ニィ=ラカスと邂逅し、自身の面倒を見てくれた礼として運命を反転させられたロッソは、その次の日からとても信じ難い数々の出来事を経験する事になるのであった
ロッソが自身の運命が反転した事を確信、神を自称するニィ=ラカスの力を実感したのは、ふと視界に入ったくじ屋で試しに買ってみた宝くじであった
ロッソが手始めに1枚だけ購入したスクラッチくじでは、20年間毎月15000ユーロ、日本円で大体180万円を貰えると言うとんでもない大当たりを引き当て、その事実が信じられずに次に購入したロトくじも、後日大当たりしていた事が発覚し、キャリーオーバーが積み重なった結果莫大な金額となっていたその配当金約1億8000万ユーロ、日本円で約250億円は、半分はロッソの銀行口座の中へ、もう半分はロッソの意思で組織に献上する事となるのであった
これによって組織の上層部のロッソの評価は爆上がりし、ロッソのその運の良さを見込んで、上層部は幹部の人間であるにも関わらず、ロッソに敵対組織が経営する闇カジノを潰して回る様にと命令を出したのであった
普通ならば金のなる木となりそうなロッソに、こんな危険な仕事をやらせるべきではないと思うところだろうが、上層部はこれだけ運がいいのであればきっとロッソは死ぬ事は無いと確信し、実際にロッソもそれに応える様に活躍してみせるのであった
正体がバレない様にある程度変装して闇カジノに入り込み、店側が仕込んだイカサマも豪運で強引に捻じ伏せて大当たりを乱発し、敵対組織の関係者に事務所に連れ込まれたところで正体を表し、関係者を始末した後闇カジノの売上金を強奪して逃亡、その後の逃走劇ではまるでコメディー映画の如く相手が事故を連発したり、同士討ちを乱発するせいで難なく逃げ出す事に成功。更にこれだけの騒ぎを起こしていながらも、偶然に偶然が過剰なほどに重なった事で、犯人であるロッソの事をどの敵対組織も特定する事が出来ず、ロッソはそれを利用して幾度となく犯行を重ね、敵対組織のシノギを片っ端から潰して回る事に成功し、奪った売上金を献上していた事と合わせて組織に大きく貢献する事となるのであった
ロッソも参加する事になる抗争についても、普通では考えられない様な出来事が乱発していた
敵対組織のボスの家に幹部達が集まって会議をしていたところに、偶然事故を起こした飛行機が墜落して来て敵対組織のボスと幹部達が全員死亡してしまったり、敵対組織が抗争の準備を進めていたら、国際テロリスト集団のテロ活動に巻き込まれてしまい、抗争どころではなくなってしまったりと、非常識極まりない事が起こりまくり、結果としてロッソ達の組織はその混乱に乗じて敵対組織を次々と狩り潰し、遂にイタリア最大の闇組織の地位を手に入れる事となったのであった
それから2年経ち、ロッソが所属する組織によってイタリアの裏社会のバランスが保たれる様になったそんなある日、ロッソはボスから呼び出され、ある選択を迫られる事となるのであった
その選択と言うのが、組織のボスになるか、イタリア海軍の将校になるかと言うものであった
ボスが言うには今のイタリア海軍は、長い間戦争が無かった為に平和ボケしており、深海棲艦が出現する様になってからも、どうせ他国が何とかしてくれるだろうと考え、積極的に動こうとはしなかったのだそうな……
そんな自国の海軍の様子と、深海棲艦との戦いで大いに活躍するドイツやイギリスの海軍を目の当たりにしたイタリア政府は焦りを感じる様になり、連日会議を重ねる中で組織の発展に大きく貢献したロッソの存在に気付き、ロッソにイタリア海軍の立て直しを依頼して来たのである
この話を聞いた直後、ロッソの中には怒りの炎が燃え盛っていた
(『依頼』だぁ?俺の事特定してるってこたぁ、ウチの組織の人間の情報も掌握出来てるって事だろうがよぉ……。『依頼』なんて耳触りのいい言葉使ってやがるが、実際のとこはウチの人間を人質にして『脅迫』してる様なモンだろうがよぉ……。政府の連中……、厄介事を俺に押し付けようとしやがって……)
怒りの炎を宿しながら内心でそう呟くロッソは、ボスに対して考える時間が欲しいと伝えて部屋を出ていき、その足でそのまま自宅へと戻るのであった
確かにロッソとしては、政府のやり方は気に食わないところはあるが、言い分に関しては一理あると考えている
実際深海棲艦が出現してからというもの、取引などにおいて海路を使えなくなってしまい、組織の経営に少なからず打撃を受けてしまっている為、自国の海軍にはもう少し頑張ってもらい、海路を使った取引を復活させて欲しいし、イギリスやドイツの取引先に何時までもデカイ顔をさせたくない、舐められたくないとも考えている
