「…………あー……マジで、イくの超久々」
声に含まれた充足感を、アイシアでも感じ取れた。
初心者の自分でそれを与えれたのが嬉しくて、思わず笑いが込み上がる。急に甘えたくなってきて、脱力したままの彼をぎゅっと引き寄せた。
「……ん? どうした?」
「ふふ。嬉しくて、してみました」
「嬉しいって……なんだよ?」
「私みたいな女でも、満足してもらえたんだなぁって」
「みたいな、じゃなくて。アイシアじゃなきゃダメだったんだけど」
「だから、余計に嬉しいんです」
更に嬉しさが増してぎゅうぎゅう抱き寄せた。
レイフロは顔が埋まる位置がちょうどアイシアの首元だったので、匂い立つ女の香りに誘われて口付けていた。当然、不意打ちだったアイシアは反射で声を上げた。
「な、なんでいきなりっ‼︎」
「誘ったシアが悪い」
「さささ誘ってなんてっ」
「てか、まだ1回目だし? 出したとは言え、俺まだ全然いけんだよなぁ」
「…………え?」
物騒な発言は、至近距離だから嘘ではない。
おまけに、未だ抜かれてないレイフロの怒張がまた硬度を取り戻して、幾分か肥大していた。
驚いたアイシアは自分の身体をズラして引き抜こうとしたが、すぐに気づいたレイフロに腰を掴まれて出来なくされた。
「…………逃げんなよ」
瞳の色も、また真紅になっていた。
欲情どころか、色欲の魔物に成り果てていないだろうか。魔ではあるが、淫魔ではなかったはず。
口端がヒクついてしまうが、気にしてる暇はない。
貞操は奪われてても、それ以上の正常な判断力まで奪われそうな危険を察知した。
「……い、一度だけ……なんじゃ?」
「この俺が満足すると思うか? 行為自体久々なせいもあるが……愛してるお前とだぞ? 無理に決まってる」
「ででででも、本当に……朝になったら、レイフロさん……やっぱり、棺とかに入らないとっ‼︎」
一応窓にカーテンは引いてあるが、大した苦肉の策にもなり得ない。ここには、彼くらいの痩身を押し込めておけるくらいの収容棚も棺の類もないのだ。
ただのホテルの一室だからしょうがないが。
「…………そんなに言うんなら。アイシアのあれ使えよ」
「……あれ?」
「初対面で、俺とチェリーを翻弄してくれた目くらまし?だっけか?」
「あっ⁉︎」
あの空間結界か。
たしかに、外界と隔絶出来るから太陽光は閉ざせれるが、使い方を誤ってないだろうか。
それと、かなり前の使用術をよく覚えていたものだ。言われるまで、アイシア自身も気づかなかったのに。
「かーなり印象的だったかんな? 神子の特殊能力だっけか、あれも」
「いえ……あれは、東洋魔術と西洋魔術を掛け合わせたものですが」
「あっ、そなの? じゃ、お前自身の能力か。すげぇな」
「えっと……本当にまだやられるんです、か?」
体力がもつか、アイシアは心配だった。
行為の方が拒めていないのは、この怠惰な恋人に絆されてる証拠だろうからと諦めていたが。
アイシアは、レイフロが無言で真紅の瞳を細めている様子から、もう執行するしかないと小さく息を吐いた。
せめて行使しやすいように、一旦抜いてもらって身体を起こした。あの術は、幾分か集中力を要するからだ。
印を両手で結んで、魔言を紡ぐ。
その言語だけは、おそらくレイフロにも聴き取れないだろう。感心するようにアイシアを見詰めてはいたが。
唱え終わると、二人を中心に半円状の空間が部屋全体を包み込んだ。目を開くと、視界は変わらないが部屋の光量とは別の薄暗さが見えていた。
レイフロの顔は至近距離だったが、少しだけ薄靄に包まれてるように見えた。
「……前よか明るいな?」
レイフロには、さほど問題がないようだ。
