この章は光太郎メインになりますのでご了承下さい
長門屋海賊団誕生
ドーバー海峡での戦治郎の提督になる宣言の後、俺達はひたすら海上を移動して現在はモロッコの西にあるポルト・サント島の近くの小島で寝床の確保をしていた
ノルウェーあたりからずっと移動して来たものだから皆かなり疲労していたんだけど、艦載機による周囲の哨戒をしていた空がたまたまここに深海棲艦の拠点があるのを発見、それを聞いたナチュラルハイになっていた一部のメンバーが即突撃、即制圧して今に至る。つまり寝床の確保=死体等の掃除なのだ……
「うっしゃあああぁぁぁっ!!!これで寝れるぞおおおぉぉぉっ!!!」
\うぇぇぇい!!!/
戦治郎の雄叫びのような掃除終了宣言に沸き立つ皆、俺もようやく眠れる事実に歓喜の声を上げていた
「いや~、やっぱ一気に移動するもんじゃねぇな……、明日からはもうちょっち移動距離短くすっか」
今回の長距離移動が余程堪えたのか、戦治郎がそう提案する。俺達には別に目的地に何時迄に行かなければいけないなどというのはないのだから、毎回毎回疲労困憊しながら長距離移動する必要性が全くと言っていいほどないのである。皆も同じ考えなのか首を縦に振っている
「だな、ここで入手した地図を見る限りセネガルのダカール付近と赤道ギニアのプリンシペ島に1つずつ拠点があるようだからそこらを制圧しながら進んで行けば丁度いい感じになるのではないか?」
「そこまではそれでいいと思うのだけど~、問題はプリンシペ島の後よね~……」
手元にあるコピーされた地図を見ながら空が言う、空が言う通り距離的にも丁度いいとは思うのだが、剛さんが指摘する通りプリンシペ島以降の拠点の位置が問題なのだ
プリンシペ島の次に拠点があるのはプリンス・エドワード諸島、南アフリカの南東、それも結構離れた位置にある島なのだ。プリンシペ島からそこに直接向かう場合今日よりも長い距離を移動しなくてはならなくなるのだ
「これは直接向かうよりもアンゴラかナミビアあたりに1度上陸してから向かった方がよさそうだな……、その場合もしかしたら野宿になるかもしれないけど……」
「野宿か……、お風呂とか大丈夫かしら……?と言うかアフリカで野宿って何か不安しかないんだけど……」
俺の言葉の野宿という単語に反応する天津風ちゃん、年頃の女の子だとやはりそのあたりは気になるところだろう。俺の方は自分で言っておいてなんだがアンゴラもナミビアもどんな国なのか全く知らないので、天津風ちゃんが言う不安の部分は完全に同意である
「んで、プリンス・エドワード諸島の次は俺達にゃあ馴染み深いマダガスカルなわけなんスけど……、何なんスかね?このマーク」
シゲが言っているように、この地図のマダガスカルのところには俺達にはよく分からないマークが付いていた。マークの形が何となくではあるが攻撃的な感じがするのは俺の気のせいだろうか……?
