ニィ=ラカスの導きによって始まったロッソとリットリオの同棲生活は、それはもう何もかもが充実した素晴らしいものとなっていた
普段はリットリオが正規の艦娘となる為に日々訓練に打ち込み、ロッソは総司令官としての仕事をこなしつつも、裏では自身の組織まで動かしてイタリア政府から実権を奪い取る準備を着々と進め、お互いの休みが重なる事が事前に分かれば、休日前の夜はこれまで会いたくても会えなかったと言うの空白期間を埋める様に、互いが互いを求めあう様に身を絡ませ合い、それはそれは情熱的な夜を過ごしていた
尚この時ばかりは、例え姉の捜査網に絡め取られそうになったとしても、ニィ=ラカスは空気を読んでロッソの家に逃げ込む様な無粋な真似はしなかった模様
それから月日が流れ、訓練を終えたリットリオはすぐさまロッソの秘書艦に任命され、2人でいる時間が増えた事に喜びを覚えつつ、秘書艦としての仕事に真摯に打ち込んでいたある日、ふと思い出した様にとある出来事について、新しい艦娘の配備に関する書類の処理をうんざりした様子で片付けていたロッソに向かって話し始める
リットリオが言うには、ロッソとの同棲を始めてからと言うもの、何故か運気がかなり向上しているのだとか……
具体的な内容だが、訓練生としてマークシート方式の筆記テストを受けた際、一部の問題の答えが分からず山勘で解答用紙にマークを付けたところ、その部分が全問正解し合格点を取る事が出来たり、演習の際に砲の反動で思わずよろけてしまった時、今まで立っていたところを相手が撃った砲弾が通過していったり、逆に自分が砲を撃った時には突然発生した突風や高波などで相手がバランスを崩し、倒れ込んだところに自身が撃った砲弾が真っ直ぐ飛んで行き、それが相手に直撃して轟沈判定を取る事が出来たりと言うのが、かなりの頻度で発生していたのだそうな……
この話を聞いていた人物がもし普通の人間であったならば、恐らくそれは只々偶然が重なっただけだと断言するところだろうが、ニィ=ラカスと出会って不幸体質を幸運体質に変えてもらった事があるロッソには、どうしてもこの話に引っかかりを感じる点が多く存在していた様で、ロッソはリットリオの話を聞き終えるや否や、仕事中であるにも関わらずニィ=ラカスを呼び出し、リットリオの身に起こった出来事について説明し、意見を求めるのであった
すると……
「これはほぼ確実に、今のロッソの幸運体質とその性質が原因だね」
ニィ=ラカスはそう言うと、この現象の詳細について話し始めるのであった
ニィ=ラカスの話によると、如何やらニィ=ラカスがロッソの不幸体質を反転させて幸運体質に変化させた際、その性質も幾つか反転させたのだそうな
具体的に言うと、不幸体質の時はロッソにとっての成功や平穏が目前に迫ったところで発動し、ロッソの身近な存在に対してロッソとの接触の有無に関わらず致命的な不幸が襲い掛かり、巻き込まれた者には致命的な物理ダメージを、ロッソには精神ダメージを与えると言った感じだったものが、ニィ=ラカスの手が入った事でロッソ自身の幸運はあらゆる事に反応して無差別で発生し、任意の相手に幸運を御裾分けしたいと思った場合は、そう思いながらロッソが対象に触れる事が出来れば、しばらくの間対象に幸運バフを付与する事が出来る様に変化しているのだそうな……
「リットリオの場合、定期的にロッソと熱い夜を過ごしてるみたいだから、それに合わせて途切れること無く幸運バフが付与されて、そんな事になったんだと思うよ?」
今回の出来事の原因について、ニィ=ラカスはニヤニヤしながら説明をこの様に言って締め、その話を聞いていたリットリオは耳まで真っ赤になりながら恥ずかしそうに俯き、ロッソは余りにも信じ難いその内容に思わず頭を抱えてしまうのであった
その後2人と1柱は話し合いを重ねた末、ロッソの幸運体質と御裾分けに関しては海軍と組織に公表する事はせず、この2人と1柱の中だけが知る情報に留める事を決定するのであった
