※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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空母のメイド喫茶

侵入者の件を瑞鶴に伝えると言う大義名分を手に入れ、心を躍らせながらメイド喫茶に向かった戦治郎達は、接客の為にやって来たミニスカメイドな瑞鶴に席に案内されるのであったが……

 

「さっき来れないって言ってたのに……」

 

「もしかして迷惑だったかな?」

 

戦治郎達の案内をする瑞鶴は、不機嫌そうな表情を浮かべながらぼやき、それを聞いたリチャードは少々申し訳なさそうな表情を浮かべる

 

「おいおい、お客様に向かって何て事を……。って言いてぇところだが、この状況見たらおめぇがぼやきたくなる気持ちも分かるわ……」

 

「あぁ、そう言われると確かに……。僕はてっきりメイドさん姿を僕達に見られたくないのかと……」

 

その直後、2人の話に割って入る様にして戦治郎がこの様な事を口にすると、リチャードはどこか納得した様な表情を浮かべながらこの様な事を呟き

 

「その気持ちを分かってくれるんだったら、途中で引き返してくれても良かったんだけど……」

 

「そう言う訳にはいかんのよなぁ……」

 

戦治郎の言葉を受けた瑞鶴は、深い溜息を吐きながらこの様な返事をし、それに対して戦治郎は苦笑しながらこの様に返答するのであった

 

瑞鶴が通信の際に安堵の息を吐いていた事、そして現在不機嫌そうな表情を浮かべながらぼやいている理由……、それはメイド喫茶の来場客の数が原因なのであった

 

以前自主練中に江田校祭の出し物の話になった際、瑞鶴がゲンナリしながら話していたと思うが、空母艦娘候補生達は持ち前の艦載機運用の知識を応用し、利益や集客などに関する戦略を綿密に話し合って立てて江田校祭に参加しているのである

 

実際、彼女達は江田校祭の会場内の至る所で宣伝を行っていたり、来場客の目に付き易い場所に的確に宣伝ポスターを貼っているのである

 

そんな彼女達の頑張りもあってか、男女問わず来場客の誰もが彼女達のメイド喫茶に関心を持ち、どこの出し物よりも大量の来場客を呼び込む事に成功していたのであった

 

それに更に拍車を掛けたのが、インターネットが発達した今では当たり前のように存在するSNSである

 

と言っても、艦娘候補生達から外部に向けてSNSで宣伝する事は、外部への情報漏洩が発生する可能性もある為禁止されているので、彼女達がSNSに専用アカウントを作ってそこで宣伝したと言う事は一切ない

 

では彼女達は一体どうやってSNSを使って宣伝を行ったのだろうか?

 

彼女達は誠心誠意、真心を込めて接客を行い、来場客に出す料理にも一切の妥協をせず、江田校祭の中でも最高品質のサービスを来場客に提供し、来場客に思わずSNSで感想を呟きたくなる様な状況を作り出し、それが拡散される事で江田校祭に来ていない人達まで呼び込む事に成功し、凄まじい数の来場客数を手に入れたのである。彼女達の狙い通りに……

 

ここまで話を聞いて、そんな規模の客を1店舗だけで捌き切れるのか?と言う疑問が湧くところだろう……

 

それに関しては彼女達もしっかり把握しており、彼女達は教室で出し物を行わない艦種の教室までもを使い、瑞鶴が所属するミニスカメイドの他にロングスカートのメイド、和風メイドにチャイナ風、スチームパンク風にSFチック、セーラー服っぽいものからゴスロリ要素強めのもの、更には猫耳や小悪魔風といった具合に、多種多様なメイド喫茶を展開する事で来場客を分散させ、スタッフ1人当たりの負担を軽減させつつ、多くの来場客を捌き切りながら自分達の出し物を楽しめるようにしているのである

 

因みにスタッフの人数だが、戦艦科と空母科の割合は艦娘候補生全体からみると少ない方に入るのだが、そもそも母数が桁違いに大きい為、榛名のいじめの件で人数が減った戦艦科は兎も角、ほぼほぼ人が減っていない空母科に関しては、提督科と整備科の合計人数を軽く上回る数の艦娘候補生がいる為、宣伝担当も含めて問題無く人員は確保出来ている模様

 

ただまあ、この様な手法でスタッフ1人あたりの負担は軽減されているものの、客が次々に入れ代わり立ち代わりやって来るとなれば、どうしても疲れと言うものは溜まって来るのである

 

とどのつまり、戦治郎達が来れないと言った時に瑞鶴が安堵の息をついていたのは、たった2人とは言え来場客が減った事で、それに伴って自分達にかかる負担が減った事に安堵したからなのである

 

まあ、それも侵入者のせいでぬか喜びに終わってしまったのだが……

 

それはそうとして、瑞鶴の案内で席に通された戦治郎達は、席に座るとすぐさまメニューを開き……

 

