ライオンさんは、フレンズの中で特段、素顔の見えにくい存在だったように思います。だらだらした態度もまた人を使う方便であり、最後まで「プライドの長」の仮面を被り続ける。じゃあ彼女の素顔とはなんだろうと考えたとき、まずアニマルガールのライオンさんにとってプライドとはなんなのか考える必要があるのではないでしょうか。

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ライオンさんは、フレンズの中で特段、素顔の見えにくい存在だったように思います。だらだらした態度もまた人を使う方便であり、最後まで「プライドの長」の仮面を被り続ける。じゃあ彼女の素顔とはなんだろうと考えたとき、まずアニマルガールのライオンさんにとってプライドとはなんなのか考える必要があるのではないでしょうか。


『ライオンさんの母性の行方と男になりたかった子供達。あるいは遠江より赤土の舞う風、飽食の徒への反逆』

/起『舘山寺街道』

 湿気った臭いが鼻を突いて目が覚めた。

 お城の畳の上で寝ていたはずなのに。

 臓腑が急速に脈打ち、眼がらんらんと輝き始めたのを感じる。それでも目を閉じ、寝たふりをしていた。

 頬が痛い。でこぼこした石の地面だ。

 …………。

 ……当たりの気配を探ってもなにも感じない。

 とりあえず危害はない。

 そう起き上がった拍子に、

 カン、カンカン、コロコロコロコロ………ちゃぽん。

 体から何かが落ちて水音がした。

 しかし特に気にもとめなかった。大事なのは今この身の方だ。

 辺りを見回すと、見たことのない景色だった。

 表面がざらついた硬い石の地面がトンネルや屋根や坂を作っていて、坂の下には緑色に染まった水たまりがあった。

「どこだここ…………」

 セルリアンになんか、食べられてない筈なんだけど。

 昨日の記憶はある。

 へんなの。

「お~~~い!! みんな~~~~~~!!!! どこだ~~~~!! なんかここちょっと臭いぞ~~~~!! 助けてくれ~~!!」

 叫んでみると、後ろの建物からフレンズじゃない動物達が騒ぎ始めた。ちょっと怒ってる。ごめんな~~勝手に縄張りに入ってさ~~あ!

 城の堀みたいな水たまりをサンドスターを出して飛び越えた。サンドスターは出るみたい。

 そしてあちこち歩き回ってみた。

 ここにはたくさんのフレンズじゃない動物たちがいて、建物にいれられていても臭いでわかった。クマもバッファローもトラもキリンもいる。みんないるなあ。

 そうしている内に、ゆうえんちのゲートのようなところに出た。

 ……でも、ここはなんか嫌な感じ。

 よくない。

 赤い光。くるくる回っている。そして動物やフレンズ以外の、あまり嗅いだことのないツンとした臭いがした。

「おい、そこの!!」

 眩しい明かりが突きつけられる。

 フレンズでも動物でもセルリアンでもない奴ら。

 本能的に貴重なサンドスターを使って後ろに飛んでいた。

「なっなんだ!! くそっ、何処いった! 不良がッ!!」

 あっという間に光が遠ざかっていく。

 でも、わかってしまった。

「はぁっ。はぁっ」

 来た道を駆け戻った。そして最初の場所を見もせず通り越した。

 そうだ。

 ここは。

 ここは──

「ジャパリパークじゃないっっ!!」

 

 それからの道はよく覚えてない。

 とにかくゲートの明かりの反対に走った。

 あとは坂道を駆け下りたことと、川を見つけたときの安心感しかない。川は一段低くなっていて、暗く、草も繁っていたのでちょうどよかった。それでも、かばんによく似た臭いのする動物達に何度か会いそうになった。身を伏せて気配が遠ざかるまで何度も待った。

 それはとても情けなくて、誰でもいいからフレンズに会いたかった。

「くそぅ……」

 川沿いをずっと行くと、左の斜面から風が吹いてきた。

 何か甘い花の匂いがする。

 それに釣られて川沿いの崖を登ってみると、明かりのない静かで暗い森があった。

 そこで木に登って、ようやく人心地ついた。

 辺りを見回すと、石碑がたくさんある。なんだか知らないけど、音も光も少なかった。うれしい。ここはどこの林も森も明るすぎた。

 はあ。

 木に登ったら降りる気がしなくなってきたぞ。

「お腹減ったなあ。ボス、いないかなあ。みんなどうしたんだろう」

 木々と土の臭い、そして下の方から香ってくる花の匂いがジャパリパークと同じなことが、今は救いだった。

「寝て朝になったら、みんな元通りになってるよな~~~~!」

 木の上で横になろうとして、ふと花とは別の、微かだけどお腹をくすぐる匂いを感じた。

 これは、これは……食べ物だ!!

 そう思ってまた立ち上がると、風向きをよくよく調べた。

「どうしていままで気付かなかったんだよ~~~~!!」

 たくさん走ってるバスのツンとした臭いで鼻がおかしくなってたんだ!!

 一番近くの土にジャンプした。ここからも香りがする!!

「これかあ?!」

 土に転がっている果物を叩いて開けると、とってもとってもっ、甘い匂い!!

「うっわあ~~~~!!!!」

 うまいぞこれ!! はじめてっ、こんなのはじめてっ!!

「あま~~~~いっ!!」

 口の中にじゅわって広がるめちゃくちゃ甘い果物がッ!

 そこら中に、たくさんあるッッ!!

 ここは、ここは……、

 天国だ!!

「うま~~~~い!!」

 何個食べてもとまんないよ~~~~!

 くそ~~~~うまいな~~~~なんなんだこれ~~~~!!

 

 そしていつの間にか眠っていた。

 なんだかここの土やたらふかふかだし、ふかふか土の上に布が被さってて寝るのにちょうどいいし。

 みんなー! これ畳よりいいぞー! いいところ見つけたな~~。

「はあ~~~~しあわせ~~~~」

 しあわせすぎてぐうぐう寝たら、いつの間にか朝になってた。

 そして、声がした。

 声だ。

 すぐ、近くまで、来ている。

「うわっ、うわああああああ!! にいちゃーん!! プリンスメロンがッ!! 全部食われてるウウウウ!!!!」

「なにぃいいいい!!!!」

「半分に割られて、すっからかんだああああ!!」

 な、なに……?

「うわぁぁぁぁっっ、綺麗に食べたな~~~~。鳥じゃないな。猪だってこんなきれいに食べないよな……。本当にきれいに真っ二つだ。こんなのはじめてみ──」

「あ、あのさ~~~~」

「ヒッ」

 言葉が通じるみたいなので草の影から声を掛けたらすごい顔された。

 ちょっとショック。

「ここ、キミの縄張り? ごめんな~~、勝手に漁って。でもすごくおいしかったよ~~~~!! いいなあ、こんなのが縄張りにあって! ヘラジカもどうせ合戦ごっこするならこういうとこじゃなきゃな~~~~!」

「あ、あの……?」

「あ、ごめんごめん! わたしライオン! よろしくなー!! へいげんちほーで寝てたはずなんだけどさーあ、なんか全然知らないところに来ちゃったんだ。ここなんていうちほー? きみたち、なんていうフレンズ? あんまり嗅いだことない臭いだなー」

「え、あ、あの…………ぼくは勇です。ここは、みかたっぱらですけど」

「ミカタッパラ? ミカタッパラちほー?」

 聞いたことない。

「結構有名なんですけど……。ほら、あの家康が信玄に負けちゃって、味噌っちゃった……」

「イエヤス? シンゲン? ミソ?」

「……」

「……」

「あ、あの」

「────うッ、ウワアアアアアアアア!!!! だ、だれだおまえっ~~~~!!!!」

 

* * *

 

 五月末。

 新緑の終わり、夏の始まり。泰山木の甘ったるい香りがする今日この頃。

 捕まえた畑どろぼーは、なんと耳としっぽが生えてる女の子でした。

 そのうえ素手でメロンを割って、まだ小粒とはいえ、何十玉を一晩で全部平らげてしまう怪獣でした。

 女の子は「おなかがへってた」と意味不明な供述をしており、にいちゃんの額に青筋がたちました。

 でも──

「うまい!! うまいうまい!! お米っていうのは、カレーだけじゃなくてミソシル?っていうのとも合うな~~!! あと焼き魚? こんなの初めて食べたよ~~!! いさむが捕ってきたのか?!」

「普通に、スーパーで買ってきて焼いたんだよ」

「そうか~~!! そっかそっかー!! よくわかんないけどこれはすごい発見だなーあ!! みんなも連れてきてあげたいな~~!! 博士達はきっと一番喜ぶぞ~~~~!」

 ……今は、この地域の特産品のジャガイモの収穫期です。

 梅雨が来る前に収穫して乾燥して出荷しなければなりません。

 それに果樹園もあって、にいちゃんが始めた畑もあります。

 大忙しです。

 だから、この畑どろぼーさんが美味い美味いと朝ご飯を掻き込んでるのを見て、みんなフィールドウェアに長靴履いてさっさと行ってしました。わかってる。ジャガイモの収穫は午前中が勝負。仕方ないんだ。

 でも泥棒と子供を二人きりにさせるなんてないよね!

「あの、ライオン……さん?」

「ライオンでいいよ~~~~! いや~~~~すごいなー、いさむは! こんなおいしいの食べられたら毎日天国だなー!!」

「ライオンっていうのは、なんか、あだ名みたいな感じなんですか?」

「違うよ~~!! ライオンはライオン! 百獣の王!!」

「その、耳とか、しっぽとか、アクセサリー…………ですよね?」

「あ、そうそう!! いさむ達はもしかしてヒトか?! ヒトのフレンズか?!」

 無視された。

 フレンズってなんだろう。

「えっと、そうです。ヒトです。人間です」

「そうかそうか~~!! よくわかんないけどカバンより先にヒトの住むとこに来ちゃったな~~あ!! ────ってあ、もうなーーーーい!!!! ミソシルと魚ああああ!!!!」

 とりあえず、どろぼーさんのためにおかわりを作りました……。

 こんなアホなことをしている人間は僕ぐらいだと思います……。

 

 ばあちゃんやじいちゃんは、彼女のことを秋葉山の天狗じゃねえかと言います。

 とうちゃんとかあちゃんは、こんな田舎に金髪の外人さんなんて珍しいねえとあんまり気にしていません。

 にいちゃんは丹精込めて育てたメロンちゃん達が全部食われて青筋がたっていて、ねぼすけの義姉ちゃんはそんなにいちゃんを置いて車をすっ飛ばして仕事にいきました。

 ……ライオンさんが言うには、ライオンさんは元々ジャパリパークという島にいて、いつものように暮らしていたはずなのに、目が覚めたら動物がたくさんいる場所にいて、歩いていたら赤い光がくるくる回っていて怖くなってここまで逃げてきたそうです。

 話からすると、起きたのはきっとハマズー。そこから結構距離があるのに一生懸命ここまで川沿いを走ってきたみたい。

「なんか、よくわからないけど、大変だったね、ライオン…………姉ちゃん」

「そうだよー!! 初めてだ~~~~あんな怖い思いしたのは~~!! それに真っ暗闇の森がどこにもないんだよ~~!、どこもかしこも明るいしバスみたいなのがひっきりなしに走ってるしさあ~~!!」

 正直、ジャパリパークなんて島きいたことがないし、ただの酔っ払いじゃないか、クスリでもやってるんじゃないかと思う。やたらテンション高いし。

 ただ確かなのは、しっぽも耳も本物だっていうこと。それを体の一部のように動かせること、そして言葉の意味が時々通じてないってこと。

 そして、このひとが、おそらくその手の悪い人じゃないっていうこと。僕も不良と付き合いがあるからわかる。不審な人は隠しきれない違和感を発する。その点、この人は元気いっぱいでトンチンカンなだけで不穏な気配がない。

 あとは…………すごく、美人です。うん。

 上機嫌の猫や犬みたいに人懐っこく笑いかけてきます。

 こんな風に笑いかけられて、この人に好意をもたない人はたぶんいないと思います。まあそれは逆に警戒しなきゃいけないことかも。

 でも可愛い。

「あ~~おいしかった!!」

 ぽんとソファーに寝転ぶライオンさん。

 そういえばライオンさんの話では昨晩大冒険だったはずなのに、傷どころか服に汚れすらない。

 すごく不思議な人。

 初めて会ったのに、安心できる包容力があるような……。

 …………このあとどうなるかわからないけど、みんなにはぜったい悪いひとじゃないから、話してみれば分かるからって、言おう。

 このまま放っておいたらこの人が放り出されたら、後悔する気がする。

「ライオン姉ちゃん。僕学校行かなきゃいけないから、もう行くね」

「ガッコウ?! わたしも行っていいか?!」

「うーん、それは難しいかも。でも、みんな昼頃には一度帰ってくるから、じいちゃんやにいちゃん達に話しておくよ。ライオンさん放り出したりしないようにって。だってもう、ご飯を持ってきてくれるボスっていう人もいないんでしょ?」

「ううううぅぅぅぅ、ありがとなあ、いさむぅ。そうなんだよ、ご飯ないのがこんな辛いことだったなんて……。みんなもどこにいるかわかんないし…………」

「元気だしてよ。夕ご飯は朝ご飯なんかよりもっとおいしいの作ってあげるから」

「ほんとかーーーー!! すごいなあれよりおいしいなんて!! ほんっとにありがとな~~いさむぅ!!」

「うっ」

 抱きつかれたっ!!

