こんなに多くの方にこの作品を見てもらえるとは想像もしてませんでした……
これに慢心する事なく頑張っていきたいと思います
牧場? 牛や豚、鶏なんかを飼育するあの牧場の事なのか? 確か第二次大戦のときに基地に擬装を施し牧場のようにしていた航空部隊があったとはいうが、その真似事か何かか?
漣が思考を巡らせているとき、鈴谷が戦治郎へと問う
「提督~……、牧場の事も気になるんだけどさ、鎮守府の敷地に入ってからずぅ~っと気になってたのがあってさ~……」
そう言って鈴谷はとある方角を指差す
そこには日本ではあまりお目にかかる事がない大きな機械群がゴウンゴウンと唸りを上げて作業をしている
「あれ、何?」
「あれか、ありゃ石油採掘施設だ」
「「「「はいぃっ!?!??!?!」」」」
「やっぱ驚くわな~……、俺も軍学校から戻ってきた時マジでビビったからなぁ~……」
待て待て待て石油採掘施設だとっ!? 何故日本にそんなものがあるんだ! もし日本で石油が掘れれば今頃大騒ぎになっているはずだ、一体どういう事なのだ!?
「石油って、ここ日本でしょ?! 何で石油が出てるのよっ!?」
瑞鶴が驚きの表情を隠す事なく戦治郎に問い詰める
「知らん、おめぇの姉ちゃんの旦那に聞け、やらかしたのはあいつだからな」
「提督、そんな、まだ結婚もしてないのに旦那だなんて……♪」
戦治郎が答え翔鶴が頬を赤く染めながら反応する、口の中がジャリジャリする
「あいつ、たまにわっけ分かんねぇ事を唐突にやったりすっからなぁ、これも確か偶然見つけた蟻の巣をショベルで掘り返してたら楽しくなってきてどこまで掘れるか挑戦しだしたらこうなったとか言ってやがったからなぁ……」
漣の中で空の問題児レベルが上がった! 嬉しくない、と言うか蟻の巣ほじくり返すとか子供かっ!? 貴方いくつですか?!
「偶々石油出てくる瞬間を目撃したシゲと護の話聞いてたら、漫画みてぇに噴き出す石油の上に無表情で乗っかってたとか何とか、どこのギャグ漫画だっての……」
その場面を想像したらすっごくシュール、そしてシゲと護って誰? まだ紹介されてない戦治郎の仲間かな? まぁた問題児が増えるのか……
「それだけならまだしも、あの採掘施設の奥の方に何故かボーキサイトの鉱脈もあるんだぜ? 発見者はシゲ……、ってそういやまだシゲと護を紹介してなかったな、あいつらいいタイミングで喫煙所行きやがったな、全く……」
おぉぅ……、どうやらシゲという人もまた問題児のようだ、勘弁していただきたい
「本人は修行の一環だ~とか言ってそこの山の岩肌ぶん殴って粉砕したら出てきたとか言ってやがったし、ああもう! あの馬鹿も馬鹿だが、この世界の九州地方の地質もカオス過ぎんだろう……、つぅか俺いねぇ時にそんな面白そうな事やんなよ……」
ああ~これまたツッコミどころ満載ですね~、山殴って粉砕するって何ですか?! どんな怪力の化け物なんですか!? 不用意に怒らせて殴られたりなんかしたらたまったもんじゃない! 会うのが恐ろしくなってきた……、皆さん顔が引きつってますよほらぁ……、というか騒ぎに参加出来なかった事悔しがってんじゃねぇですよ!って今サラッと言ってましたけどここ九州なんですか、道理で行くのに時間がかかったと思った……、とぉそういう問題じゃない、地質がカオスなんでしょうけどこの鎮守府もすっごくカオスなんですからねっ!!! ……ん? この世界? この世界ってどういう事だ? 他にも世界があるとでも言うのか? ええい、どうせ今聞こうとしても恐らくダメだろうから後回し!