しかしそうすればロッソは組織を、恩人が愛したこの組織を抜けなければいけなくなる……。それがロッソの中で葛藤を生み出していたのである……
それからしばらくの間、ロッソは自分はどうするべきかで悩み続けるのだが、結局その時には結論を出す事が出来ず、気分転換と称してシャワーを浴びる事にするのであった。そしてシャワーを浴び終え、鏡に映った自分の姿を見たその時、ロッソはある言葉を思い出すのであった
『それは僕とロッソを繋ぐ証みたいなもので、それがあればロッソが頭の中で僕に呼び掛ければ、何処にいても僕と話が出来る様になるんだよ。もし困った事があって僕に相談したり、助けを求めたりしたら、いつでも相談に乗るし、ロッソを助ける為に駆け付けもしちゃうよ』
そう、自身の胸に刻み込まれた刻印を見た時、ロッソの頭の中にニィ=ラカスのこの言葉が浮かび上がり、その事を思い出したロッソはすぐさまニィ=ラカスに呼び掛けるのであった
(ニィ=ラカスッ!聞こえるかっ!?聞こえてるなら……)
『その声はロッソッ?!そうだっ!そう言えばロッソの家があったっ!!』
そうしてロッソが目を閉じて心の中でニィ=ラカスに呼び掛けていると、ニィ=ラカスは何処か焦りを感じる様な声色で、ロッソの言葉に被せ気味にこの様な言葉を言い放ち、ロッソが切羽詰まっている様なニィ=ラカスの様子に困惑していると、突然ロッソの胸の刻印から直径がロッソの身長と同じくらいの、漆黒の禍々しいオーラを放つ魔法陣が飛び出し、ロッソの目の前に展開されるのであった
この状況を目の当たりにしてロッソが訳も分からず混乱していると、不意に魔法陣から勢いよく黒いオーラが噴出し、そのオーラは蝙蝠の羽と複数の角を持つ黒い山羊、外なる神であるニィ=ラカスの姿へと変わっていくのであった
「お願いロッソ!少しの間匿ってっ!!」
「匿うって……、いやまあ、俺もお前に相談したい事があるから別にいいんだけど……」
魔法陣を消滅させつつ、何かに怯えた様にプルプルと震えながらロッソに懇願してくるニィ=ラカスに対して、ロッソは怪訝そうな表情を浮かべながらそれを了承し、安堵の息を吐きながらお礼を言って来るニィ=ラカスに、互いに何があったのか落ち着いて話せる様にと、ソファーに座る様促すのであった
取り敢えずニィ=ラカスを落ち着かせる為に彼の話を聞いたところ、如何やら彼の姉であるシュブ=ニグラスが暴走し、それから逃れる手段を探しているその時、ロッソの呼び声が聞こえて来て、それによってニィ=ラカスはロッソの家に逃げ込む事を思い付き、こうしてロッソの刻印を利用して、シュブ=ニグラスに自身の足取りを掴ませない様にしながら逃げ込んで来たのだそうな……
因みにシュブ=ニグラスの暴走の原因だが、如何やら以前食べたイタリア料理が恋しくなり、それを再び食べる為にその味を知る自分と自分の弟であるニィ=ラカスの、その味に関する記憶を精子と卵子にする事で、その味を完全再現出来る生物を作り出そうとして、ニィ=ラカスに性的な意味で襲い掛かって来たのだとか……
「おめぇの姉ちゃん、頭イカレ過ぎだろうがよ……」
ニィ=ラカスから事情を聞いたロッソは、シュブ=ニグラスの行動にドン引きしながら、ニィ=ラカスに同情の視線を送りつつ、この様な言葉を零すのであった
その後ニィ=ラカスがシュブ=ニグラスに対する不満や愚痴をブチ撒け、精神的にスッキリしたのか徐々に落ち着いた様子を見せる様になり、ニィ=ラカスが完全に落ち着いたところを見計らって、ロッソは今回の件についてニィ=ラカスに相談を持ち掛けるのであった
苦悶の表情を浮かべながら自身の葛藤を吐露するロッソ、それに対してニィ=ラカスは時折相槌を打ちながら静かに耳を傾け、ロッソが話し終えるとニィ=ラカスは一呼吸置いた後……
「僕の意見をハッキリ言わせてもらうけど、正直別に悩む様な事じゃないと思うんだ。今のロッソなら、組織のボスもイタリア海軍の将官も、きっと両立する事が出来ると思ってる」
ロッソの目をしっかりと見据えながら、ハッキリとした口調でそう断言するのであった
それから更に、ニィ=ラカスは言葉を続ける
ニィ=ラカスが言うには、ロッソは先ず組織のボスに就任し、それから政府に言われた通りにイタリア海軍に入隊、そこから政府に頼まれていた海軍の立て直しを実行すると見せかけて、海軍と言うガワを維持しつつ海軍の人間達を全て組織に引き入れ、イタリア海軍そのものを組織の一部として吸収し、最終的には表沙汰にしない様に注意しながら、組織が裏から政府を支配する様にしたらいい、と……
