スウォームと言う人間用武器を参考に、パニッシャー改に1発につき66発の超小型ミサイルを内包したクラスターミサイルを、同時に6発発射出来る機構を取り付ける形で対応する事となるのであった
因みにこの超小型ミサイル、大きさは極細煙草のフィルターくらいしかないのだが、その開発に超小型ミサイルに興味を持ったハワイの妖精さん達も手を貸してくれたおかげで、1発辺りの威力は戦艦の砲撃に及ぶレベルのものとなっていたりする
さて、こうしてグレートゼオライオマーの追加武装の話が纏まったところで、剛は空から預かったUSBフラッシュメモリーを伊吹に手渡し、空から聞いた通りにその中のデータの事を簡単に説明してから、模擬戦でついつい破壊してしまった陽炎と時雨の戦車の修理が終わるのを待ちつつ、シャワールームで汗を流そうと拠点に向かおうとするのだが……
「あ、あの……っ!」
不意に剛にとっては聞き慣れない声に呼び止められ、剛は思わずその歩みを止めて声の主の方へと視線を向け、剛同様その声に聞き覚えが無い不知火と瑞穂も、揃ってそちらの方へ不思議そうな表情を浮かべながら顔を向けるのであった
尚、その声に聞き覚えがあった陽炎と時雨はと言うと、模擬戦の件でスッカリその存在を忘れていた様で、声が聞こえるなり苦笑を浮かべながら彼女達の事を忘れていた事を内心で詫びるのであった
そんな剛達の視線の先にいたのは、時雨達と共にこの浜辺まで来ていた山風と、その山風に手を引かれているやたら緊張した様子で視線を右往左往させる集積地棲姫の転生個体である始の2人なのであった
「あら?貴方は艦娘?如何して艦娘の貴方が……、いいえ、この質問はもしかしたら野暮かもしれないわね……。っとごめんなさい、今のは気にしないで。それでさっきアタシを呼び止めたのは貴方かしら?」
「あ、はい……、呼び止めたのはあたしですけど……。でも貴方に用事があるのはその……、あたしじゃなくて……」
全く以て見ず知らずの山風に呼び止められた剛は、軽く頭を振って頭の中に浮かぶ疑問を追い払った後、笑顔を浮かべながら山風に向かって用件を尋ねるのだが、始から剛が男性である事を事前に教えられていた山風は、剛のオネエ口調に若干驚いてしまったのか、声を掛けられた直後に1度ビクリと身体を震わせた後、俯いてしどろもどろになりながら返事をしつつ……
「この人が……、そう、この人が貴方に用事があるみたい……なの……」
山風はこの様に言葉を続けながら、未だに緊張のせいか挙動不審になっている始の手を引っ張って自分の前に連れ出し、早く話を終わらせて欲しいとばかりに彼の背中を剛の方に向かって押すのであった
「アタシ達がガダルカナル島にいた頃にはいなかった子の様ね……、それで話からするとアタシに用事があるのは貴方みたいだけど……、一体どんな用事なのかしら?」
そんな山風に慌てた様子で抗議する始であったが、剛にこの様に声を掛けられると山風同様驚いた様にビクリと身を震わせた後、ぎこちない動作で剛の方へと向き直り……
「剛って昔はそんな喋り方じゃなかったよね……?もしかしてこっちの世界に来た時のショックで、精神がおかしくなっちゃったのか……?」
剛の方へと向き直る中、剛の言葉に対しての返事を必死になって考えていたその時、剛の口調に凄まじい違和感を感じた始は、ついさっきまでガッチガチに緊張していた事を忘れ、思わず剛の口調に対する疑問を口にするのであった
始のこの言葉を聞いた瞬間、剛の表情は一瞬の内に笑顔から険しいものへと変貌し、始に向かって鋭い視線を向け始めるのであった
まあ普通に考えればそうだろう、始はリチャードを通して剛が水母棲姫の転生個体としてこの世界に来ている事を、そして今日この日に剛がガダルカナルに来る事を聞いているのだが、剛の方はと言うと始と出会ったのは生前の話で、こっちの世界では初対面であり、まだ互いに自己紹介も行っていない状態なのである