「まあ、そのおかげでウチの鎮守府が燃料とボーキに困る心配は当分先の事になりそうなのが救いっちゃぁ救いか、そういうわけだから翔鶴も瑞鶴もそこら気にせず艦載機でガンガン攻めていっていいからな!」
「ごめんね提督さん、私今それどころじゃない……、頭の中を整理する時間頂戴……」
今までは自分以外があまり動揺してる感じがしていなかったので不公平さを感じていた漣だが、ここに来てようやく翔鶴以外が動揺しているところを見て安堵感が沸き上がる、しかし翔鶴が強過ぎる気がするがどうしてだろうか?練度が高いと多少の事では動揺しなくなるものなのだろうか
「そういや翔鶴よい、おめぇさんあんま驚いてないようだがここらの事知ってたか?」
まさかたった今自分が考えていた事を聞いてるぞこの人、GJですぞGJ
「それはその……、実は提督達が軍学校に行っている間に、その……、休暇を頂いて時々ここに遊びに来ていてあの……」
またも頬を染めモジモジしながら答える翔鶴、ああ、そういう事ですか……
「ああ~、空に案内してもらったわけか、鎮守府内デートってか、お熱いこって」
そう言って手で自身を扇ぐ戦治郎、いやこればかりは激しく同意しておきます
「デートだなんて、そんな……♪」
頬に手を当て身をくねらせる翔鶴、はいはいご馳走様
「さって、いつまでもここにいても鎮守府ツアー終わんねぇからさっさと先行くぞ~」
そう言って一同はまた歩き始める、目的地である牧場に向かって
「ほいっと、ここが我が鎮守府の食材の供給源、牧場でございま~すっとぉ」
戦治郎が指し示す方向にはいくつかの建物、かなりの範囲を柵がぐるりと囲んでいた、そして辺りに漂う動物臭さ、それがここが本当に牧場である事を実感させていた、とりあえずその中にある他の建物とは趣が違う一際大きな建物は見なかった事にする
「わぁ、皆さん見て下さい、牛さんや豚さんがあんなに沢山!」
放牧されているであろう動物達を見てはしゃぐ榛名、なんとも微笑ましい
「向こうに畑も見えますし、食べ物に困る事はなさそうですね~」
漣の視線の先には多くの野菜が植えてあると思われる広大な畑が広がっていた
「この鎮守府は俺も含めて食う奴が多いからな、なんでもかんでも買ってたら破産しかねんのよ、まあ、牧場やろうと言い出した奴には全く別の思惑もあったみたいだがなぁ……」
別の思惑? 牧場に食料の供給以外に何か役割があるというのか? 強いて言えば作った農作物などを売りに出して資金稼ぎをするくらいだろうか? そんな事を考えているところに
「ご主人様ーーーーー!!!」
漣のアイデンティティーに関わるような事を言いながらこちらへ走ってくる少女がいた
服装も含め全身が真っ白な少女、人類が北方棲姫と呼ぶ姫クラスの深海棲艦が無邪気な笑顔を浮かべてこちらへ向かって来ている、どうやらこの子も戦治郎の仲間のようだ
「とうっ!」
そう言ってこの小さな姫は地を蹴って跳び上がり戦治郎の胸へと飛び込んできた
「えへへ♪ いらっしゃいご主人様、今日は一体どうしたの?」
「おお~太郎丸~、相変わらずお前は元気だな~、今日はここの事とお前達の事を今日着任したばかりの艦娘達に教えようと思ってな」
戦治郎に抱き留められ、笑顔で尋ねる太郎丸と呼ばれた少女に対して、少女の頭を優しく撫でながら答える戦治郎
「提督……、提督ってまさかそういう趣味があったの……? 鈴谷、流石にこれはちょっちひくわ~……」
「その……、提督がそういうのがお好みだったとしても、その……、は、榛名は大丈夫……です……」
「提督さん、流石にそういうのはいくらなんでもダメだと思う、その子が可哀想」
ドン引きする鈴谷、動揺を隠せない榛名、真顔で諫める瑞鶴、これについては漣はなんもいえねぇです、はい……
「ちょっとぉっ! 俺の事特殊な性癖ある人みたいに言わないでくんねぇ?! 俺にそういう趣味はねぇよ! 大和みたいな娘がドストライクだよコンチクショウ! 言わせんなよ恥ずかしいっ!!!」
自身に向けられた疑惑を全力で否定する戦治郎、サラリと何か言ってるけど気にしない
「ダメ! 皆ご主人様をいじめないで!」
そう言って戦治郎の腕から飛び降り両腕を広げて3人から戦治郎を庇うように立ち塞がる少女
「ああ~、やっぱ太郎丸はいい子だな~、俺泣きそう……、っとこりゃ早いとこ誤解解かねぇとだな」