 おっぱいっ。すごいおっぱいっ。むにゅってしていい匂いがするっ。

「じゃ、じゃあ、おとなしくまってて」

「ちゃんとだらだらしてるからな~~~~!! はやくかえってきてな~~~~!!」

 振り返ると、さっそくゴロゴロし始めたライオンさんの下着が見えた。

 これからガッコウに行くのにひどいはなしだった。

 

 

「おい勇、いつもんとこやっと新台入ったってよー」

「ごめん僕、今日家の用事あるから!」

 そういえば不良の友達も見逃してくれる。

 だって農家だもんね。

 今日はドキドキして学校どころじゃありませんでした。

 ライオンさんは、帰ったらもういないかもしれない。にいちゃん怒って警察に突き出したりしてなければいいけど……。

 家々の庭木の緑がざわめく中、急いで走って帰ります!

「たっ、ただいま! ライオンさんは?!」

「表の畑にいるはずだに」

 庭木の世話をしているばあちゃんが言った。

「えーっ?!」

 見えなかったぞ。

 大急ぎでカバンを放り投げ、また家の表に出ると、

「おーっ! いさむーー! これ楽しいぞーー!! あっはっはっ! ここで寝たら柔らかすぎて埋もれってっちゃいそうだー!! 見ろー!! もこもこだーつちー!!」

 ……手押しの耕運機で、畑を耕起しているライオンさんがいました。いままで一番向こうに行ってたみたいで、だんだん近づいてきます。

 眩しいぐらい陽気な姿。

 耳を隠すためか麦わら帽子を被っています。

 しっぽは、耕運機の影からぴょこぴょこ揺れてるけど……。

「──勇、明日半ドンだら」

 にいちゃんが果菜類や育苗用のハウスから出てきていいました、

「当分おまえが基本的なこと教えてやれよ。ライオンちゃん、寝るとこもねえって言うんで爺さん置いてやるって」

「ほんと?! やった!! …………でもにいちゃんは怒ってないの?」

 夏の初めだというのににいちゃんの肌はもう真っ黒。

 この前まで会社員やってたにいちゃんは、一生懸命です。

「……実は最初に鋤一丁渡して耕起させてみたんだよ。あんな細腕じゃあ使い物にならんと思ってな。そしたらあんな手押し使うよりあっという間に深く速く耕しちまった。びっくりだぞ、一度も鋤使ったことねえっていうのに鋤床まで平気でひっくり返してた。どっから力が出てんだ、ありゃ。開拓時代におったらさぞ重宝されたろうに」

 そう言ったにいちゃんは、ライオンさんを見てから僕に向き直って、

「……だから、まあ、プリンスメロンは、秋葉の天狗様にとられたと思って忘れることにしたわ。猫の手も借りたかったところだからな! …………それにライオンちゃん、美人だから、勇もうれしーら?」

「そっ、そういうつもりじゃないから!」

「────おーーーーい! いさむぅ! 夕飯まだかーーーー!! あっはっはっ!!」

 ライオンさんの楽しそうな笑い声が夕日でオレンジ色に染まった赤土の畑に響いています。

 こうして、ジャパリパーク?からやってきたライオンさんとの共同生活が始まりました。

 

 さて、そのライオンさん。

 みんなと同じようにお風呂に入り、食事をして、働いて、客間の布団で寝ている内に、耳としっぽがいつの間にかなくなりました!

 驚いてそのことを言うと、ぴょこんと生えます。

 でもまたいつの間にかなくなってる。

 これで外を出歩いても変な眼で見られなくなります。ほんとーに田舎は噂が巡るのが早いんです。他のことには興味がないしすぐ忘れられても人に関する噂だけは消えません。にいちゃんはそれが嫌で出て行って、色々あって帰ってきたときには、隣のじいちゃんに頭を下げて家の裏の畑を借りました。いつか買い取らなきゃいけないみたい。

「おーい、菊池んとこの。おまえさん二人目の女房もらったって聞いたに」

「おーこれよ。一人目と違っておっぱいでかいだら」

「よろしくね、キャピ☆」

「なんだー宇宙人みたいで何言ってるかわかんね。綺麗な金髪だら、外人さんかに」

「ライオン、あれだぞ。このおじさんがこの前、たきや漁で獲った蟹とかエビもってきてくれた人だぞ」

「え~~っ、ほんとか!!!! おじさんありがとー!! あれ初めて食べたけどめちゃくちゃおいしかったよ~~~~!! すごいなーー!! 鋤の尖ったやつで海の底泳いでるの突いて獲るんだろ~~~~すごいなー!! フレンズよりすごいなー!!」

「お、おう。…………ほんとに乳でかいだに」

 田舎特有のおすそわけ合戦で、ライオンさんがパシリ二等兵になると、あっという間に周りに溶け込んでいきました。

 ライオンさん、初対面でも一ミリも物怖じしないもんね。

 全くかっこつけないし力仕事でもなんでも軽々引き受けて、実際にやってしまえるものだから女性からも男性からも評判です。

 言葉も四則演算もどんどん上達してます。

 ……でもそんな働き者のライオンさんも、休みはいつもぼくの部屋でゴロゴロしています。ほんとーは今まで働いたことないんだって。だから実はずっとダラダラしてたいそうです。

 といっても、畑仕事はそんな楽な仕事じゃありません。働いたことないなんて信じられない。にいちゃんなんか帰ってきたばかりの頃、毎日夜になると脚がガクガクしてたんです。

 ……それはともかく、ライオンさんと畑に出るのは、本当に楽しい!

 ライオンさんは畑仕事が大好きです! 普通みんな大変やなーって言うのに、ライオンさんは全然そんなことないんです! それが嬉しかった。僕もずっと手伝わされてきたから。

「なあいさむー。いつもあそこにある大きい桶と機械ってなんの為にあるんだー?」

「あれは井戸から水を汲みあげるためのエンジンだよ」

「井戸ー?!」

「うん。それであの大きなタンクみたいなのに貯めとくの。普通の水使うと水道代すごいでしょ。だから畑灌来てないところが使ってたりするんだ。うーん、でもここ畑灌来てるのになんだろう。貸してくれてるおじいちゃんが使いやすかいから置いたままなのかな。昔は畑灌来てなかったのかな……」

 ライオンさんはもう耳がでなくなっても最初に被らされた麦わら帽子を使っています。

 お気に入りみたい。似合ってるもんね。

「なあなあ~~いさむぅ~~~~、なんでうちはトマト外で育てないんだ~~? こんな蒸し暑いハウスじゃなくて外で育ててあげればいいにさ~~あ! 他ん家はみんな外で育ててるぞ~~~~!」

 ハウスの中はあっついです!!

 兄ちゃんがとりあえず作ったものだから灌水も空調も微妙でたいへん!!

「それはたぶん自分ん家用だよ。トマトは外で育てると、雨が降ると肥料吸い過ぎて中身が大きくなって皮が破裂しちゃうんだ。ちゃんと食べられるんだけどね。裂果するとお店に出せないから」

「破裂~~~~?! 破裂したトマト、見てみたいなあ!!」

「お隣さんのよく見ればあるかもね」

「じゃあきいてみるか!」

「うん。すぐに見つか……あっ! キュウリ手でもぎったら次から罰金だって、にいちゃん言ってたよ!」

「え~~~~!!?? そ、そんな……。フレンズ助けだと思って、ひとつぅ~~~~!!」

「残念でした。売り物だよ。すぐバレるからちゃんと道具使おうね」

 日曜ですがライオンさんと真っ昼間から「朝採り」キュウリの収穫中です。

 にいちゃんにはライオンがいるといないじゃやる気が大違いだな、と嫌味を言われます! ありがとうございます!

「あっ、いさむ!! 『わたしの!』って刺さってるキュウリはとっちゃだめだぞー!」

 ……確かに目の前の株に、名札が刺さってる。

「でもこのきゅうり、もう獲らないとだめになっちゃうよ!」

「それ、にいちゃんにもらったんだー!! いいかー、そのままだぞー!!」

 のしのしとウンコ座りの蟹歩きでキュウリをとっては離れていくライオンさんが、叫んでいます。声デカいです。

「売れなくなっちゃうのに。どうするの」

「ふっふっふ~! ヒミツだな~~!!」

 変なライオンさん。

 ほうっておくとにいちゃんに堆肥にぶちこまれちゃうよ。

 

 せっせと二人でキュウリと格闘していると、唐突に声がしました。

「────お~~やってるやってる! おまえ全然ゲーセン付き合わねーからもう俺らと勝負になんねーぞ!」

 顔を上げると、六人の不良友達がいました。

 ここ数週間、全然彼らと遊ばなくなったから不審に思って遊びにきたようです。

「ごめんごめん」

「って、うおッッ………………なんだよ、そういうことか。おまえも隅に置けねーな!! 人畜無害で興味なさそうな顔してよ!!」

「え、なに?」

 今喋ってる一番リーダーっぽいこいつが丈治です。女たらしです。

「ほ・ら~~~~、そこのお姉さ~~ん」

「ん? なんだおまえら。わたしたちはしごとちゅーだぞ。それとそこ開けっ放しにしたらにいちゃん怒るからしめろ。びょーきがくる」

 と言いながら立ち上がったライオンさんに、

「うわっ!! 背ーたけー!! 俺達より高いに!! っていうか」

「おおおっぱいでけー!!!!」

「本物のブロンドだら! まぶしー!!」

「おっぱいでけー!!!!」

「スカートみじけぇっ。ねーちゃん、それで圃場出てんのけ? 勇んとこ露地ばっかやろ?」

「おっぱ──」「うるせえっ!」

 みんなが押し寄せてライオンさんを囲んでいます。子供のように群がってる。

 ……なに。なんか面白くない。

「い、いさむぅ~~。こいつらだれだ?」

 頭一つ高いライオンさんが、助けを求めるように情けない声を出しました。

 それが僕だけに向けられてると思うと、嬉しくて、

「……学校の友達だよ。みんな不良だから気をつけてね。とくに丈治は女たらしだから」

「おい!! 変なこと言うなよ!!」

 でも部活組をいれても一番気が合う連中です。

 細かいこと気にしないし、変なところで卑怯や臆病にならないし、嫌なことがあれば自分一人でも目の前のその人に先生に対してだって文句を言うところが好きでした。

「フリョウってなんだ?」

「勉強しないし、先生の言うことも聞かないお馬鹿さんのこと」

「おい、なんかこいつ調子乗ってんに!」

「ねーちゃん、なんて言うの? こんな奴放っておいて俺らと遊び行かん?」

「わたしはライオンだぞ~~。でもしごとちゅーだから遊ぶのは無理だな!」

「……ら、ライオン?」

「そんなことより!! おまえら、しごとしないでダラダラしてるのかー!」

「えっ」「は?」

「結構隠れてバイトしてるよな」

「なー」

「そーじゃない!! わたしはここに来てわかったんだ。いままでどれだけ安穏とご飯を食べてお腹をいっぱいにしてきたのか!! じゃぱりまんだってきっと誰かがこんな風に一生懸命作ってくれてたんだ……。……だからおまえら、しごとしろー! ガッコウ行っててもいさむみたいにできることはたくさんあるだろーー!! 社会に貢献しろー!!」

 今までの自分を棚に上げて偉そうに吠えてるライオンさんがおかしくて、

「…………なんか。すげえ変わり者だな、この外人さん」

「ふふ。でしょ」

 この前まで働いたことないって言ってたくせに。

 みんなぽかんとしています。

 思わず、笑ってしまいました。

 

 

/承『金指街道』

 六月!!

 この樹に咲いてる花はクチナシっていうんだって。

 ジャパリパークでは気にしたこともなかったけど、けっこーくさいな!

「なあ兄ちゃん、なんでガッコウ言ってるヒトは働かなくていーんだ?」

「それはなあ、学校で勉強するのが仕事だからだ」

 にいちゃんが額の汗をタオルで拭きながら言う。

 今日は、レタスの最後の収穫ちゅーだ!

 レタスはなー、ちょっと根を残すぐらい深く刈るのが大事なんだ~~。そして最後に水をぶっかけて土をおとすおとす!! これがたのしい!!

「でもいさむは、あいつら勉強してないって言ってたよ~~」

「あぁ? ああ。あの不良友達か。あんな奴らと付き合うなって勇には言ってんだ。田舎の不良と付き合っていいことなんかありゃしねえのによ」

 あ、白いちょうちょがひらひら舞ってる。きれい!

 でもこれ害虫なんだって。あんなにきれいなのにな~~あ。

 昔にいちゃんは虫取り網で捕まえさせられたんだってさー。ひどいな~。

「でもお金は? 勉強してお金もらえるのかー?」

「はははっ。逆にお金払って勉強しにいくんだよ。勇達はまだそんな掛からんけど。その内そうなる」

「仕事するためにお金払うのかーー?!?!」

「ああ。それはな。お金払ってちゃんと勉強すれば、そうやって払った以上のお金がもらえる仕事につけるんだ。だから俺は、あんな奴らと付き合うなって言うんだよ。あいつら勉強なんかする気ないからな。勉強しないんじゃお金払う意味がない。簡単なことだろ?」

「うん。うーーん……」

 にいちゃんの言うことは、あっているようなきがする。

 でも、なんかムズムズした。

 ムズムズ…………。

 だってさ、にいちゃんはこういうけど、

 若い動物のオスはみんなあんなだ!

