なのに。
「ほんと、アイシアは可愛いなあ?」
「ど……こが、ですかっ」
「なーんにも染まってねぇとこ。まっ、知ってたら知ってたで俺が塗り替えてやるけどよ」
「……知りませんっ」
やっぱりふしだらなところは健在だった。
表向きゲイホストだったから、仮初めの愛の言葉など、この吸血鬼にはお手の物だろう。クローンのレイフェルも両刀寄りのレズビアンだが、正常値に戻った今のレイフロは、経験を活かしてるから本当に心臓に悪過ぎる。気怠い雰囲気と淫靡な物言いが相俟って、アイシアの心を酷く震わせてくるから。
(……それで、いいか)
行為に恐怖がないのは嘘ではないが、それを補ってレイフロの愛情を感じている。本当に行為だけをしたいならば、さっさと済ませるだろうと犯罪にもあった事例をなんとなく思い出した。
それに比べて、今の行為に恐怖を抱くのは間違ってるだろう。羞恥はどうしようもないが。
「んじゃ……そろそろいい具合か?」
「っ⁉︎」
羞恥に耐えてる間に、レイフロの準備が整ってしまったみたいだ。
耳元に顔を埋めていたから、掠れた低音がダイレクトに響いてきて肌が粟立つ。レイフロも肌が接触しているからわかってるようで、小さく苦笑いしたていた。
「そんな硬くしてたら、挿れる時痛てぇぞ?」
「うっ……」
「まっ、初めてじゃどうしようもねぇかんな? 顔、こっち向けてみろ」
嫌だと首を振ると、レイフロは我慢出来ないようで、無理に肩口に顔を埋めてたアイシアを引き剥がした。
「力んでたら、なーんも出来ねぇだろ? 俺をこれ以上焦らさせてどうしてくれんだ?」
そう言う割に、紅い瞳はとても凪いだ輝きを灯していた。
一瞬、終わってくれるかと過ぎったが、それは杞憂に終わり、すぐ様情欲の焔が再炎し始めた。
顔を寄せてきて唇が重なり、合わさるものから貪るものへ一気にはやめてくる。するりとわずかな隙間から舌が滑り込み、無抵抗状態なアイシアの舌を見つけ出すと情熱的に絡めてきた。
息継ぎがままならないアイシアだったが、途中『いい加減鼻で息しろ』とレイフロが助言してくれたので、呼吸がしやすくなるにつれ身体の緊張感も和らいでいった。それが、レイフロの狙いだと知ったのは、彼が怒張を突き進めようとしていたと気づいた時だ。
指の時とは違う水音と違和感に、弛緩しかけてた身体に再び力が入りそうになる。だけど、レイフロをこれ以上待たせたくなかったし、アイシアも少なからずこの行為の終焉の先を知りたかった。生半可な気持ちで受け入れたわけではないから。
「出来るだけ、ゆっくりするからな」
「……は、い」
アイシアの承諾に、レイフロは小さく笑うと腰をゆっくりと動かし始めた。先端だけがまず襞を割って埋まるが、指以上の質量にアイシアは息を止めてしまいそうだった。当然レイフロにもそこの締まり具合で伝わるから、彼も小さく呻いた。
「……っ。アイ……シア、頼むから……息は止めるなっ」
「け……どっ、どう、すれば…」
「深呼吸するんだよ。……俺が進めるタイミングに合わせて……な?」
リードしてやる。
その一言に、苦しさを堪えながらもアイシアは小さく頷いた。
レイフロは安心させるためにまたキスで呼吸を促すと、停止させていた動作を再開した。滾る熱をなんとか押し付けないよう、最低限の挿入だけでアイシアの膣道に自身の分身を進めていく。
途中何度かアイシアが息を詰めそうになり、その度にレイフロはリードする為に声掛けやキスを施してくれた。ただ処女膜らしい箇所に進まれた時には、アイシアは堪らず叫んで、レイフロを酷く驚愕させてしまった。
「わりっ⁉︎ そこまで痛かったかっ‼︎」
もうやめようかとレイフロは抜こうとしたが、アイシアは止めて欲しくなくて思わず締めつけていた。
驚いて息を飲むレイフロに、アイシアは小さく笑ってしまった。
「……痛かった、ですけど……一瞬だけでしたから」
「……ほんとに平気か?」
「レイフロさんに……我慢して欲しくない、です」
それと、微かな血の香り。
皮膜が破れただろうから、アイシアの中で血が出ているに違いない。
吸血行為を永くしてないと聞いてたが、レイフロがこれに我慢出来てるか不思議に思った。お伽話では彼らは女性の血を好むとされてるが、レイフロは輸血パックから摂取するだけで、さらに自身の血はチャールズに与えるばかり。
直接的な吸血行為ではないが、アイシアは今出てる血を彼にあげたかった。
途切れ途切れにそれを伝えると、レイフロは今まで見てきた中で一番の驚愕さを顔に表していた。
「あ、アイシアっ。場所……わかってて言ってるよな?」
さっきあれだけ散々したのに、今恥ずかしがる理由がよくわからない。
それか、単純に久々の吸血行為が羞恥を煽っているのか。
だけど、アイシアはもう羞恥心も受け入れた上での承諾だと思っている。笑いながら頷くと、レイフロは瞳以上に顔を紅潮させたが、すぐに苦笑いしてアイシアに口付けてきた。
「…………少しだけ、貰うぜ?」
一気に怒張を引き抜くと、血の香りが濃くなった。
狩人の修業の過程からしたら大した量ではないが、それでも久しい自身の血液。ちらっと見たが、微かに脚を細い筋が伝いレイフロの剛直にも、薄暗い中でも赤い粘膜のようなものがへばりついているのが見えた。
