※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

651 / 655
単身赴任中の独身サラリーマンの如く

「『会場内で深海棲艦の気配を感知、警戒されたし』かぁ……」

 

大和達の猛反発により、瑞鶴達空母とイク達潜水艦の出し物を見に行けなくなってしまった戦治郎は、瑞鳳達軽空母の出し物である解説付きピタゴラスイッチを見に行く道中でリチャードが送ったメッセージに気付くなり、大和達に断りを入れてトイレに向かい、便器に座りながらスマホを操作してその内容を確認し、溜息をつきながらこの様に呟くのであった

 

「歴戦の猛者であるリチャードさんが言うんだから、深海棲艦が江田校祭に侵入してるのはほぼ間違いねぇだろうが……、そいつらは一体何処から来たんだ?って話になんだよなぁ……」

 

自分達が小弁天島に行った時や、剛達からブラック泊地を襲撃した後の帰り道に、深海棲艦に全く襲われなかったと言う報告をされた事を思い出した戦治郎は、そう言いながら渋い表情を浮かべるのであった

 

「まあ奴らがどっから来たかはこの際置いておいて、まずはこの事を鹿島や他の教官達にも……っ!?」

 

取り敢えずその深海棲艦による被害が出る前に、この事を警備担当者や教官達に伝え、事態に備えなければと思ったその直後、戦治郎に電流が走る……っ!

 

「そうか……っ!これを上手く使えば……っ!!」

 

そう呟いた戦治郎は、どこか邪悪な笑みを浮かべながら、先程の閃きを実行する為の作戦を立てる為に、思考をフル回転させ始めるのであった……

 

 

 

 

 

「瑞鳳さん達のところの出し物は、本当に素晴らしいものでしたねっ!」

 

「ギミックも凄かったけど、要所要所で行われる解説も、小さな子供でも分かるくらいに分かり易かったね。あれは艦載機について熟知していないと出来ないレベルのものだよ」

 

「あの解説の内容は、整備科のテキストにしてもいいレベルのものでしたね」

 

「ありゃその気になりゃ航空力学の研究博士になれただろう瑞鳳がいなけりゃ、絶対成立してなかっただろうなぁ……」

 

何かを閃いた戦治郎は、大和達と合流した後約束通り軽空母の出し物の会場に向かい、軽空母の出し物を満喫すると各々に感想を口にしながら次の目的地、磯風達の屋台へと向かっていたのであった

 

そんな彼らが絶賛する軽空母の出し物だが、未だに興奮が冷めやらぬ大和が言う様に、それはもう素晴らしいクオリティーとなっており、これに関しては厳しめの評価を下しがちな戦治郎も絶賛していた

 

その内容に少し触れると、出し物の会場である軽空母の教室にグループ単位で入場した後、係員である軽空母の艦娘候補生から真っ直ぐ飛びやすくする為に重りが付いた紙飛行機がグループの内の1人に手渡され、それを展示物の傍にある的に向かって投げる様に指示が出され、それに従って紙飛行機を的に当てるとギミックが作動する様になっており、ギミックが作動すると燃料をイメージした色をしたボールが航空機を模したコースの中を飛んだり跳ねたりしながら動き回り、それがやがてエンジンに到達するとエンジンの先に付いたプロペラが回転し始め、それがある一定の回転数に到達すると今度はプロペラの中央部分からキャノピー部分が磁石になっている流星の模型が飛び出し、それがプロペラの前に設置された底面が磁石になったロープウェイの様な装置に吸いつけられると、プロペラによって発生した風に乗って移動を開始、そしてそれが駆逐イ級を模した模型の傍まで来ると、紐のたるみと自重を利用して急降下、機体下部のボールを切り離してイ級の模型にぶつけて終了といった感じになっていたのであった

 

これだけ聞くと簡単な工作で作られた玩具の様に感じるところだろうが、見る者が見れば思わず感嘆の声を上げてしまうほどの、随所に緻密な計算が行われたそれはそれは素晴らしい出来となっていたのである

 

そしてそれのクオリティーを底上げしていたのが、要所要所で挟まれる瑞鳳が書き上げたと思われる、専門用語を徹底的に噛み砕いてどこまでも分かり易くした解説であった

 

その解説の内容は艦載機やエンジンの構造だけでなく、艦載機の種類やその役割、そして攻撃方法についても触れられており、艦載機に疎い人間でも聞いているだけで、艦載機に関してかなりの知識を得られるものとなっていたのであった

 

さて、そんな出し物を満喫した戦治郎達が次に向かうのは、食べ物を取り扱う駆逐の屋台となるのだが……

 

「大和……、ちょっちいいか?」

 

「提督?そんな神妙な顔をして一体如何なさったのですか?」

 

不意に戦治郎が大和を呼び止め、呼び止められた大和は不思議そうな表情を浮かべながら戦治郎の方へと向き直り、何があったのか戦治郎に尋ねるのであった

 

