※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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因果を結ぶのは能力

望の背中から突如として触手が生えて来た事で、特撮同好会の宴会の会場であり、事件の現場となった空の部屋のリビングには、しばらくの間状況を呑み込めずに慌てふためく望の声だけが響き渡っていたのだが……

 

「何じゃこりゃあああぁぁぁーーーっ!?!」

 

危うく望の触手に頭を貫かれそうになったシゲの、腹の底から放たれる驚愕と困惑が見事なバランスで絡み合った咆哮を皮切りに、この場にいる誰もが我に返ると同時に望の下へと駆け寄り、身体に異常は無いか?と言った望の身体を心配する質問や、この触手は一体何なのか?と言った自身の内に湧き上がる疑問に対しての答えを求める質問が、まるで暴風雨の如く望に浴びせられるのであった

 

尤も、これについては望の方が此処にいる誰よりも知りたい立場である為、当然の如く皆が求めているこの現象の答えを出せる訳も無く、望の返答を聞いた者達は内心では残念そうな表情を浮かべながら、冷静さを欠いて望に質問攻めした事に対して、申し訳なさそうな表情をしながら口々に謝罪をするのであった

 

その後、この件を悟に伝えるべく部屋の外で通信を開始した空を除いたメンバーは、リビングにあったテーブルを囲んで望の身体から触手が生えて来た原因について話し合いを始めるのだったが、その内容が余りにも予想し難い、突飛過ぎるにもほどがあるものであったが為に、会議は踊るされど進まずと言った調子で、それらしい推論すら出て来る事は無かったのであった……

 

そんな中……

 

『望の身体から触手が生えて来た原因なぁ……、もしかするとよぉ、望の腹ん中にありやがるあの得体の知れねぇ臓器と関係があんのかもしんねぇなぁ』

 

「あの覚醒剤物質を分泌する奴か……、しかしその時の状況や今の望の様子を見た限り、関連性は薄い様に見えるが……」

 

『まぁ細けぇ事は実際に見ねぇ事には何とも言えねぇなぁ……、っとぉ……、そろそろ休憩が終わっちまいやがらぁ、詳しい話は後日聞かせやがれってなぁ』

 

「待て、休憩だと?俺の記憶が正しければ、今日は横須賀の軍医業は休みだったと思うんだが……?」

 

『ちょいと俺なりに思う事があってなぁ、燎から許可もらってバイトやらせてもらってんだわぁ。んで、今はバイトの方の休憩時間だったって訳よぉ。てな訳で、悪ぃが仕事に戻らせてもらうぜぇ』

 

望の事を報告する為に悟に通信を入れていた空は、悟とこの様なやり取りを交わした後、悟に通信を切られてしまうのであった

 

さて、こうして望の身体について一番詳しいであろう悟からも、大したヒントを得る事も出来なかった空は、特に進展している様には見えない話し合いには参加せず、その場で静かに思考を巡らせ始めるのであった

 

そんな空が先ず最初に考えたのは、一体何が原因で望の身体から触手が生えて来たのかについてだが……

 

(真っ先に思い当たるのは、望がアマゾンズを見た事だな……。しかしそれが如何してこの様な事になった……?)

 

恐らく原因となった物がアマゾンズの映像であると予想はするのだが、それが触手が生えて来たと言う現象に上手く結びつかず、空は思わず苦々しい表情を静かに浮かべながら、今度は原因と現象の因果律を探る為に熟考するのだが……

 

(うむ……、考えれば考えるほど、訳が分からなくなってくるな……)

 

幾ら思考を巡らせようとも、手持ちの情報が余りにも少ない事もあり、アマゾンズの映像から触手が生えると言う現象の因果律を見つける事が出来ず、空は内心でそう呟くと一旦頭からこの出来事に関する事を切り離し、今回の事件の中心人物とも言える望について考え始めるのであった

 

望の事と言えば先程悟も触れていたが、やはり例の覚醒剤物質を分泌する器官の事が真っ先に出て来るだろう。実際、空も望の事を考え始めるや否や、何よりも先に思い浮かべたのはソレの事であった

 

その臓器は今は人体実験問題や桂島泊地の提督の件もあって、元帥の判断で破棄される事が決定したアムステルダム泊地にて、提督の手によって行われた投薬実験によって出来た物であると、望を保護した際に彼女の身体を検査した悟が言っていた物であるが……

 

(これもよくよく考えてみれば、今回の触手の件とよく似ているな……。具体的には原因と結果が上手く結びつかない……、ん……?)

