※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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制御の反動とメールの宛先

自主練の後、大和達に見守られながらイオッチを使って鬼帝ノ型を更に強化しつつ制御すると言う、かなり無茶な特訓を行っていた戦治郎であったが、大和が瑞鶴達に戦治郎の特訓の目的や内容について説明し終えてから、かれこれ20分くらいの時間が経過したタイミングで、突如としてバチバチとけたたましい音を立てながら戦治郎の身体から火花が飛び散り、直後にまるで糸が切れた操り人形の様に戦治郎が海上に倒れ込んでしまうのであった

 

「戦治郎さんっ!?」

「急にどうしたって言うのよっ?!」

 

突然の出来事に驚き、困惑する瑞鶴とアトランタはそう叫び、戦治郎の下へ急いで駆け付け、彼を助け起こそうとするのだが……

 

「うぇ……っ!?」

 

「何よこの大量の青痣は……っ!?」

 

戦治郎の姿を見るなりギョッとし、表情を引き攣らせながら困惑の声を上げるのであった

 

そう、今の戦治郎の身体には、至る所にドス黒い青痣が出来ているのである……

 

「それは鬼帝ノ型を無理矢理制御しようとした反動……、謂わば代償の様な物ですね……」

 

戦治郎の身に何が起こったか分からず、駆け付けた2人が混乱していると、相変わらずその表情を曇らせた大和が、ゆっくりとした足取りで倒れ伏せた戦治郎の下へと歩み寄り、瑞鶴達の方へ顔を向ける事無くそう言いながら戦治郎を抱き起こすのであった

 

そんな大和の言葉の意味がイマイチ分からず、瑞鶴達が事の詳細について大和に尋ねようとしたその時……

 

「ふぃ~……、昨日よりも活動時間が伸びたンゴ。もうちょっと回数を重ねれば、恐らく合同演習中に活動限界に達する事は無くなりそうンゴ」

 

戦治郎の角と化して彼を操作していたイオッチが、一仕事終えたとばかりにこの様な言葉を口にし、それによってイオッチの存在を思い出した瑞鶴達は、その矛先を暗い表情を浮かべたままの大和から、己の額の汗を拭いながら戦治郎の腰にいつも取り付けられている格納ボックスの上で一休みするイオッチの方に向けるのであった

 

そうしてイオッチから情報を引き出す事に成功した瑞鶴達だったが、その内容の凄惨さに思わず絶句し、2人は自主練で使用している浜辺に戦治郎を横たえるまでの間、顔色を青ざめさせながら俯いて黙り込んでしまうのであった……

 

イオッチの話によると、戦治郎の身体中にある青痣は、イオッチが戦治郎の身体に送り込んでいた電気と魔力が原因で出来たものであるのだそうな……

 

詳細を掘り下げると、戦治郎が鬼帝ノ型を発動させれば攻撃力や射程だけでなく、戦治郎の身体もそれに合わせて頑丈になる訳だが、イオッチは暴走した戦治郎を制御する際に使用する電気と魔力の量を、強化された戦治郎の身体に合わせたものにしており、鬼帝ノ型が活動限界を迎えた直後、その効果は配電盤のブレーカーを落とした様に、急にストンと消失してしまうのである

 

そうなると戦治郎の身体を構成する細胞達は、今まで送られていた電気と魔力に耐えられなくなってしまい、空気を入れ過ぎた風船の様に次々と破裂していくのだとか……

 

先程戦治郎の身体から発された火花の正体は、これにより空気中に放出された戦治郎の細胞内にあった電気が引き起こしたものであり、戦治郎の身体中にある青痣も、筋細胞の破裂が著しい箇所が肉離れを起こした様な状態になり、内出血を起こして青痣になっていると言う事だったのである

 

そして今現在戦治郎が気絶している原因は、それによって発生した激痛から戦治郎の精神を守る為に、脳が戦治郎の意識を強制シャットダウンしたからなのである……

 