「『この程度』の事なら、今のロッソと僕が手を組めば結構簡単に出来ると思うんだけど……、どうかな……?」
「おめぇも姉ちゃんの事馬鹿に出来ねぇくらいぶっ飛んでんな……、けどその意見、気に入ったっ!」
このやり取りの後、ロッソは右手で、ニィ=ラカスは右前足で固く握手(?)を交わし、すぐさま今の組織のボスの下にニィ=ラカスを連れて戻り、ボスにニィ=ラカスを紹介してから先程の話を持ち掛け、困惑するボスを説き伏せ、ロッソは組織のボスに就任する事となるのであった
尚、その次の日にロッソのボス就任に関する集まりが開催される事となり、ロッソが挨拶を済ませてニィ=ラカスの事を部下達に紹介するのだが、その時に過去に組織に潰された敵対組織の残党が集結し、この集まりに襲撃を仕掛けて来るのだが……
「ロッソを……、僕の友達を傷つけようなんて……、そんなの僕が許さないよっ!!」
襲撃者達に対して怒りを露わにするニィ=ラカスのこの一言により、襲撃は一瞬で収束し、集まりの会場は大量のゲロと悲鳴が飛び交い、そこかしこから呻き声が聞こえ、至る所に白骨死体が転がるインスタント地獄と化すのであった……
何が起きたのかと言うと、ニィ=ラカスの一言を合図に襲撃者達と組織の中に潜り込んでいたスパイの皮膚と筋肉が突然裂け始め、それによって丸見えになった全身の骨にヒビが入ったかと思えば、その骨の中に次々と皮膚、筋肉、更には血液などの体液や内臓が吸い込まれていき、やがて骨がその全てを吸い込み終えると次第にヒビが消えていき、そうして骨の内側から呻き声が聞こえる白骨死体が大量に出来上がったのである
そんな悍ましい光景を目の当たりにした組織の人間達は、皆揃って顔面蒼白になりながら、ゲロを吐き散らし悲鳴を上げてこの場所から逃れようと逃げ惑う。そんな中、1つの白骨死体に冷ややかな視線を向けながら、ニィ=ラカスはその白骨死体の傍まで歩み寄り……
「恨むなら、僕の友達を傷つけようとした自分達の事を恨むんだね」
そう言い放つなり、その骨の腕を踏み潰す。その直後、頭蓋骨から悲鳴が上がると同時に踏み潰された骨から勢いよく血肉や内臓が飛び出し、それを近くで見てしまった者達は、吐き出す物が胃の中に無い為、その場で蹲って只管えずき続けるのであった
「おめぇ……、一体何したんだ……?」
「襲撃者の皆さんには、僕の力で内骨格から外骨格に変わってもらったんだよ。まぁこの状態だと人間はその構造上動く事もまともに話す事も出来ないだろうから、彼らはきっと逃げ出す事も出来ずに、生きたまま土の中に埋められる事になるだろうね。因みに踏み潰したのは只の見せしめ、僕とロッソを敵に回したらどうなるかってのを教えてあげただけさ」
顔面蒼白になったロッソがニィ=ラカスに尋ねると、彼はあっけらかんとした様子でこの様に答え、これ以降ロッソはニィ=ラカスを絶対に怒らせない様にする事を、ロッソの部下となる者達はロッソとニィ=ラカスには絶対に逆らわない様にしようと固く心に誓うのであった
この騒動の後、ロッソは予定通りにイタリア海軍に将官待遇で入隊し、手筈通りに海軍の者達を自身の支配下に置く事に成功、これによりロッソはイタリア海軍の総司令官に就任する事となり、イタリア海軍は表面上ではその体裁を保ってはいるが、実際は完全にロッソの組織の戦力の1つに成り果ててしまうのであった
それからしばらく月日が経ったある日、遂にイタリアでも艤装が量産出来る体勢が整い、これから艦娘となる為に厳しい訓練を行う事になる女性達が、イタリア海軍の総司令官となったロッソの下へ挨拶しに来るのだが……
「え……?ロッソ……?」
「……君が如何して此処に……?」
最後にやって来た女性がロッソの執務室に入り、ロッソの顔を見るなり驚きながらこの様に呟き、その女性に見覚えがあったロッソもまた、座っていた椅子を倒す勢いで立ち上がり、驚愕の表情を露わにしながらこの様に零すのであった
その女性こそが、現在のロッソの秘書艦を務めるヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の2番艦であるリットリオであり、ロッソの父親の事件が切っ掛けで別れる事になってしまい、再会したくてもロッソの不幸体質のせいで会う事が叶わないでいたあの元許嫁なのであった……