「注文が決まったら呼ぶわ、あぁ、そん時は出来りゃぁまたおめぇさんが来てくれ。それと俺達の相手する時はいつも通りの調子で頼むわ、おめぇさんからご主人様とか言われるのは違和感しか感じねぇからな」

 

「何よそれ……、まあこっちとしては助かるっちゃ助かるけど……」

 

「えぇ……?僕はご主人様呼びしてもらいたかったんだけど……」

 

「シャラップシャラップ黙らっしゃい!」

 

メニューの内容を確認しながら瑞鶴に向かってこの様な事を言い、それを受けて瑞鶴は怪訝そうな表情を浮かべながら戦治郎の言葉に従い彼らの席から離れ、そんな彼女を見送ったリチャードが不平を漏らすと、戦治郎はテーブルにあった紙ナプキンに何かを書きながらこの様に返事をするのであった

 

それからしばらくして、戦治郎は紙ナプキンにペンを走らせる手を止め……

 

「内容はこんなモンでいいだろ。んでリチャードさん、初めてメイド喫茶に来た感想は?」

 

「メイドさんは皆可愛いし、中々楽しそうな場所だね。まあ状況が状況だからあまり長居出来なくて接客を受けられない事が残念だね……。尤も、それ以上に残念な点があるんだけどね……」

 

「本格的な接客に関しては、後日本物のメイド喫茶で改めて楽しませてもらうとして……、リチャードさんが言う残念な点については、放置すると瑞鶴達の出し物に支障が出るかもしれんので、どうにかしてやりたいところですね……」

 

リチャードにメイド喫茶に来た感想を尋ねたところ、リチャードは最初こそ笑顔を浮かべながらその問いに答えていたのだが、後半からは心底残念そうにその表情を曇らせ、額に手を当てながらやれやれとばかりに左右に首を振り、それを受けた戦治郎はリチャードから視線を外し、彼の後方にある席に座る集団に視線を向けるのであった

 

そんな戦治郎の視線の先には、どう見てもこの場にはそぐわない様な、やけにチャラついた恰好をした野郎共が、メイドさんや周囲の客の不満げな視線など一切気にも留めず、この間引っかけた女と朝までヤっただの、最近調子に乗ってるチンピラを〆てやっただのと、明らかにこの場に相応しくない様な話題で盛り上がり、下品な笑い声を辺りに撒き散らしていたのであった

 

「まあSNS使って集客すれば、どうしてもこの様な連中も釣れちまいますから、仕方ない部分もあるっちゃありますが……」

 

「あのタイプの相手なら、対処法が明確でまだやり易いところがあるんだけど……」

 

ヤンキー共に気付かれない様に注意しながら、戦治郎が彼らに向かって鋭い視線を向けながらこの様な事を口にすると、リチャードはこの様に返答するのだったが、その視線は戦治郎の方へは向いておらず、彼の後方にあるパーテーションで仕切られた即席の厨房の近くにある席の方へと向けられていたのであった

 

その席には戦治郎が警戒しているヤンキーとは真逆のタイプの、如何にもオタクといった風貌の男が1人、どこか落ち着かない様子で辺りをキョロキョロと見回しながら、手元にあるすっかり冷めきっているであろう1杯のコーヒーを、とても大事そうにチビチビと飲んでいたのであった

 

その様子だけを見れば、所謂コミュ障オタクがありったけの勇気を振り絞ってこの場にやって来て、挙動不審になりながらもこの出し物を楽しんでいる様に見えるかもしれないのだが、ある物の存在のせいでその挙動をリチャードに不審に思われたのである

 

そのある物と言うのが、1人で来ているのだから開いている椅子などがあるにも関わらず、何故か床に置かれた中途半端にファスナーが開いている、彼の所有物だと思わしき鞄なのであった

 

「このタイプに関しては、逃げられる前に物的証拠を確実に押さえる必要があるから、ちょっとばっかり面倒なんだよね……」

 

「逃げた先でデータをバックアップ用のSDカードやらスマホ経由でクラウドやらに保存して、本体側のデータは綺麗サッパリ削除して言い逃れしようとしてるかもしれないですね……。それをされる前に身柄の確保……、確かにちょっち面倒ですねぇ……」

 

「そんな厄介事が現在同時に2件発生してる訳なんだけど……、戦治郎はどうするつもりだい?」

 

「さっき言ったばっかじゃないですか、どうにかしてやりたいって。まあその前にこれを瑞鶴に渡さないといけないんですけどね」

 

このやり取りの後、彼らはどちらがどちらを仕留めるかについて話し合い、作戦が決定したところで瑞鶴を呼び出し、この後に駆逐の屋台に行く事を考慮して戦治郎はラテアートが可能なカフェラテを、リチャードはアメリカンコーヒーをそれぞれ1杯ずつ注文し、更に先程戦治郎が何かを書いていた紙ナプキンを彼女に手渡すのであった

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