まあ、たしかに。意識して光源はあまり落とさないように調整したから。
種明かしは内緒にして、アイシアはレイフロにぎゅっと抱き着いた。
レイフロは受け止めてくれると、アイシアの顔をズラさせてキスをしてくる。幾度か重ねると、わずかに口を離した。
「……下、流れてきてんな?」
どこが、と疑問に思ってると、レイフロが片手で襞を掻き分けていた。水音は当然したが、肌を伝うのが蜜だけじゃないと感触で分かって、びっくりして声を上げた。
「な、なななんですかっ、これっ⁉︎」
「出されてたのに、マジで知らなかったのかよ。俺のだって、こいつは」
「レイ……フロ、さんの……?」
「子種とか精液って言えばお分かり?」
「せっ⁉︎」
本当にアイシアの中に出したとは思っていなかった。出来るかどうかはわからないが、初めは避妊するものじゃないのか。
現代文化を知らないレイフロではないのに。
「あっ、避妊はわざとしなかったぜ?」
「ちょっ、なんっ⁉︎」
「だーって、直にシアを感じたかったし? 昔はそう言う避妊方法なんてなかったしな」
「おっ、横暴……っ‼︎」
「なんとでも言えって。んで……このまま止めてもいいのか?」
「っ‼︎」
掻き出す指と手は止まっていない。
出したとは言え、一応は妊娠させないよう掻き出しているのだろう。だが、幾度も出されてはそうもいかない。是非とも、次回からはマナーを守って欲しかった。
なので。
「……ちゃんと、次から……気をつけてくださるなら」
「りょーかい。あれ付けるの面倒だけど、お前にピル飲ませるのも良くねぇしな?」
「……ピル……?」
「避妊薬だ。ホルモンバランス弄るから、体調面崩すのに良くないらしいぜ」
それだけ知ってて、本当にゲイホストだったのか。
単なる予備知識の一環なのか。
とにかく、さっきから散々弄ってる秘裂をどうにかして欲しかった。掻き出すのはもう終わってるはずなのに、入り口を弄る指先はそれ以上奥に挿し込む気配がない。
次第にもどかしくなってきたアイシアは、声が艶めいてきて、吐息が切なくも甘さを帯びてきた。
レイフロを見ると、アイシアに言わせたいのか口端を緩めて覗き込んでくるだけだった。
(強請るって……こう言うこと⁉︎)
先程の行為中に溢してた言葉の意味がわかり、アイシアは身体が急激に熱が高まるのを感じた。
その内と言っておきながら、堪え性のないこの吸血鬼は、結局のところさっさと実行に移したがりだ。
証拠に、喘がせても感度が震える箇所は避けている絶妙な加減。技が上なのは当然だが、昔のをすぐに引き出しすぎじゃないだろうか。悶える最中、アイシアはレイフロの望み通りにしそうで恥ずかしくてたまらなかった。
「…………んくっ。ふ……ぅうっ‼︎………あ……は、ぁあっ⁉︎」
「なぁ……まだ、ダメか? シアだって、シたくなってきただろ? ここも、どんどん溢れてきてるし」
「だ……だって、レイ……フロさんがそうやるか……きゃぁっ⁉︎」
とうとう堪えきれなくなったのか、レイフロは再びアイシアをベッドに押し倒した。濡れた手とアイシアの脚についた白濁の飛沫をシーツで拭うと、アイシアの脚を大きく拡げて自分の肩に乗せた。
「……強請ってくれるの、やっぱ期待してみたけど……アイシア頑固だもんなぁ? 朝までどうなっていくか、それも楽しみだけど……んっ」
「ちょっ、朝までって⁉︎ きゃっ、ぁああっ‼︎」
強引な発言と同時に、レイフロの勝手気ままな唇はまたもやアイシアの秘裂に口付けし出した。
そこからは、本当に耐えがたい地獄にも等しい色欲の魔物の時間だった。
レイフロは無知だったアイシアの知識を塗り替えるがごとく、体位なども複数も教え込み、結局注意したはずの射精も避妊具がない事を理由にして、子宮口に出すばかりだった。
