麗子そっくりのドールが添い寝してくれる安眠グッズ『安眠麗子』を販売する両津。
安眠麗子が大ヒットする中、ハードスケジュールによる寝不足のせいで、派出所で眠ってしまう麗子。
勤務中に眠る麗子を見つけ起こそうとする両津だが、一向に起きる気配を見せない。
 これは本物の麗子ではなく『安眠麗子』なのではないかと勘違いした両津は――

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(^q^)安眠麗子の巻

安眠麗子、完成!!

 

「これが新作の麗子ドールだ!」

 派出所には1/1サイズの麗子ドールが置かれ、両津がそのドールを派出所メンバーの男達にお披露目している。

「すごい……、まるで本物の麗子さんみたいだ」

 麗子ドールを見て中川がそうつぶやく。今までの麗子ドールも本物そっくりに作られていが、これはそれ以上に本物に近い。本物の麗子と見分けができない程の完成度だ。

「そうだろう」

 両津は自慢げに頷(うなず)く。

 最近の技術の発達は目覚ましく、今や不気味の谷を乗り越え、見た目が本物の人間と遜色のないアンドロイドが作られるようになった。

 そこで両津は、最新の技術を使い麗子ドールを作り直すことにしたのだった。

「本当に似てますね、今にも動き出しそうなくらいですよ」

「……そこが問題なんだよ」

 両津は当初、アンドロイドを作ろうと考えていた。

 しかし見た目を人間そっくりに作れるようになったといっても、今の技術をもってして、動いたりしゃべったり、何かしらの動きをさせようとすると、どこかぎこちなさが出てしまう。たちまち不気味の谷へ真っ逆さまだ。

 だからと言って、この外見の出来で全く動かないというのは何とも味気ない。

「というわけで、この麗子ドールには今の技術でも本物の人間と同じように再現できる動きだけを取り入れた」

 一体どんな動きをするのだろうか――と、ここで中川があることに気付いた。

「この麗子ドール、目が閉じてますね」

 今までの麗子ドールは、麗子の大きく綺麗な瞳が再現されていた。

 だがこの麗子ドールの目はぴったり閉じている。

 まるで眠っているかのようだ。

「その通り。この麗子ドールは人間の眠る動作を完全再現している」

 と言うと両津は麗子ドールを蹴飛ばした。

 蹴飛ばされた麗子ドールはちょうど仰向けに倒れる。

 両津がスイッチを入れると、麗子ドールは軽い寝息を立て、それに合わせるように胸の辺りが上下に動き始めた。

「…………」

 『動き』というにはあまりに地味だ。

 だが地味であるが故に、人間らしさが失われるような、ぎこちない動きにはなっていない。

 むしろ意外なことに、たったこれだけの地味な動きが加わっただけで、より人間らしさが増した印象を受ける。

 なるほど、と中川は思った。

 起きている状態を再現しようとするといろんな動作させなければならない。

 以前に、名前を呼ばれると振り向く『電動麗子』や、二本足歩行をするマリオロイドが作られたことがあったが、仮にこれらの動作が完全に人間と同じように再現できたとして、会話など本来人間が起きている時にする動作の大半ができない以上、数分もすれば綻(ほころ)びが生じるだろう。

