今回は本題に入る前に、この世界の日本帝国海軍の拠点について触れておこうと思う
アメリカを撤退に追い込んだ深海棲艦達が太平洋に進出して来た事を機に、どの国よりも早く艦娘と言う深海棲艦とまともに戦える戦力を得た日本帝国海軍は、太平洋を中心に多くの拠点を構え、通常兵器が通用しない深海棲艦達を迎え撃っていた
そんな拠点の名称は、第二次世界大戦中に使われていた拠点の名称に則って付けられており、その種類は大まかに分けると鎮守府、警備府、泊地、基地の4つに分けられる様になっている
そんな4種類の拠点がどう違うのか、簡単に説明すると……
泊地は元々艦艇を停泊させる事を目的とした場所であり、工廠やドックと言った設備などは備わっていなかったのだが、深海棲艦達の太平洋進出によってその定義が見直され、今では深海棲艦達と戦う為に必要な設備である工廠、ドック、司令部、艦娘寮の4つが最低限備わった小規模な拠点を指すものとなっている
次の基地は定義の見直しはされておらず、二次大戦中と同じく航空機用の滑走路や航空管制塔などを備える航空基地の事を指すものになっているが、深海棲艦に通常兵器が通用しない様に、空母タイプの深海棲艦が放つ艦載機や陸上型の深海棲艦が放つ航空機にも通常兵器が通用しない為、それを迎え撃つ為に艦娘を配備する必要がある関係で、一応ドックや工廠が設置されている
因みに基地はどちらかと言えば大規模作戦において航空機を使って艦娘達をサポートする事が主な任務であり、海域解放と言った通常任務はあまり回って来る事が無いのだが、真面目な提督が司令官として着任している基地の場合、艦娘達の練度を上げる為に提督が態々作戦司令部に掛け合い、任務を貰って来る事もあるのだそうな
そうして任務に就く事となった基地に所属する艦娘達は、基地にある航空機の力を借りて作戦海域に向かい、艤装を装備したまま空挺部隊の如く海上に降下して作戦を開始したり、基地から車などで近くの泊地や海岸に移動し、作戦海域に向かって出撃する様になっているのだとか
次に触れるのは警備府……ではなく、恐らく誰もがその名を聞いた事があるであろう鎮守府に触れよう。実際のところ、警備府の事を説明するには鎮守府が如何言った所なのかを前もって知っておいてもらわないと、非常に説明しづらいからである……
そう言った訳で鎮守府の説明に移るが、鎮守府は泊地に備わっている工廠、ドック、司令部、艦娘寮の他に、軍学校を卒業して訓練生から新兵になったばかりの艦娘達に対し、より実戦的な訓練を行ったり専門的な知識を教える為の教育を施す設備や、高官の移動や補給拠点から資源や資材を持って来た輸送用の航空機を受け入れる為の滑走路や航空管制塔、深海棲艦達が鎮守府を直接襲撃しに来た際に使用する妖精さん製の防衛設備が備わっており、周辺の泊地や警備府、基地を纏め上げる権限を有している拠点を指すものとなっている
因みに先述の防衛設備だが、設備がかなり大規模化してしまう上に思った以上に維持費などのコストパフォーマンスが悪く、まともに維持出来そうなのは警備府くらいの規模がある拠点くらいであるとされている為、全ての拠点に設置する事が出来ないのだそうな……
又、日本帝国海軍の総本山である横須賀鎮守府には、上記のものに加えてまだ着任する拠点が決まっていない艦娘達の待機所となる様な設備も備わっており、各拠点で艦娘が建造された場合、此処から該当する艦娘達が派遣されるシステムになっている
鎮守府がどの様なものであるか分かったところで、ようやく警備府の説明に移る事になるのだが、警備府と言うものは大雑把に言ってしまえば、教育用の設備と航空機関連の設備を削った鎮守府と言った感じのものとなっている
ここで周囲の拠点を纏め上げる権限について疑問に思うところがあるだろうが、大阪にある大阪警備府の場合は、京都に警備府よりも規模が大きい舞鶴鎮守府があり、周囲の拠点を纏めるのは舞鶴鎮守府にやってもらう事になっている為、その権限を有する事無く舞鶴の傘下に入っているが、青森にある大湊警備府の場合は周囲に自分達の拠点より規模が大きいところが無い関係で、鎮守府の代わりとして周囲の拠点を纏め上げる権限を持っている為、権限云々については何とも言えない状態となっている
これである程度この世界の日本帝国海軍の拠点について分かったと思うので、此処から本題に戻ろうと思う
イオッチが言っていた様に、様々なトラブルに直面しながらも、空達が何とか頑張ったおかげで長門屋鎮守府(張りぼて)は長門屋鎮守府(警備府)にランクアップする事に成功していた
当初の予定では今の時期には泊地クラスの規模の拠点を完成させ、残りの半年くらいで防衛設備、飛行場、教育用設備、太郎丸からのリクエストである農場の順で設備を整え、戦治郎達が戻って来る頃合いに鎮守府を完成させる予定だったのだが、輝の能力覚醒とエイブラムスの件で手に入れた油田、そしてイオッチによってボーキサイトの鉱脈が発見された件によって一部の工期が大幅に短縮され、それによって工廠組に余裕が出来た事で防衛設備の設置まで作業が進み、今に至っているのである
因みに防衛設備の設置は、本来身体が小さい妖精さん達が広大な拠点の敷地を防衛する為に大型化してしまった兵器を作り、人間達が重機などを使って工廠から設置予定場所まで運び出し、そこからまた妖精さん達が設置作業や全体の制御プログラムを組んだりすると言う手順がある為、どうしても時間が掛かる作業となってしまうのだが、空達が深海棲艦に通用する兵器の製作や設置のノウハウを持っており、重機よりもパワーを持っている者やプログラミングが得意な者もいた事で、防衛設備の開発&設置にはそう時間は掛からなかった模様