 でもそれは、ヒトには当てはまらないのかもしれない……。わからない。

 ムズムズした気持ちを切り替えて、わたしはせっせとレタスをとった。

 これを包装してバーコード貼ってあちこちの直売所に置きに行くんだぞ!

 朝早い! いさむが料理させられてる理由がわかったよ!

 わたしも軽トラ乗って、直売所の帽子かぶってあちこち行った! わたしもクルマ運転できれば別々に搬出するのになあ!

 そしてもし余ったらわざわざ持ち帰らないといけない。それがまた手間だ!!

 じーちゃんやとーちゃん達がずっと昔からやってる、みかんやジャガイモやダイコンは販路っていうのが決まってるんだって。あなたのところから買いますよって、買ってくれるから直売所はいらないんだって。

 畑はいい作物つくるだけじゃなくて、ひとに認められて買ってもらうようになってようやく仕事になる。兄ちゃんはそう言った。それがたぶん、兄ちゃんがさっき一番言いたかったことだ。

 

 

 その電話は、久しぶりにいさむが不良友達と遊びに行った、次の日曜日に鳴った。

 わたしはじーちゃんに薦められた「七人の侍」を見ていた。面白いんだけど、たまになに言ってるかわかんないなーあ! ……とだらだらをお休みを楽しんでいたので頭にきた。でもみんないないから仕方ない。

「もしもしぃ~~~~えっとーこちらライオンですぅー。じゃなくてぇキチクですぅー」

「ライオンさん!! たすけて!!」

「おー、いさむかー? どうした~?」

「みんながっ、高校生に絡まれて……っ」

 喧嘩だという。合戦ごっこ……じゃない。

 場所だけ聞いた。

 駅前の方はにいちゃんに遠い直売所行くとき乗せられて、通りがかったことしかない。

 駅前はみかったぱらと違って風が巻いている。音も当てにならない。なかなか、いさむの匂いがわからない。

 それでも探した。

 いたのは商店街の隅っこの、小汚い路地だった。

 全員固まっていたが、争いの気配があった。

 そしていさむも含めてみんな、殴られていた。

「──やあやあ、みんなで合戦ごっこかー! でもなー、合戦ごっこは一応相手に怪我をさせないってルールがあるんだ。フレンズじゃないヒトはよわっちいから、合戦ごっこはだめだぞー」

 ね、ねえちゃん、といさむの小さい声がする。見つかってよかった。

「……なんだあ? おまえ」

 いさむ達より相手のヒトの方が明らかに体格がいい。

 きっと兄ちゃんが言ってた、お金を払って勉強する年齢なんだろう。

「こいつら、わたしの身内なんだ~~。事情はわからないけど、もうかんべんしてやってくれないかなー」

「……外人か、都会もんか知らねえけど。勝手に話進めんじゃねえよ。スケはけえれ」

「頼むよ~~~~! ここはひとつ、穏便に~~~~わたしの顔を立てて~~!!」

「はあ? 何が穏便だコ──」

 頬を引っぱたいた。場が凍る。

「──な」

「な! お願いだよ~~。わたしが代わりに謝るからさ~~~~!」

「ふざけ──」

 また引っぱたいた。

 そして尻餅つかせたその頭に、ずいと寄った。

「…………おい。わたしに『失せろ』と三度言わせたウツケなら、多少の勘発は免れずとも文句はあるまい?」

 他の誰にも聞こえないよう、耳元で囁く。

 次は手加減しない。

 わからないのなら。

「………………わ、わかった」

「おー! そっかぁ~~~~!! わかってくれたか~~~~!! よかったよかった!!」

「……おい、行くぞ」

 奴らが消えるまで見送った。

 …………やれやれ。

 まったく。

 これが、にいちゃんが言ってた、お金を払って勉強をするヒトなのか?

 お金を払って勉強しても、ヒトはこんな風になるのか?

 これで本当に、ちゃんとしごとできるのか?

 ……そして、いさむのフリョウも、こいつらも、いずれこんな風になるのか?

 じいちゃんもとうちゃんもにいちゃんも一生懸命圃場で頑張ってるのに、こいつらもこうなるのか?

 いさむも、こうなるのか?

「ね、ねえちゃん……」

 いさむが声を掛けてきた、やっぱり右の頬が腫れている。

「あ~~! 疲れたな~~あ! いさむぅ、自転車こいで乗っけてくれよ~~! もうここどこかわかんないしぃ」

「う、うん!」

 いさむが急いで自転車を回してくる。

「おまえらも、怪我の手当はちゃんとしろよ~~。怪我を放っておくのは、あいつらと同じウツケだからな~~~~!」

 聞いてるのかどうか、不良達は無言でうなだれている。

 今はいさむの方が大事だ。

「ねえちゃん!」

「お~~~~! しゅっぱつしんこー!」

 自転車の荷台に飛び乗ると、奴らがいつの間にか一列になっていた。

「──ライオンさん、あざっした!!」

「あざっした!!」

「お、お~~~ぅ」

 一列になって頭を下げている。

 意味はよくわからなかった。

 ……帰ってからは、いさむの頬の傷の手当てをした。

 いさむは何も言い訳をしなかった。

 でも、とうちゃんやにいちゃんはめたくそに怒るだろうなあ。

 よしよし。

 いさむは、腕の中に収まるぐらい小さいんだ。

 合戦ごっこなんかしちゃだめだよ。

「……ねえちゃん。誰も気付いてなかったけど、怒ってるとき、耳としっぽ出てたよ」

「あはは! ほんとか~! 誰にも見つからなくてよかったよ~~!」

 手当が終わっても離さないでいると、いさむがもぞもぞし始めた。耳まで赤くなってる。

 かわいいなあ~~。ムズムズするよ~~。

「………………助けに来てくれてありがと、ねえちゃん。でも、キチクじゃなくて、菊池だからね」

 金指街道を通る車の音がたまに聞こえてくる家の中で、湯気が出そうなぐらい首裏を真っ赤にしながら、いさむが言った。

 ぎゅってすると、みるみるちっちゃくなった!!!!

 こいつぅ~~~~! いじめがいがあるなー! くそー!!

 

 

 それからいさむの不良友達は、わたしを姉貴と呼んでしょっちゅう遊びに来るようになった。流石に名前も覚えてしまった。丈治、しろー、よっしー、いっちー、もりたけ、みつよし……たぶん。ヒトってみんな名前が違うから大変だな~~。

 その日は猛暑日で、にいちゃんも日が傾いてからやろうと言うので縁側で涼んでいた。

 わんこの太郎は縁側の下に潜ってる。

「あついな~~~~たろーーーー! こうして思うと、ジャパリパークはいいところだったな~~~~」

 ご飯は勝手に出てくるし、あつさもかわらないし。

 ここもいいとこだけどなー。ちょっとクルマが多すぎるな~~。でも街の方はもっとすごかったな~~~~。ヒトってクルマ好きだなあ。くさいのになー。

「姉貴! 差し入れっす!!」

「おーありがと~~!」

 六人がどかどか庭に入り込んできた。そして色とりどりできれいな缶ジュースをたくさん抱えてる。

「うわ~~!! やた~~~~メロン味! いただきまーす!!」

 うまーーい!! ジャパリパークにもメロンがあればな~~~~! あるかな~~?

「でもこんなにたくさんどうしたんだ? お金もちだなーー」

「そりゃ、自販機に手ぇ突っ込んで」

「ぶッッ!!」

 飲んじゃったじゃないか!!!! 先に言え!

「返してこい!!」

「えっ、でも」

「でもじゃない!! わたしに二度──」

「返してきますッ!!」

 はあ…………。

 いさむの言うとおり、悪いやつらじゃないんだ。

 かわいいところがある。

 でも、フレンズと違って、悪くはない、かわいいところもある、じゃたぶんダメなんだ。

──田舎の不良と付き合っていいことなんかありゃしねえのによ。

 フレンズと比べて、ヒトってなんなんだろう。

 似たような姿をしているのにこんなにも違う。

「ヒトって、むずかしいよ、たろー。おまえ、フレンズにならないか? ヒトのこと、教えてくれよ」

 たろうはチラリとこっちを見て、また寝た。

 そのうち、六人とも帰ってきた。手がちょっと血だらけだった。

「なー六人とも。おまえら、マジメにべんきょーする気ないか?」

「うっす!! 俺達、姉貴のためなら鉄砲玉だってなんだってやります! でも勉強はできません!」

「なんで?」

 全員が顔を見合わせる。

「馬鹿だからっす!!!!」

「……どのくらい馬鹿なんだ?」

「もりたけはドベ二です!!」「お、おい! 俺かよ!!」

「ドベ二って後ろから二番目? 何人いてドベ二なんだ?」

「はい!! 百うん十人でドベ二です!! もりたけが一番馬鹿ですが、俺らみんな似たようなもんっす!! 全員百位以下です!! 手の施しようがない馬鹿なんっす!!」「カンニングしないだけマシだろ」「あー、あいつとあいつとあいつ、カンニングっていうか、用紙見させてるよな、あいつに」「つっても見させてる方も馬鹿だから、大してちがわねえよ」「ぎゃはは、ちげえねえ!」

 ……なんか、むらむらと燃え上がるものがきたぞ!!

 これはどうにかしなくちゃいけないなー!!

 今までにないパワー!!

 こいつらはプライドの若い雄ライオン!! これだ!! これだぞ!!

 よお~~し!! 俄然やる気が出てきた!!

「あっ、いさむ! おかえり!!」

「ただいま~~。にいちゃんが、そろそろ始めるって~~~~」

「うんうん! それより、こいつらがつぎのテストで百位以内に入るのって大変か?!」

「え? あ~~~~……う~~ん、そうでもないでしょ」

「はあ?!」「なに言ってんだおまえ!!」「てめー他人事だと思っててきとー言うなやコラァ!!」「いてこますぞ!!」

「いや、だって、こう言っちゃ悪いけど、百位以下の人ってみんな勉強してないし……。期末だからちょっとあれだけど、全然やれるよ」

「よくいったな~~~~!! いさむぅ~~~~!!」

 えらいぞ! あとでなでなでしてやるぞ~~!

「ころすころす!!」「こいついてまえや!! いてまえ!!」「ライオンちゃんのまえだと調子乗りやがるだらこいつぅぅぅ!!」

「だって、ほんとのことだもん……」

「よしよし! おまえらも怒るな~~~~! なんの褒美もなしにやれっていうんじゃないぞ~わたしは~! もし全員百位以内入ったらなんでもいうこときいてやるからなーあ!! 新しくできたっていうプールでもなんでも遊びにいこう!! わたしはちょっとおかねもちになってきたからなー!! 奢ってやる!!」

 ……。

 場がしんと静まりかえった。

 なんだ? ん?

「ど、どうした? そんなに嬉しい?」

「姉貴、なんでもっすか?」

「ま、まあ、無理なことじゃなきゃなー。プールとか、プールとかな?」

「ねえちゃん!」

「……百位以内目指すことに反対のやつ、いるか?」

 丈治が神妙に言う。

 なんだこいつら。

 わたしなんか変なこと言った?

「よし。勇は俺達に教えろよ」

「うえ~~~~……」

「じゃあ、まず手分けして明日の放課後までに各部から過去問集めるぞ。勉強はそれからだ」

「な、な~~あ。なんで急にそんなやる気になったんだよ~~? そんなにプールわたしと行きたかったか~~?」

「もちろんっすよ。あ、それじゃ、俺達、『勉強』、しますんで」

 やつらは整然と庭を出て行った。

 ……なんだ。

「なんだよ~~~~!! あいつらなんなんだよ~~~~いさむぅぅ!! そんなにわたしとプール行きたいのか?! そうだよな?!」

「ねえちゃんがなんでもなんて言うからぁ……」

「わたしは、あいつらがプライドの若いオスを思い出させるから、ちょっと手助けしてやろうかなって……思っただけなんだよーーーー!!」

「そ、そうなんだ。ま、まあ大丈夫だよ、たぶん。あいつら凝り性だから。悪いやつらじゃないって知ってるでしょ。女の子になんでもなんて言われてやる気にならない方がおかしいし……そんなに変なことは言ってこないよ…………たぶん」

「たぶんか~~~~!!」

 当たり前だけどカバンはヒトのフレンズで雌だったんだな~~~~!

 雄のことはぜんぜんちがうよなー!!

 うが~~~~っ!

「──こらー!! また縁側ガリガリしてるからにライオンはー!! 太郎の方が行儀ええぞー!!」

 うう…………ごめんなあ、ばあちゃん……。

 あいつらが悪いのよ……。

 

 

 六月から七月になり。

 井戸の大きな桶のオタマジャクシがカエルになり、葉物やジャガイモの収穫もとっくに終わって、にいちゃんの畑でオクラやナスのきれいな花が咲いているころ。

「──ねえちゃん! まさかのまさかで本当に全員百位以内に入ったよ!!」

「ほ、ほ~~~~う……」

「いやあ、口ではああ言ったけど、みんな三週間しかないのに本当よくやったよ! 期末だから結構範囲広いんだけど、最後はみんな英語とか範囲全文丸暗記してたからね!! もう馬鹿とは先生達にも言われないよ!!」

「へ、へぇ~~~~よかったな~~……」

「…………腰、ひけてるね…………ねえちゃん」

「だってさあ~~~~!! フレンズにオスはいないんだよ~~!! なんでもって言ったらジャパリマンか遊びのどっちかなんだ!!」

 よっぽど情けなく見えたのかいさむが笑った。

 しょうがないだろ~~~~! あいつら怖いんだもん!