最初はリットリオがこの事を公表し、艦娘達が出撃する前にロッソが何かしらの形で彼女達に接触する事で、彼女達に自分と同じ様に幸運バフを付与するのはどうかと提案したのだが、内部に他国の海軍なり闇組織の諜報員が潜入していた場合、この情報が何かの拍子で外部に漏れてしまい、ロッソのその体質を利用しようと目論む輩達にロッソが狙われてしまう可能性があるとして、ニィ=ラカスがその提案を即座に却下したのである
これに関してはロッソもニィ=ラカスの味方に付き、リットリオの提案を却下していた。事実、ロッソはつい先日フランスからの諜報員を、組織で活動していた時に培われた勘で見つけ出し、イタリア海軍の情報をフランスに持ち帰らない事を条件に、潜入していた諜報員を解放してフランスに送り返したばかりだったのである
故にロッソは他国への情報漏洩を警戒し、ニィ=ラカスの意見に賛同したのである
ではどうやって艦娘達に幸運バフを付与するのかと言うと……
「リットリオ的には気分が良くない方法だけど、ロッソには何かしらの作戦が成功した時を境に、調子に乗って女性へのボディータッチが大好きなセクハラ大魔神と言う本性を見せ始める、好色総司令官を演じてもらう必要があるかな?これがもし上手くいけば、ロッソに艦娘達のヘイトを集める事で、セクハラ被害者となる艦娘達に結束力を持たせる事が出来るかもね。打倒ロッソ!変態司令官を叩き出せ!って感じで。あぁ、組織の構成員とかに関しては、適当に肩を叩いたりしとけばいいと思う」
「ひっでぇ方法だなおい……、でもまぁ、俺の体質の事を秘匿する都合上、この方法しか手が無さそうだな……。全く以て気乗りしねぇけどな……」
ニィ=ラカスの提案でロッソにはセクハラ大好き総司令官を演じてもらう事になり、リットリオは露骨に不服そうな表情を浮かべながらニィ=ラカスの事を睨みつけ、当のロッソは再び頭を抱え、渋い表情を浮かべながらこの様に呟くのであった
尚、こうしてロッソは隙あらば艦娘達にセクハラを働くクソ提督を演じる事になったのだが、意外な事にロッソのセクハラに文句を言う艦娘は少なく、寧ろそのせいで艦娘からのロッソへのスキンシップが異様に増えると言う現象が発生するのであった
その理由は単純で、若くしてイタリア海軍の総司令官となれるほどの実力を持ち、イタリア国内でも屈指の美男子であるロッソなら、自身の身体に触れてくれてもいい、それどころかそれをネタにロッソに迫り、肉体関係を持って最終的にはロッソと結婚し玉の輿に乗りたいと言う考えが、艦娘達の中にあったからである
尤も、艦娘の第二次募集でやって来た、リットリオの妹であるヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の4番艦のローマや、ルイージ・ディ・サヴォイア・ドゥーカ・デッリ・アブルッツィ級軽巡洋艦の2番艦であるジュゼッペ・ガリバルディなどは、ロッソのセクハラにブチギレて、思いっきりロッソの頬に平手打ちをかましていたりするのだが……、まぁそれは今はそこまで関係無い事であろう
さて、こうして思わぬ形で艦娘達や組織の構成員を強化する方法を得たロッソは、ドイツやイギリスの助力無しに、自国の戦力だけでイタリア周辺の制海権を取り戻せる様になり、更には裏からイタリア政府を打倒する事に成功し、予定通りに政府の実権を手にするのであった
それからしばらく経ったある日、ドイツの提案で最近頭角を見せ始めたイタリアと、現在の欧州二大勢力であるドイツとイギリスによる演習を行う事になるのだが、この時はドイツとイギリスが戦治郎を経由してこの世界の真実に触れ、この世界の構成上永遠に戦い続ける事となる目先の深海棲艦ではなく、深海棲艦よりも質が悪く、世界のバランスや世界そのものを崩壊させかねない転生個体や神話生物と戦う事に重きを置いている事を知らなかったロッソは、深海棲艦との戦争が終わった後、人間同士の戦争になった時の事を考え、ドイツとイギリスにはこちらの本当の実力を見せない様にする事を決定し、この演習では他の二国を侮辱したと非難される事を覚悟した上で、艤装の装備スロットに空きを作るなど、ある程度手加減をして戦う事にするのであった