「まあ行ってみりゃあ分かるだろうよ、そんで攻撃されりゃあやり返す、そうでなきゃあ話を聞いてみる。ここ来るまでと同じ事やりゃあいいだけだ」
戦治郎が言う、まああいつが言う通り実際に目で見て話を聞けば間違いはないだろうな
因みに攻撃されたら反撃してそうでなければ話を聞くというスタイルについてだが、これは俺達が穏健派の存在を知ってから決めた事で、もし目に映った深海棲艦全てを沈めていってたら穏健派に警戒若しくは敵対勢力と思われる可能性を考慮しての事である
「しっかし、拠点を襲撃しながら進むって……、俺達は強盗……と言うより海賊か何かか?」
木曾がつい思った事を口からポロリとこぼした、それは皆に聞こえたのか全員の視線が木曾に集中する
「海賊……、海賊かぁ……、いいな!海賊!」
戦治郎の目が輝きだす、こいつ絶対変な事思いついたな……
「え~、今この時を以て我々は『長門屋海賊団』を名乗る事になりましたっ!!!」
どうやら俺達は今から海賊になるそうだ、ほら見ろ変な事になった~……
「いやいや旦那……、旦那は日本の海軍の提督になるんじゃなかったのか?」
「ばっか摩耶おめぇイギリスに海賊から提督になった人がいるっての知らねぇのか?」
摩耶がツッコミを入れるも実例があると主張して譲らない戦治郎、そういやいたなそんな人……
まあよくよく考えてみたら、ワ級襲って物資奪って拠点襲って占拠するって何処からどう見ても海賊だから何とも言えないな……
「それにもし軍に所属する艦娘と会った時、艦隊名みたいなのなかったら面倒な事になりそうじゃね?」
「だからと言って海賊はどうかと思うのですが……、最悪の場合勘違いされて攻撃されかねないと思いますよ?」
確かに所属を聞かれてすぐに答えられなかったら怪しまれるだろう、だからって海賊を名乗ると通の言うような展開になる可能性があるんだよな~……
「そのへんは俺が何とかするさ、まあそれでダメだったらそん時考える!」
戦治郎が何とかすると言ったら大体何とかなる、それについては小さい頃からこいつと付き合い続けている俺達がよく知っている。尤もこの海賊団を名乗るのも恐らくだけどただの思いつきではなく、戦治郎なりに考えがあっての事だろうから俺はもう今更どうこう言うつもりはない
空と悟の方を見ても戦治郎に何か意見するつもりはなさそうだ、輝の奴はどう見ても乗り気である
「つか護はどうしたよ?さっきからずっとムスッとしたまま何も言ってねぇけど……、海賊とか嫌だったか?」
「海賊云々なんてどうでもいいッス、それよりもプリンス・エドワード諸島を一刻も早くあいつらの手から奪還したくて仕方ないッス。今もどうやったらあいつらを思いっきり苦しめながらブチコロコロ出来るか考えてるところッスよ」
物凄く不機嫌そうに答える護、確か最初に地図で拠点の位置見た時に物凄く取り乱していたけど、護がああなるくらいの何かがプリンス・エドワード諸島にあるのだろうか?
「護さんがそこまで言うのも珍しいですね、プリンス・エドワード諸島には一体何があるのですか?」
興味本位なのか不知火ちゃんが護に質問する、すると護は物凄い剣幕で叫ぶように話し始める
「あの島には!!!オウサマペンギンの!!!繁殖地があるんス!!!そんなところに軍事施設を作るとか!!!何考えてるんスかあいつら!!!自分あいつら絶対許さないッスよっ!!!」
まさかペンギンの事でここまでキレるとは……、こいつどれだけペンギンが好きなんだよ……、理由を聞いた皆が呆然としてるよ……
「シャチョー、ここの拠点に攻め込む時は絶対自分を入れて欲しいッス。もしかしたらあいつらの犠牲になったペンギン達がいるかもしれないッスからその仇を取ってやるッス」
護が珍しく殺る気になっているが、その理由がペンギン達の敵討ち。戦治郎もその気迫につい気圧されて了承していた
「取り敢えず話はこれで終わりでいいッスか?自分今からここの工廠であいつらブチコロコロする為の装備作るッスから。それとシゲ借りていくッスよ、いいッスよね?」
「お、おう……、俺は別に構わねぇけど……、その、すみませんアニキ……、ちょっと行って来ます……」
「お、おう……、いってら~……」
護はそう言ってシゲを連れて工廠に向かい、俺達は呆気にとられたままその背中を見送った。護をあそこまで駆り立てるペンギンの魔力とは一体何なのだろうか……?
護の件で海賊云々については皆どうでもよくなってしまったようで、そこを戦治郎が押し切って俺達はこの日から『長門屋海賊団』を名乗る事になったのだった