※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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深まる謎

「とまぁ、悟の検死解剖で分かったのはこんなとこだ」

 

戦治郎が皆に聞こえるように大きな声で、悟の検死解剖の結果を報告する

 

俺達は今この拠点の会議室に集まって、件の死体を調べた結果を全員に伝えるべく話し合いをしているところだ

 

阿武隈さんと瑞穂さん以外の艦娘の皆は例の死体を1度は見ていたようで、あれが艦娘だったものだと聞いた瞬間ざわつきだした。まあ無理もないだろう……、あれが元は自分達と同じ人間だったと聞かされれば動揺の1つはするものだろう

 

「あれが私達と同じ艦娘だったなんて……」

 

「あれをやったのは人間かもしれないんでしょ?やった奴は頭おかしいんじゃないの?」

 

天津風ちゃんはその内容に驚愕し、陽炎ちゃんは施術者を狂人と断じていた

 

「しかし、何故その人物はこのような真似をしたのでしょうか?」

 

「そのあたりはやった本人かその関係者にでも話聞かねぇと何とも言えねぇなぁ……」

 

不知火の質問にそう返す悟、施術者がこんな酷い事をする意図が本当に分からない……、悟の話ではこの近くに犯人がいる可能性が大きいと言う事なので、何としても見つけ出してその意図、目的とやらを吐かせねばならない。場合によっては覚悟もしてもらわないとだろうが……

 

俺がそんな事を考えてるすぐ傍で、短い悲鳴を上げる阿武隈さん。どうやら阿武隈さんと瑞穂さんが今俺達が何について話をしているのかよく分かっていなかったようなので、戦治郎が悟から借りたファイルを見せながら説明していたらしく、件の死体の写真を見せたところで阿武隈さんが顔を真っ青にして驚き、瑞穂さんも口元を覆い驚いた素振りをする

 

「もしかしたら、私や神通さんもこうなっていた可能性があったのでしょうか……?」

 

姉様が不安そうな声で尋ねる、それを聞いた瑞穂さんの表情がどこか悲しげなものに変わる。この話し合いの前に姉様は瑞穂さんに自分の身体の事を伝えたのだ、その時は記憶があり瑞穂さんの事を覚えていてくれたのならば、例え身体が深海棲艦になろうとも姉様は姉様だと言ってはいたが、やはり姉様が1度沈んだと言う事実は相当ショックだったんだろうな……

 

「これはコアの暴走とは訳が違ぇみてぇだから何とも言えねぇなぁ……、そもそもこんな姿になって死んでるってぇのが一番の謎なんだよなぁ……。死因が拒絶反応によるものってぇのは分かるんだがよぉ、こんな中途半端に姿変わった状態で侵食が止まってんのが謎すぎんだよぉ……。一応侵食が完了する前に本体が死んだから侵食が止まったんじゃねぇかと推測しちゃぁいるんだが、正直自信がねぇ」

 

本格的に調べようにも、どうやらここにある機材や薬品だけじゃ無理なんだそうだ

 

「つか、本体が死んだら本当に侵食は止まるんッスかね?普通に考えたら艤装出して戦ってるって事は大体水の上で戦ってるって事ッスよね?そんでコアが暴走するくらいまで艤装が壊れたら間違いなく水の中に沈んで溺れ死ぬと思うんッスけど」

 

護が疑問をぶつける、そうだよな……艤装が壊れた段階で溺死はほぼ確定なんだよな……。あんな鉄の塊背負ってるんだからドンドン身体が沈んでいくし、疲労や怪我で満足に身体が動かせないかもしれないし、冷静に艤装を外して浮上しようとしてもそこまで息が続くか分からん。そもそもコアが暴走開始してから艤装を外せるものなのか?

 

「……言われてみりゃぁそうだよなぁ……、って事は侵食が完了する前には大体の艦娘は死んでる事になりやがらぁ……。そうなると益々あの中途半端な変化の原因が分からなくなりやがらぁ……」

 

遂に悟が頭を抱えてしまった、これについては色々と情報を集めた方がよさそうだな……。まあ取り敢えず今のやり取りで1つだけ間違いない事が分かった

 

「まあ、取り敢えず姉様達があんな姿になって死ぬ可能性はなくなったって考えてよさそうだね。それとコアが原因で拒絶反応が起こる可能性は妖精さんが否定してくれてたから安心していいんじゃないかな?」

 

俺の言葉を聞いて2人が安堵の息を付く、神通さんには通が、姉様には瑞穂さんがいるから凄く不安だったのだろう

 

「そろそろ工廠組の調査報告していいか?」

 

