もう2度と叶わないはずの再会を果たした2人は、予想外の再会に驚きの余りしばらくの間ロッソの執務室の中で揃って立ち尽くし、どちらからともなく我に返り落ち着きを取り戻すと、互いにこの場所にいる理由について話し始める
先ず話を始めたのはリットリオの方で、彼女はロッソの父親が逮捕された後、自身の父親からロッソとの婚約を解消すると告げられたのだが、その時にロッソの父親が起こした事件とロッソは無関係である、寧ろロッソの事を手厚く保護してあげるべきだと必死になって訴え掛けたのだが、その甲斐虚しく父親が勝手に話を進め、ロッソとの婚約をなかった事にされてしまったのだそうな……
幼少の頃から付き合いがあり、親が決めた婚約など関係無しにロッソの本来の人柄に強く惹かれ、将来はそんな大好きなロッソと結婚し、幸せな家庭を築く事を夢見ていたリットリオは、父親が強引に婚約解消した事に対してそれはもう激怒し、それ以降父親が持って来る見合い話を全て突っぱねていたのだとか……
これによりリットリオと彼女の父親の仲は次第に険悪になっていき、最終的には彼女は父親に勘当を言い渡され、今まで住んでいた実家を追い出されてしまうのだが、如何やら彼女はそうなる事を予め想定しており、その為の準備を事前に進めていたのだそうな……
「見合い話を突っぱねて親父さんの面子を潰す事で、勝手な婚約解消の件の報復を行ったって訳か……」
「婚約解消の話を持ち掛けて来た時、あの男はロッソの事をそれはそれは酷く言っていたんです……。ロッソ自身は何も悪い事をしていないのに、犯罪者の息子ならきっといつか親と同じ様に犯罪を犯すだろうって……」
リットリオの話を聞いている途中で、リットリオの行為の真意についてロッソが尋ねたところ、リットリオはその表情を暗くしながらこの様な事言い、それを聞いたロッソは内心で思わず苦笑するのであった……。何せ今の彼は彼女の父親が言った通り、何人もの人間の命や金を奪っていった事で、イタリアの裏社会の頂点に立つ事になった極上級の犯罪者となっているのだから……
話を戻して、こうして実家から勘当された彼女は、父親に悟られない様にしながら彼女の事を支援しようとする母親や妹の申し出も断り、元令嬢である事も周囲に隠しながら父親とは関係の無い企業に就職して仕事に励んでいた
そんなある日、彼女の耳に艦娘の適性検査の話が入り、今もきっとどこかで生きているであろうロッソを、そんなロッソとの思い出があるこのイタリアを守る為に、彼女は艦娘になる事を決意し、その志を胸に適性検査に臨んだところ、彼女に戦艦リットリオの適性がある事が発覚、それを知った彼女はすぐに海軍に入隊する手続きを行い、今に至っているのだそうな……
「守りたいと思っていた人が、まさか私達の司令官になっているだなんて、正直夢にも思っていなかったです……」
「奇遇だな、俺も君みたいに優しい人が、艦娘になって深海棲艦とやらとドンパチしようとしてるなんて想像もしていなかったさ」
このやり取りの後、ロッソとリットリオは同時にクスクスと笑い、お互い一頻り笑って落ち着いたところで、今度はロッソが自身がイタリア海軍の総司令官になった経緯について、一家離散した後の話も交えながら、神妙な面持ちを浮かべながら話し始めるのであった
ロッソの話を聞くリットリオは、その話の凄惨さに思わず絶句、途中から目尻に涙を浮かべ、呟く様に、許しを請う様に、ロッソに対して謝罪の言葉を口にするのであった
それに対してロッソは気にするなと言って彼女を慰めつつ、彼女との再会を望んではいたものの、不幸体質のせいでそれも叶わないだろうと思っていた事を打ち明け……
「ロッソの身近な人間に影響を与える不幸体質……、まさかそれって今も……?」
「いや、それがな?捨てる神あれば拾う神ありって感じで、偶然なんか凄い奴を助けたところ、その問題は完全に解消されちまったんだ。その結果が今のコレ、多分あいつと出会ってなけりゃ、俺はもっと前にどっかで死んでたかもしんねぇわ」
