何かとんでもない事になってしまった
随伴頼めそうな人がいないからって提督である戦治郎が出撃するって、そんなのアリなのか? いや、あの人は見た目は戦艦水鬼だからやってやれない事はないんだろう、でもそれを大本営が許すのだろうか? それに戦治郎達にとって深海棲艦は仲間じゃないのか? 戦治郎が出撃する事で厄介な事が増えるくらいなら翔鶴を出した方がよくないか? あの人練度99なんだから間違いなく強いだろうし角も立たないだろうし……
そのあたりはどうなのか聞いてみれば
「問題ねぇ、そこらへんは大本営としっかり話つけてっかんな、大規模作戦の時以外の出撃は1~2人くらいで抑えてくれりゃぁいいってよ、あんまこっちの面子使いすぎると友軍から間違えて攻撃されたり所属艦娘の育成に影響出るし、俺ら見て深海棲艦の鹵獲と運用に成功したと勘違いして鹵獲に挑戦して大打撃喰らう馬鹿タレが出そうだから制限はかかってる、だが出る事自体はOKもらってんだ、俺らの有用性は大本営も認めてるってこった」
どうやら話はつけているようだが、本当にそれでいいのか大本営
そうこう話をしている間に注文していた料理が届く、因みに漣はお冷を景気よく噴き出し盛大にむせ返った後、落ち着いたところで漣が噴き出したお冷がぶちまけられたテーブルや床を掃除していた翔に頼んでおきました
出撃関係の事で頭が一杯で料理の味も、周囲の会話も全然分からなかった……、こうなったら何としてでも無事に帰ってきて改めて料理の味を楽しもう、そう誓う漣だった
「さて、この制服汚すわけにもいかねぇから俺は着替えてくるわ、その間に……」
食堂での食事も終わり、食堂の皆さんに一言お礼を言って鎮守府ツアーをやっていたメンバーが全員表に出たところで、戦治郎がそう言い放ち息を大きく吸い込む、一体何をする気だ? そう思った瞬間
「大五郎おおおおおーーーーーっ!!!!!」
食堂の窓がガタガタと震え漣達の身体すらも揺らすような大声を上げる
うるせえええええーーーっ!!! そして大五郎って誰えええーーーっ!?!??
そんな事を考えていると、牧場の方角から何かがこちらに向かって走って来ていた、ドドドドドッという音を周囲に響かせ土煙を撒き散らしながら勢いよくこちらに突っ込んでくる、その地響きが近づくに連れて段々大きくなっていき、地面が土からコンクリートに変わったあたりで土煙を突き破りその姿が露わになる
艤装だ、今地響きを上げて近づいて来ているのは戦艦水鬼の艤装であった、しかし距離の割に大きいように見えるのは気のせいだろうか……?
それから更に近づいた所でブレーキをかけたのかギャリギャリギャリとコンクリートが削れるような音を撒き散らしながら漣達の前で停止する艤装
「「「でかあああああああっ!!!」」」
漣、鈴谷、瑞鶴が叫ぶ、榛名は言葉を失っているようだ
いあ、もうね、ほんとでかあああああい!!! 説明必須!!!
戦艦棲姫や戦艦水鬼の人型艤装は人間よりも一回りは大きいとは言うけど、戦治郎の艤装だと思われるこれはその人型艤装より明らかに巨大だったのだ、腕だけで戦治郎や大和の倍以上ありそうだった
「ご主人~、おらの事呼んだか~?」
「「「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」」」
そしてこの艤装、喋った! このタイプの艤装って喋れるの?!
「おめぇらイチイチうるせぇ! 驚いたのは分かったからちったぁ静かにしろ!」
戦治郎に怒られた、でもこれは仕方なくね? こんな巨大ロボットみたいなの出てくるなんて誰も想像出来ないと思うよ?
「紹介するわ、俺の艤装になっちまった大五郎だ、全高8.8mと図体はでかいが性格は大人しいいい子だからな、太郎丸の教育のおかげでいきなり襲い掛かったりはしねぇからあんま怖がらないでやってくれ」
「はじめまして~、おら大五郎いいますだ~、でっかくてこえぇかもしんねっけどおらぁみ~んなと仲良く出来たら嬉しいと思うんだぁよ、どんぞよろしくおねがいしますだぁ」
のんびりとした口調で自己紹介を終え2つの頭でお辞儀をする大五郎、サイズがサイズ故それだけでも妙な迫力がある
「よっし、挨拶も終わった事だし大五郎、今から漣と出撃すっから工廠行って準備しててくれ、俺は今から着替えてくる」
「承知しただぁご主人~、んで、漣ってどの子だぁ?」
「そこの桃色の髪の毛の娘だ、んじゃ行ってくるわ~」
漣を指差しそう言った後、さっさとその場を後にする戦治郎、それではまた後ほど、と言って戦治郎の後を大和が追って行った
「お~、おめぇさんが漣かぁ?」
大五郎がこちらに顔を近づけて聞いてくる、仲間だと分かっていても怖い
「あ、はい……、漣は自分です……」
大五郎の迫力に気圧されながら答える
「お~、今から一緒に出撃すっからよろしくなぁ~」
そう言ってこちらにその巨大な右手を差し出してくる
「えっと、これは……、握手ですか?」
「んだんだ、太郎丸のアニキから教えてもらったんだぁよぉ、人間はこういう時こうやって挨拶するもんだって」