「今はこんな状態になってるけど、最初は本当に酷かったンゴ。何せ全身くまなく内出血を引き起こしてて、見るに堪えない姿になってたンゴ」

 

「あれは本当に酷かったですね……、提督のあの姿を見た時、大和も卒倒してしまうところでした……」

 

「しっかし、転生個体の皮膚って奴は思った以上に凄いンゴ。普通あんな事したら皮膚も裂けて出血、最悪失血死も有り得たかもしれないのに、よくもまああの電圧に耐えたものンゴ」

 

「そんな恐ろしい事を言わないで下さいっ!!もしそんな事になったら、大和は……、大和は……っ!」

 

「まああの回復力が備わっているなら、そうなる可能性は低くなると思うンゴ。一晩寝ただけで筋肉痛こそ残ったものの、全身の青痣が全部綺麗サッパリ消えるとか、上位の深海棲艦でも普通有り得ない事ンゴ」

 

イオッチの話を聞いて黙り込んでしまった瑞鶴達を余所に、イオッチと大和は初めてこの特訓を行った時の事を思い出してこの様なやり取りを交わし、イオッチは転生個体の脅威性を改めて再認識し、大和は大和にとって最悪の光景を想像してしまったのか、ポロポロと涙を流し始めるのであった

 

そんな事を話している間に大和達は無事に浜辺に到着し、気を失った戦治郎を砂浜に横たえ、戦治郎の意識が戻るのをその場に座り込んで待つ事にするのであった

 

この時、この場にいる誰もが……、生きる超高性能レーダーとも言えるあのイオッチですら、先程の話や戦治郎の容態、特訓の内容の改良案などに気を取られ、自分達の下へ近付いて来る影の存在に気付く事が出来ないでいた……

 

「……ねえ、何で戦治郎はここまで無茶な事をしてまでイタリアの総司令に勝とうとしてるの……?一応戦治郎からある程度話は聞いてはいるけど……、セクハラに対しての謝罪をさせる為だけにここまでやるって、流石におかしくない……?」

 

それからしばらくして、不意に戦治郎達との付き合いが短いアトランタが、自身の中に湧き上がった疑問を口にし、それに対しての答えを持つ大和やイオッチが、その疑問の答えを口にしようとしたその時である

 

「その答えはそうだなぁ……、戦治郎がその戦いで負ける、若しくはそもそも戦闘を避ける様な選択肢を選んでいた場合、戦治郎だけでなく僕や燎、欧州の2人の面子を潰す事になるだけでなく、イタリア海軍の暴走を許す切っ掛けになりかねないからかな?」

 

不意に大和達の背後から何処かで聞いた事のある声が聞こえ、その声に即座に反応して大和達が振り返ってみれば……

 

「大和とアトランタは久しぶり、そして瑞鶴は直接会うのは初めましてかな?」

 

そこにはバッチリ変装を施したリチャードとその妻であるスウ、更には悟の3人の姿があり、大和達と目が合ったリチャードはニコリと微笑みながら挨拶をするのであった

 

因みにリチャードと瑞鶴の接点だが、戦治郎がリチャードと穏健派大連合に関する話をタブレット越しにしていたところに、新しい護のゲームを注文しに来た瑞鶴が居合わせる事になり、これも何かの縁と言う事でそれぞれ自己紹介を交わす事となったと言うものだったりする

 

「リチャードさんにスウさんじゃないですかっ!?どうして貴方達が此処にいるんですかっ?!」

 

ホノルルで訓練をしていた頃、ジョシュアからアメリカの艦娘誕生の報を受け、祝宴を挙げにわざわざ基地までやって来たリチャード夫妻と遭遇し、それ以来時々訓練を手伝ってもらっていた事があるアトランタが、驚きのあまり目を白黒させながらそう叫ぶと

 

