「ふぅ……」
背後から聞こえる音が止み翔が一息入れたところで、俺は瞬時に飛び起きて翔に駆け寄りその頭に拳骨を1発落とす。ブチギレモードでこっち来るとか心臓に悪すぎるわ馬鹿タレ!
翔は頭を摩りながら事情を説明してくれたんだが、流石にこれはやり過ぎだろう……。俺が視線を送った先には翔の艤装に増設した食材の入ったコンテナの搬入に使うクレーンのフックに上顎をブチ抜かれた装甲姫の首、その周囲には生皮、内臓、骨、各部位の肉がしっかりと分別され綺麗に並べられていた。怒りに任せて人型深海棲艦の精肉とか震えが止まらないです……、ヲ改さんはチビ達にそれを見せないように必死に目隠ししてるしツ級はその辺で吐いてるし……
きっとプリンツの容態診た悟もキレてただろうけど、翔がキレてるの見て頭がクールダウンしたんだろうな……きっとそうだろう!
取り敢えずクールダウンした翔にこっちの事情を話し、納得してもらったところで俺達はヲ改さん達と別れて皆がいるであろう拠点前にある軍港へと向かった。帰り際にヲ改さんがボソリと言ったあの人達を敵に回さなくてよかった……って言葉は聞こえてないフリしておいた
「なんじゃこりゃ……」
軍港に着いた俺達の目の前に広がる光景を目にした俺は思わずそう呟いた……、この光景を言葉にするなら死屍累々が一番正しいのだろう……、いや皆まだ息あるみたいだけどこの惨状はこう表現する他ないだろう……
無数に飛んでくる砲弾相手にその身を盾にして立ちはだかる大五郎、その後ろには空、護、通が倒れており、通に必死に声をかける神通に光太郎から応急処置を施されているグラーフ、展開されたハコの診察台の上にはプリンツが寝ておりビス子が付き添っていて、浴槽の中には木曾が入っていて悟が必死に治療していた。太郎丸や甲三郎も艦載機や機銃で砲弾を迎え撃っている
ちょっと離れたところでは剛さんと摩耶が陽炎型駆逐3人の前に立ち迫りくる砲弾を片っ端から撃ち落としていく、時々不知火が2人に弾薬を補給してサポートしているおかげかこっちは負傷者はいないみたいだが、時間が経てば何れ弾がなくなってこの守りも崩壊してしまうだろう
剛さん達がいる地点から丁度反対の位置では、形代を盾にして全身血塗れになった輝を悟達がいるところへ連れて行こうと必死になって引っ張って移動する姉様と藤吉の姿があった
「おいおいおい……、こりゃ一体どうなってんだ?奴らはもうここら一帯にはいねぇんじゃなk……ってどぅおぉっ!?がっはぁっ!!!」
この凄惨な光景を目の当たりにして訳が分からなくなり、状況の確認をしようと口を開いたところでこちらに飛んでくる砲弾に気付くも反応しきれず3、4発直撃を受けるシゲ。砲弾の爆発の規模からこりゃぁ戦艦クラスの砲撃か?