あのちっちゃい子がアニキ? どう見ても大五郎の方がアニキって感じがするが……
そんな事を考えながらも、大五郎が差し出した手を無下にする事も出来ないのでとりあえずその大きく太い指を掴む
「これが初の実戦になるのでまだ勝手がよく分かりませんが、足を引っ張らないようには頑張りますのでよろしくですよ」
「お~、これが初めての戦いだったか~、安心してくんろ、分かんねぇ事があったらご主人がきっと分かり易く教えてくれるだろうし、漣とご主人の事はおらがしっかりお守りすっからな~」
そう言って左手で自分の胸を叩く大五郎、あれだけ怖かったその姿が頼もしく見えてきた
「そんじゃ、工廠に向かうべ、っと漣、これはお近づきの印だぁ」
「ふえ? ひゃあ!」
そう言って漣を持ち上げる大五郎、何事かと思った矢先に持ち上げられ驚きの声を上げる漣、それを気にも留める事もなく大五郎は持ち上げた漣を自分の右肩にゆっくりと下す
「うっわたっか! こっわ!」
全高8.8mもある大五郎の肩の上、それはもう高い事高い事、高所恐怖症でなくても怖いだろう
「漣~しっかり掴まってくんろ~、そいじゃ工廠へ向けて出発しんこ~!」
そう言って工廠へ向かって歩き出す大五郎
「ぎゃー! 揺れるー! 落ちるー!」
その肩の上でギャーギャーと騒ぐ漣、速さこそゆっくりではあるが下手なジェットコースターより怖いはずだから仕方ないと言えよう
その光景を見て苦笑いを浮かべ、鈴谷達もその後を追うのだった
そして場所は工廠の艤装保管場所へと移る
鈴谷達の艤装は既に空が作業場所へ持ち出して作業していたので、鈴谷達は今そちらに行っているのでここには漣と大五郎しかいない
「それ、大五郎さんのだったんですか……」
自分の艤装を装着しながら、納得したように大五郎へと声をかける
艤装保管場所にあった巨大な艤装と思われる物、それを今正に大五郎が装着しているのだ
巨大なコンテナを背負い、本体とコンテナの隙間から×字状に伸びたアーム、上の2本に列車状の大砲が付けられ、下の2本には巨大ガトリング砲、長方形の杭打機付き盾は右腕に装着し左腕には大きな爪の付いたあのガントレット、4つの黒い箱状の何かの内2つを太ももの外側に取り付けていた、残った2つは右手で大事そうに持っていた
「んだ~、この装備はご主人が妖精さん達と協力しておらの為だけに作ってくれたんだぁよぉ」
おおう、メイドイン戦治郎ウィズ妖精さんの装備か、それなら深海棲艦にも通用しそうだ、つかとんでもない威力が出そうだしこれで攻撃される深海棲艦が可哀想に思えてくる、漣がそんな事を考えてるのも知ってか知らずか、大五郎は心なしか嬉しそうにそう答えていた
「しっかし、太郎丸ちゃんといい、弥七だっけ? あの人の事をご主人様呼びする人が多いんですけど、どういう関係なんですかね~?」
ふと、思った事を声に出してしまった漣
「ん~? おら達は生まれ変わる前はご主人のペットだったって聞いてなかっただか?太郎丸のアニキが犬でおらがヒグマ、弥七は虎だったと思うだぁよぉ」
「んぇ?! ペット!? というか生まれ変わった?!」
思いもよらない答えが返ってくる、ていうかヒグマと虎がペットってなにそれこわい
「その反応だとご主人はまだ教えてないみたいだぁな~」
「ああ、はい~……、そのあたりを教えてくれって言ったらその為に出撃だー!ってなっちゃってですね~……」
「なるほどな~、だったら早いとここの戦い終わらせてご主人に聞くべきだぁねぇ、ご主人はこういう約束は違えたりなんかしないからきっと教えてくれるはずだぁよぉ、そういう事でおらもこっから先の話は秘密にしておくだぁよぉ」
「えぇ~、そんな~、もうすこ~しだけ教えてもらえませんか~?」
「ダメダメ~、ご主人が秘密ならおらも秘密だ~」
そう言ってこれ以上情報提供はしない姿勢をとった大五郎にケチー!などと言いながら漣は考えていた
大五郎達は深海棲艦に生まれ変わった戦治郎のペット、これはかなり重要な事のような気がする、もしこれが本当だったとしたら戦治郎達も深海棲艦に生まれ変わった人間なのかもしれない、そんな可能性が頭をよぎる、しかしそんな事例は今まで聞いた事もない、軍が情報統制しているからなのか? 今考えてもさっぱり分からない
そしてその事と深海棲艦の血に一体どういう関係があるのだろうか、こちらもやはり今のままでは情報が足りない、情報を集めるには何としてでもこの出撃を成功させ生き延びて戦治郎から話を聞くしかなさそうだ
そんな事を考えている間に、それぞれの艤装の装着も完了していた
「よっし、漣の準備も完了したみたいだし、そろそろ行くだぁよぉ」
「ほいさっさ~、早いところ片づけて、この鎮守府の秘密を白日の下に晒してあげまっしょい!」
そう言って工廠の出入口へと向かう漣、その背中に頑張れー!漣さんなら大丈夫です!など鈴谷達からの声援が送られる、初出撃のはずなのだが恐れや緊張などが一切湧いてこない、今の漣は非常にやる気に満ち溢れていたのだ
「駆逐艦漣、出る!」
「漣~、まだ工廠から出てもないのにそれは早いと思うだぁよぉ」
ええい、無粋な事を言いおって!