戦治郎と通がそれぞれドイツとイギリスに潜入するときまで時間は遡る
まさか本当にイギリスに潜入する事になるとは思いもしませんでした……
確かに捜査一課にいるときに先祖が遺した風魔の技術を使って捜査や容疑者の確保をやってはいましたけど……
まあ潜入関係の記述は非常に多く遺してあったので恐らく何とかなる事でしょう
問題はどの情報をどのくらい持ち帰るかなのですが……、私がそんな事を考えながら海上を進んでいると遠くから砲撃音が聞こえてきました
もしかして誰かが深海棲艦と戦っているのでしょうか?もしそうだったら好機かもしれません。その戦いを見る事が出来れば今戦っているのが何処の艦隊でどの艦娘がいるかを確認出来るかもしれませんからね
考えがまとまった私は早速その戦闘が行われているであろう場所へと足を運ぶのでした
これは酷い……、私が向かった先で行われていた戦闘を見た時に最初に出た言葉がこれでした……
深海棲艦の編成は旗艦と思わしきヘ級が1匹で他は駆逐艦が5匹、それと戦っているのは国こそ分かりませんがミサイル駆逐艦らしき艦艇が2隻だけ、他は今正に沈んでいる最中と言わんばかりに艦首のみが海面から出ている艦がチラホラと見受けられます
しかしながら艦娘の姿はまだ見ていません、もしかしてまだ艦娘が配備されていないのでしょうか……?
そんな事を考えていたらまた1隻沈んでしまいました……、ミサイル駆逐艦も攻撃はしているようですが深海棲艦には全く効いてないようですね……
今の私の姿は軽巡棲姫、不用意に近づけば双方から攻撃されかねません。だからと言ってこれを見て見ぬ振りするとミサイル駆逐艦は一方的に攻撃されて沈んでしまう、そうなると寝覚めが悪くなってしまいますからね、私はミサイル駆逐艦に助太刀する事にしました
海の中に身を隠してミサイル駆逐艦に接近すると、どうやら脱出の準備をしているのか救命ボート格納庫のシャッターが開きその中に多くの人が集まっていました
その中にこの場所にいるのがおかしく思えるほど美しいドレスで着飾った女性とその従者と思わしき女性の姿が見えましたが……、彼女達の姿……何処かで見たような気が……
そんな事を考えていると深海棲艦の砲撃が当たったのか激しい爆発音が辺りに響き、船体が大きく揺れる、するとドレスの女性がバランスを崩したのか押し出されたのか分かりませんが転落して格納庫から投げ出されてしまいました
このまま海に落ちてしまえば大怪我をする可能性がある、そう思うよりも早く私の身体は動き出していました
海上へ飛び出し海面を駆け、女性が落下するだろうポイントに近付いたところで跳躍して空中で彼女を抱き留める。そして空中で体の向きを無理矢理変えて船体に蹴りを叩き込み凹みを作り、それを足掛かりにして壁を垂直に駆け上っていく。人間やろうと思えばこういう事も出来るのですね……
「姫様っ!姫様ぁぁぁっ!!!」
「落ち着け!落っこちた姫様は後で回収するから早くお前もボートに乗り込めっ!」
壁を上っていくと従者の方の叫び声と従者の方を何とかボートに乗せようとする男性の声が段々と近付いてきました、もうそろそろゴールのようですねっとそう言えばこちらの女性が妙に静かですが大丈夫なのでしょうか……?
