「あれは……、阿武隈さんと……瑞穂さんじゃないかっ!?」
「何っ?!」「あん?」「う?」
俺が驚きのあまり声を上げると、3人は俺の視線を追うようにそちらを向く……のだが俺と空が瞬時に動き悟の両目を塞ぐ
「おめぇら何で俺の目ぇふs「おいおいおい!あの娘達火あぶりにされてんじゃねぇかっ!!!」……OK、目ぇ閉じたから手ぇ放していいぞ」
俺達の行動に文句を言おうとしたところに輝がセリフを被せるように声を上げて、その内容から俺達の行動の意図を察してくれた悟。恐る恐る手を放してみると本人が言った通りしっかりと目を閉じてくれていた
悟は二度も火事に遭ったせいで火が完全にトラウマになってしまっている、そのせいで火を見るとしばらくの間全身に力が入らなくなり、頭痛に襲われ嘔吐を繰り返す。今の状況でそんな事になったら面倒なので、俺と空は咄嗟に悟の目を塞いだのである
「戦治郎にゃ俺が連絡しとくからよぉ、おめぇら任せたぜぇ」
悟はそう言って目を閉じたまま通信機を操作して戦治郎に連絡し始める
「輝、後々厄介事になりかねんから殺すなよ?」
「とりあえずぶっ飛ばしゃぁいいんだろ?任せろ!」
空が念の為に輝に釘を刺し、それからお互いに目配せしてからすぐに行動を開始する
まず俺が先陣を切って突撃しその後を輝が追う、俺達の足音に気付いた原住民の皆様の視線が俺達2人に集中したところで、俺が新装備の放水ヴェスバーで放水を開始する。射線上の原住民を巻き込みながらも阿武隈さんと瑞穂さんの足元で燃え盛る炎に向かって一直線に飛んでいく大量の水は、瞬く間にその炎を消し去り2人を炎の脅威から解放してくれた。
「鎮火あああぁぁぁっ!!!」
炎が完全に消えた事を確認してから叫ぶ俺、そんな俺に儀式の邪魔をされたのが余程気に入らなかったのか、原住民の皆さんは獣のような雄叫びを上げながら一斉に俺に襲い掛かって来た……が、それを全て輝が1人で迎え撃つ
殴り飛ばし、蹴り飛ばし、投げ飛ばしては複数人を巻き込んで吹き飛ばす。お得意のハンマーを使っていないのは相手を殺すなと言われたからだろう、もしここで使おうものならば阿武隈さんと瑞穂さんに非常にショッキングな映像を見せる羽目になるし、何より後々国際問題になりかねないからな……
輝が盛大な大立ち回りをしている間に、俺は阿武隈さんを縛り付けている縄を解き始める。ナイフの1つでもあればよかったのだが、生憎そんな文明の利器は今は持ち合わせていない……
「えっ!?あの、貴方は一体……?」
「大人しくしてて、すぐ助けるから……、よし解けた!「え?きゃぁ!」」
縄が解け阿武隈さんの身体が自由になったところで、短い悲鳴を上げて彼女が落下する。まあ縛られてた位置がちょっと高かったからね……
俺は丸太から落下して尻もちをついた阿武隈さんをすぐに抱きかかえて悟がいる方向へと走り出す、阿武隈さんはそんな俺を見て慌てて声をかけてくる
「待って下さい!まだ瑞穂さんが「それならもう大丈夫だよ」ふえ?」
阿武隈さんのセリフを遮るように俺が返事したところで、俺には聞き覚えのあるターボファンエンジンの音が俺とすれ違う。空が艤装に乗って瑞穂さんの方へ向かって行ったのだ
それは凄まじいスピードで瑞穂さんが縛られている丸太の根本に突っ込んで、そのまま丸太をへし折ってしまった。へし折られた丸太は丸太に括り付けられたままの瑞穂さんと共に艤装の方へと倒れ込むのだが、それを空が片手で受け止めると艤装は方向転換し俺の隣へとやって来た
「これで無事2人の身柄を確保出来たな」
「お前はもうちょっと優しく救助出来なかったのかよ……、瑞穂さん気絶してるんじゃ「あ、あの……、これはどういう事なのでしょうか……?」この娘すげぇなおい!」
空が瑞穂さんの縄を解き、オプションで付いてきた丸太を原住民達に投げつけながら俺に話しかけてきたもんから、俺が空の救助方法に文句を言っていたわけなんだが……その最中に彼女から質問されて驚愕する、あんだけの事されといて気絶してないとかマジすげぇ!