「戦治郎から江田校祭の招待状を貰ったんだよ、まあ本命はそれに添えられてたイタリア海軍の件なんだけどね」

 

「イタリア海軍が秘密裏に外なる神の助力を得ているというのは、穏健派大連合としてはとても看過出来ない事ですからね。イタリア海軍がその力に溺れ、進べき道を間違えない様にする為にも、私達は今回の合同演習で彼らの事を見定め、味方に引き入れる事が出来る様ならば穏健派大連合への加入を勧め、そうでない場合は彼らの暴走を阻止する為に、今の内に釘を刺しておく必要がありますから」

 

「その為にもよぉ、この莫迦にはちょいとばっかし頑張ってもらわなきゃなんねぇんだよなぁ。相手のアタマは元々ヤクザモンだって話だかんなぁ、そんな奴が自分よか弱ぇ奴に素直に従うとは思えねぇからよぉ、戦治郎には穏健派大連合の代表として、そいつに力って奴を示してもらわなきゃいけねぇんだよなぁ」

 

「ちょっと待って、最後のアンタは一体何者よ?」

 

リチャード、スウ、悟の3人が、アトランタの疑問に対する答えをそれぞれの言葉で口にするのだが、悟と全く面識が無いアトランタは、悟が話した直後に反射的に悟の正体について尋ね、アトランタ同様悟と会った事が無かった瑞鶴も、内心でアトランタの質問に同意し、彼の返答を静かに待つのであった

 

尚、その返答は悟の代わりに大和が答え、このやたら口の悪い潜水棲姫が戦治郎の仲間で、難病指定されていた鈴谷の病気を即座に完治させた凄腕の医者であると聞いたアトランタと瑞鶴は、腑に落ちないと言った様子で怪訝そうな表情を浮かべるのであった

 

尤も、その疑念もその直後に行われた戦治郎の治療により、一瞬で吹き飛んでしまうのだが……

 

大和が悟の事を紹介し終えた後

 

「そういえば、リチャードさん達は如何してこんなに早く日本に来たのですか?江田校祭までまだ少し日数があったはずなのですが……?」

 

戦治郎から前もって話を聞いていた大和が、ふと思い出した様にリチャード達の来日が予定よりも早かった事について尋ねると……

 

「それに答えるより先によぉ、やるべき事があんだろうがよぉ」

 

話に割って入る様に悟がこの様な言葉を口にしながら、浜辺に横たわった戦治郎の下へとゆっくりと歩み寄り、彼の額付近に手をかざし、翠緑を発動して特訓のせいで青痣だらけとなった戦治郎の治療を開始する

 

そうして戦治郎の身体を淡い緑色の光が優しく包み込み、その直後に戦治郎の身体の至る所にあった青痣がすぐさま消えていくと言う光景を目の当たりにしたアトランタと瑞鶴は、目を丸くして驚きつつも、悟が戦治郎の仲間である事と凄腕の医者である事に、内心で納得するのであった

 

それから間もなくして、戦治郎の身体から青痣が綺麗サッパリ消失し、役目を終えた緑光が霧散する様に消えてしまったところで……

 

「ホwおごぉっ!?」

 

完全回復した戦治郎が意識を取り戻し、何かを叫びながら勢いよく上半身を起こそうとしたところで、悟がそれを待っていたとばかりに戦治郎の額付近にかざしていた手を強く握り込み、固い拳骨を作ってその場で待機していると、戦治郎の額が悟の拳に吸い寄せられる様に迫っていき、やがて悟の拳は戦治郎の額に直撃、戦治郎はその痛みに悲鳴を上げながらもんどり打ってしまうのであった

 

「よぉ寝坊助ぇ」

 

「アイエエエ!サトル!?サトルナンデ?!」

 

額に拳骨をもらって悶える戦治郎に向かって、戦治郎の額が思った以上に硬かったからなのか、拳を握っていた手をプラプラさせながら悟が呼び掛けると、戦治郎は驚きの表情を見せながら、奇妙な言葉遣いで悟が如何して此処にいるのかについて尋ねるのであった