これだけならまだ事前にリチャードから話を聞いていたからだと、ある程度言い逃れは出来たかもしれないが、残念な事に始はこっちでは剛とは初対面であるはずなのに、昔の事を引き合いに出して話をしてしまった為、目の前の集積地棲姫が始であると知らない剛の疑念を増幅させてしまう羽目になってしまったのである
さて、こうして急に視線が鋭くなった剛に対して、始が何事かと困惑していると……
「始……、多分あの人……、貴方が始だって分かってないんだと思う……」
「あ……っ!」
剛の鋭い視線に驚き慄き、思わず始の背中にしがみついてしまった山風が、呟く様にして始に自己紹介がまだである事を指摘し、それによって剛の反応の理由をようやく理解した始は、それはそれは大慌てで自分が積 始である事を剛に告げ、それを聞いた剛は今まで始に向けていた鋭い視線を一転させ、驚きの余りに思わずその目を丸くするのであった
「始だと……っ!?如何して君が此処にいるんだ……っ?!」
「エデンの残党に消されたのさ……、刑務所での保護期間が終わって出所した直後を狙われてね……」
「そうだったのか……」
その後、目の前の集積地棲姫が始であると知った剛と、ようやく緊張がほぐれてまともに話せる様になった始は、未だ戦治郎達の中では不明とされている自分達の死因の説明を除いて、お互いの身に遭った出来事について話し始め……
「そう言えばさ、結局剛さんと始さんは一体如何言う関係なの?」
「プルートの方に話題がいったせいで、2人の詳しい関係性についてすっかり聞きそびれていたね……」
「それについては僕から話しておこうかな?始が長門屋に加入するつもりでいる事を考えれば、長門屋の皆には2人の関係性については知っていてもらいたいところだからね」
話の中でその表情が段々と柔らかくなっていき、始に対してまるで自分の息子を見ている様な、そんな父性溢れる穏やかで優しい目を向けている剛と、心なしか嬉しそうに剛と会話する始の姿を見て、ほんの僅かに嫉妬の炎を心に点し、不機嫌そうな雰囲気を辺りに漂わせ始める不知火を尻目に、ふと思い出したかの様に陽炎がこの様な言葉を口にし、それによって2人の関係性について聞きそびれていた事を思い出した時雨が、眉間に皺を寄せて考え込む様な素振りを見せたところ、始から話を聞いていたリチャードが陽炎達の会話に割って入り、この様な事を言うのであった
因みにこの時、剛達の方は剛の口調の話題になっており、剛がオネエ口調になった理由を知った始は、思わず引き攣った笑みを浮かべていたのであった……
それからしばらくの間、陽炎と時雨、そして陽炎達の傍にいた不知火と瑞穂の4人は、リチャードの口から2人の関係性、そして始が歩んで来た壮絶過ぎるその人生について教えてもらう事となり、4人は始がプロフェッサーに強く執着する理由を深く理解すると、思わず押し黙ってしまうのであった……
そうして双方の話が終わったところで、話の途中でキュクロープスとペーガソスの修理の為に2Pと共に格納庫に行っていた伊吹がこの場に戻り、剛達に2機の修理が完了した事を告げ、それを受けた剛達は2機を受け取りに行くついでにシャワーで模擬戦の際に掻いた汗を流し、それらを終えて長門屋鎮守府(張りぼて)に帰還する事になったところで……
「始、私はお前と合流出来る日を楽しみにしているぞ。リチャード、始の事を頼んだぞ」
剛は自分達を送迎する為に浜辺に来てくれた始とリチャードに向かってこう言い放ち
、それに対する2人の返事をしっかりと聞き届けると、送迎に来てくれた者達に背を向け、ガダルカナル島を発つのであった