だが、レイフロは何故かニヤリと口端を上げた。
「ある程度なら平気だ。直射日光じゃない限り、な」
「……部屋の中なら大丈夫という事ですか?」
「そゆこと。つー訳で、いいだろ?」
「えっ……と……」
いいか悪いか聞かれても、どう答えていいのか判断に迷うのが本音だ。
レイフロの言う通り、処女のアイシアにとって、これは未知の領域。修道服は単なる制服でしかないから、問題がないと言えばないが。
「……少し、怖いです」
「俺が?」
「違っ……そうじゃなくて」
「……大丈夫。優しくするから」
耳元で囁かないでほしい。
肯定しそうで危ない。
「俺はアイシアを、アイシアは俺を愛してる。……それじゃ、ダメか?」
「……ず、るいですっ」
そんな爆弾を落とされてしまったら、応えたくなるではないか。
でも、ただではおけない。
「……約束してください」
「ん?」
「私達に心配かけないでください」
「……自分だけじゃないってとこが、お前らしいな」
「はぐらかさないでくださいっ」
「はいはい。もう無断で無茶しませんよ」
「約束ですよ?」
「ああ。……お前に誓っていいぜ?」
軽く口付けられる。
その温かさに、アイシアも応えようと唇を押し付けた。
「……いい、ですよ?」
「……大切にする」
深く、唇が合わさる。
何度も角度を変え、出来た隙間から舌を差し込まれた。絡み合う舌の温度がわからないくらい溶け合いそうだった。
「……あっ、つい……」
「……だな? もう、脱ぐか」
「え……きゃっ⁉︎」
修道服のファスナーに手をかけられた。
首元から腰まで、一気に引き下ろされる。
中は白いシャツだけだが、薄手の生地なので、うっすら下着が透けて見えていた。
「……へぇ、オフホワイト?」
「い、言わないでくださいっ‼︎」
「可愛くていいじゃん」
そうこうしている間に修道服とシャツを脱がされ、とうとう下着だけにされてしまった。
レイフロもシャツを脱ぐ。本当に均整取れた身体で羨ましい限りだ。表年齢42歳にしたって、逞しすぎる筋肉のバランス。いつも肌けた格好だからわかってはいたが、こうも魅せつけられると直視しにくい。
レイフロはシャツを放り投げると、またアイシアに覆い被さった。
「……俺の裸見て、興奮した?」
「レ、レイフロさんの意地悪っ‼︎」
「はいはい。ごめんってば。それより……アイシアって、結構着瘦せするタイプだったんだな?」
固まってるアイシアの両手を広げ、頭の横に縫い付けるように押さえられた。
全部を見られて、思わずぎゅっと目を瞑った。
「み、見ないでっ」
「むーりー、こんな綺麗な肌見た事ねぇし。こりゃほんとに開拓し甲斐あるな」
「か、開拓ってっ⁉︎」
「ま、追々わかるって。とりあえず、ここからか?」
「きゃっ⁉︎」
首筋にキスされ、高い声が出てしまった。
「やっぱ頚動脈は敏感なとこだな?」
「ふっ……あっ、くすぐっ」
「だーいじょうぶ、感じてろ」
舐めて、時折強めに吸われて、首筋を舌で上下になぞって鎖骨まで降下していく。
たったそれだけなのに、官能を刺激されてしまい肌が粟立つ。
「あっ、レイ、フロさんっ」
「……そんな煽るなって。こちとら慎重にいこうと思ってんのにさ」
音が鳴るくらい強めに吸われ、また声が上がる。
痛みも感じたが、牙は立てられなかったので、傷はないだろう。
ぼんやりしていると、ブラのフロントホックに手が掛けられるのが見えた。
「ちょっ、まっ」
「やーだね」
呆気なく外されてしまい、押し付けていた膨らみが露わになる。レイフロは鼻歌を歌い出しそうなくらい上機嫌になり、嬉々としてアイシアのブラを剥ぎ取った。
「こんな立派なもん押さえてたらよくないぜ?」
「じゃ、邪魔だったから……」