「わかった。みんなには勝手に言うなって言われてるけど、これ以上ねえちゃん怖がらせても悪いし」

「『なんでも』を教えてくれるのか?!」

「うん、それは………………」

 焦らすように黙り込むいさむ。

 俯いて顔が見えない。

「は、はやくいえーー!」

「────プールです!!」

「ぷ、ぷーる?」

「みんなで遊び行こうって! プール以外にも浜名湖行って潮干狩りしてマリンスポーツするの! あと夏野菜のバーベキューするからねえ、みんなで!!」

「な、『なんでも』は……?」

「そんなひどいこと頼むわけないでしょ! だってみんなねえちゃん好きだし! 助けてもらったし! それで嫌がってること頼むなんていくら不良でもひどいだら!」

 こ、この……。

 このぉ…………!

「なら、なんでもっと早く言わないんだよ~~~~!!!!」

「ごめんね、怖がらせて。でも、何でもなんて言うねえちゃんが悪いんだよ」

「うが~~~~っ!!」

 うがぁ~~~~!

「──こらー!! またテーブルで爪研ぎしよってからにライオンはー!! ほんまいっこくだにー!!」

「ご、ごめ~~ん、ばあちゃん!!」

 

 

 ジャガイモ畑は夏の間はきゅうけい!! 雑草ひとつなしにきれーに整地されてぅ!

 九月になったら大根植えるんだってさあ~~! たのしみだなー!

 にいちゃんの畑の方は毎日とらなきゃいけないものがたくさんあるんだけど、じいちゃん、とうちゃんが手伝うから、わたしはちょっと遊んで来ていいって!!

 やたーー!!

 でもわたしの枝豆ちゃんと苗から育ててるシソちゃんと残してもらったキュウリくんの株はちゃんと手入れするぞ~~! 苗半作っていうんだって! 苗のできで作物のできの半分は決まっちゃうんだってさ~~あ!! たいへんだなー!

「おらおら~~~~、どけどけーカエルどもー踏んづけちゃうぞー!」と畑のカエルを蹴散らすのも楽しいんだけど……。

 今日はプールだ!

 真っ白な太陽、カンカン日照り! どこまでも青く青く広がる空!!

 こういうのをプール日和っていうんだって!

 流れるプール、たのしみだな~~~~!!

 水着はよくわからないから、にいちゃんの姉ちゃんに選んでもらった。

「ああ~~おっぱい大きいわね~~半分わけて」ってもみもみされた。店員さんも驚いてた。

 おっぱいなんて気にしたことない。

 フレンズもみんな気にしてなかったし。

 でも着替えて更衣室から出ると── 

「うわああああ姉貴いいいい!!」

 と、水着に着替えたわたしを見た丈治が床で転がり出した。

 みんな見てるからやめろ。

「勃たなかったら百万円」「ライオンちゃんでかすぎる」「姉さんの、この無自覚なのが健康的でエロい!!」「ねーちゃんのくびれ、くびれとうよ!!」「あ、勃った」「あ、おい! あそこのブーメランパンツ男も勃っとる」「ぎゃはは!! 見ろよあれ!」「ひゃははは!」」

 こいつら楽しそうだな!!

「……いさむぅ~~~~、わたしはビニールボートに乗ってゆらゆら流されてみたいんだ~~~~!」

「ならねえちゃんも手伝ってよ!!」

 いさむがボートの空気を入れ終わり流れるプールに置くと、その身体を抱えて一緒にボートに乗った。

「うわっ、勇ずりいいいぞ!!」

「ひっくりかえせー!」「抜け駆けをゆるすなー!」「おとせおとせー!!」

 ドボンドボンと入ってくるやつらにボートが引っ張られる。

「こらーー! やめろーーーー! あっちいけーーーー!」

 いさむが落ちないように片手で押さえるとおっぱいにうずまっちゃった。耳まで真っ赤になってる。かわいい。

「抜け駆けするやつはこうだ!」

「あーーっ!! いさむ~~~~!!」

「ぶくぶくぶく……」

 いさむだけ引きずり降ろされていってしまった……。なんてことだ…………。

 え~と、こういうときは……。

 この前じーちゃんい連れてかれたお寺さんの……。

 あ~~おんなんのーちりちりそわか。おんなんのーちりちりそわか。

 

 それからうちの庭でバーベキューもやった!

 にいちゃんの畑でとれた夏野菜がーズッキーニ、ピーマン、トマト、キュウリ、茄子、にんじん、オクラ、トウモロコシ、じゃがいも! これが色とりどりできれいなんだよ~~! 周りのお家の人がやってきたら、女の人達がみんな綺麗だね~~って言ってたよ~~~~! きれいだよなー!!

 これをバーベキューにして肉と焼く! うまい! うますぎるっ!!

 そしてにいちゃんが油とコンロをもってきて、野菜を素揚げにしてぱくりと食べる!!!! やばい!! 野菜なのにあまい! 最高!! あっ、大変だ! ジャパリパークが遠のいていく!! だめだ、待ってくれジャパリパーク!! じゃぱりまん揚げつくるから許してくれ!

 ……そしてぇ~~、ここでわたしのキュウリくんの出番だ!

「おまえらーこれをみろー!! ふつうのキュウリのゆうに十倍以上の量を持つスーパーキュウリだー!! わっはっはっ!」

 これで帰っても働かずにキュウリを食べられるぞ~~!

「うわ、なにそれ」

「きもいキュウリっすね、姉貴」

「ゴミすか?」「堆肥だろ」

「ゴミじゃなーい!! わたしが丹精込めて育てたキュウリくんだー!! これならいくらでも食べられるだろー!!」

 ……いさむが黙って近寄ってくると、ばきっと真ん中で折った!

 お、折ったーーーー!!

「なッなにするだー!!」

「見て、ほら」

 ……真っ二つにされたキュウリくんは、中身がだいぶ空洞だった。

 なんで…………。

「それに皮が固くなっちゃうしシャッキリ感なくなるから、あんまりおいしくないよ」

「う、うぅぅぅぅ…………良い考えだと思ったのに」

「姉貴もへんなこと考えるなあ!」

「うちも毎年おばけキュウリ出ますけど、ここまではないっすよ! よく株倒れませんっしたね。相当っすよこれ。ゴーヤ?」

「うっうっうっ」

 あんなにがんばったのに…………。ごめんなあキュウリくん……。ひどいこと言われているのに守ってあげられなくて……。

 やっぱり百獣の王はだらだらしてるのがお似合いなんだ…………。ほっといてくれ…………。

「待ってて、ねえちゃん」

 そう言ってハウスのスーパーキュウリも何本かとっていって、いさむはバーベキューの終わり近くまで帰ってこなかった。

 そして、

「じゃーん! 肉と米詰めキュウリ! もっと時間があれば皮も柔らかくしたかったんだけど、逆に形がくずれなくてよかったかな! くりぬくの大変だったよ! あとねえちゃんのシソも入れました!」

 なんかすごい料理を持ってきた!!

「……う、うまい! うまいぞ!!」

「お~~、結構いけるな~~」「バーベキューって肉より野菜の方が大事だよな」「勇、おめー料理できたんけ」「繁忙期は毎日作ってるっていつも言ってるだら!」

 な、なみだがでてきた……!

「いさむぅぅぅぅ、ありがとな~~~! キュウリくんもおいしいぞ~~~~!!」

「よかった。ねえちゃん、ずっと世話してたもんね」

 ほんとにいさむはいいやつだな~~~~!

 よかったなぁー、キュウリくん! シソちゃん!

 

 バーベキューの次は浜名湖行った!

 潮干狩りっていってアサリをとるらしー! いっぱい人がいた! これを味噌汁にいれるとおいしいんだ~~~~! でも、ジャパリパークだとあれだな! アサリのフレンズがいたらきまずいな!!

 それからマリンスポーツというのをやる!!

「なーなーなんで海行かないんだ? 海あるんだろ~?」

「表海はみんな行かないよ。遊泳禁止だし。泳ぐならプール。浜名湖は潮干狩り。だから今日やるのはみんな初めてやるんだよね。ライオンさんは保護者のふりしてて!」

「おー?」

 みんなで水着になった。

 水着になるとおっぱいに視線が集まる。係員のにいちゃんもチラチラ見てる。

 ……わたし、そんなにおっぱいでかいか? ふつうだよ!

「姉貴、俺達期待してますんで!!」

「あーおっぱいさま、なんまいだぶ!」

「じゃじゃまる、ぴっころ、ぽーろり!」

 こいつらは何故か無性に元気だった。

 でも肝心のマリンスポーツはやってみると最高に楽しかったよ~~!

 ゴムボートみたいなのに掴まって、高速ボートでぶんぶん振り回されるんだ!! みんな大口叩いてたくせに、ゴムボートから吹っ飛ばされてぱんぱん水の上を転がっていくんだよな~~あ!! 最後まで掴まってられたのはわたしだけだ~~! しろーなんかライフジャケットも水着もすっぽぬけて素っ裸になってた!! あはは!!

「あっはっは!! 楽しいなあ!! もう一度やろう!! 次はバナナボートだ!」

「いや、もういいっす……」「吐きそう」「なにがポロリじゃ。おまえがポロリしてどうすんだ。水着の紐ぐらいちゃんと結んどけ……」

 すっかり元気がなくなっている!

 わたしは係員のにいちゃんに頼むよぅヤらせてよぅ~~って言ったらなんともう一度タダでやらしてくれた!! ここはやっぱり天国かもしれない!!

 ジャパリパークのみんな、みかったぱらはいいぞーー!

 さすが徳川さんがいたところだなーあ!!

 お城はわたしの方が大きいけどなー!!

 

 

/転『姫街道』

 けれど西から急に来た雨で、遊びの時間は終わりになった。

「ライオンちゃん、こっちこっち!」

「お~~~~?」

 それは帰り道を少し外れたところにある、旅館みたいな廃墟だった。

「前はここらでよく遊んだに。雨宿りしてこ」

 みんな慣れた様子で中に入り階段を上がっていく。

 ついて行くと、

「おー! すごいな、これー!!」

 革張りのソファー、麻雀卓に…………タバコに、酒! こら!!

「久しぶりに来たからな~。他の部屋荒らされてないか見てくる」「バカップル共が肝試しに来るんだよな~」「ヤり始めるのがうぜえよなあ」

 と言いながらわいわいと五人が出て行った。

 残ったのは丈治といさむだけだ。

 …………なんか変な雰囲気だった

 二人ともわざと残ったみたいだ。

「──なあ姉貴、百位以内とったら頼みきいてくれるって話だけどよ」

 そして見計らったように丈治が、口を開いた。

「丈治!」

 そしていさむが何故か怒ってる。

「おーー! ここのところずっと、すっごく楽しかったな~~! ありがとなー!! なんか逆に悪いぐらいだよ~~!! 楽しいことっていっぱいあるんだな~~!」

「……それが。本当は、おっぱい揉ましてくれぐらい言うか、っちゅう話やったんよ」

「…………んん?」

「でも勇にそんなの良いわけないって怒られて、やめた」

 いさむと丈治の間に、妙な沈黙が流れている。

「なあ姉貴、次は全員で五十位以内獲る。夏休み返上で頑張るから……」

「んー。そういうことか。わかった!」

「ねッ、ねえちゃん!!」

「ありがとな~~いさむぅ。でもな~~わたしは、みんながちゃんと勉強してくれてうれしーんだ! いさむん家を見てわかった。ヒトもプライドをもつ! だからおまえらがそれぞれのプライドをもったとき、周りに認られるような人になっていてほしい! だからおっぱいぐらいなんでもないぞ!」

「でっ、でも! それじゃあ! ねえちゃんは、ねえちゃんのこと大事にしてるの!!」

「うん!! わたしはおまえらが大事だからなー!!」

 丈治が俯く。いさむは横向いていた。

 ばかだなー、こいつら! 気にすることなんて何もないのになー!! おっぱいあげるぐらいプライドの為ならなんでもないって当たり前じゃないかー!!

 よし!

 さっさと服を脱いだ! 下は水着!

「うっ…………」

 ふっふっふ!

 なんだかんだ言っても見てるぞ~~二人とも!! わかりやすいな~~!!

「ほらー! 恥ずかしがるなー!! どーんとこーい!!」

 二人の頭を抱えて抱き寄せると丈治まで耳を赤くしていた。

 こいつぅ、女漁りとかなんとかいって~~いさむとかわらないなーー!

「ほら~~、みんな帰ってくるぞ~~! そしたらもうこんなことできないな~~?」

 うわあ、こいつらもじもじしてるぞ!!

 なんか変な気持ちになってきた!

