※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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提督科以外の出し物 前編

司に依頼していた舞台衣装が届いた日の夜、戦治郎達はいつもの浜辺で久方振りに自主練を行っていた

 

ここしばらくの間は江田校祭の準備で誰もが忙しい状況にあった為、中々皆で集まって自主練を行う事が出来なくなっていたのだが、最近になって準備が粗方進んである程度状況が落ち着き、何処の科の者にも余裕が出来て来たと言う事で、これ以上身体を鈍らせない様にする為に自主練を再開しようと言う流れが出来上がり、こうして久しぶりに皆で集まって自主練をする事になったのである

 

そしてしばらく各々に訓練を行い、休憩時間に入ったその時である

 

「そう言えば江田校祭の出し物の事なんだけど……、提督科の出し物が予想外過ぎると思ったのは私だけ……?」

 

不意に瑞鶴がこの様な事を言い出し、それを聞いた艦娘候補生の誰もが瑞鶴に同意する様に、うんうんと何度も首肯するのであった

 

「それ、鈴谷も思った!」

 

「恐らく誰もが予想だにしていなかったでしょうね……」

 

「榛名、トイレの扉に貼ってあったポスターを見た時は本当にビックリしました!」

 

「トイレにポスターが貼ってあった事も驚きだが、私はそのポスターのクオリティーの高さに驚いたぞ……」

 

「あれは非常に目を引くポスターでしたね……、あれも戦治郎さんが作った物なのですか?」

 

「ウチは提督科の誰が日本舞踊を踊るのかの方が、よっぽど興味深いんじゃが……?」

 

それからすぐに鈴谷、霧島、榛名、磯風、浜風、浦風の6人が、それぞれ思った事を率直に口にしていき、それを聞いた戦治郎は……

 

「ポスターをトイレに貼ったのは、俺が昔読んだ漫画にトイレに生徒会長選挙用のポスターを貼るって奴があって、それをモロパクリしただけだな。んで、ポスターのクオリティーについては、その道のプロレベルの人に製作依頼出したからなんだわ。まぁ、この出来は俺も予想外だったけどな……」

 

この様に嘘偽りなく事実だけを話し、それを聞いた艦娘候補生達は、ポスターの製作を外注した事に対して、大ブーイングを巻き起こすのであった

 

因みにポスターなどの印刷物の外注に関しては、発注時のやり取りで相手方に好印象を与えられる事が出来れば、礼節に関する事もしっかり教育出来ていると言う事で、軍学校の評価を上げる事が出来るかもしれないと言う事で、軍学校も帝国海軍も特に規制は入れていない様で、その事を大和が艦娘候補生達に説明すると、艦娘候補生達は納得いかないのか、不満そうな表情を浮かべながら押し黙るのであった

 

それからしばらく周囲に沈黙が訪れるのだが……

 

「それはそうと、イクは誰がステージで踊るのか気になるの!」

 

「確か今の提督科って、5人しかいないんでしょ?それだったら……、今の提督科唯一の女性提督候補生の宮島さんかな?」

 

その沈黙を破る様にイクがこの様な事を口にし、それに続く様にして瑞鳳がステージに立つ人物について、予想を立てるのであった

 

この瑞鳳の発言に誰もが納得した様に、あぁ~と言った様な声を上げたその直後……

 

「皆の予想を裏切って悪ぃな、ステージの上で舞うのは紅葉じゃなくて……、この俺だっ!」

 

戦治郎は誰が見ても苛立つ様なドヤ顔をしながら、途中で言葉を区切って溜めを入れ、自身の方に親指を立ててそう言い放ち、それを聞いた艦娘候補生達は、その誰もが愕然とし言葉を失うのであった……

 

それからしばらくして、艦娘候補生達は我に返ると騒ぎ立てる様にして戦治郎に対して質問攻めを行い、それに対して戦治郎は詳細については本番当日までのお楽しみと言って、この場を鎮静化させる事に成功するのであった

 

こうして艦娘候補生達が落ち着いたところで、今度は戦治郎が彼女達に向かってこの様な質問を投げかける……

 

「そういやお前達んとこの出し物は、一体どんなのやるつもりなんだ?提督科はステージの時間まで余裕があっから、その時間利用して皆のとこ回ろうと思ってんだが……?」

 

この質問を受けた艦娘候補生達は、ある者はとても嬉しそうな表情を浮かべ、ある者は少々苦々しい表情を浮かべながら、自分達のところの出し物について語り始めるのであった

 

まず先陣を切ったのは、榛名と霧島が所属する戦艦科であった

 

如何やら戦艦科は演劇をやる様で、榛名はモブ役としてステージに立ち、霧島は裏方で演者達のサポートを行う事になっているのだそうな……

 

「何で榛名が主役じゃねぇの?こう言っちゃ他の戦艦艦娘候補生達にゃ悪ぃけど、榛名が主役の方が絶対ステージが華やぐと思うんだが?」

 

霧島から話を聞いた戦治郎は、思わず思った事をついポロリと口にし、それを聞いた榛名は戦治郎の口から間接的に榛名は美しいと言われたと思って満面の笑みを浮かべ、そんな榛名の様子を見た霧島は、苦笑しながら事情を話すのであった

 

「私もそう思ったのですけど……、榛名が主役をやりたい娘に主役をやってもらうべきだと言って、辞退してしまったのです……」

 