生々しい光景に、やはり羞恥心が込み上がってきたアイシアは目を逸らした。異形種など腐る程目にしてきたのに、想う相手ではこうも違うのか。
レイフロはと言うとアイシアの様子に小さく笑い、自身のに付着した血液はそのままにして、上体を屈めて彼女の秘処に顔を寄せた。
「……久しぶりの匂いだな」
うっとりするような声色に、ますますアイシアは羞恥心で胸が詰まってしまい、きゅっと目を瞑った。それとタイミングを合わせたかのように、レイフロは唇をつけ、流れる愛液と処女膜から伝った血液を舐め始めた。
「……っ。……ふ……ぅっ……」
行為としては二度目なのに、先程よりも羞恥心が込み上がるだけでなく、快感がいたく感じられた。
一滴も取り零さないかのように、久しぶりの吸血行為をするレイフロは、啜り立つ音を最大限にしてまで奥へ奥へと包皮を割って舌を挿し込んでいく。
「…………やべっ……美味すぎだろ。……けど、これっきりにしねぇとな」
堪えるような声音に、羞恥に耐える最中アイシアはまた不思議に思っていた。
どうして、彼は直接的な吸血行為を拒むのだろうか。過去を推測は出来ても、それだけでは無理だとは理解している。だから、アイシアも無条件に彼に与えるような言葉は口にしなかった。
「……あんがとな、アイシア」
ようやく終わった頃には、彼は満足そうな表情をしていた。たったあれだけだったのに、本当に大丈夫なのか少し心配になる。
レイフロはアイシアに顔を寄せると、軽く顔にキスの雨を降らせた。
「俺はクリスと違って、あんなに大食漢じゃないしな。久々の生の血貰えただけで充分だ」
「……たまに、ならいいですよ?」
「だーめ。癖になるし、お前を隷属になんかさせたくないからさ」
一瞬過ぎった提案を却下されてしまった。
けれど、悠久の時を過ごしてきた彼らの苦悩を思えば、簡単には口にしていけない。チェリルのように、死後その運命を辿る者があるのだから。
アイシアは喉に届きそうな言葉を溜飲して、目の前にあったレイフロの唇にそっと自分のを合わせた。
レイフロも察してくれたのか、何も言わずに深いものを返してくれた。
ただし、
「じゃ、いい加減本番だな?」
口付けが終わると、嬉々とした表情でレイフロが告げてきた。
さっきのシリアスさを返せと内心独りごちる。
だけど、くどいようだが最終過程はそこだからだと、アイシアも顔を紅潮させるだけにして小さく頷く。
くくっと笑いを噛み殺す彼にぎゅっと抱きついて、早くしてほしいと促した。
子供染みた行動でも、彼からしたらずっと幼い存在に変わりないから致し方ない。レイフロも咎めずにまた小さく笑うと身体を少しずらしていく。
蜜壺はキスの際にまた溢れかえったのか、ぐずぐずに濡れそぼっていた。わかったのは、再び宛てがわれたレイフロの怒張と擦れ合う水音がかなりのものだったのが、耳に響いてきたからだ。
「……また濡れてんな?」
「い、言わないでくださいっ‼︎」
「だからって、また俺の挿れんだぞ? こんくらいじゃないと、擦れて痛いらしいぜ?」
「……そう、ですか」
痛いのは極力嫌なので、素直に返答した。
軽く髪を梳かれると、レイフロはアイシアの耳に唇を寄せて『もういいか?』と切なげに囁いてきた。
また胸がきゅんと詰まりそうになるも、アイシアは小さく了承の言葉を紡いだ。
レイフロも軽く頷くと、宛てがってた自身に入念に蜜を纏わせてから、秘唇に挿れ始めた。
「……んっ……ぅ……」
挿入も二度目なのに、気の持ちようが違うせいか、異物感よりも先にぴりりとした痛みに似た感覚を得た。解したと言っても、彼自身の怒張で慣らしたわけではないから、質量から言って全然違ってくる。
「……狭っ……」
レイフロも二度目とは言え、処女貫通しただけの膣道だから、慎重に進めてくれていた。アイシアは自身もだがレイフロの負担になりたくないので、彼が教えてくれた通りに呼吸を止めず、なんとか身体を弛緩すべく息を吐き出すのを途切れさせないようにする。
レイフロにもその懸命さが伝わってるようで、腰を押し進めながらも、時折口付けを落としたり髪を梳いてくれた。
「……っ……入った、ぜ……」
「……は、いっ……」
互いに息が酷く荒い。
アイシアは初めての経験に心が追いつかないでいたが、レイフロは久々の行為とあってか歓喜の息を漏らしていた。
そして、互いに最愛の相手だと言うことも、満たされる感覚の中で得ていたのもあったからだろう。二人は顔を合わせると、苦しい中に愛おしさが伝わってきて、幾度か唇を合わせた。レイフロとしては、呼吸が落ち着き次第動きたいのもあったようだが。
「……っ……じゃあ、動くぞ?」
小さなリップ音を出して唇を離すと、レイフロはアイシアの惚けた瞳を見詰めてきた。
けれど、アイシアは息苦しさとキスの余韻で、彼の言葉の意味がわからないでいた。
(動く、って……今までの行為と、違うの……かな……?)
ぼんやりしている頭では、いつものように機転がきかないでいた。アイシアは無意識に小さく頷くと、レイフロがニヤりと口角を上げるのが、ぼんやりと見えた。
それが、アイシアにとって阿鼻叫喚の始まりだと気づかずに。