 

「おめぇが呼んだんだろうがよぉ、合同演習の時によぉ、何かの手違いで観客を自分達の戦いに巻き込んじまった時の為の保険としてなぁ」

 

「いや、おめぇの事だから江田校祭の2日前くらいに広島入りして、1日使って救急関係の準備進めておいてから当日に臨むって思ってたからよぉ」

 

悟が戦治郎が予想していたよりも早く広島入りした事に関して、2人がこの様なやり取りを交わしていると……

 

「済まない戦治郎、悟は僕達の頼みを聞いて僕達の日程に合わせてくれたんだよ」

 

「リチャードさん達ももう来ちゃったのぉっ!?ちょっち皆来るの早過ぎんよぉ……」

 

そのやり取りを聞いていたリチャードが、申し訳なさそうな表情を浮かべながらこの様かことを言い、それによってリチャードと彼の傍に立つスウの存在に気付いた戦治郎は、予定よりも早いリチャード達の広島入りに驚いた後、困った様な表情を浮かべながら腕を組み、何かを考え始めるのであった

 

そんな戦治郎の様子を見て、瑞鶴が戦治郎が何について考えているのか尋ねると……

 

「いやな、江田校祭までまだ日にちあんだろ?だからそれまでの間リチャードさん達にどうやって時間を潰してもらおうかって……」

 

「あぁ、それなら全然問題無いよ」

 

戦治郎は考え込む仕草のままこの様に答え、その答えを聞いて瑞鶴が納得した直後、話を聞いていたリチャードがこの様な言葉を口にする

 

話を聞いてみると、如何やらリチャード達は江田校祭が開催されるまでの間、少し前に仕事の関係で広島に来た事がある悟を案内役として、広島観光をするつもりでいるのだそうな……

 

「本当は僕も悟同様、開催日の少し前に来るつもりだったんだけど……」

 

「大連合が発足してからあまり休みを取っていないリチャードを休ませる為に、この機会を利用して広島観光をしようと私が提案したんですよ。まあ最初はかなりゴネていましたけどね……」

 

「こいつら横須賀に輸送船でやって来たかと思えばよぉ、俺の部屋に押しかけて来て広島観光の案内役を頼んで来やがったんよぉ。まあ医者としての観点からスウさんの言い分の方が正しいと判断し、リチャードさんがしっかり休める様監視するついでに案内役を引き受けた感じなんだよなぁ」

 

広島観光をする事になった経緯について、リチャードは苦笑しながら、スウは広島観光を提案した時の様子を思い出したのか、リチャードの方へと顔を向け、少々ムッとしながら言葉を続け、2人の広島観光に巻き込まれた悟はなんと表現したらいいのか分からない様な、何とも微妙な表情を浮かべながらやれやれと首を横に振りつつ、この様な言葉を口にするのであった

 

因みに先程話に出た輸送船の中には、リチャード達がトラブルに巻き込まれた時に備えて、リチャードのパワードスーツであるメタルウルフが格納されており、リチャードから要請があればすぐさま輸送船からメタルウルフを射出、迅速にリチャードの下へスーツを届けられる様にしてあるのだとか……

 

その後、戦治郎への挨拶を終えたリチャード達は予約しているホテルに向かう為にこの場を後にし、それを見送った戦治郎は……

 

「よっし!悟のおかげで体力全快になったし、もっかい鬼帝ノ型制御の特訓やるかっ!!」

 

何を血迷ったのかこの様な事をほざき、あの様な姿を1日に何回も見せられるのは堪らないと言う大和達によって追い特訓は全力で阻止されてしまい、結果この日の特訓はここで切り上げる事になり、なるべく早く鬼帝ノ型の制御をモノにしたいと思う戦治郎は、渋々部屋に戻って寝る事になってしまうのであった……

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