「形悪くなるぞ? レイフェルに見立ててもらいな」
「えー……」
今まで逃げていたが、これで回避出来なくなるのか。
しかし、レイフロに喜んでもらえたのなら、少しは女として考えた方がいいかもしれない。
「ほんじゃま、いい加減触らせてもらいますか」
「あっ」
ほんの少し丘に触れられただけなのに、また肌が粟立った。カサついた手とその温もりがダイレクトに伝わり、歓喜で心が震える。
始めは撫でるように、次第に両手でしっかりと緩急をつけて揉んでいき、形が変わるんじゃないかと言うくらい強く激しくなってきた。
「ふわっ……あっ、あぁ‼︎」
「ほんと何百年振りだ? てか、一番気持ちいいっ。もうアイシアしかいらね」
「あっ、たり前ですぅ」
たとえ今だけでもそう言いたかった。
自分以外の皆が悠久の時を生きなくてはいけない存在だとしても、言わずにいられなかった。
「だよな。……ん」
「あぁ⁉︎」
揉みながら胸の飾りを吸われた。
左右不規則に、膨らみにも舌を這わせて乳首を入念に吸われると、背筋が震え上がった。
擦られ弄られていくうちに、腰が揺れるのがわかる。初めてなのに、なんて淫乱だろうと、羞恥で身体が打ち震えた。
「……はっ……やっべ」
微かな吐息だが、レイフロが興奮しているのはなんとなしにわかった。
羞恥で目を閉じていたアイシアだったが、そっと開くととんでもない恍惚としたレイフロの顔が見えて、堪らず両手で顔を覆った。
当然目敏い彼によって、すぐに剥がされたが。
「なーんで隠すんだよ」
「だ……だって、レ、レイフロさんがっ」
「俺?」
「あっ⁉︎」
言えない。
色気色香ありまくり過ぎて、鼻血噴きそうだったなんて。
顔を寄せられても、絶対言わないと心に決めた。
「……なんだよ、意味深に言ってくれて。俺を誑かそうだなんて早いぜ、お嬢さん?」
「た、誑かすなんて思ってませんっ‼︎」
「じゃあ、何さ?」
迫る端正な顔に思わずたじろぐ。
その瞳は、言葉と裏腹にとても楽しげだった。
しかも愛撫の手を止め、頰や耳をゆったり撫でるだけにしてくる。その手つきがあまりに優しくて、アイシアは絆されてしまいそうだった。
「……早く言いなって。楽になりたいだろ?」
「だ、だって……」
「ん?」
「……呆れられそう、だから」
「なんで?」
心底楽しげな声に、余計羞恥で顔が火照っていく。
本当にこの男は質が悪い。
好きなものには全力で構ってもらいたい一心でぶつかり、自分を好きにさせようとこれまた全力で立ち向かう。チャールズへの愛情過多がいい証拠だ。
そしてそれを、今度は恋人になりたてのアイシアにも使ってくる。ただ違うのは、親子愛ではなく恋人としての情愛だと言うこと。
隠し事は出来ないわけではないが、想う相手の事は知りたいのが性だ。アイシアもレイフロの事はもっと知りたい。
観念して言う事を決めると、彼に向き直った。
「……さっき、なんですけど」
「ああ」
「レ、レイフロさんのか、顔が……そのっ」
「んで?」
促される相槌ばかりだ。
もう、こうなったら自棄だと言うことにした。
「す……すっごく色っぽくて鼻血噴きそうだったんですっ‼︎」
「……は?」
爆弾発言を聞いて、レイフロは惚けてしまった。
その隙に弛んだ手を振り払い、アイシアは再び顔を覆った。
「も、もうっ、言わせないでください‼︎」
羞恥で死ねるとはこの事だと思った。
とても目など合わせれないと唸っていたら、惚けていたはずのレイフロにまた両手を剥がされた。
「……なーんで可愛い顔隠すんだよ」
「か、可愛くないですっ」
「いいや。無茶苦茶可愛い」
レイフロは顔を寄せて、頰や瞼に口付けてきた。
ふわふわとくすぐったくて身を捩ると、彼は手首を掴んでいた手を離し、背中や脇腹に脚と言った具合に撫でていく。
