※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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もうちょっとで話に置き去りにされる漣はいなくなる……


長門屋鎮守府ツアー 食堂編

色々とショッキングな出来事が多かった牧場から移動する戦治郎一行、目指すは鎮守府の食堂、そこの案内さえ終われば鎮守府ツアーは終了すると言っていた

 

「本当は憲兵みたいな事やってんのが2人いるんだが、片方は暇してそうな艦娘連れてちょっとした訓練がてら日本海側の哨戒行ってるみたいだし、もう片方は川内に付き合って夜戦してたみたいだからまだ寝てるはず、まあそっちは今日は丁度非番だったみたいだからいいっちゃいいんだけど」

 

「鎮守府稼働してないのに哨戒って、それ大丈夫なんですか?」

 

「上の許可は取ったさ、海域攻略は流石に不味いみたいだが哨戒くらいならいいってよ、まあこっちの連中も身体動かしてないと鈍りそうっつってたかんな、俺が軍学行ってる間の2~3年ずっと訓練って苦痛だろうしなぁ、特に摩耶とか付き合い長ぇから余計に辛そうだわ」

 

摩耶とは付き合いが長い? そういえばこの人元帥からスカウトされる以前は何をやっていたのだろうか? 今まで会ったり話に出てきた仲間の皆さんの様子から推測しようにもその殆どが濃厚なキャラをしているのでさっぱり見当も付かない

 

そうこう言ってる間に食堂の入口に到着、辺りに美味しそうな匂いが漂ってきていた

 

「そんじゃ楽しい昼飯の時間だ! 7名ですけど空いてますかー!?」

 

扉を勢いよく開きながら叫ぶ戦治郎、そしてふと思う、7名? 戦治郎、大和、漣、鈴谷、榛名、瑞鶴、翔鶴に大淀で8人じゃないか? そう思って周囲を見回してみたらいつの間にか大淀がいなくなっている

 

「あれ? 大淀は何処行ったの?」

 

「大淀さんなら、工廠で皆さんが艤装を保管場所に置きに行ってる間に工廠でやる事が終わったら執務室に戻るという連絡を頂いてますよ」

 

漣と同様に人数に違和感を感じていたのだろう鈴谷が尋ね大和が返す、工廠で任務の手続きした後はずっと静かだったと思ったらそもそもいなかったのか

 

「こんにちは提督、提督達が一番乗りですから席は空いてますよ、どうぞこちらへ」

 

そう言って席に案内する間宮、案内された席に座ったところで改めて挨拶が行われる

 

「皆さん初めまして、給糧艦の間宮です、この鎮守府の厨房を任された1人としてこの食堂で鎮守府に所属している皆さんに食事や甘味を振舞っています。 皆さんもお腹が減ったときは是非この食堂にいらしてくださいね、腕によりをかけたお料理で皆さんをおもてなししますね、どうぞよろしくお願いします」

 

そう言って頭を下げる間宮、確か間宮以外にも伊良湖、鳳翔、龍鳳、そして戦治郎の仲間が食堂を任されているんだったか、しかし、厨房を見たところ今のところ伊良湖の姿くらいしか確認出来なかった

 

「伊良湖ちゃんもこっちに来て皆さんにご挨拶しましょう?」

 

「あ、はい間宮さん、少々お待ちください」

 

そう言って作業を中断しこちらへ小走りで向かってくる伊良湖

 

「初めまして、給糧艦の伊良湖です、間宮さんと同じくこの鎮守府の厨房を任されています、間宮さん共々よろしくお願いします!」

 

「あれ? 提督さんは鳳翔さんと龍鳳さんもいるって聞いてたんだけど今日はお休み?」

 

伊良湖の挨拶の後、瑞鶴が鳳翔と龍鳳の事を尋ねる

 

「鳳翔さんと龍鳳さんは夕食の後、この食堂を使って居酒屋をやっていらっしゃるんですよ、ですので今の時間帯は私と伊良湖ちゃん、翔さんの3人でやっているんですよ」

 

また出てきた、翔さん? 確か太郎丸と一緒にこの鎮守府の周囲を艦載機で哨戒したり偵察したりしている人だったっけか、その人がここの厨房を任されている……、うぅ……、何か不安になってきた……、恐らく戦治郎の仲間なのだから深海棲艦なのだろう……

 

太郎丸は北方棲姫だったので艦載機については納得出来た、ではこの翔という人はどんな深海棲艦なのだろうか? 艦載機を扱うという事なら太郎丸と同じく陸上型? それとも空と同じ空母型?