ロッソの不幸体質の件で不安になったリットリオが、心配そうにロッソにそう尋ねたところ、ロッソはあっけらかんとした様子でこの様に返事をするのであった
尚、ロッソのもっと前に死んでいたかもしれないと言う発言に対し、リットリオが過敏に反応して泣きそうになっていた模様
その後、ロッソは例のあいつ……、ニィ=ラカスのおかげで自分自身も、所属する組織も大成出来た事を嬉々として話し……
「それじゃあロッソが此処にいるのは、組織の発展の為だけなの……?」
その話を聞いていたリットリオが、真剣そうな表情でこの様に尋ねると、ロッソはばつの悪そうな表情を浮かべ、頭をガシガシと掻きながらこの様に答えるのであった
「イタリア海軍を取り込む事で組織を発展させ、他人任せで無責任な今の政府に裏から一発きつい奴をお見舞いして、イタリアと言う国を深海棲艦出現前のアメリカ並の強大な国にしてぇってのが、今の俺の1番の目標なんだが……、それ抜きで此処に俺がいる理由ってなると、やっぱ俺みてぇな奴をこれ以上増やさねぇ様にしてぇってのがあるな……」
「俺みたいな奴……?」
「あぁ、身寄りのねぇ子供さ。アメリカを陥落させた深海棲艦との戦争ってなると、どうしても死傷者が出ちまうだろ?俺はそれで親を亡くした子供達に、俺みてぇなクソッタレな人生を歩ませたくねぇんだよ。その道がどんだけ厳しくて苦しいか、俺は嫌ってくらい経験して知ってっからよ……」
ロッソのこの言葉を聞いたリットリオが、ロッソが優しい心を昔と変わらず持ち続けている事に思わず喜び、柔和な笑みを浮かべていると、ロッソが急に恥ずかしそうに視線を逸らし……
「それと今日、新しく理由が出来ちまった……」
耳まで真っ赤にしながら、呟く様にこの様な事を言い、その言葉にリットリオが不思議そうな表情を浮かべていると、ロッソはツカツカと彼女の下に歩み寄り、突然彼女の事を力強く抱き締めるのであった
「本当に会いたかった……、こうして抱き締めてやりたかった……、中々会う事が出来なくて心配させちまって悪かった……」
そうしてロッソはリットリオを抱きしめたまま、彼女の耳元でこの様な言葉を囁き、それを聞いた彼女は堰を切った様に泣き出しながら、ロッソの背中に両腕を回して抱き締め返す
「もうこの手を放さねぇ……、お前の事を絶対に守り通す……、だから頼む……、ずっと俺の傍にいてくれ……、そして俺の事を支えてくれ……っ!」
「はい……っ!はい……っ!!」
このやり取りの後、落ち着きを取り戻した2人は互いに顔を真っ赤にしながら、海軍に入るにあたっての規則などの説明を行い、それらの話を全て終わらせると、ロッソの家での同棲について話し合い始めるのであった
尚、それによってリットリオは時々ロッソの家に遊びに来るニィ=ラカスと遭遇する事となり、最初は言葉を喋る黒山羊に大層驚いたものの、今は完全に打ち解けているのだそうな……
又、ロッソとリットリオの再会についてだが……
「ヨグ義兄さんが言っていた通りになったね、如何やらヨグ義兄さんはこの事を随分と前から……って言い方も変か、あの
如何やらニィ=ラカスはこの事を事前に知っており、ロッソがリットリオと再会出来る様にお膳立てをしてくれていた事が発覚するのであった
「ニィ=ラカスはイタリア海軍の総司令官と接触する事に成功……、先の未来ではサクサクルース様とダークネス伯父様、そして私の父上も重要人物達との接触に成功する……。これにより、私が出雲丸 翔と接触出来る未来が確定しましたね……」
その頃イタリアどころか地球、太陽系すらも飛び越えた銀河の彼方にて、ニィ=ラカスの動向を見守っていた『ソレ』は、ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、宇宙の闇の中でこの様な事を呟くのであった……