解放されたのは、本当にレイフロが宣言した通り、結界外で朝日が昇る寸前までだ。体力よりも気力を削られすぎたアイシアは、レイフロの胸にもたれながら『……噂に聞く絶倫って、これなの』と、こっそりごちた。
「……レイフロさん、本当に瀕死の重体だったんですか……?」
今は先に夢に旅立った恋人は、アイシアを抱き込んでシーツにくるまっていた。
あれだけ致したからか、さすがの真祖でも疲労が蓄積したのだろう。もしくは、病み上がりだからセーブしてたのか。
(……どっちにしたって、色魔に変わりないわっ‼︎)
レイフェルにしたって、エヴァの特性を無理矢理活かされて浮気癖が絶えないとチェリルに聞いた事がある。本体のレイフロも夢魔に『アダム』と称されてたから、特性はなくとも無関係ではないと思う。
「…………でも、本当に……私でいいのかな?」
過去に嫉妬しない訳ではないが、アイシアはこの人の側に居られる間、ずっと自分だけに求めてもらえれるか、まだ少し自信が持てないでいた。
躰つきはそこまで貧弱ではないと自負してるが、顔立ちは東洋圏寄りなので、蠱惑的とは程遠い。レイフェルに密かに憧れてたアイシアとしては、同じ顔立ちのレイフロに飽きられないかと少し不安だった。
すりっと、胸元に頬を寄せると腰に回されてた腕に強く引き寄せられた。
「……まーだ寝れねぇのか?」
「レイフロさん?」
起こしてしまったのだろうか。
かなり声量は落としていたつもりだったが。
眠たげな眼のレイフロは、片手をアイシアの腰に、もう片方を髪に持ってくると汗で少し湿った黒髪を梳き、一房を口元に持ってきた。
その仕草が一枚の絵になるようで、アイシアは顔が赤らむのを自覚した。
「……シアは自信持てよ」
リップ音を立てて、レイフロは引き寄せた髪に口付けた。
始め、アイシアはその官能的な光景に言葉が出なかったが、余韻に浸っている間にその意味に首を傾げた。
「……自信?」
「そっ。俺が惚れたとこ上げたらキリねぇけど……レイフェルにもこの髪だけじゃなくて、
「……あれ、わざとだと思ってましたよ」
いつから起きてたかわからないが、元々眠りが浅いかもしれない。そこは突っ込まずに、アイシアはレイフロが言ってくれた言葉を噛み締めていた。
ぱちぱち瞬きしていると、レイフロは少しだけ苦笑いした。
「あいつこそ、欲望に忠実過ぎるぜ? 仕方ねぇとこもあんが、チェリルに頻繁に喧嘩吹っ掛けてるようなもんだとよ」
「…………えっ……と」
じゃあ、アイシアとの初対面で異常にすり寄ってきたのは、気があるかどうかはともかく、認められたということだったのか。相方のチェリルに嫉妬心を沸き起こすくらい、上級ランクだったと言う。
基準はわからないが、あのレイフェルがそう見てくれたのなら、幾分かは女として自信は持っていいのかもしれない。
何より、レイフロの『キリがない』と言ってもらえたのだから。
くすくす笑うと、彼に更に引き寄せられて、髪を何度も梳かれた。
「もう、寝な? 俺も……これ以上はちぃっと無理だしな」
「…………絶対に寝ます」
まだ余力があるなんて信じられない。
顔を上げたくなくて胸板に埋めると、頭頂にリップ音を落とされた。
そのまま髪に顔を埋められてしまい、やがて小さな寝息が聴こえてきた。
アイシアもそれにつられたのか、段々と瞼が降りてきて眠りに誘われていった。
(……ずっと、傍に居ますね)
いつかは彼を置いてく身だが、レイフロに飽きられない間はずっと傍にいたい。
アイシア自身も、もうレイフロから離れられないでいたから。
完全に眠りに落ちる前に、アイシアはレイフロの胸板に口付けた。