 青い水着。その上に手を導く。

 それでようやく、遠慮がちに揉み始めた。

「う、うん。そうだぞ。優しいな~」

 雨音が響く室内。

 二人は最初、おっぱいの輪郭を確かめるように恐る恐るなでていたけど、慣れ始めると乳首の場所を探すように水着を撫で始めた。

「あ、勃ってる……。ねえちゃん、水着の上からでも、わかる……」

「ふ、ふたりがやさしいからな……んッ」

 水着の上から乳首舐めてる……。

 熱い舌、吐息。水着を通して伝わってくる。

 雨音に、だんだん激しくなる胸の水音。

 二人が懸命に乳首をさぐっているのをみると、胸がじゅんとして……。

「あっ」

 少しずつ水着がずれていく。

 いや、ずらされていく。

 露わになった肌がどんどん舐められ、滑らされ、濡れていく。

 そして、

「きれい……」

「姉貴……」

 乳首が、水着からはみ出た。恥ずかしいほど勃起しているのは、見なくてもわかった。

 二人の視線を痛いほど感じる。

 だから、眼を閉じた。

「──あっ、うッ」

 敏感になった乳首を吸う二人の舌は、辛くなるほどやさしい。

「……二人とも、もっと好きにしていいんだ、よ……」

「ねえちゃんが、きもちよさそうだから……」

 丈治が水着を片方思いっきりひん剥いて吸い出した。そして、おへその下を指でなぞり始める。おなかが、震えた。

 いさむにも水着をとられると、もうほとんど裸だった。

 毛布に寝転がる。

 二人は追いすがるようにおっぱいにくっついてきた。

「いさむ」

 股間をふとももに押しつけてくるいさむが、ぷるぷるしている。

 お尻と腰を撫でると甲高い声を出した。

「出ちゃいそうか?」

「う、うんっ……」

「じゃあズボン降ろしてねえちゃんに出していいよ。汚したらたいへんだ。…………ありがとな、がんばってくれて……」

 いさむのコチコチになったおちんちんが露わになった。

 小さいけれど、一人前にさきっぽが反り返っていた。

「ねえちゃんっ、ねえちゃんっっ」

 ふとももに押しつけられるそれを、

「よしよし。いいこだったな」

 心からいさむの分身がいとおしく。

 何度か撫でてやると、ぎゅっとしがみつかれて精を吐き出された。

 ふとももに、びゅっびゅっと当たっている。

 それはながくながく続いていた。

「…………あ、あねきっ。おれも、おれも、もうっ」

 我慢ならない様子で丈治が言う。

「わかってる。ゆっくりでいいんだ……」

 上半身を起こし、隣に座らせ、おっぱいを吸わせながらゆっくりと丈治の撫でた。

 なで続けると、丈治の腰ががくがくと震え始める。

「だめだぞ、丈治。ゆっくりなんだから……」

「あ、ああああっ、そんなっ!」

 手を離すと、おちんちんが宙で苦しそうに首を振っている。

 真っ赤になった亀頭が本当に辛そうで思わず微笑んだ、

「あッ、姉貴ぃッ」

「ふふ、ごめんよぅ。じゃあゆっくり全部だそう……」

 股間に手を伸ばし、丈治の耳元でそう囁くと反り返って射精した。

「うあっ、うあぁぁぁぁ…………」

 高い声をあげながら白い液体を自分のお腹に出し続けた。

 おへそのところで湖みたいになってる。丈治浜名湖だ!

「まだ出るなー?」

「あっ、ああぁぁっ」

 快感でお尻の筋肉をぷるぷるさせる丈治から、少しずつ精液を搾っていった。

「ちゃんと全部だせよ……」

「はぁっ、はぁ……」

 弓なりになっていた丈治は放心してカウパーを洩らしている。かわいいやつ。

 次もがんばれ、男の子。

 

「──って、あーーーー!!!!」

 あ、とうとう帰ってきた。

 ふっふっふっ! 遅いぞ~!

「そりゃないよ、ライオンちゃん!」

「そうっすよ! 俺らがねーちゃんの身体でいったいなんべんっっ」

 こいつら、めちゃくちゃ悲痛だった!

「そんな情けない声だすなよぅ~~! 七人いっぺんなんて無理だろ~~! 順番にしようと思ってただけだ~!」

「いいっす! 順番なんて俺達いいっす」

「──うわちょとまて、よっよくなーい!! 順番じゃないとわたしがおもしろくないだろー!!」

 五人が半裸のわたしにどかどかと群がってくる。

 射精して情けない格好の二人を見て、

「うわーーーー! マジでずりい! 丈治と勇ばっかり!」「そうだそうだ!!」「油断もすきもねー!!」

「わかったよーー。もう好きにしろーーーー」

 というと、五人は歓声をあげた。

 わたしは膝立ちになって相手をしなければならなかった。思った以上に大変だった。

 こいつら性欲のかたまりだ!!

「おい、しろーどけよ。おまえ順位ぎりぎりだったやろ、そこゆずれや」

「喧嘩するなーー」

 よっしーがおっぱいにしゃぶりついてる。

 はむっはむっと音が聞こえそうなぐらい、おっぱいと乳首を舐めていた。

 背中からはいっちーがお尻におちんちんを擦りつけながら、お腹をぷにぷにしている。空いた両手でもりたけとみつよしのおちんちんを扱いてやった。

「姉貴っ、姉貴ぃっ」

 よっしーが音を立てて乳首を吸ってる。

「ライオンさん下も脱がしていい?」

「だめー。またこんどなー」

 そうきくと、いっちーは背中におちんちんを擦りつけ始めた。後ろからおっぱいも揉み始める。

「あ、やべ、もう出そう」「はっやいなおまえ」「早撃ちマックだな」

 うおッうおッと言いながらもりたけが射精した。

 ぴゅっと勢いよく飛んだ精子は顔に当たってどろりと流れ落ちていく。

 それを見たみつよしが、

「姉さん、舌も使ってよ」

「じゃあもっとこっちこい」

「おい、よっしー場所かわれよ。いつまでおっぱい吸ってんだ」

「ライオンさん、背中に出していい?」

 それから四つん這いにさせられて、いっちーにおちんちんくわえさせられたり、もりたけに水着ごしにあそこを散々舐められたりした。しろーがわたしのおっぱいを触りながら自分でしごいている。他のやつもまだまだ足りないのかお尻におちんちんを擦りつけては何度も射精する。お尻は、何度も何度も出されて、精液のしみこんだ水着のうえにまた精液を掛けられ、真っ白にどろどろになっていた。

 それから今度は丈治も乱入してきて、わずかに支えられながら、おっぱいにも射精されまくった。顔にも髪にもかかった。

 散々出したのにまだ場所取りで喧嘩を始めた。

 つかれたので好きにさせた。

 やっぱりこいつらは馬鹿だ…………。

 

 全員がからっからになったのは、すっかり雨もあがって爽やかな風が廃屋に入り始めたころだった。

 いや~~~~大変だったよぅ…………。

 いっぺんは無理だ! よくわかった!!

「──姉貴最高だったっす」「ねーちゃんの肌きれいだな~~」「こんな美人に触ってもらうなんてもう無理だなー」「おい誰か水とタオル買って来いよ」

「流石のわたしもだいぶつかれたぞー! でもいいんだ!! 次は五十位以内だからなー!!」

「えっ!?」「は?!」

「丈治がそう言ってたぞ。だからおっぱい揉ませろってさー!!」

 おっぱい揉むどころかやりたい放題だったけど、それはサービスだよー!

「…………まあ、そういうことで」

「おいいいい!! 聞いてねえぞ!!」

「ま、まあ、がんばるだけがんばろうよみんな!!」

「こういうときは『いけるでしょ』とかいわねーのなこいつは!!」

 

* * *

 

 八月。

 百日紅の香りの季節。

 変種のテッポウユリが目につくようになりました。

 ……貴重な貴重な中二の夏休み。

 みんな独りで勉強できるはずもなく、

 不良達のくそ暑苦しい勉強会が、毎日二階の僕の部屋で行われています。窓全開です。

──おーーい!! 二人ともーーーー!! カブトムシあげよーーーーう!! スイカについてたーー!! あ。あとアオダイショウもあるぞーー!!

──わーーーっ!!

 カリカリ。

 カリカリカリカリ。

「おい、勇。ここなんだ、ページかわって一気に難しいこと言ってるら」

「あ、そこは逆に簡単だに。前のページの公式を──」

──なあ、にいちゃん!! トウモロコシの収穫ってどうやって決めてるんだー!!

──……積算………………寒暖…………朝採り…………

──あっはっはっは!! そっかそっかー! トウモロコシはほんとに真っ暗なうちから朝採りするもんなー!! ほかのは昨日の朝採りや夕採りだったりするもんなーー!! なるほどなー!!

「…………ライオンちゃん、声でけえな」

「みんなに好かれてるから、苦情も来ないよ……」

「俺だったら『うるせえ!』って怒鳴り声飛んでくるわ……」

 カリカリカリ。

 カリカリカリカリカリカリ。

──ぎゃー!! にいちゃん!! ほっといたサニーレタスがモンスターレタスになってるぞー!! とーがたってる、樹みたいだ!! あっはっはっは!! でもいっぱい食べられそうだー!! エッ、堆肥?! マルチ代わり?!

「…………勇。窓閉めてエアコンつけねえ」

「ダメだって」

「…………そうかあ」

──さといもー!! 水がぁ大好きなぁさといもぉー!! 赤土でも美味しく育てよー!! にいちゃんのためになー!! いま水やるからなー!!

「……」

「……」

──って、ぎゃーーーー!!!!

「……なんだに」

「勇の兄貴がホースで姉貴に水ぶっかけてる」

「あ、姉貴の下着すけよる」「あっ、黒だ」「お、おうおうっ」

「あのエロ兄貴……っ。義姉ちゃんにいいつけてやろう!」

「エロいなあ。ねーちゃんって外人のノリでエロいよな」

「そうそう! ライオンちゃんは陽気なエロさだよな!! 健康的なのにエロくてよお!! 普通エロって、もっとチラリズム的なちょっと悪いことしてるようなさーあ!」

「チラリズムっておまえ」「むっつり野郎」「きも」

「うるせっ」

「……」

──ぶえっへっへっ!! こっこらーーーー!! いい加減にしろーー!! トウモロコシさんに水やれー!! くそーーーー! 中までびっしょりじゃないかー!!

「……」

「……」

「…………はあ」

「なあ、ライオンさん誘って」「プール行くか」「いこいこ」「アホらし」「……義姉ちゃんにいっとくから。ちゃんといっておくからにぃ…………」

 ぽいぽい放り捨て投げられる鉛筆くんたち。

 ……そんな風に、若干ねえちゃんと遊びつつも、みんなマジメに勉強した。

 別にねえちゃんに尻を叩かれたわけでもなく、もちろん目的としてエロいことは頭にあっただろうけれど……それだけじゃない。

 丈治は前は誰々とヤったって自慢してたし、いっちーだって女の子の誘い普通に断ってたし。女の子のお尻とおっぱい追いかけるだけならわざわざ夏休みに勉強なんてする必要ないんだ。

 それでも僕たちは、毎日を勉強に費やした。

 

* * *

 

 暑い暑い夏が終わって九月!

 ダイコンの播種がいっせーに始まった! この播種機っていうのもおもしろい仕組みだよ~~! でも、ジャパリパークに帰ってもこういう機械がないんじゃ大変だな~! 博士達ならつくれるかなー!!

 ダイコンは暮れまでに収穫して、沢庵にしたりもするんだって! 農家は毎月イベントがあるな~~!

 昔はばあちゃんも菊を育てて出荷してたみたい。カキ?って言うんだってさ!

「なあじーちゃん! わたし、みかんの方もさわりたいな~~!」

 納屋で長靴を履きながら、じーちゃんに訊いてみる。

 ダイコンを収穫してからジャガイモを定植するまであいだがある! そして、その間はみかんの繁忙期だ!!

 果樹園は露地のみかんとハウスのみかんで二つもあるんだよ! それがどっちも背の高い防風林に守られてるんだーー! みかたっぱらは、お山から北風がくるし、遠州のからっかぜが吹くし、冬は季節風で大変なんだってさ!

 いままではにいちゃんの畑ばっかりで、ここらで一番大きなみかたっぱらの直売所の人はもうみんななかよしで!! 搬入時間になるまで色々話すんだけど、みんなみかん詳しいからわたしもやりたくなってくるんだよ~! みかんも特産品だからなー!

「ええだに。ライオンは働きもんだに」

「そうなんだよ~! すっかり働き者になっちゃったなー!! こまっちゃうなー!」

「それにライオンが来てから家の中も外もすっかり明るく元気になったに。おまえさんみたいな大人物がうちに居ってくれて、儂ら本当に感謝してるんだに」

「あっはっは! じーちゃんはおおげさだなー!!」

 と言ったものの、かーちゃんに「ずっとここにおってくれていいに」って何度も言われたし、「勇の嫁になってくれたらええなあ」ってわたしのいないところで話してたのも聞こえちゃった。

 でもいつかわたしは。

「ライオン。女どもが言ってることは、ちっとも気にせんでええだに。あの跳ねっ返り達を更正させられるような人物は、百姓じゃおさまらん」

「そんなことないぞ!! 百姓はすっごくたのしいぞー!! それにわたしは更正なんてさせてないよー! あいつらが勝手に頑張ったんだ!」

 あいつら、かばんと違って力有り余ってる感じだもんなー! 人っていうより若い雄ライオンだからなー!

 ちょっと背中押せば勝手に走って転がってくよー!