そして戦治郎がさっきトイレで確認したメッセージの事を大和に伝えると、大和は一瞬だけ驚いた表情を見せた後、真剣な表情を浮かべながら戦治郎の言葉に耳を傾け始めるのであった

 

「もし潜入した深海棲艦が何かアクションを起こしちまえば、会場内は大パニックに陥っちまう。それを防ぐ為にも大和、おめぇはスウさんと一緒に鹿島達にこの事を伝えに行ってくれ。俺はリチャードさんと一緒に俺達の事情を知ってる艦娘候補生達のとこ行って、もしもの時に備えて避難誘導を手伝って欲しいって頼みに行って来る」

 

「分かりました。しかしその組み合わせの意図は……?2組に分かれるよりも、4人でそれぞれ呼び掛けに行った方が……」

 

「殆どの教官達や候補生達と面識のねぇリチャードさんやスウさんが、唐突にそんな事言い出しても簡単には信じてもらえねぇだろうが。俺達の名前を出したところで半信半疑になるのが関の山ってとこだから、2人が俺達の知り合いって事伝える意味合いも込めて、2組に分かれようって考えたんだよ」

 

このやり取りの後、組み分けの理由に納得した大和は、言われた通りスウを連れて入場門の方へと駆け出し……

 

「……行ったな」

 

「……行ったね」

 

大和達の姿が見えなくなった事を確認した戦治郎がそう呟くと、戦治郎同様スウ達の背中を見送っていたリチャードがこの様に返事をし……

 

「作戦成功っ!」

 

「これで潜水艦のシンクロにも、空母のメイド喫茶にも行けるねっ!」

 

2人はハイタッチを交わしながらこの様なやり取りを交わすのであった

 

そう、戦治郎がトイレで思いついた事と言うのは、この状況を利用して大和達の目を掻い潜り、先程断りを入れた2つの出し物を見に行こうと言うものだったのである

 

「スウ達が僕達にこの2つの出し物のところに行かせようとしなかった理由は分かる、分かるんだけど……」

 

「濡れて身体にピッタリ貼り付いたスク水に、可愛らしいメイドさん達との触れ合いとか、男が興味持たねぇ訳がねぇだろうがよぃ!!俺達の事想ってくれてる2人には悪ぃが、俺達は行かせてもらうぜぇっ!!!」

 

「一応瑞鶴もイクも、僕達の事情を知る候補生だからね。言い訳についてもバッチリだね!」

 

戦治郎達はそう言うと、疾走する本能の赴くままに走り出すのであった……

 

尚……

 

「想い人が他の女にデレデレしちょるところを見とぉない女達に、女の魅力に抗えん悲しい男達ってところじゃのう……。まあどっちの言い分も分かるんじゃが……、男達の方からは単身赴任先で風俗に行くサラリーマンの様な雰囲気が漂っちょるわ……。取り敢えずこの件は後々面倒な事になりかねんから、わしの胸中にしまっておくかのう」

 

戦治郎とリチャードのやり取りは、迷子捜索の為に艦載機を飛ばしていた日進にバッチリ知られる事となったのだが、夫婦喧嘩に巻き込まれては敵わないと言う事で、日進は呆れた様子で溜息を吐きながら、この件を大和達に報告しないでおく事にするのであった

 

因みにこれからしばらくしてから大和達が日進の下へやって来て、深海棲艦の侵入の件を伝えると共に戦治郎達の監視を依頼して来るのだが、日進は先程自身が言った様に厄介事に巻き込まれるのは勘弁して欲しいところだったので、表面上では監視の件を了承するのだが、実際にはまともに監視はせずに報告も適当に済ませた模様

 

また、大和達と日進のやり取りの裏では、無事に保護されて水母達が待機する詰め所に連れて来られた戦艦棲姫に対して、彼女の部下達がステレオサウンドで説教していたりする

 

 

 

それはそうとして、大和達と別れた戦治郎達がまず向かった場所は……

 

「おかえりなさいm……、ってえ"ぇ"っ!?」

 

「ご主人様が帰って来たっつぅのに、何だその反応はぁ?こちとらあんま時間ねぇのに列に並ばされて、それで結構時間食ってるんぞ?おぉん?」

 

「お邪魔させてもらうよ瑞鶴さん。いや~、話では聞いた事があるんだけど、実際にこういうお店行くのは初めてだから凄く楽しみだな~♪」

 

瑞鶴がいると言う、空母科の教室で開催されているメイド喫茶であった

 

そして接客の為にやって来た白いニーソックスにミニスカのメイド服を身に纏った瑞鶴が、2人の顔を見るなりあからさまに引き攣った表情を浮かべ、それを見た戦治郎は瑞鶴をからかう様に眉間にしわを寄せながら詰め寄り、リチャードは始めて来るメイド喫茶に胸をときめかせていたのであった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。