私が抱き上げている姫様と呼ばれている女性の顔を見てみれば、一体何が起こっているのか分からず呆然としていました。まあそうなるのも詮無き事……唐突に現れた深海棲艦が自分を抱き留めて壁を垂直に駆け上ってたらそうなってしまいますよね……
そしてこの姫様の顔を近くで見てから気が付きましたよ……、この人ウォースパイトそっくりなんです……。従者の方はアークロイヤル……
姫様の方は兎も角、従者の方が艤装を装着しないところを見る限りこれは艦娘が配備されていない可能性が高くなってきましたね……、っとそんな事を考えていたら壁を上り終えて勢い余って飛び上がってしまいました。取り敢えず縁の方に爪先が置けそうだったので姫様を抱き上げたまま爪先だけで身体を支えるように着地します
「姫様っ!ご無事ですかっ!?」
アークロイヤル似の従者の方が姫様に尋ねるも、肝心の姫様はまだ呆然としたまま私の顔を見ていて従者の方の声は聞こえていなかったようです
「姫様とやらは無事ですよ、ですから貴女も早くボートに乗って下さい」
姫様を従者の方に渡しながら早く脱出の準備をするように促します、私が言葉を発したのに多少驚きながらも従者の方は救命ボートに乗り込んでくれました
「おい、あんた何もんだ?」
先程聞こえた声の主だと思われる男性から質問されますが、詳細は後で話すからと言ってその方にも早く救命ボートに乗るようにと促し、私は全員が救命ボートに乗り込んだのを確認した後救命ボートを抱えて海へ飛び出しました
「うおおおぉぉぉっ!!!」「きゃあああぁぁぁっ!!!」
沢山の悲鳴が聞こえますが知りません、それより貴方達の無事の方が大事ですからね
海上に降り立った後、ゆっくりとボートを降ろしたところで私はボートに背を向け走り出そうとしましたが、また先程の男性からさっきの質問に答えろと催促されたのですが
「その前にやっておきたい事があるんです、それが終わってからその質問に答えましょう。それまでの間しばらくお待ちください」
私はそう答えてから深海棲艦がいるであろう方角へと走り出しました
「あいつ……、ホント一体何もんなんだよ……?」
「……ニンジャ」
先程まで呆然としていた姫様が唐突に呟いたんだが……、ニンジャだって?
「あの人はきっと噂のニンジャなんだわっ!貴方達もさっきのを見ていたでしょう?壁を垂直に駆け上っていくの!この世の中であんな事が出来るのはニンジャくらいしかいないはずよっ!!!」
この姫様、身分を隠して日本に留学した事があるそうだがそこで変な知識を得たみたいで今ではスッカリ親日家になっているそうだ……、いやまあ俺も日本留学やったからどっちかっていやぁ親日家になるんだがいくら何でもそれはねぇわ……
「きっとあの人は謎の敵に悩まされている私達の事を知った日本政府が秘密裏で派遣してくれたエージェント、その最高峰にいるニンジャなのよっ!!!」
姫様がヒートアップしていく姿を見た従者の姉ちゃんが頭抱えだしたぞ……、そろそろ落ち着いて周りの状況見てもらえないもんかねぇ……
俺達が訓練している光景を見せてロイヤルネイビーの凄さとイギリス人としての誇りを思い出してもらう為に姫様を乗艦させろって上からのお達しが来たから乗せてたわけなんだが、こりゃ余計酷くなっちまうんじゃねぇか……?あぁ……、何か俺の方まで頭痛くなってきやがったぞ……。これは上にどう説明したらいいんだよ……
って、今更なんだがさっきのあいつが向かった方角って俺達の事襲ってきた奴らがいる方角じゃなかったか?まさかあいつ、たった1人であいつらとやり合おうとしてるとでも言うのかよっ!?全く冗談きついぜ……、あいつらは12隻もいたこっちの艦隊をあっという間に全滅させた化け物なんだぜ?それを腰に付けてた2本の鉄パイプだけで相手するつもりなのかよ……、いくら何でも無謀過ぎんだろうよ……
そう思っても援護しようにもこっちは武器もねぇし、部下や姫様もいるから下手に動くことも出来ねぇときてやがる……。くっそ!何とか出来ねぇのかよ!姫様を助けてくれたあいつに何かしてやれねぇのかよっ!?今の状況が歯がゆ過ぎて仕方がねぇぜ!
「さて、そろそろですかね……」
私はそう呟くなり腰に帯びた2本の鉄パイプを引き抜きながら奴らがいるであろう方角へと走ります、今使えるのはこの2本の鉄パイプと艤装くらいですか……、せめてもう少し何か使えそうなものが欲しいところですね……
そんな事を考えていたら相手の艦隊がよく見えるところまで接近していたようです。さてさて、貴方達には早いところ退場してもらってさっきの約束を果たすついでに情報を少しでもいいので集めようではないですか
「神代 通、参ります……っ!!!」
そう呟いた後、私は加速して敵の艦隊へ突撃していくのでした