 

望の事から望の例の臓器の事に思考が移り変わったところで、空は不意に引っかかりを覚え、今度はそちらの方へと思考を移す……

 

そしてその中で、空はある事に気が付くのであった……

 

(もしかすると、望の中には結びつくはずの無い原因と結果を、強引に結びつける何かがあるのではないか……?)

 

空がそう思い至った直後、その脳裏に『転生個体の能力』の文字が浮かび上がって来る……

 

(そう言えば……、あの時望はゾア汁の飲んでも無事だったな……。つまり望はそれよりも前に、既に能力に目覚めていた……)

 

この考えが空の脳裏をよぎった瞬間、まるで決壊したダムから溢れ出る水の如く、様々な考えが空の頭の中に押し寄せて来るのであった……

 

そうして濁流の如く襲い掛かる推測を厳選し、考えを巡らせた結果……

 

(望は外部から何等かの刺激を受けた際、本人の意思とは関係なく、身体がそれを有用であると判断した場合、それに沿った形で身体を変化させる……、突然変異をする能力を持っている……、そう言う事なのか……?)

 

空はこの様な推論を打ち出すに至ったのであった……

 

臓器の件でいけば、望の身体の中で複数の薬が混ざり合った事で出来上がった覚醒剤の効果が出ると言う刺激を受けた際、戦闘の際には覚醒剤の効果で身体と精神を強化出来れば戦闘を優位に進められると望の身体が勝手に判断し、副作用を無視して覚醒剤物質を分泌する臓器を作ったと考えれば、空の中では納得する事が出来た

 

そして触手については、アマゾンズの映像を見ると言う刺激を受けた際、劇中の様に触手を生やして相手を攻撃出来れば、個人での殲滅能力を高める事が可能であると、望の身体が望の意思を無視してその様に判断し、望の身体に触手を生やす機能を取り付けたのだろうと空は推測するのであった

 

これ以外にも胸部の追加装甲やガントレット、主砲から生える鉤爪に関しても、この推測に当てはまるだろうと空は考えていたのであった

 

こうして空が今回の事件の原因に当たりを付けたその直後、空の脳裏にある事が過る……

 

(そう言えば……、例のオリジナル体は6本腕だったな……。……まさかな……)

 

アマゾンズの映像をふと思い出した空が、内心でこの様な事を呟きながらリビングに戻って来てみると……

 

「あ"あ"あ"があ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーっ!!!」

 

「え、えっと……、シゲさん、本当にこれ大丈夫なんですか……?護さん、すっごく苦しそうですけど……?」

 

「大丈夫大丈夫っ!サブミッションは大体こんなモンだからっ!!」

 

「腕が6本もあれば、この様な事も出来るのですね……」

 

「両腕をチキンウイングで締め上げながらのキャメルクラッチ……、更に両脚も抱え込んでアキレス腱を固めるって……、中々エグい事するなぁ……」

 

「ギブアップッ?!ギブアップッ!?」

 

リビングではテーブルを片付け、恐らく話し合いの最中に生やしたであろう6本の腕で護に複数の関節技を同時に仕掛ける望と、望を唆したと思わしきシゲ、その様子を愕然としながら見守る通と翔に、酒が入って上機嫌になっているせいか、ノリノリでプロレスのレフェリーの如く護の顔の前で手をヒラヒラさせながら、護にギブアップするか否かを尋ねる光太郎の姿があったのであった……

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