阿武隈さん達への説明はどうやら終わったらしく、戦治郎が話を進めようと話しかけて来た。悟がOKを出したところで戦治郎が艤装を調べた結果を皆に報告し始める

 

「工廠組があの娘の艤装をバラして調べてみたわけなんだが、どうやらあの娘はドロップ艦ではなく軍属だったみたいなんだわ」

 

会議室がまたざわめきだす、それもそうだろう、もしあの娘がドロップ艦だったら何かの事件に巻き込まれた程度で済むのだが、軍属となると話がガラリと変わってしまうのだ

 

「よくあの娘が軍属だと分かったな」

 

「艤装のリミッターが外されてるのと、艤装の何処にもプレートって奴がなかった事だな。プレートって奴は軍属の場合所属する鎮守府や泊地に提出して印鑑に変えてもらうってのを前に神通から聞いてたからな」

 

海賊団の中で過去に軍に所属した事があるのは神通さんだけだからね、神通さんからの情報ってなるとほぼ間違いないだろう

 

「あんな酷ぇ仕打ちを軍の奴がやったって言うのかっ!?」

 

声を荒げ机を叩きながら勢いよく立ち上がる摩耶、まあこんな事聞かされたら誰でも怒るだろうな、現に俺と悟は相当頭に来ている……

 

「悲しい事にな……、っと続けるぞ、艤装バラしてもどこの所属かなんてのは流石に分からなかったわ。ついでにコアが暴走した形跡もなかったから、悟が言ってた移植した右腕が原因で中途半端だが深海棲艦化した可能性が極濃」

 

「結局艤装バラして分かったのはあの娘が軍属だったって事だけだが、それが分かっただけでも大収穫かもな……」

 

戦治郎が粗方報告したところでシゲがこう言って〆る、しかしあの娘は軍属だったのか……、そうなるとこの件は相当厄介な事になるぞ……

 

「何で軍属やっちゅぅのが分かっただけで大収穫なん?」

 

龍驤さんがシゲに質問する、周囲を見回せば龍驤さん同様ピンとこなかったのか不思議そうな顔をしている娘が何人かいるようだ

 

「あの娘が軍属と言う事は、何処かの鎮守府や泊地に所属していたという事……、つまりあの娘が所属していた鎮守府或いは泊地には、あの娘と同じような目に遭っている艦娘が沢山いる可能性があると言う事ですよ……」

 

通の言葉を聞いて不思議そうな顔をしていた娘達の顔が青くなっていく、もしかしたら今この瞬間にもあの娘のように無茶苦茶な移植手術をされている艦娘がいるかもしれない、拒絶反応を起こして死んでいく艦娘がいるかもしれない……

 

「早く助けないとっ!!!」

 

阿武隈さんが声を上げる、しかし戦治郎がそれに待ったをかける

 

「助けてやりてぇのは俺も一緒だ、だが余りにも情報が無さすぎる。その鎮守府やら泊地やらが何処にあるのかすら分かってねぇんだ、闇雲に探し回っても時間の無駄にしかならねぇ可能性だってある。だから俺はしっかり情報収集してから動くべきだと考えている」

 

「そもそもこの件に首を突っ込むと最悪指名手配される可能性もあると思うぞ?俺達海賊団は何処の国のものかは分からんが、軍に喧嘩を売るわけなのだからな。今なら安全に日本に帰れると思うのだが……、どうするんだ?阿武隈」

 

「こんな話を聞いておきながら自分だけこのまま日本に帰るなんてイヤッ!!!それに摩耶さん達もその戦いに海賊団として参加するんでしょ!?だったらあたしも海賊団に入れて下さい!一緒に戦わせて下さいっ!!!」

 

空の言葉に涙を浮かべながら反論、海賊団への加入を申し出る阿武隈さん、この娘は本当に優しい娘だな……、龍驤さんに協力したのもきっとこの優しさからなんじゃないかな?

 

「かなり危ないんだけどな……俺達の旅は……、っと瑞穂はどうすんだ?おめぇは日本に帰るのか?」

 

「いいえ、私も海賊団への加入を希望致します。もう扶桑さんと離れ離れになるのは嫌ですから……」

 

戦治郎の質問にそう答える瑞穂さん、まあこの娘の場合姉様が1度沈んだ件で相当不安になってるみたいだから強くは言えないだろうな……

 

「……分かった、海賊団はおめぇら2人を歓迎する。が、覚悟決めとけよ?俺達の旅は非常に危険だからなっ!!!」

 

「「はいっ!!!よろしくお願いしますっ!!!」」

 

こうして、阿武隈と瑞穂が海賊団の仲間入りをしたのだった

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