「あぁ、何か光景が目に浮かぶわ……」

 

霧島から事情を聞いた戦治郎は、納得した様子で苦笑しながらこの様な言葉を口にするのであった

 

さて、戦艦科の次に出し物について話したのは、瑞鶴が所属する正規空母科であった

 

瑞鶴の話によると、正規空母科はなんとメイド喫茶をやる予定となっているらしい

 

「出し物の話し合いになった時、教室全体がまるで激戦区の戦場の様な、すっごく重苦しい空気になったのよね……。そんで皆集客率がどうとか、利益率がどうだとか、滅茶苦茶真剣な表情で、緊張感を漂わせながら話してたわね……」

 

「空母は艦載機を大量に運用する都合、戦術とか効率とか滅茶苦茶考えねぇといけねぇかんな……。これに関しては俺からはもう、シカタナイネとドンマイとしか言えねぇわ……」

 

その時の居心地の悪さを思い出したのか、瑞鶴はゲンナリしながらこの様な言葉を口にし、それに対して戦治郎は同情の眼差しを瑞鶴に向けながら、この様な言葉を掛けるのであった

 

因みにこれは余談だが、如何して空母科の艦娘候補生達が理詰めな感じになってしまっているのかと言うと、空母科の講師である赤城が講義を行った際、自分や横須賀のダブルドラゴン(飛龍&蒼龍)と同じ様に、感覚で艦載機などの運用をするタイプの艦娘を真似るよりも、赤城の同僚である佐世保の加賀の様に、理論や努力でスキルを高めている艦娘を真似した方が間違いが少ないと教えた影響で、この様になってしまってるのだそうな……

 

戦艦と空母、艦娘の艦隊で主力として重宝される艦種の出し物が出たところで……

 

「鈴谷達重巡科の出し物は、屋外で整備科にお願いして作ってもらった15.5cm三連装砲を模した銃を使ってやる射的になったよ~」

 

今度は重巡科の出し物が、鈴谷の口から発表されるのであった

 

話を聞く限りによると、重巡科の出し物の決定はかなり難航したらしく、中々出し物が決まらない事に誰もがイライラし始めたところで、ふと鈴谷が思いついた事を口にし、ロードトレイン砲『布都御魂』製作時に鈴谷が築き上げた整備科とのコネを使えば、この出し物も安全に且つ盛大に行えるだろうと言ったところ、すぐさま採用されたのだそうな

 

「ああ、整備科ABCトリオから聞いたな。艦娘の艤装が使えない一般人でも艦娘の砲撃をリアルに体験出来る様に、安全性に細心の注意を払いつつ、かなり細かい所まで再現したって」

 

「そうそう!出来上がった奴を鈴谷と熊野が試射したんだけど、本当にリアルの15.5cm三連装砲と遜色なくて、2人揃ってマジで驚いたよ~。いや~、ウチの整備科ってマジ優秀じゃん!」

 

鈴谷の話を聞いた戦治郎が、食堂で件のABCトリオから聞いた話を思い出しながらこの様な言葉を口にすると、鈴谷はそれはそれはいい笑顔を浮かべながらこの様に返事をするのであった

 

そんな戦治郎と鈴谷のやり取りの間に、割って入って来る者がいた

 

「重巡科も整備科に協力してもらったの?イク達潜水艦科も、機材関係でちょ~っと整備科に協力してもらったのっ!」

 

運用方法が他の艦種とはかなり違う為、提督科の候補生達が基礎を身に付けるまでの間、合同演習が行われていなかった潜水艦科に所属するイクが、整備科と言う単語に反応して話に入って来たのだ

 

イクが言うところによると、潜水艦科はシンクロナイズドスイミングと水中でのパフォーマンスを掛けあわせた出し物を、艦娘候補生達が普段使用している屋内演習場のプールで行うらしく、水中でのパフォーマンスを観客に見せる為に必要な特殊な機材、プールの上に設置する大型ディスプレイと、そのディスプレイに映す映像を撮る為の、水中でも手振れも少なく正確に作動するカメラの製作を、整備科に依頼したのだそうな

 

「それも聞いたな、軍学校にそれに使えそうな機材が無かったから、整備科にお願いしたんだってな?」

 

「そうなの!それでカメラとディスプレイを整備科の展示品として紹介する事を条件に、整備科はイク達のお願いを聞いてくれたのっ!これならイク達もやりたい事が出来るし、整備科は技術力をお客さん達に披露出来る、正にWIN-WINの関係になったのっ!」

 

イクの話を聞いた戦治郎がそう言うと、イクはかなり実りの良いその胸を突き出す様に、ふんぞり返りながら自慢げにこの様に返答するのであった

 

因みに先程出て来た整備科の展示物についてだが、如何やら整備科は布都御魂も来場客達に展示物として紹介したいらしく、戦治郎との交渉人に任命された整備科ABCトリオは、重巡科の件や潜水艦科の件を戦治郎に話す前にABCトリオのA、栄が実家から取り寄せたういろうを持参して布都御魂の件を持ち掛け、戦治郎から了承を得ていたりする

 

こうして戦治郎達は、月明かりに照らされた浜辺にて、各学科の出し物の話題で盛り上がるのであった




駆逐や軽巡や軽空の出し物、軍学校選抜演習のメンバーとその対戦相手については、後編で触れていく予定となっています
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