「うん。でもな……。『よく聞きな! 百姓ってのはな!』『正直ヅラしてペコペコ頭下げて嘘をつく! 何でもごまかす!』『けちんぼで、ずるくて、泣き虫で、意地悪で、間抜けで、人殺しだ! ちきしょう! おかしくって涙が出らあ!』」

「あっはっはっは!! じいちゃん、三船敏郎の物真似うまいなあ!!」

「宴会芸やったから。……だからな、百姓が悪いっていうんじゃねえ。それでも、おまえはおまえにしかできないことを、やるんだに」

 ここは、じーちゃんのプライド。

 わたしは幸せ者だ。

「…………ありがとな~~、じーちゃん」

「おうよ」

 

 そして十月。

 いさむに、漂う香りが何かと訊いたら、金木犀だと言われる。

 テストの結果も出た。

 七人全員でいさむの家に押し寄せてきた!

 ってもう結果わかったようなものじゃないかよー!!

「じゃかじゃかじゃかじゃか!」

「いちいちためるなー!!」

「じゃーん!!」「全員五十位以内でーす!!」「俺らすげー!!」「俺らさいこー!!」「俺らってマジ頭よくねえ?!」

「やっぱ放課後、先公共に毎日教えてくれ攻撃したのが効いたなー! あれでだいぶ出るとこ教えてくれたようなもんだったからなー!」

「それでも夏休みちゃんと勉強してなきゃ教えてもくれなかったよ」「そうだな! 本気じゃねーって相手にもしてくれねーもんなーやつら! 職務怠慢だら!」

 みんなめちゃめちゃ楽しそうだ! よかったよかった!

「さて……」

「ああ!」

「ご褒美くーださい!」「やったー!」「わあい!!」

「おまえらほんとにおっぱいすきなんだな~~」

「わあい!!」「やったー!!」「うーれしー!」

「でもひとりずつな。この前みたいのはなしだ」

「姉貴さいこー!!」「ねーちゃんさいこー!!」「おっぱいさいこー!!」「おっぱいってマジ頭よくねえ?」

 うんうん!!

 よくやったな~おまえら!

 おっぱいおっぱいって本当に子供なんだからなー!!

 

 順番はじゃんけんで決めさせた。

 場所は前いった廃墟の旅館。

 ほんとはもっときれいなところがいいけど仕方ない。

 暗がりにカーテンの隙間から光が漏れている。ちょっとえっち。

 そして革張りのソファーで、わたしは抱きしめられていた。

「ねーちゃん…………ねーちゃん…………」

 しろーは甘えん坊だった。

 寝そべるわたしに抱きつかまり、ブラをとってからずっと熱心におっぱいを舐めていた。

 頭を撫でてやると気持ちよさそうに胸に顔をうずめた。

 そして、しろーの先走りでべとべとになった水着の股間に、おちんちんを絶え間なく擦りつけてくる。

「よくがんばったな、しろー。本当によくやったぞ」

「う、うんっ、ねーちゃんっ」

 しろーの吐息がいっそう熱くなる。

 その頭をかき抱くようにして、よしよししてやると身体が震え始めた。

 ねーちゃん、ねーちゃんと繰り返している。

「だいじょーぶだ、一度出してからゆっくりおっぱい舐めればいいよ」

 腰のあたりを少しだけ強く押してあげる。

 少し楽にしてあげよう。

 しろーが頑張ったのはよくしってるからな!

「あうっ、あッ」

 どくん、どくんと見えなくても勢いよくお腹に精液がかかっているのがわかった。

 それはとても熱い、エネルギーのかたまりに思えた。

「……気持ちよかったか?」

「………………うん」

 また、しろーはおっぱいを舐めていた。全然飽きないみたい。

「このまえ、おまえ、なかなか来なかったから……心配してたんだ。よかったよ~。いやだったらどうしようかと思った!」

「違うよ! そうじゃなくて…………なんか、一斉にいくと、虐めてるみたいでかわいそうだったから! みつよしには押しのけられるし、丈治なんて二週目するし。行きづらかった……」

 も~~~~かわいいなあ、しろーは!

「あ、なんか乳首かたくなったよ」

「それはおまえがずっと舐めてるからだ~~!」

 といいつつ、しろーのおちんちんがまた硬くなってもう一度出すまで、お互い横になったり、また上に乗っけてあげたりして長い間甘えさせたげた。

 わたし、かわいい子好きかも。

 よっしーも同じだった。いつもは姉貴姉貴って呼んでるくせに、二人っきりになると、ぎゅうううって抱き締めて離してくれない。でも、性欲はあるけどあんまりエッチなことには興味がないのかもしれない。抱き合いながら毛布を被ってたくさんお話した。ずっとこうしてたいって言われた。よしよし。よくがんばったな~~。

 ここまで、あまえんぼーばっかり!

 しょうがないな! 一丁前ぶっててもまだまだ子供だよ~~!

 そしてここからも、あまえんぼーばっかり!!

 いつも「ライオンちゃん」言うもりたけは、なんか最初大人ぶってた。

「下も脱がしていい?」

 とかなんかかっこつけて言ってきた。なんだこいつ。

 いいよって言ったら、いきなりあそこに指を入れてきた。

 すっかり油断していてぎょっとする間もなく、エロビデオみたいに指を突き上げてくる!!

「って、痛いに決まってるだろーそんなの!!」

「ふぎゃ!」

 思わず蹴っ飛ばしてしまった。

「い、痛かったすか?」

「痛いよ! エロビデオの見過ぎだー!!」

「す、スイマセン!!」

「あ、ううん。ごめんなー、おもいっきり蹴っ飛ばしちゃった」

「…………………めっちゃ吹っ飛んでますね、俺」

 それでもあーだこーだともりたけはエロいことを言うので、仕方なくおちんちんをおっぱいで挟んであげた。……本当にきもちいいの、これ?

「あっ……いいっす。さいこーっす。マジで」

「ほんとかぁー? わたしは全然楽しくないぞー」

「おぉぉぉ…………もっと、唾たらしてください」

 もりたけはおおげさな呻き声をあげて腰を動かしてる。

 でも呻いてばかりで全然出さないので、唾でべたべたにしておっぱいでぷりぷりしながら亀頭を舐めてやった。

「あぁっ、ライオンちゃんの舌っ、あっやべっタンマッ」

 亀頭がすぐにふくれてきて、もりたけの喘ぎが高くなる。

 これはたのしい。かわいいから。

 ぷく、ぷくぷくって竿から太くなっていき亀頭が膨らんでいく。

 ……うーん~~今だっ!

「あ。タンマだったなー」

 と言って止めてあげたぞ。ふふ。

「そ、そりゃないっす!!」

「まてまてー!」

「はっ、はやくぅぅぅっ、でちゃ、でちゃうっすよぉぉお!!」

「あはは。ごめんごめん」

 お詫びに亀頭を口にいれてあげた。

 精液がどばっと溢れる。

 もりたけは、わたしの頭を掴んでみんな出し切るように揺さぶっていた。長い長い射精でとてもこまった。

 でも満面の笑顔だったのでゆるす。

 蹴っ飛ばしちゃったしな!

 ……いじめっ子のみつよしは変態だった。

「いいか、これからはしろーやよっしーをいじめるなよー」「だって、あいつらいつも順位ギリギリなんだぜ。順序ってもんがあるだろ」「みつよし! おまえらが本当に一生懸命頑張って、それでわたしが順位なんか気にすると思うのか!! みくびるな!!」「ご、ごめんなさい!! 俺が間違ってました!!」

 罰としてお尻を叩いた。お尻が真っ赤になっちゃって、もういいかなと思い始めた頃、「うっうっうっ」と言いながらみつよしは射精した。それには本当にびっくりした。

「だ、だいじょぶか、みつよし? ……叩いて、どっか、変になったか?」

「…………すいません。気持ちよくて…………」

 叩けというように、また真っ赤なお尻を高く突き出しているので叩いてあげた。また出した。ちょっとこわかった。

 ……いっちーはやさしい変態だった。そして告白された。

 素股?っていうのをしてあげて、乳首をなめてあげると喜んでた。

 他の奴らと違って女の子の扱いに慣れたやさしさがあった。

 おっぱいを触るのも、あそこをいじるのも、肌に触れるのも、こっちが喜ぶようなやさしさだった。

「ねーライオンさん」

「なんだー」

 そして女の子から優しくされるのにも慣れていた。

 今はわたしの腕にすっぽり収まって、ちょうどよく頭を撫でられている。

「俺、ライオンさんのこと好きだよ。ライオンさんは?」

「わたしも好きだぞー!」

「そういう意味じゃなくて……」

「ん? ん~~~~??」

「……ライオンさん、たまにわかってるのにわかんないふりするよね。……はぁ、だからさぁ…………ほら、つがいになる的なことだよ」

「つがい! 夫婦! 嫁?」

「そうそう、ちょっと違うけどそれ! っていうかもうぶっちゃけ俺の彼女になってよ! いいっしょ!」

「うーん、無理だな!」

「え゛え゛! なんで!!」

「わたしがフレンズになるまえのライオンで、いっちーが雌だったらよかったなー! ごめんなあ!! でも、いっちーもわたしのプライドだからなー!! 大事だぞー!」

「…………え、なに。それが説明?! 全然意味わかんねーんですけど!! それが『ゴメンナサイ』なの?! 俺達のこと大事だって言うんならちゃんと説明してよ! 納得するまでは俺なれねーから!」

「うんうん! まずなー、ライオンはなーオスがそれぞれプライドっていう群れをつくってなーあ!」

 さいしゅうてきになっとくさせました。しつこかったです。

 でも、一番やばいのは丈治だった。

 はじめ見たとき幽霊かと思った!!

「お、おまえ、なんかちょっと顔白くないかー? 唇、真っ赤だし……大丈夫か? こんどにしよう。なっ?」

「ノー! この前は姉貴に情けないところ見られたからな! 今日は姉貴、勝負しようぜ。そのつもりできたんだ」

 顔色とは正反対に、意気揚々の丈治。それでお互いのあそこを舐め合って先に降参したほうが負けなたたかいごっこをした。

 丈治はいつもガサツなのに、あそこを舐めるのはマメで優しい。

 でもそっちで頑張っても…………ぴゅぴゅって~~♪ おちんちんからすぐに精液出ちゃうんだなー! かなしいなー! かわいいなー!

 けれど出しても出しても今日の丈治のおちんちんはなかなか萎えなかった。

「……へへ。姉貴、イくときはいってくれよな~~」

 なんて言っていたけれど、身体と身体で直接触れているからわかる。

 丈治はちょっと変だ。

 身体に妙に冷たいところがある。おちんちんはやけどしそうなほど熱いのに。

「……なー丈治。ちゃんと言ってくれないとわたしは心配でそれどころじゃないぞ。今日絶対しなきゃいけないんじゃないんだ。このまま勝負してもお互い正直になれないなら、寂しいよ」

 ……そう言うと、丈治はすぐに降参した。

 バイアグラっていうのを使っていたらしい。おちんちんが萎びなくなる薬なんだって。

 丈治はばか!

 でも、そこがかわいいところだよ!

 勝負はもちろんわたしが勝った。

 でもズルしたから降参しても許してあげなかった。おちんちんとたまたまを舐めまくって搾って搾って搾り続けたら人には言えない、とんでもなく酷いことになった。かわいそうだった。

 だけど丈治はかわいそうなのがよく似合う! 次もかわいそうにしてやろう!!

 

 

/結『満州街道』

 今日はにいちゃんとねえちゃんと一緒に、開拓農協の直売所にやってきていた。

 ねえちゃんはいつもと違い、軽トラの荷台に乗っかれて楽しそうだった。

 そして搬入が済んでからねえちゃんが訊いてきた。

「なあなあ~~満州街道ってどこにあるんだーいさむぅ」

「これだよ。目の前の道路。歩道だけのことを言うのか、僕も知らない」

「あ、なんだあ! みんな目の前の道のこと言ってたんだなー!! っていうか満州ってなんだー!!」

「昔はみかたっぱらは何もないどころか、樹とか岩がゴロゴロしてたんだって、特に未開拓だった台地の真ん中の方は。今は畑ばっかりだけど、まだ畑の真ん中に樹とか岩が転がってるところもあるよね。他じゃあんまり見ない光景でしょ。そういうところを満州っていう海外から帰ってきた人達が開墾して、いまのみかたっぱらにしたんだってさ。僕もじいちゃんにきいた話なんだけど」

「へえー。そうかぁ!」

 満州街道の、昔の面影を残すだだっ広さを眺めるねえちゃんは、何かに思いを馳せるようでいて、いつもと変わらずノンキだった。

 でも、ちょっとやつれた。

 仕事でも全然疲れた様子を見せないねえちゃんなのに。

 それは六人も相手にすれば、気に当てられて当然だ。

 だから僕は『ご褒美』なんていらない。

 でもねえちゃんはすごく驚いてた。「いいのか、いさむぅ?!」って。僕をなんだと思ってるんだろう。

「その代わり、ねえちゃん、デートしよ」

「デートってなに」

「二人だけで遊びいくこと!」

「なら行くかー!!!!」

 日を改めて行くことにしたら、ねえちゃんに得意げに家族に言いふらされた。

 そしたら義姉ちゃんがねえちゃんに駅前で服を買ってくれた。かわいい服で、ねえちゃんはなんか着心地悪そうだったけれど、似合っていた。

「お昼、おいしくてお洒落なお店と、おいしいけど僕たちがいつも行くお店、どっちにする?」

「いつも行くほう!!」

「あはは。ねえちゃんならそう言うと思った」

 金指街道を下って、入ったのは姫街道沿いの中華料理屋。

 みんなでたまに来るんだ。

「えーと、バンバンジーと蒸し鶏の旨辛和えとエビと特製サラダと鶏のカシュナッツ炒めと回鍋肉と四川マーボ激辛で。あと餃子とライス二つと最後に杏仁豆腐ひとつください」

「こ、こら! いくらなんでもたのみすぎだ~~!! それに偏ってる!」

 小さい声で、脚を蹴られた。

「だってねえちゃんと外で食べるとみんな食べられちゃうんだもん。最悪テイクすればいいよ」

 ここは前菜の量もめちゃくちゃ多い。だからすごいことになった!