これによりアクセル達によってイタリア海軍はまだまだ実力不足だと判断され、演習が終わるとアクセル達は燎とロッソにイタリア海軍と戦治郎が所属する江田島軍学校との演習の話を持ち掛け、アクセル達の話から妥当な判断だと感じた燎は、元帥の秘書艦である長門と話し合った後にそれを了承、ロッソは如何して対戦相手を江田島軍学校と指定したのかについて疑問を覚えつつ、自分達の本当の実力をこの面々に悟られない様にする為に、先の演習で艦娘達のメンタル云々と嘘を混ぜながら話を合わせ、それを了承するのであった
こうしてイタリア海軍が江田島軍学校と演習する事が決まってしばらく経ったある日、ロッソが近海警備の為にローマやアクィラ級正規空母の1番艦であるアクィラなどを引き連れて出撃したリットリオの帰還を待ちつつ、総司令官として書類仕事を処理している真っ最中に、危うくシュブ=ニグラスに捕捉されかけたと言うニィ=ラカスが、イタリア海軍の本拠地に逃げ込んで来るのであった
突然のニィ=ラカスの出現に軽く驚いたものの、事情を知ったロッソはニィ=ラカスに存在感の反転を利用して姿を隠してくれていれば、ほとぼりが冷めるまで執務室にいてもいいと提案するのだが……
「今回は能力の使用は控えておきたいんだ……、姉さんが太陽系付近を重点的に警戒し始めたみたいだから、最悪能力を使用した事を感知されて、地球の、この部屋に姉さんが突撃して来る可能性があるから……」
愚痴と言う形で散々ニィ=ラカスにシュブ=ニグラスの恐ろしさを教えられていたロッソは、その言葉を聞くなり即座に前言撤回し、持ち前の潜入スキルをフル活用して本拠地の人間達の目を掻い潜りながら、ニィ=ラカスを匿う為の部屋を探し始めるのであった
ロッソ達がそんな事をしているその時である、ニィ=ラカスが何かに反応して急に歩みを止め、額に妖しいオーラを放つ逆五芒星を出現させて辺りを見回し始め……
「ロッソ!拠点内部に侵入者だっ!!」
何かを感知するや否や突然この様に叫び、何処かへ向かって走り出すのであった
「侵入者って……、突然何言い出すんだ……っ?!最近そんな報告は……」
「違うっ!気配からして相手は間違いなく人間じゃないっ!!恐らく僕達側……、何らかの神話生物だっ!!!」
突然走り出したニィ=ラカスを追いかけながら、息を切らせながら最近は諜報員などが潜入しているなどと言う報告を受けていなかったとロッソが言うと、ニィ=ラカスは走る速度を落とす事無く、ニィ=ラカスの存在に驚くイタリア海軍の人間達の視線など気にも留めずにこの様に返事をするのであった
これには流石のロッソも驚き、そのショックで足をもつれさせそうになるのだが、何とか持ち直しながら冷静さを取り戻し、これでもかという程に警戒しながら侵入者の下へ向かっているであろうニィ=ラカスの後を追うのであった
そうしてロッソとニィ=ラカスが辿り着いたのは、イタリア海軍のメインサーバーとして使用され、イタリア海軍のあらゆる情報が詰まっているスーパーコンピューターが設置されている部屋であった
「……この部屋の中に、そいつは今もいるのか……?」
腰のホルスターからハンドガンを引き抜きながら、部屋の入口に鋭い視線を向けるロッソがニィ=ラカスに尋ねると……
「……たった今逃げられた」
「はぁ?!この部屋は此処しか出入口無ぇんだぞっ!?此処で俺達が張ってるっつぅのに、そいつはどうやって此処から出たって言うんだよっ?!!」
「逃げた形跡から考えて、恐らくスーパーコンピューターと繋がっている回線から……。こんな芸当が出来る神話生物と言えば……、イ=スの連中かイオドくらいだね……」
ニィ=ラカスは渋い顔をしながらこの様に答えた後、ロッソと共に部屋の中へと入って行き、犯人が何をしようとしていたのかを調べる為に行動を開始するのであった