そう言って少女の隣にしゃがみ込み、少女の頭に手を乗せながら紹介を始める、それに合わせるように少女は広げていた両腕を下す
「こいつは太郎丸(たろうまる)、この牧場の主でこんなナリでも獣医もやってる俺達の仲間の1人だ、動物達の声が聞こえるが故に色んな動物達に好かれちまって今ではここら一帯の動物達の頭みたいになってるんだ」
「太郎丸です! この牧場の経営やってます! 動物の事なら何でも聞いて下さい! よろしくお願いします!」
そういって深くお辞儀をする太郎丸、見た目も相まって可愛らしい
「動物の声が聞こえるって、マジ?」
「太郎丸さんはあの牛さん達や豚さん達とお話が出来るんですか!? ステキですね! 榛名も動物さん達とお話してみたいです!」
驚いたように尋ねる鈴谷、興奮気味に語る榛名
「動物の声が聞こえるのは本当だよ! 僕、動物達の仲を取り持つのが得意だったからね! 多分その関係で声が聞こえるようになったんだと思うんだ、もし動物達とお話したかったら僕に言って! 動物達が言っている事を翻訳してあげるからね!」
元気よく答える僕っこ太郎丸
「そういや太郎丸、弥七は何処行った?」
「「「「弥七?」」」」
「弥七なら精肉場の方で作業してたはずだよ! 養鶏場から何羽か連れてこようと思ってこっちに来たらご主人様がいたから声をかけたんだ!」
「「「「精肉場……?」」」」
おい、今何か恐ろしい単語が聞こえたぞ
「今日は暁ちゃん達六駆の皆が精肉の当番だったのすっかり忘れててね、準備していた鶏の数が足りなかったんだ」
おぃいいい!!! あんなちっちゃい子達になんて事やらせてんのぉぉぉっ!!!
今の話を聞いて鈴谷と瑞鶴は呆然とし榛名は青ざめる
「ちょっと待って下さい! 鎮守府でお肉にしちゃってるんですか?! てか当番って何ですか!?」
「そうだよ? ここで育てた動物達を鎮守府の精肉場で加工して、そのお肉が食堂で振舞われるんだよ! 凄いでしょ! これ、僕が発案したんだよ!」
えへん!と言わんばかりに胸を張って答える太郎丸、今とんでもない事言ったぞこの子
「そんな! 何でそんな酷い事をするんですか!? 動物さん達が可哀想じゃないですか!」
榛名の悲痛な叫び、その瞳には涙が浮かんでいた
「酷い? 何が?」
そんな榛名の訴えに短く答える太郎丸、その言葉も表情もとても冷ややかなものであった
「榛名さん達だってお肉は食べるでしょう? 普段見ているのはパックに入った奴だろうけどそのお肉も元々は生きた動物だったんだよ? 加工してるところが見えてないだけで」
「そ、それは……」
たじろぐ榛名、だが太郎丸は止まらない
「生物は皆食べないと生きていけない、食べる為に殺す、植物だって立派な生物だからね、草食動物だって生きる為に他の命を奪うんだ、それを可哀想? おこがましいにも程があるよ」
「……」
何も言い返せなくなり沈黙する榛名、太郎丸が更に言葉を続けようとしたところで
「そのへんしとけ太郎丸、要はあれだ榛名、俺達は何かを殺して食って生きているわけなんだから、その為に死んだ生物に感謝して食い物は大事にしろって事を太郎丸は言いたかった、そうだろ?」
「うん、その通りだよご主人様」
「んで、艦娘達にも精肉作業させてるのは自分達でやる事でそれをより印象に残す為、そうだったよな?」
「うん」
「って事でこの話は終わりだ、こういう理由があったから俺も納得した上で承認してっからな、思うところあんだろうけどそこは堪えてくれよ、頼むから」
「はい、そういう事なら……」
「よし、んじゃあここはこのあたりにして鎮守府ツアーのラスト、食堂に向かうとすっか、時間も丁度いい感じだしな! んじゃあ太郎丸、作業頑張れよ」
そう言って戦治郎が来た道を引き返す、時計を見てみれば正午になろうとしていた
それに気づけば急に空腹感が襲ってくる、本当にタイミングがいい事だ
「ここの食堂は間宮に伊良湖、鳳翔と龍鳳がいるんだが、その面子に負けねぇほど腕が立つ料理人がいるからな、存分に期待するがいい!」
これはいい事を聞いた、どんな料理が出てくるか楽しみである、ただ、今日はちょっと肉料理は遠慮して欲しいかな……、そう思う漣だった
「そうそう、精肉作業はお前らにもやってもらうから覚悟しとけよ」
……デスヨネー