また、防衛設備の制御に関しては、有事の時に備えて制御プログラムを組んだ護とイオッチの他に、長門屋鎮守府(警備府)全体を1つの建築物と認識する事で、輝の建築物掌握能力を用いて制御する方法も採用されていたりする
そう言う訳でこれまで頑張ってきた皆を労う為に、そしてこれから建設する予定がある教育設備や飛行場、更に現在準備を進めている畜産を含む農業に関する設備を整える為の英気を養う為に、翔はちょっとしたパーティーを開く事を思い付き、先日イオッチに頼んで戦治郎にパーティーを開催する事とその予算を共用資金から出して良いかについて許可を取りに行ってもらうのだった
そして戻って来たイオッチから許可が出た事と司宛ての戦治郎からの依頼を聞いた翔は、司に戦治郎からの依頼の件を伝えた後、翌日に食堂組の半数を連れてパーティーに出す料理の材料を仕入れに行き、材料の調達を終えるとすぐに皆の朝食と昼食の準備を終わらせ、その日の夜に開催するパーティーで出す料理の下拵えを始めるのであった。その時の翔の様子を見ていた鳳翔とゾアは
「翔さん、クトゥルフさんにお料理を出していた時と同じくらいに気合が入っているようですね」
「食堂組は扶桑の形代以外あまり建設には関われていなかったからな、その辺りの負い目が翔の中に多少あるみたいなのだ。だから今回のパーティーは自分達の代わりに頑張ってくれた皆の為に、感謝の気持ちを込めて美味しい料理を沢山振舞ってあげたいのだと、翔は思っているみたいなのだ」
この様なやり取りを交わしながら、鳳翔は様々な野菜や魚介類、鶏肉やきのこの天ぷらの下拵えを、ゾアは和風、洋風、中華風と、パーティーで出される料理達によく合うスープを多数揃える準備を進めるのであった
因みに翔がパーティーを開催する事を告知した際……
「ショーシェー達は欠席させてもらうディシュ、地底暮らしのショーシェー達が碌に働きもせずにのうのうと贅の限りを尽くす
労働中毒のエイブラムスはそう言ってパーティーの欠席を表明するのだが、翔はこうなるであろう事を既に予測していたらしく、彼らの昼食をいつもより豪華にしておいたのだそうな……
そうしている内に時は過ぎていき、パーティー開催の時刻がやって来る
パーティーに参加するメンバー達は、会場である食堂に向かう前に入渠施設の浴場で作業中にかいた汗を流した後に食堂の扉を開き、磯風達が訪問した時よりも数段グレードアップした料理が所狭しと並べられたテーブルを目にすると、思わず目を輝かせながら感嘆の声を上げ、それとほぼ同時に襲い掛かって来たそれはそれは美味しそうな料理達が放つ香しい匂いによって、一斉に腹の虫を鳴らす事となるのであった
そうして飢えに飢えたメンバー全員が席に着いたところで、翔の頼みで乾杯の音頭を取る事になった空が、戦治郎の要望で設置される事となったちょっとしたライブショーが開けそうな大きさのステージ(戦治郎の私物であるグランドピアノ有り)に立ち……
「本来は此処で皆に労いの言葉をかけたりするところなのだろう、実際俺もその為に色々と考えて来たのだが……、そんな事は最早どうでもいいっ!総員、思うがままに目の前の料理達を駆逐せよっ!!乾杯っ!!!」
\乾杯っ!!!/
此処に来るまでに考えていた挨拶などそっちのけで、空はこの様に言い放つとすぐさま手にしたグラスの中のビールを一気飲みし、グラスが空になるなりステージから跳躍して自分の席へと戻り、それを聞いたメンバーは空同様すぐさまグラスの中身を飲み干し、目を血走らせながら目の前の料理達を殲滅せんとばかりに、箸やフォーク、スプーンなどを手にして料理を食べ始めるのであった
「皆よっぽどお腹減ってたんだね……。まぁ相応に身体を動かしてたらお腹が減って来るのは道理だし、この反応は当然と言えば当然か」
その様子を見ていた翔はこの様な事を呟き……
「いや、その反応はおかしいやろ……」
「お腹が減っていたからと言って、ここまで過剰に反応する事なんてそう無いですからね……」
「これが神話生物さえも虜にしてしまうと言う、翔さんの料理の魔力なのでしょうか……?」
翔の呟きを耳にした龍驤、龍鳳、扶桑の3人は、苦笑を浮かべながらそれぞれこの様な事を口にするのであった……
それからしばらくして、誰もが何とか落ち着きを取り戻し、過去を振り返りながら談笑したり、ステージでカラオケ大会を開催したり、翔主催の利き酒を興じたりして参加者全員がパーティーを満喫していたその時、突然食堂の出入口の扉が吹き飛び、ステージ上にあった戦治郎のグランドピアノを破壊するのであった
その瞬間誰もが警戒心を露わにし、辺りに剣呑な雰囲気が漂い始めたところで、出入口の方から聞き慣れた声が聞こえて来るのであった
「タイショーッ!!大変ディシュッ!!面倒臭ぇモン見つけてしまったディシュッ!!!」
モリブデン・アーマーを装着したまま食堂に突っ込んで来たエイブラムスがそう叫んだ直後、無表情でこそあるが怒りの気配を纏った空が目にも留まらぬ速さで一気にエイブラムスの懐に潜り込み、必殺の光速正拳突きを繰り出してエイブラムスを豪快に吹き飛ばしてしまうのであった……