 だが、眠っている状態ならば。

 たったこれだけの地味な動作で完成してしまう――まあ、これだけと言っても心臓の鼓動や体温の再現だとかで、なんだかんだと手間はかかってはいるのだろうが。

 たったこれだけで。たったこれだけだからこそ。

 余計な動作をする必要のないシチュエーションを作ることで、現代の科学では再現できない部分を自然に隠し、あえてさせないことで人間らしさを保っている。

 マスクをした女性を見た時、見えない部分を美化して想像してしまうというゲシュタルト効果みたいなものだろうか。

 眠っている姿から、目覚めたら本物の人間のように行動するのではないかと美化して想像させられる。

「この麗子ドールを安眠グッズとして販売しようと思う」

 両津のことだ、もちろん趣味で作ったわけではなく当然金儲けを企(たくら)んでいる。

 眠る動作しかしないのではそういう路線で売るしかないのだろうか。あるいは――

「もう一つ機能はあるぞ」

 そう言うと両津は、麗子ドールのスカートをたくし上げた。

 高価そうなデザインの下着が露(あらわ)になる。

 そしてその下着も脱がし始めた。

「これは……!」

「ここ(・・)も完璧に再現してある」

 股を開かされ股間が丸見えになった麗子ドールが視界に飛び込む。

 ――以前に麗子ドールを作る際、両津は麗子に薬を盛って眠らせるという犯罪行為に手を染め(本人曰く多少手荒い方法)、実寸をとっている。

 そのとき両津はここ(・・)のデータもしっかりとっていたのだった。

 『全てのデータをもらうぞ』とはそういうことだったのだ。

 

 唖然とする中川達をよそに、両津は自身のズボンも脱ぎ出し下半身丸出しになると、麗子ドールの股間にローションをかけてから挿入し、腰を振り始めた。

「こういう使い方もできるぞ、わははは!」

「…………」

 こんな使い方ができたらもはやアダルトグッズではないか。

「……流石に安眠グッズとしては逸脱した機能じゃないですか?」

 中川がツッコミを入れるが、両津はそんなことはないと反論する。

「美女の添い寝ほど安眠に有効な手段はないが、それはあくまで溜まったもの(・・・・・・)がない状態でのことだ。溜まってたらムラムラのギンギンで眠るどころの話じゃないだろ。だからこの機能は安眠グッズとして必要な機能なのだよ」

 パンパンと音を響かせながら、むちゃくちゃな理論を展開する両津。

 体位を後背位に変え、麗子ドールの尻を叩きながらさらに続けて言う。

「こうして麗子のような生意気タカビー女をむちゃくちゃに犯すことも体感でき、ストレス解消グッズとしても――」

「先輩、もうそのへんにしといたほうが……」

 両津のむちゃくちゃな理論は最後まで聞くことはできなかった。

 一足早く中川が気付いたが手遅れだった。

「この超変態!!」

 出勤してきた麗子に一部を見られており、麗子パンチが炸裂(さくれつ)したからである。

 

 

 

安眠麗子、発売!!

 

 麗子の猛抗議により、新作の麗子ドール『安眠麗子』の発売は、あわや中止になるのではないかと思われたが、詐欺師も顔負けの巧(たく)みな両津の交渉術――最終的には「不眠で悩んでいる人々を救いたい」と泣き落とした――でなんとか説得に成功した。

 しかし販売の許可は下りたものの下半身のダッチ機能(・・・・・)は安眠とは無関係の機能だと言われ、またそういった機能が搭載されたドールを一般ルートで販売するのは難しいこともあり、ダッチ機能は取り除かれることになった。

 そういった機能を取り除いたといっても、美女の添い寝人形を一般ルートで売るのは困難を極めたが、麗子同様、各方面のお偉いさん方も説得し販売にこぎつけた。

 

 安眠麗子が発売され、いろんな人達が安眠麗子を利用するようになった。

 

 共働きで深夜まで両親が帰って来ず、寂しい夜を過ごす子供に、安眠麗子が買い与えられた。

 小さい子供にとって、一人で眠ることはとても心細く恐ろしいことだったが、安眠麗子と一緒に眠ることにより、その子供は安心して眠れるようになった。

 このように、安眠麗子は多くの人達に快適な眠りを与えていった。

 しかし――

 

