陸路組と海路組に別れて行動を開始してしばらく経つわけだが、海路組はしっかりやれているのだろうか……
まあサイズ的な問題で大五郎が海路組になったので、シゲや護がハコを使えば海路組が全滅する可能性がグンと下がるのであまり心配する必要はなさそうだが……
「おっほ~、あいつらまだ追って来てやがるぜ!」
密林の中をバック走行しながら戦治郎が叫ぶ、俺達は今とある集落の原住民の皆様方と絶賛追いかけっこ中なのである
「戦治郎お前バック走とか余裕あんなおいっ!」
「あいつらを蹴散らせればこんなに走る必要ないんだけどな~」
俺はそうやって叫ぶ余裕がある輝も大概だと思うんだけど……、そして弥七が物騒な事を言っているけど、蹴散らしてしまうと後で問題になりそうだから我慢してくれ……
「こういう時ホバー走行って楽よね~♪道の状態とか関係無しにスイスイ走れちゃうわ~♪」
「すみませんねぇ剛さん……、どうも体力使う事はからっきしなもんでぇ……」
本人が言う通りどんな悪路だろうとホバー走行でガンガン進める剛さん、そんな剛さんにおんぶされているのは逃走中にスタミナ切れを起こしてしまった悟、その表情は凄く申し訳なさそうだった
「取り敢えずこの密林を抜けたらきっと大丈夫なはずっ!太郎丸、方角はこっちで合ってるんだよな?!」
「うん!艦載機は既に密林を抜けて僕達が乗って来た車のところで待機してるから間違いないよっ!!!」
俺は太郎丸に俺達がここまで来るのに使った車がある方角が、今向かっている方角で合っているか確認をとる。それを聞いた太郎丸は大きく頷いて肯定してくれた
「奴らはまだ追ってくるか……、中々しぶとい連中だな……」
空飛ぶ艤装に乗って涼しい顔して空が言う、石ころの1つでも投げつけてやりたいが我慢我慢……。だってそうしないと……
「あの……、空さん……?瑞穂は本当に空さんの艤装に乗っていていいのでしょうか……?」
空の後ろに乗っている瑞穂さんに当たっちゃいそうだからね……
「もぉぉぅ!誰か状況を説明して下さぁいぃ!!!」
そんな中、俺に抱きかかえられている阿武隈さんがそう叫んでいた。状況説明は無事逃げ切ったらいくらでもしてあげるから今は頑張って耐えて頂きたい……
そもそも、俺達が何でこんな状況になっているかについてなんだけど……
俺達陸路組はノルウェーの拠点を売却した時にもらった金を使って車を購入、身分証明とかの書類関係はもしかしたら使うかもしれないからとアクセルが金と一緒に譲ってくれた奴を遠慮なく使わせてもらった
そして車に乗って阿武隈さんの情報を集めながら海岸沿いに南下していると、リベリアあたりで目撃情報を入手したのだ
まあその目撃情報と言うのがまさかの誘拐の現場の目撃情報だったもんだから、それを聞いた直後俺達はそれはもう大慌て、更に細かい事を聞いてみると何処かの集落の原住民が最近よく街に人攫いに来ているらしく、どうやら阿武隈さん達はそれに巻き込まれてしまったようだ
それっぽい原住民がいる場所を教えてもらい、俺達はその場所へ急いで車を走らせたのだった
その場所は密林地帯になっていたので、何かあったら通信機ですぐに連絡するようにして皆で手分けして捜索を開始
この通信機は今までは護が近くにいないと使い物にならなかったのだが、この間の護のやらかしの後に戦治郎が電子系装備開発時の消費資源がどのくらいになるか調べる名目で、護が近くにいなくても使えるようにする装置を開発していたおかげで護がいない今でも問題なく使えるようになっている。因みに肝心の消費資源は戦治郎の想定より多めになったそうだ
ある程度探したところで食事の時間が近づいてきたので、一旦集合して食事休憩してから捜索再開する事になったのだが、空が中々帰ってこない。何があったのだろうかと心配していたら空から通信が入ってきた
『どうやら俺はとんでもないものを見つけてしまったようだ……』
空のその言葉で皆に緊張が走る、空の次の言葉を聞き逃さないように通信機に意識を集中させる
「空、一体何を見つけたんだ?」
戦治郎が真面目なトーンで空に問う、その表情も真剣そのものであった。俺達ももしもの時の為にすぐに動けるように準備を開始したところで、遂に空の口が開かれ次の言葉が出てくる