「ちょっ……あっ⁉︎」
「……俺が興奮した顔に自分も興奮したって、どんな殺し文句なんだよ。まったく」
「ほ、めてます?」
「当然。それだけ俺が好きって言ってくれたのと同じだからな」
「んっ」
唇が合わさると、すぐさま舌で唇を舐めて開けるよう促してきた。
暴力的なその舌使いに、アイシアはあっさりと完敗してしまい、少しだけ口を開いた。
そしてすぐさま肉厚な舌が入り込み、アイシアの舌を見つけると執拗に絡んでくる。離さないと言う欲望剥き出しの口付け。
でも、アイシアは嫌だと思わなかった。
「……甘いな、アイシアの唇」
「そ……なことな」
「ほんと、癖になりそうでヤバいって。俺は煙草で苦いが」
「……好き、ですよ?」
もうほとんど感じないが、レイフロの唇は大人の香りがしていた。
煙草だけじゃない独特のフレグランスに、男性らしい唇。触れるとこんな甘やかな気分になるなんて思ってもみなかった。
「……そっか。アイシアにそう言ってもらえんなら、禁煙する必要ないな」
「するつもり、だったんですか?」
「お前俺からよく煙草取り上げてただろ?」
「あ」
たしかにそうだった。
ヘビースモーカー級に喫煙していたから、煙たいと思っていたので、単に取り上げていたのだ。
「でも、レイフロさんの吸う姿……かっこいいですから」
「……そりゃ、どうも。じゃ、かっこいい俺はもう全部アイシアのだからな?」
「ふふ」
「お、余裕あんな? まあ、こんなの前戯にほとんど入んねぇし」
「ぜんぎ?」
「……ほんと何も知らねぇのな」
そこで豆鉄砲食らったような表情をされても困るのはアイシアだが。
レイフロは一度顔を離して、大きく溜め息をついた。
「……アイシア、友達とかとこう言う行為の話したりしなかったのか?」
「……全然」
「逆にレアだなぁ、その環境」
「だって、そう言う話ほんとになかったんですよ?」
誰かが付き合うとか、どこかに出掛けたとかそれくらいだった。と言うのも、アイシアが13歳で国許を離れるまでだから、当然と言えば当然。
以降はずっと学業と修行に専念していたから、レイフロ達に出会うまで本当に恋愛事に構う余裕がなかった。一応告白はされたが、全部断っていたから。
そこを話すと、レイフロは何故か拗ねてしまった。
「……俺がアイシアに告ったのが最初じゃねぇのかよ」
「……レイフロさん」
無理があるだろうと思わず苦笑してしまう。
レイフロもわかってはいるが、気持ちが追いつかないのだと溢した。
「過ぎた事に悔やみ続けても仕方ないか。っと、前戯の話だっけか?」
「……なんなんですか、それ?」
「至極単純な事だ。…………ここに俺のが入る前の準備全部がそう言う事」
「えっ⁉︎」
いきなり股の間に手を滑らせてきて、アイシアの下着の上を摩った。
ほんの少し触れただけなのに、そこから水音がしてきたので、アイシアは大層驚いた。
咄嗟に漏らしたのかと思ってしまったが、
「……ちょいと触っただけでもうこの濡れ具合か。けど、アイシアは初めてだし……もっと濡らさないとな?」
レイフロの言葉でそれが生理現象だとわかると、心底ホッとした。
だが、後半の発言には度肝を抜かれたが。
「ぬ、濡らすって、なななんで⁉︎」
「……あのなぁ。男のもん挿れるのに、乾いたままじゃ相当痛てぇぞ?」
「い、挿れる?」
「おいおい、無知過ぎねぇか。いくらなんでもよ」
「そ、そんなこと言われてもっ」
「まぁ、いい。これからじっくり俺が教えればいいからな」
「きゃっ⁉︎」
深くベッドに沈み込む。
2人の身体がぴったり合わさり、これでもかと言うくらいに互いの顔が近くにある。
アイシアはレイフロの瞳に釘付けだった。