 でもねえちゃんは全部食った。すごーい!

「はー死ぬかとおもったよ~~!! でもしあわせ~~~~!」

「じゃあお会計──」

「あっ、まって! わたしのほうがお金持ちだぞ、いさむぅ!!」

「僕が払いたいの! こういうのは! お金持ちかどうかより、払いたい気持ちの方が大事なの!!」

「ならわたしの払いたさも負けてないぞー!! はらうはらうはらうんだよー!!」

 デート早々けんかになりかけた。

 結局、店員さんに男の子に払わしてあげなよって助太刀してもらった。ちょーはずかしい。

 ねえちゃんらしいからいいけど。

 そしてねえちゃんを自転車の荷台に背中合わせにのっけて、舘山寺街道の坂道をぐんぐん降りていく。

「はやーい! いさむーー!! なーー、この前も思ったんだけどさーあ! ここやっぱり見覚えあるよー!!」

「初めの日に通ったんだね」

「そうだなー!! これだけ離れていさむのとこのメロン食うのはすごい確率だなー!!」

 僕は、ねえちゃんのことが好きだった。

 この竹を割ったような性格も、きれいな容姿も、人と人の関係を大事にするところも、畑仕事が大好きなところも、実はだらだらするのが好きなことも、世間知らずなところも。

 だから本当はもっとねえちゃんのことを聞きたい。どこから来たのか。どこでどんな風に暮らしていたのか。訊けば答えてくれるかもしれない。でも、訊かなかった。訊けなかった。

「あ~~~~!! ゆうえんちだ!! ゆうえんちだぞ、いさむ~~!!」

「この前入らなかったもんね」

 この前も観覧車を見て、ねえちゃんはゆうえんちだゆうえんちだと騒いでいた。

 天狗なんかじゃないんだと、それで少し安心したんだ。

 遊園地に入るとあちこち指さしてギャーギャー騒いで人の眼を集めるねえちゃんをひっぱって、とにかくアトラクションに乗った。

「いむさぅー!! カップルチケットってなんだー!!」

「二人連れで買うとやすくなることだよ」

「お得だなー!!」

 アトラクションを全部制覇すると言ってきかないねえちゃんに、観覧車だけは最後にしてもらって、夕方ギリギリになってロープウェイに乗った。

 ロープウェイに乗ったねえちゃんは大興奮で、

「おねーさん、この床の扉開けて良い?!」「だめです。そこは緊急時の──」「うおおお!! 浜名湖が全部見えるぞー!! いさむぅ、こっから落ちたら楽しくないか?! ドボンって落ちたら楽しくないか?! マリンスポーツだーー!!」「窓から身を乗り出さないでください!!!!」

 ガイドのお姉さんが本気で怒ってた。

 そしてオルゴール館でオルゴールと思えない大音量のオルゴールの演奏や全自動のオーケストリアンを聴いた。そのときだけは、ねえちゃんは静かになった。

「すっすごかったなー!! あれ、中に人が入ってるのか?! ピアノとかバイオリンとかラッパの音が箱からしたぞーー!!!!」

「あれが百年も前に作られたんだよ。すごいよね」

「すごいなーー!!!! ひとつ買って家でみんなできくようにしよう!!」

「それは、無理かな……」

 その代わりショップで安物のシリンダーオルゴールを買った。それでもすごく喜んでくれた。

 それから屋上展望台に行って、夕焼けに染まる浜名湖を見ながらカリヨンを訊いた。

 周りはカップルばかりだった。

「すごい景色だよ~~~~! きれいだな~~~~! すごいな~~~~!! ここ来てよかったな~~~~!」

 周りの人がくすくす笑ってる。

 ねえちゃんはいつも子供みたいだった。

 でもねえちゃんは、本当に大事なことは簡単に口にしない。どんなに笑顔でも。どんなに優しくても。どんなに無邪気にみえても。

 それがこわかった。

 本当はねえちゃんが、二度と会えないとても遠くの人なのかもしれないのが、こわかった。

「いさむーー! うちはあっちだよな?! あっちなのにあっちには森しかないぞ!!」

「あはは。そうだよね、森にしか見えないよね。でもあれ、みかたっぱらの台地なんだ。斜面に木が生えてるから山みたいに見えるんだよ」

「あれが、みかたっぱらかあ……」

 ちょっとだけ寒くなってきた。もうすぐ十一月になる。

 もうデートも終わりだというのに、『決心』がつかない。

 そして、つかないまま観覧車に乗った。

「おっ、おおっ、落ちたりしないか?! これ!」

「なんで観覧車でそんな興奮するのさ! 座ってて!!」

 夕陽が浜名湖を照らしている。

 こっちもきれいだな~~~~って。ねえちゃんは外を覗き込んでいた。

 この人と出会って、もう四ヶ月ぐらいになる。

 農家の季節はあっという間に過ぎていく。

「……ねえちゃん。馬鹿な僕達に付き合ってくれてありがと」

「ふふん。あいつらは馬鹿かもしれないけど、いさむは馬鹿じゃないだろ~~!」

 これまでもずっと一桁だったけど、この前の中間ではトップになった。

 夏休み、毎日六人に教えてたんだから当たり前だった。塾の先生がテストに出るようなものだ。

 だからご褒美なんていらなかった。

 本当にいらないんだ!

 それでも、もしなにかあるとするのなら……。

「ねえ、きいてもいい?」

「なんだよ~~! 水くさいぞ~~なんでもきけよ~~!!」

「ねえちゃん、もうずっと家にいてくれる?」

 天狗はいつかお山に帰る。

 いや、天狗じゃなくたって誰にも帰る場所はあるんだ。

「うーん、ずっとは無理だな~~」

「……そう、だよね」

「ジャパリパークは、きっとずっとずっと遠いところにある。でも、帰らなきゃいけないんだ」

 そう。

 きかずともわかることだ。

 ねえちゃんを待っている人達がいる。

 きっと、僕以上に長い時間を一緒に過ごした人達が…………。

 そういうことを一番大事にする人だって、わかってるじゃないか……。

「多分そう遠……って、おっ、おい! な、泣くなよ~~! いっいさむぅ、泣くなってば~~!!」

 ごめん、ねえちゃん。

「わたしにも残してきたプライドがいるんだ。いきなりいなくなって、きっとすごく心配してる」

「うん、わかってるよ……」

「いさむ達のこともすっごく大事だぞ!! でもまずはあいつらに大丈夫だって言わなくちゃいけないんだ!」

「うん……わかってる」

 そうだよ、わかってる。

 ……わかってる。

 わかってるわかってる!

 わかってるって!!

 だから良い子だって、先生からも家族からも誰からもずっと言われてきた!!

 でもそういう物わかりがいいのがいやで!! あいつらやねえちゃんの自分のやりたいことに一直線なところが好きだった!! わかってたっていいことなんて一つもない!! ただ誰かに褒められるだけだ!! そう、『良い子だね』って!!

 ねえちゃんがいなくなって、そんな風に褒められて、なんの意味もない!!

 だからッ、

「ねえちゃん!! ずっとっ、ずっとここにいてよっ!! どこにも行かないで、一緒にいてよっ!!」

 目の前の身体に抱きついていた。

「いさむ……」

 ねえちゃんの、困った顔。

 少し悲しそうな瞳。

 目の奥に見えた、遠いところにいるプライドを想う気持ち。

 だけど、

「ねえちゃん……」

 その唇が、目の前にあった。

 良い子じゃなくたっていい。

 ねえちゃんが、少しでも傍に居てくれるなら。

 だからキスをした。

 何処にも行かせないように。そして、もしかしたら帰ってきてくれるように。

 ねえちゃんは、拒まなかった。

「んっ、ちゅ、ちゅっ」

 ねえちゃんは、僕の下手なキスに唇をあわせてくれた。

 心地よかった。幸せだった。

 それから僕は、一心不乱にねえちゃんの唇を吸った。舌も挿れて。それにも、ねえちゃんはあわせてくれた。

 夢中だった。

 扉が開くまで観覧車の終わりに気付かないぐらい。

 ちゅっと一際大きな音を出して、唇を離し、

 ようやく恥ずかしそうな女性の係員さんの視線に気付いた。

 

 

 帰りは大変だった。

 僕が自転車漕いでるのに、ねえちゃんが荷台から首筋をかぷかぷ噛む。耳たぶを噛む。うなじを舐める。

 抗議の声を僕があげるたびに、うひひと悪戯っぽく笑う。

 股間がカチカチですごく漕ぎづらい。ねえちゃんはそれにも気付いているというように、僕の腰に掴まる手であそこを何度もなぞる。

 泣きそうだった。

「ね、ねえちゃ~~ん……」

「がんばれっ、いさむぅ! 坂道だーー!」

 暗いなか、もうとにかく漕いだ。

 その間ねえちゃんは、でかいおっぱい背中に押しつけたりして遊んでた。

 だから家について自転車降りた瞬間、またその唇を奪った。

 今度はねえちゃんも僕の口を吸ってくれた。

 家の前で、交互にキスの先手を取り合って、いつのまにかねえちゃんが手を恋人繋ぎしていてくれた。

 名残惜しく、繋いだ手を隠しながら家に入った。

 でも誰も居らず、テーブルに書き置きがあった。

「今日はみんな遅くなります。じいちゃんとばあちゃんが寝てるから起こさないでねハート」

 それでプツンと切れた。

 もうどうでもよかった。

 そしてねえちゃんにまた抱きつこうとして、止められた。

 それからねえちゃんに服を全部脱がされて、勃起したおちんちんを隠しながら風呂場に入り、一糸纏わぬ姿のねえちゃんも入ってきた。

 ねえちゃんは綺麗だった。

 もじゃもじゃ髪の毛を上手くアップでまとめたその髪型は初めて見たけど、似合っている。

 そして湯船につかる前に洗いっこをした。

 自分でも見たことないぐらい勃起してるおちんちんを見られ笑われた。

 ビンビンのまま一緒に湯船に入った。

「いさむぅ、おっぱい吸うだけだからなー」

「うん……」

「出しちゃだめだぞーみんな入るんだからなー」

「ぅん……」

 ねえちゃんはそう言いながら、おっぱいを吸う僕を抱いておちんちんを扱いていた。

 亀頭をやさしくクリクリされる。

 ずっと我慢してたのに我慢できるわけなかった。

 なんとか誤魔化すため、強引に体勢を変えてキスをした。のし掛かるような形で腰を引いた。

 でも余計にわるかった。

 キスを始めた僕をねえちゃんは後ろ首を掴んで離してくれず、おちんちんからも決して手を離さなかった。

「だ、だめだよ、ねえちゃんっ」

「うん。だからだめだぞー」

「で、出ちゃうっ」

 僕はもう足腰立たず、ねえちゃんに完全に捕まって口内を舌で蹂躙されていた。がっちり抱き留められておちんちんが愛されるように扱かれた。

「ねっっちゃんっ」

「……いいこだぞ、いさむ」

 そう言ってもらえた瞬間、弾けるように下半身に衝撃が走った。

 どっくんどっくんと、自分のものではないようにおちんちんが射精している。

「よしよし。がんばったな~~」

 ねえちゃんは僕の汗まみれの顔を愛おしげに優しく流してくれた。

 そしてゆっくりと休憩する。

 それから裸のまま僕の部屋に直行すると、ねえちゃんを四つん這いに押し倒した。

 大きなお尻。曲線を描く白い背中、恥じらうように赤くそまったうなじ。

 またカチカチのおちんちんをねえちゃんの股間に押しつけ、擦った。

「ねえちゃんっ、ねえちゃんっ!」

「あっ、あぁぁ……いさむっ」

 ねえちゃんのあそこもお風呂に入ったの愛液で濡れていた。

 興奮してくれてたんだ!

「ねえちゃぁんっ!」

 亀頭がぬるぬるの陰唇を舐める。

 入れたい。ねえちゃんのあそこに早く入れたいっ!

「もう……あ、焦るなー、いさむ」

「あうっ」

 べちっ、と前後していたおちんちんが太ももに挟まれた。

 ねえちゃんは一度起き上がってキスをすると、仰向けになって股を開いた。

「ほら…………。こっちの方が、いいとおもう」

 今まで恥ずかしがるところを見せなかったねえちゃんが、わずかに見せたためらい。

 いつもどこまでもまっすぐな視線が少しだけ逸れていた。

 その姿に、

 お腹から突き上げてくる衝動があった。

 征服感。下品な優越感。

 自分が、自分だけがねえちゃんに入れられる。

 他の誰でもない僕が、ねえちゃんをっ!