『蟻塚だ、それも3m以上の巨大なものだ……、これは間違いなく俺に対する挑戦状なのだろう……。俺はこれからこの蟻塚の破壊を開始する、以上だ』
凄く真剣な声で馬鹿みたいな事言いやがったよこいつ……
「そうか……分かった、もうすぐご飯だからそれまでには帰って来いよ」
その表情を一切崩す事無く、空と同じように真剣な声で答える戦治郎。多分空にノッてあげただけだと信じたい……
「俺、たまに空の事がよく分からなくなっちまう時があるわ……」
大丈夫だ、それは皆同じだ
「つか、何であいつあんなに蟻が嫌いなんだ?」
「空ちゃんは蟻の事になると本気で殺しにかかるわよねぇ、過去に何かあったのかしら?」
戦治郎と剛さんが疑問に思っているが、剛さんは兎も角戦治郎は当事者だから知っていなきゃダメだろう……
「そりゃぁおめぇあれだぁ、俺達がガキの頃おめぇが家族でヨーロッパの方に旅行に行った時あっただろうがよぅ。そんで土産で買って来たチョコを空んチに集まって皆で食おうってなったの覚えてっかぁ?」
「ああ、そういやそんなのあったな。確か父さんが買ってくれたチョコの箱開けたまま皆で手ぇ洗いに行ってる間に窓の隙間から入って来た蟻にチョコを台無しにされた奴だっけ?」
悟に言われて思い出す戦治郎、空が大の蟻嫌いになったのはほぼ間違い無くこれが原因だろう
戦治郎が家族でヨーロッパ旅行に行き、お土産として戦治郎はクッキーを、その義姉の天音はマカロンを購入し、戦治郎のお父さんが俺達で食べる用にチョコを購入したのだ
その後は大体戦治郎が言った通り、空の家でチョコを開封したまま手を洗いに行っている間に、チョコに蟻がたかってチョコがダメになってしまったのだ。まあクッキーとマカロンのおかげで集まりが無駄になる事はなかったんだが……
「あの時は天音だけでなく空も大号泣してたよな~……、でもだからってあそこまで徹底して嫌うようになるもんか?」
空はああ見えてかなり甘党で、中でもチョコは大好物なのだ。親友が持って来てくれた大好きなチョコを滅茶苦茶にされたせいで、空は蟻を憎悪するようになったとしか考えられない。そして戦治郎はどうやらそこに気付いていないようだ……
「まあ、あいつなりに思うとこがあるんじゃねぇか?っとそういやだけどよ、お前と天音が買って来たクッキーとマカロンの値段は聞いてたけど、親父さんが買ったチョコっていくらくらいだったんだ?」
輝が戦治郎に尋ねる、そう言えばチョコの値段は俺も聞いてなかったな……。子供の頃は特に気にしてなかったけど大人になった今だとちょっと気になるところだよな
「あのチョコか?父さんが言うには日本円で1粒1万5千円だったっけか?父さんは金はこういう時にこそガバッと使うものってよく言ってたっけな~……」
「「「……はぁっ?!」」」
待て待て待てっ!!!1粒1万5千だとっ!?確かあの箱の中には36粒くらい入ってたよな……?
「1箱54万のチョコとか馬鹿じゃねぇのっ!?」
「ぐおおおぉぉぉっ!!!ファッ〇ンアリンコオオオォォォッ!!!」
「あっひゃっひゃっひゃっひゃ!!!」
「戦ちゃんのお父さんって豪快なお金の使い方するわねぇ……」
俺と輝は叫び悟は腹を抱えて大笑い、剛さんも驚き半分呆れ半分と言った感じでコメントしている
「空よぉ、今何処にいるんだぁ?今回限定で加勢してやんよぉ」
大笑いを急に止めた悟が空に通信を入れる
「確か相当でかいんだろ?今回ばかりは俺も手伝ってやんよ!」
怒りが混ざった獰猛な笑みを浮かべた輝が続く
「もしかしたら危険な奴かもしれないからな、早いところ駆除してしまおう」
当然だけど俺も続く
「えっ?何でお前らもやる気になってんの?あっれ?もしかして俺あいつら刺激するような事言った?」
「まあ・・・・・、そうねぇ……」
困惑する戦治郎に苦笑いしながら答える剛さん、そりゃお前そんな超極絶高級チョコを食い損ねたって分かったら誰だってキレると思うぜ……?現に俺達キレてるしな!
その後、俺達3人は空と合流してその巨大な蟻塚を徹底的に破壊した
そしてその帰り道だった、偶然集落を見つけてその中央で何かの儀式なのだろうか丸太に縛り付けられて火あぶりにされる阿武隈と瑞穂の姿を見たのは……