「よし輝!撤収だ!」
「あいよ!てめぇらどけやオラァァァ!!!」
未だ暴れていた輝に声を掛けて撤収し始める俺達、空の艤装を見て呆然としていた一部の原住民達が気を取り直して俺達を追いかけようと走り出そうとしたところで一斉に転ぶ。よく見ればその足が悟の縫合糸で雁字搦めにされている、俺の鎮火宣言の後悟が仕掛けたものである。まあそれも刃物で切られてすぐに解除されてしまったが、俺達が逃げる時間を十分稼いでくれた
それから原住民達と俺達の追いかけっこが始まり、戦治郎達と合流して今に至るわけだ
「皆!出口が見えて来たよっ!」
「分かった、ちょっと失礼……「え?きゃっ!」ふんっ!」
太郎丸が前方を指差しながら出口が近い事を教えてくれる、それに合わせて空が瑞穂さんを抱きかかえてから艤装から飛び降り、俺達と並走する
「OKOK、んじゃちょっち足止めするとしますかねっと!」
戦治郎がそう言いながらミゴロさんを取り出して、バック走のまま砲撃を開始する
「何やってんだバァタレ!木に火が燃え移ったらどうすんだっ!!!」
「でぇじょぉぶだ!今使ってるのは訓練用のゴム弾だからな!」
悟が顔を真っ青にしながら叫ぶも、戦治郎はそう返して面制圧射撃の手を止めない。まあゴム弾だから大丈夫だろうきっと多分恐らくmaybe……
そして戦治郎の思惑通りと言うべきか、面制圧射撃による原住民の足止めは大成功と言えるものとなった。砲撃に完全に怯え竦む者、弾が直撃して盛大に吹っ飛んでいく者が大量に出たのだ
そうこうしている間に密林を抜けて、俺達の車のところまで戻ってくる事が出来た。俺は抱えていた阿武隈さんを降ろし後部座席に急いで乗るようにと言ってから運転席に乗り込む
全員乗ったか確認する為に後ろを振り向いてみれば、戦治郎がまだ乗り込んでいないにも関わらず、もう席はいっぱいになっていた……
「戦治郎すまん!もう席はいっぱいだっ!!!」
「はぁっ!?マジかよざっけんなコラァッ!!!」
相変わらずミゴロさんを撃ちながら吐き捨てる戦治郎、仕方がないので屋根の上に乗ってもらい射撃を奴らが見えなくなるまで続けてもらう事にした
「あのぉ……、そろそろ状況説明してもらえますかぁ……?」
ミゴロさんの音が聞こえなくなったところで、しびれを切らした阿武隈さんが尋ねてきた、戦治郎が射撃を止めたって事はもう大丈夫みたいだからそろそろ話してもいいか
「その前に、お前は龍驤の連れの阿武隈で合っているな?」
「えっ?!龍驤先輩の事を知っているんですかっ!?」
この娘が件の阿武隈さんで間違い無いみたいだ、そういうわけで俺達が龍驤の、そして摩耶と木曾の仲間である事と現在の状況を阿武隈さんに教え始めた
「そんな事になっていたんですね……、うぅ……2人を探しに来たのに逆に探されるなんて……」
話を聞いてすっかり落ち込んでしまった阿武隈さん、まあこういう時もあるさ……
「阿武隈さんのお友達は無事に見つかったのですね、それは本当に良かったです」
そんな阿武隈さんに瑞穂さんが話しかける、そう言えばこの人はどういった経緯でここにいるのだろうか?
「そういや瑞穂はどうして阿武隈と一緒にいたんだ?つか何でここにいるんだ?」
屋根の上から後部座席側を覗き込みながら戦治郎が瑞穂さんへ問う、そろそろ車を停めて戦治郎を荷室にでも突っ込まないとだな……、ワンボックスカーだから人1人入る余裕はあるだろう。何故最初からしなかったかって?そりゃ足止めの射撃やってもらわなきゃいけないし、後ろのドア開けたまま走るわけにはいかないでしょ?
「瑞穂も阿武隈さん達と同じように友人を探していたのです……」
そして瑞穂さんは語り出した……
瑞穂さんはその友人と家族ぐるみで付き合いがあったそうで、小さい頃からその友人と友人の妹さんの3人でよく遊んでいたそうだ
ある日、その友人は両親に恩返しがしたいからと艦娘になる事を決意し、その日から己を磨く鍛錬を続けていたそうな……ん~?
それからしばらくすると、その友人にお見合いの話が持ち上がったそうで、その友人はそのお見合いを受けるかどうかで悩み続けていたとの事……あれ~?
そしてある日、瑞穂さんにその友人が行方不明になったとの知らせが届いたそうだ。警察にも捜索願を出し瑞穂さん達も必死になってその友人を探したそうだが見つからなかったんだそうだ
それから月日が流れるも友人は発見されず、遂に耐え切れなくなった瑞穂さんが行動を起こすのだった
両親に対して傷心旅行に出ると嘘を付き、旅先でドロップ艦として友人を探す事にしたのである
「そして、旅先で龍驤さんとはぐれてしまった阿武隈さんと偶然出会って少しお話したところ瑞穂と同じような境遇だったので、瑞穂は阿武隈さんと一緒に行動する事にしたのです」
そう言って瑞穂さんは自分がどういう経緯でここにいるのかについての説明を締めくくった、何かその話何処かで聞いたような気がするんだけど……?
「瑞穂よぉ、その友人の名前ってのはどんな名前なんだぁ?」
恐らくもう分かっているんだろうけど、敢えて瑞穂さんの友人の名前を聞く悟
「扶桑さんです、とても美しく瑞穂の事をまるで実の妹のように接して下さるほど優しい方でした……。もし扶桑さんの身に何かあったと考えると瑞穂は……瑞穂は……」
瑞穂さんはそう言って俯いてしまった……。うん、やっぱり姉様でしたか~……
「……もし扶桑さんを手に掛けた不届者がいたならば、瑞穂はその者を絶対に許す事が出来ません」
俯いたまま呟く瑞穂さんのその言葉を聞いた俺達は皆その場で凍り付いてしまった……。曰くその言葉を発した瑞穂から夜叉を感じた……、曰くマジギレした翔が重なって見えた……
この娘、ホント何者なのですかねぇ……?