「うっ、あっっ、意外と、入ってくると、大きいな、いさむのもっっ」

 一瞬の内にねえちゃんの膣に挿入していた。

 ねえちゃんを気遣う余裕はなかった。

 きゅうきゅうと締め付けてくるねえちゃんの膣を一心不乱に貪った。

 僕が突くたびにあそこに愛液が溢れるのがわかり、それがいっそうおちんちんを硬くさせ。それで掻き回すとねえちゃんは身体をぴくぴくさせる。

 卑猥な水音。全部ねえちゃんのものだった。

 それでも僕がキスをしたくなると、キスをしてくれ。

 ねえちゃんを逃がさないように抱き締めて腰を打ち付けても受け入れてくれた。

「あっ、いさむっ、ちょ、ちょっとまって。すこしっっ、イきそうだ」

 聞かなかった。

 今日はこれから何度もライオンさんをイかせるんだ。

 そしてねえちゃんを僕のプライドにする。

「あ。ほんとに、いくっ、いきそ、あ、いッッ」

 ねえちゃんの膣が別の生き物のように蠢いた。

 その気に当てられて、射精を始めてしまったおちんちんを深く押しつけた。

「…………あ、いさむ、出てるのが、わかる、ぞ…………」

 ぼくは、またおちんちんを動かし始めた。

「まだッ。まだっっ、かたいっ、すごいっよ…………」

 ねえちゃんが恍惚の表情を浮かべた。

 そして完全に一緒にイけるようになるまで何度も何度も同じ事を繰り返した。

 ねえちゃんも僕も、死ぬほど愛し合った。

 これが愛し合うことなんだって、何度も何度も確かめた。

 正常位のあと、バックで死ぬほど突き回したり、射精寸前まで口で気持ちよくしてもらって、出すときだけ膣の一番奥に入れたりもした。

 お互い唾液と汗まみれで精液と愛液まみれだった。

「はぁァッ、いさむっ、いさむっ、いさむっ」

 ねえちゃんを僕の机に仰向けにして脚を開かせて、子宮に向けておちんちんを出し入れした。汗まみれのおっぱいがぶるんぶるん揺れ、机が軋んでいた。

「ねえちゃんっっ、ねえちゃんッ」

「あぁ、がんばれぇ、いさむぅ……。いさむが、わたしを孕ませようとしてるのが、わかるよ…………っ」

 もう精液も残ってないかもしれない。

 でもねえちゃんは、すべてを受け入れてくれているような気がした。

「いさむっ、いさむ、あっ、うぅぁぁぁぁ…………っ」

「ぐぅっ」

 もう声も出なかった。

 絶頂感と共に、反射的に一番奥まで腰を押しつけていた。

 何もかもぐちょぐちょで溶け合うような感覚。

 それでも、精子だけは出ているような気がした。

 

「……なんか、花の匂いがするぞ、いさむ」

 ことが済んでしまうと、残ったのは余韻……と疲れた体。

 僕らは布団にくっついて横になった。

 ずっとこうしていられればいいのに。

「え? ……ん、これは、アベリアだよ。ほらずっと咲いてるピンク色の花。知らない? 霊園からかな、風に乗って……」

 窓は全開だった。

 あ、声。声っ。

 お隣さんとは離れてるから大丈夫な、はず…………。はず…………。

「そうか。アベリアか。この匂いに釣られて川をあがってこの家の方に来たのを今更思い出したよ」

「ねえちゃんっぽくないね、アベリアじゃ」

 百獣の王の花って感じじゃない。

「ふふっ、そっか。でもわたしは、好きだよ……。おかげで、今こうしているんだ……」

 そうだね……。

 悪くいっちゃ、いけないや……。

 

 それからもう一度お風呂に入って、部屋を綺麗にして、一緒にに寝ようと思って居間に降りると音がした。

 オルゴールの音だった。

 安物のオルゴールはすぐにゼンマイが切れてしまって、ねえちゃんはその度にゼンマイを巻き直す。

 いかにも安物の音色だった。

 それでもねえちゃんは何度も何度も巻き直して、オルゴールの音色を聴いていた。

 ねえちゃんが、遠くに行ってもこうして僕との思い出を大切にしてくれるなら……。

 ……。

 ……おやすみ、ねえちゃん。

 心の中でだけ、そう言った。

 

* * *

 

「なあ丈治、次はどうすんだら」

 秋の空は高い。

 この頃、ぼんやりと空を見上げることが多くなった。

 ゲーセンにも行かず、万引きもせず、カツアゲもせず。

 勉強を欠かさないようにしていると、家族は気が狂ったと話題にするし、他校の連中にも馬鹿にされ冷やかされたり笑われた。だがそれもどうでもいい。

 勇の家は昔ながらの農家らしく庭が広い。

 隣に居るもりたけ以外は勇の爺さんと映画の話で盛り上がっている。今更黒澤だ。

 そして、姉貴と勇は縁側からも見える表の畑で畝の除草中耕を楽しそうにしていた。

「おい丈治」

「次は、ない」

「はあ?」

 畑仕事をあんな楽しそうにやる若いやつらはそういないだろう。

 みんな都会にあこがれる。バブル崩壊だなんだと言っても、こんなド田舎とは比べものにならない。みんな東京に行きたがった。でもあの二人には、そんなことは関係なさそうだ。

「次はない。目標なし。おっぱいなし。姉貴に甘えるのも、なしだ」

「はああ?! 何言ってんだおまえ?!」

 もりたけが立ち上がっている。

「姉貴は誰にでも優しい。誰とでも打ち解ける。でもそれは言葉や態度のことだけで、本当に大事な優先順位はちゃんと決まってる。一番は、もと居たところに戻ること。つまり前のプライド。二番目はいさむ。三番目が俺達。もちろん、勇の家族やご近所とは特に仲良くやる。でも、本当にいざとなったら姉貴は行動で順位を示す」

「だ、だからなんだよ」

「わかんねえか。これ以上甘えんじゃねえってことだ、姉貴のプライドにいれてもらった俺達が! 逆だろ、本当は! 俺達が姉貴盛り立てて姉貴のいいようにしなきゃなんねえのが俺達だろ!! それが、俺達みたいなクソッタレを大事だと言ってくれた人に一番やんなきゃいけねえことだろうが!!」

 もりたけは、何も言わない。

 考えてることはわかる。

 惨めなのだ。

 一番でも二番でもなく、三番目なのが。

 でもそんなのは甘えだ。

 それに三番と一括りにしたが俺達の中にもきっと序列がある。

 みんな大事だと言葉にされたところで本当に重要なことは行動に表れるだろう。

 だから丈治は、それ以上考えるのをやめた。

「行くぞ、もりたけ。二番三番関係ねえ。勇に姉貴独占させる理由はねえぞ」

「お、おう!」

 たとえニンジンがなくとも俺は、俺達は『学年』での順位を下げるつもりはなかった。むしろ上げてやる、勇に頼らなくたって。北高は無理でも、西でも南でも滑り込んでやる。

 たとえあんな楽しそうに畑作業はできないとしても。

 俺達は、姉貴のプライドなのだから、そうするべきなのだ。

 

* * *

 

 いさむの家に転がりこんだ数日後ぐらいだ。遠巻きに見られ始めたのは。

 じっと監視しているようではあったが、やる気があるのかないのかは何度も確かめた。

 やる気があるのに暗闇から出てこないのは臆病者だ。

 その場合、わたしより、いさむやいさむの家族が危ない。

 臆病者にプライドを汚されるのは我慢がならなかった。

 でもやはり違うようだった。というより、今になってはジャパリパークに戻るための唯一の手がかりになりつつある。

「おっ、今日も男の顔してんな、勇っ」

「やめっ、やめ、やめるにっ」

 にいちゃんがいさむをからかってる。

 あれから何度かいさむとした。

 それは雰囲気で・ムラムラして、とかそういうことじゃなく、いさむがわたしを引き留めるために毎回毎回全身全霊でセックスをするのだ。

 愛おしい。

 いさむの想いが、言葉も態度も要らずにわかるから。

 性欲やトロフィーでもない。

 セックスに慣れていくほど、いさむは体力を底の底までわたしのなかに注ぎ込む。

 それは必死で、健気で、愛しく、危ういセックスだった。

 溺れてはいないつもりだ。

 それをギリギリまで受け止めるのが、わたしのたたかいだった。

──だがしかし、そんな生活は、始まったのと同じく唐突に終わりを迎えた。

 黒のセルシオが家の前に止まった。

 そして、後部ドアが開けられると同時に、降りてきたのだ…………ボスが。

「迎えに来たよ。車に乗ってね」

「ぼっ、ボスッッ!!」

 紛れもなく、ラッキービーストだった。

「ぷ、プライドは、みんなは、元気にしてるか?!」

「……それは車に乗ってから話しましょう? 人の眼もあることだし。戻りなさい、ラッキービースト」

 後部座席にボスが飛び乗る。その先に、喪服のようなブラックスーツを着た女がいた。

「…………乗れば、ジャパリパークに戻れるんだな?」

「さあ。それはわからない。あなたの協力次第ね」

「言葉で煙に巻くことしかしないのに、わたしが素直に黙って言うことを聞くと思うな」

「……あら。ふふ、ライオン。あなたはどこにいてもプライドを作ってしまうのね」

 いつの間にか、みんなが庭に出ていた。わたしのプライドも、いさむの家族も。

 そして、不安そうないさむも。

「さしずめ、女王のプライドというところかしら。母性と父権、まさしく女王ね。でも、気位ばかり高くても……ね。戻ればあなたのプライドがいるっていうのに、浮気よ、これは」

「煙に巻くのを、やめろ」

「あなたこそわたしの質問に答えろ。乗るのか、乗らないのか。今、ここで、決めなさい!」

「────なん、だとッ!!」

 カッと来た。

 理不尽なこと、これで二度目!!

 この女はその体現だ!!

「──本当にッッ、本当にわたしを乗せていく気があるのなら先触れを出せばいい!! ずっと見張っていたんだろう! ずっと見ていたんだろう! なのにおまえが言っているのは!! わたしのいのちを白紙のまま委任してよこせと、そういうことだ! わたしの立場も考えずっ! わたしが世話になった人達のことも考えずっ!! わたしのプライドをないがしろにして、わたしを思いのままにできる檻の中のライオンだと履き違えるっ!! ──去ねよ女ッ!! 次くだらない口を利いたらその首ごと噛みきってやる!!」

 女の顔が強ばっている。

 家の周りを囲む人間達も同じだ! 見張るしか能のない連中が考えそうなことだ! わたしが討って出ていくことなど考えもしない! 一網打尽だ!!

「賭けろよ女!! わたしが檻の中のライオンかどうか!!」

 おまえに賭ける勇気があるのなら、理屈でわからずとも構いはしない!!

「ライオン。緊急事態だよ」

「ごめん、ボス。ジャパリまん、今までありがとね。でもわたしは、ジャパリパークに絶対に戻るから」

「……もう少し利口だと思っていたわ、あなたは」

 女の捨て台詞と同時に車が走り出した。

 と同時に、家の周りの気配が散っていく。

 静寂が、あたりを支配した。

 臆病者は最後まで臆病だった。それで一切の関心をなくした。

 いさむが寄ってくる。

「……………………ねえちゃん、いいの? 迎えに来てくれたんじゃ、ないの?」

「わたしは、あんな傲慢なフレンズは一人も知らない。『もう少し利口だと思っていた』、だって! わたしこそ臆病者は臆病者らしくちゃんと手順を踏むものだと思っていたさ。ボスはボスだったけどね」

「……あれが、ボスなんだ」

「まあ、このまままっすぐ行けばどうにかなるよ~~~~!!」

 あ、いさむが驚いてる。

「えっ、なんか別に計画があるんじゃないの?!」

「ないな!! さっきのが唯一の手がかりだったな!!」

「えーーーーっ!! どうすんの!! 今さっき絶対に戻るって言ったに!!」

「適当にやりゃあいーよぉ~~!!」

「おい勇、姉貴と議論してもしょうがねえぞ」

「おい、それはわたしが馬鹿って意味かーーーー!!」

「ライオンよう。時には我慢することも大事だぞ。『百姓ってのはな──』」

「わかった、わかったよ、じーちゃん!! その物真似はもう何十回も聞いたから!!」

 みんなが笑った。

 これがプライドだ。

 プライドがある限り、口だけの人間に好きなようにはさせない。

 そしてみんなが思い思いに歓談し始めたころ、いさむに言った。

「…………戻ることになっても、ちゃんとみんなに挨拶してから行く。それは、突然置いてきてしまったプライドにも同じだよ。だから戻るんだ。でもわたしは、わたしのプライドを一人たりとも不幸にするつもりはないぞ!! よく見てろ、いさむ! わたしのプライドは、みんな幸せになるんだ!」

 緊張が解けてふらふらしてるいさむの頭をぐりぐり撫でる。

 泣きそうなのを我慢してるぞ、こいつ。

 おまえみたいに可愛いのを放ってどこかに消えるわけないでしょう。

 そして、わたしが来たときからずっと咲いているアベリアの香りが漂ってきた。

 どこかから一瞬だけ、ジャパリパークのプライドの声が聞こえた気がする。

 わたしは、それに返事をした。

──待ってろよ~~~~みんな!! 必ず帰るから! 人をたくさん連れていくかもしれないけど、その代わりその時はおいしいもの、たくさん食べさせてあげるから、よろしくな~~~~!!


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