 

そう思っているところに厨房の勝手口が開く音がして聞きなれない声が食堂に響く

 

「間宮さ~ん、伊良湖さ~ん、さっき頼まれていた牛肉、精肉場から持ってきました~!」

 

「ありがとうございます翔さん、お肉は冷蔵庫の中へ入れておいてくださいね」

 

どうやら噂の人物が来たようである、それも例の精肉場からお肉を持って

 

「分かりました! 弥七、そっちのお肉はそっちの冷蔵庫にお願いね、つまみ食いはダメだよ? もしやったら戦治郎さんやシゲに言いつけるからね?」

 

「へいへいわ~ってるって、とりあえずしまうモンちゃっちゃとしまおうぜ、早いとここっちも作業終わらせて飯にしたいんだからさ~、ここいると空腹感がマジでやばくなる」

 

おっと、牧場で名前が上がった弥七も翔の手伝いでこっちに来たようだ

 

「お~い、翔~、弥七~、ちょっちこっちカモン」

 

戦治郎が2人を呼ぶ、挨拶させるつもりなのだろう、怖い奴じゃありませんように……

 

「戦治郎さん、どうしたんですか?」

 

「どしたんよ? ご主人~」

 

そう言って姿を現したのは泊地水鬼と戦艦レ級elite

 

「うわあああっ!!!」「ぎゃあああっ!!!」「ひっ……!!!」「うえええっ!!!」

 

漣、鈴谷、榛名、瑞鶴が声をあげる、こりゃまたとんでもないのが出てきたのだから仕方ない

 

方や戦治郎の戦艦水鬼(本人は自称工作戦艦水鬼などと言ってたが)と同じ様に鬼級姫級より上位にいる水鬼クラス、方や悪魔の戦艦などと呼ばれ教本なんかでも見かけたら迷わず逃げろだの死を覚悟しろだの書かれている化け物、それのeliteクラスなのだから心臓に凄まじく悪いだろう

 

「あ、今日新しく着任した娘達かな? 初めまして、出雲丸 翔(いずもまる しょう)と申します、普段は食堂で間宮さん達のお手伝いをさせてもらっています、まだまだ半人前ですが皆さんに美味しい料理が振舞えるよう頑張りますので、何卒よろしくお願いいたします」

 

「半人前だなんて、翔さんはもう一人前の立派な料理人だと思いますけどね」

 

クスクスと笑いながら間宮が言う、間宮に一人前と認められているとなると相当な腕前なのではないだろうか?

 

「次は俺か、俺は弥七(やしち)、主に精肉場での精肉作業と牧場の手伝いやってるわ、お前らも精肉作業やる事なってるみてぇだし、そんときゃビシバシ指導すっから覚悟しとけよ~、んじゃ俺は戻るぜご主人、扶桑や六駆待たせてるかんな」

 

そう言って踵を返す弥七、おぉう、扶桑まで精肉作業やらされてるのか、ご愁傷様……

 

「おう、適当なとこで一旦切り上げてしっかり飯食えよ~、太郎丸が後で鶏持ってそっち行くって言ってたからな、無理せん程度に頑張れ~」

 

う~い、戦治郎に方を向く事もなく短く返事を返し勝手口から出ていく弥七、そういえばこいつも戦治郎の事をご主人と呼んでいる、太郎丸といいこいつといい、戦治郎とはどういう関係だ?

 

「さて、食堂に来たという事は食事をしに来たって事ですよね? 皆さん注文は済みましたか?」

 

挨拶が終わったところで翔が尋ねてくる、ああ、そういえばまだ注文をしていなかった、そういうわけでこの席にいる7人全員にメニューとお冷が渡されてあーだこーだ言いながら思い思いに料理を注文していく

 

だが、漣だけがメニューを開きもせずに神妙な顔をして何か考えているようだ

 

「どったよ漣、難しい顔して何か考えてるみてぇだけど何かあったか? それともまだ腹減ってなかったとかか?」

 

その様子に気付いた漣の正面に座る戦治郎が声をかける、それに合わせて同じ席に座っている者全員の視線が漣に集まる

 

「あ~……、それなんですが~……」

 

あっちの方から話をするチャンスを与えてくれた、でもいざ話を聞こうと思ったら尻込みしてしまう、本当に聞いていいものか躊躇ってしまう、しかし、ここで聞かなければ恐らくチャンスはもうないのではないか? ダメだ、頭が回らない……

 

「何か分からん事あったら今聞いていいんだぞ?」

 

この言葉を聞いたら漣の中の何かがキレた

 

「もう何もかもが分かんねぇですよ! 漣が初期艦だと聞いて来てみれば大和さんとか他にも艦娘が既にいたり、まだ稼働もしてない鎮守府に着任を希望する艦娘がいたり、着任したばかりの艦娘の艤装を改修するだとか提督だけでなく重要なポジションの人が悉く深海棲艦だったりとか、一部の人はご主人様だとか呼んでる事とか、あっちの世界にこっちの世界とかわけ分かんない単語が飛び交ってますし、個人営業だとか望さん以外は男とか、ホントもう何もかもがワケワカメですよ! しかも漣以外の方は事情知ってるみたいですし、漣だけが完全に置いてけぼりじゃないですか! 最初の挨拶のときからずっとこんな事考えてましたよ、ええ! そのへん全部教えてもらえるんですよね?!」