未だに飛んでくる砲弾を俺は大妖丸で捌きながら思考を巡らせる、翔と弥七は艦載機の機銃掃射で砲弾を撃ち落として事なきを得たようだ
取り敢えず先ずは状況の確認をしねぇとどうにも出来ねぇ、翔と弥七に先程の攻撃を受けて動けなくなったシゲを引っ張らせて俺は先頭に立って大妖丸で砲弾を切り払いながら悟達が集まっているところへと移動を開始する
「悟!状況説明頼む!」
「他あたれ!こっちは今クッソ忙しいんだよぉっ!!!」
悟に聞いてみたけどそれどころじゃないと突っぱねられる、だったらとビス子に聞いてみたら自分達が戻った時には既にこんな状態だったとの事
「戦治郎さん!お戻りになられたのですね!」
藤吉と一緒に輝を引っ張って来ていた姉様が合流、輝の血が付いたのか手も服も真っ赤に染まっている。丁度いいと姉様に今の状況を説明してもらったわけなんだが……
ここでもしかしたら来るかもしれない敵の増援を迎え撃つ為に待機していたら、1匹のル級がフラフラとこちらに近付いて来たらしい。空が様子がおかしい事に気付いて下手に手を出さないようにと指示を出し、しばらく観察しているとル級が急に司の名前を叫びながら暴れ出したそうだ
「えっとぉ……そのぉ、つ、つかささまー!どこにいらっしゃるのですかー!・・・・・と突然大きな声を出し始めて……そのぉ……」
その時のル級の真似をするも恥ずかしくなって顔を耳まで真っ赤にする姉様、可愛らしいけど今はそれどころじゃねぇな
気を取り直して姉様は更に続ける、司の名前が出たので取り敢えずそのル級のところに司を向かわせたが最初は自分に近づいて来た司を敵だと思ったのか物凄いスピードで主砲を連射して司を追い払ったらしい。2度目の挑戦で何とか話し合いを始めたようだが、しばらくすると司がル級の頭を鉄扇で思いっきりブン殴ってそれからこの状態になったそうだ
その話を聞いて砲弾が飛んできている方向を見てみたら、司がヨーヨーと艦載機を使いながらル級に果敢にも攻撃を仕掛けるがそれらは悉く砲撃で叩き落され、その時に発射された砲弾の一部が司を襲うも鉄扇で弾かれてたりこっちに向かって飛んできてたりしている
「状況は分かった、でも通は兎も角何で空と輝、護までやられてんだ?」
「それはアタシが説明するわ」
いつの間にかこちらに合流していた剛さんが言う、一緒にいた摩耶と不知火は太郎丸達のフォローに入っており壁役も翔の艤装と形代が加わって攻撃を防ぐ面積を増やしてくれていた
「まず知っておいて欲しい事なんだけど、あの砲撃は戦艦主砲の威力ととんでもない連射速度を持っているわぁ、最初は戦ちゃん達が使ってるガトリング砲で攻撃されてるのかと思ったわぁ……それでここからが重要なの、あの砲弾は恐ろしいほどの追尾性を持っていたわぁ」
砲弾に追尾性だぁ?!何だそのトンデモ兵器……、いや俺が言える立場じゃねぇけどさぁ……
「空ちゃんがやられたのは完全に不意打ちね、あのル級は照準合わせたりなんかせずにがむしゃらに主砲を乱射していたわぁ。それを回避したところで急に砲弾が曲がって背中にズドン!それが何発も当たったもんだから倒れちゃったのよ……」
砲弾が曲がるとか流石に想定出来ねぇからなぁ……、こいつばかりはシカタナイネ
「輝ちゃんは藤吉ちゃんと扶桑ちゃんを庇って数十発以上を真正面から受けた結果ああなっちゃったのよ、そして護ちゃんは機銃とミサイルで応戦してたんだけど段々ミサイルの装填が間に合わなくなってきて、最終的には押し切られて倒れちゃったのよぉ。通ちゃんも身体に鞭打って無理矢理動かして神通ちゃんを庇って被弾していたわぁ、他の子も直撃だったり至近弾だったりで大なり小なりダメージを受けているってところねぇ」
なるほどなぁ……、取り敢えず空達がやられたのはよく分かったんだが司がそいつの頭殴ったのがどうしても分からん……
「よっし、俺は今から司の加勢してくる。あいつの事情も聞いておかねぇといけねぇからな」
俺はそう言って司がいる方へタイミングを見計らって飛び出そうとしたんだが
「戦治郎さん、おいも付き合うよ。あいつは輝さんにこがん酷か事ばして藤吉ば泣かしたけんね、相応の罰ば与えんぎんたぁおいの腹の虫の収まらん」
背後から藤吉……じゃねぇな、九尺が話しかけて同行したいと言って来た、輝が気絶してるから出てこれたのか……
「分かった、空達をあんな状態にした奴とやり合うわけだからちょっとでも頭数が欲しいところだからな。付いて来るなら俺の後ろから離れんなよ?でなきゃあの砲撃の嵐の餌食になっちまうからな」
「そんくらい分かっとぅよ、戦治郎さんこそしくじらんごと気ぃ付けんしゃいよ?」
九尺はそう言いながらチェーンソーを取り出す、それは兎も角こいつ中々言うじゃねぇか、俺を一体誰だと思ってんだっつぅの
「そこは任せとけ、んじゃ行くぞ九尺!」
「あいさー!」
そう言って俺達は大五郎の背後から飛び出し、雨霰と飛んで来る砲弾を切り払い叩き落しながらル級と戦っている司の下へと走り出すのであった