 

一気にまくしたてる漣、それを静かに聞く戦治郎、周りの者達はああ、しまったなぁ……といった表情をしている、そして戦治郎が静かに口を開く

 

「漣……、その件については済まないと思っている、だが、その話をする為に漣がとある事を知っているかどうかが問題になっててな、知らないのであればそれを教えてから詳しい事を話そうと思っていたんだ、それだけは理解してくれ」

 

とある事? まだ何かあるのか? もういい加減にして欲しい

 

「とある事、って何ですか?」

 

「漣、おめぇは深海棲艦の血が何色か知ってるか?」

 

深海棲艦の……、血……? 何を言い出すんだこいつは、と思ったがそういえば自分は深海棲艦の血の色が何色なのか知らなかった、軍学校の教本にもそんな記述はなかったし自分は今年軍学校を卒業したばかりの新兵だから戦場に出た事もない、だから深海棲艦の血の色を知らないのだ、しかし、それにどんな関係があるのだろうか?

 

「それは……、知らないです……」

 

正直に答える、その答えを聞いた戦治郎は目を閉じたまま数回ほど軽く頷く

 

「そうか……、本当は明日来るだろう夕張達と一緒にやるつもりだったんだが、こうなったら仕方ねぇわな……」

 

そう言って目を開き漣を見る戦治郎、その口から思いもよらない言葉が飛び出す

 

「よっしゃ! そういうわけで漣、飯食ったら出撃すんぞ! 旗艦はおめぇだ!」

 

「んぇっ?!」

 

驚きのあまり変な声が出た、え? 自分が旗艦!?

 

「お? もしかして初出撃? いいじゃん! 鈴谷頑張っちゃうよ~!」

 

「はい! 榛名はいつでも行けます! 勝利を! 提督に!」

 

「早速出撃? 腕が鳴るわね! アウトレンジ、決めてやるんだから!」

 

出撃と聞いて闘志を燃やし立ち上がる3人、だがそれは戦治郎の一言で打ち砕かれる

 

「いや、おめぇらは工廠行け工廠、改修作業やるっつってただろうが、おめぇら用に微調整やんなきゃいけねぇからおめぇら行かねぇと終わんねぇぞ」

 

「「「あ……」」」

 

どうやらすっかり忘れていたようだ、肩を落とし静かに着席する3人、何か可哀想

 

「では、大和の出番ですね!」

 

「いや、大和はまだやんねぇといけねぇ書類あっただろ? 大淀と一緒にそっち片づけててくれ、それと漣が主砲ぶっ放ってたから執務室汚れてたはずだしもしかしたらどっかぶっ壊れてっかもしんねぇから輝と藤きっちゃんに頼んで直してもらっといてくれ」

 

「あぅ……、分かりました……」

 

しょんぼりとする大和、本当に申し訳ないです……

 

「翔鶴は~……、空のとこ行ってていいぞ、工廠出るときめっちゃ名残惜しそうにしてたかんな、だからと言って空の事ばっか見てねぇで妹のパワーアップした姿も見てやれよ?」

 

「提督……、ありがとうございます! ……♪」

 

嬉しそうに微笑みながら頭を下げる翔鶴、その気配りを大和にもしてあげて下さい、貴方が嫁にしたい艦娘なんでしょう?

 

「でも、そうなると随伴艦は誰がするの? まだ会ってないここの艦娘の誰かに頼むの?」

 

「あ~、他のは非番だったり剛さんに着いてってたり光太郎に着いてくみたいで空いてるのがいないみたいなんだわ」

 

それは大丈夫なのか? 鎮守府空けて敵とか来たらどうするんだ?とか思ったけど空とか弥七とかいるし何とかなりそうだと思ってしまった、つかそうなるとまさか自分1人だけで戦えと? ここ実はブラック鎮守府だったりするの? そしてさりげなく戦治郎の仲間らしき人の名前が出てた、輝に藤きっちゃんに剛さんだっけか、シゲやら護、憲兵の人もまだ会ってなかったが多くないか? そう考えながらお冷を飲んでいたら戦治郎が予想の斜め上を光の速さでダッシュするような事を言い出した

 

「ってわけで、随伴艦は俺! 以上!」

 

お冷を全力で噴き出した、戦治郎に直撃した




補足 深海棲艦の出血について

艦娘の艤装によって行われる砲撃、雷撃、艦載機による爆撃は深海棲艦に出血するような傷を付けたり身体の一部を吹き飛ばしたりする事が出来ない、これは妖精さんが女性にグロテスクなものを見せるのはどうかと思い配慮した結果である、教本などにそういった記述がなかったのはそのせい

出血させたかったら深海棲艦を物理的に殴ったり斬り飛ばしたりしないといけないが、それはあまりにもリスクが高すぎるという結論が大本営で出されていた
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