「ハァハァ……、麗子さん!」

 子供とは別の意味(・・・・)で寂しい夜を過ごす男性は、安眠麗子の服を脱がし、裸の胸を見て勃起していた。

 下半身の機能は取り除かれていたが、その豊満なバストは安眠に必要な機能(・・・・・)として、リアルに再現されたまま販売されていた。

 男は安眠を誘(いざな)う為に付けられた二つの大きな膨らみを見て勃起し、その膨らみに下半身を埋(うず)め腰を振るという、想定外(・・・)の使い方をしていた。

「……うっ、出る!!」

 男は寝息(ねいき)機能でわずかに揺れている安眠麗子の胸に精液をぶっかけ、満足げな表情をする。

 そして出すものを出してすっきりした後、安眠麗子を抱いて眠りにつくのだった。

 男はそんな生活をしばらく満喫していた――しかし、最初はそれで満足だった男だが、だんだんと不満が募(つの)ってくる。

 胸だけでは物足りない――そう男が思い始めた、ちょうどその時だった。

「……メールか?」

 携帯の着信音が鳴り、男は携帯を確認する。

「……麗子さんのオナホールだって!?」

 男はメールの詳細を見て驚いた。内容は本物の秋本麗子の下半身で型取りしたオナホールの商品案内だった。

 なんでもそのオナホールは安眠麗子に装着して使用可能だという。

 装着といっても、入れられるような場所は見当たらないが、一体どうやって――

「……あっ!」

 安眠麗子の下半身を触って調べてみると、肌色のキャップで塞がれていただけで、外してみると、中には何かを入れられる穴が開けられていた。

「ここにオナホールを入れれば……」

 麗子を――犯すことができる。

 男はすぐさまオナホールを購入した。

 

 この男同様、安眠麗子を購入した中でも、想定外の使い方をしているであろうと思われる独身男性の購入者のみに、なぜか『R美少女堂』と名乗る謎の店(・・・)からメールが届いていた。

 そして、安眠麗子にそういった機能を追加できることがマニアの間で広まっていった。

 

 このような裏での暗躍もあり、いろんな意味で安眠麗子は大人気商品となっていったのだった。

 

 

 

麗子、寝る 中川、座る

 

「『安眠麗子』大人気ですね」

 中川は派出所のいつもの定位置に立ち、新聞で取り上げられた安眠麗子特集を見ながら、麗子にそう言った。

「もう大変よ」

 安眠麗子は社会現象と呼べるほど世間を賑(にぎ)わし、その影響は安眠麗子のモデルとなっている麗子本人にも及んでいた。

 取材やテレビ出演の依頼が殺到し、麗子の私生活に多大な影響を与えるようになっていた。

「両ちゃんのお金儲けのせいでいい迷惑だわ」

 パトロールに出ており、現在派出所にいない両津の愚痴を言う。

「街中で枕女と呼ばれるようになってしまった」などと、しばらく中川相手に愚痴を零(こぼ)していると、麗子は口に手をあて小さくあくびをした。

「寝不足かい?」

「少しね」

 平気そうに答える麗子の顔を中川はじっと見つめた。

「……少し仮眠を取った方がいいよ」

 ぱっと見た感じ、疲れがあるようには見えない。

 心配を掛けないように気丈に振舞っているのだろう。

 しかし周囲はごまかせても、長年一緒に仕事をしている中川の目はごまかせなかった。

 

 普段、麗子は派出所で無駄話に花を咲かせたり、両津のカラオケにオールで付き合ったり、長期休暇を取りバカンスを楽しんだりと、自由気ままな生活を送っているように見えなくもない。だが実際には、警察官としての仕事以外にも、社長業やボランティア活動などを分刻みのスケジュール管理でこなす忙しいアピール(・・・・・・・)をする回が、思い出した(・・・・・)かのように度々(たびたび)挟まれることからもわかるように、麗子の生活は忙しい。

 ハードスケジュールといっても、エリートである麗子は体調管理を怠(おこた)ることはしない。

 普段なら仕事のしすぎで寝不足になるという事態にはならないのだが――今回は両津に無理矢理、取材やテレビ出演の仕事をねじ込まれ、ただでさえハードなスケジュールがさらにハードなものになっていた。

 加えて、安眠麗子発売により新たに獲得したファン――なかでもR美少女堂を利用したであろうストーカーまがいのファン――への対応で身体的にも精神的にも参っていた。

「仕事は僕がやっておくから」

 勤務中に仮眠を取るなど普段なら絶対にしないだろうが、両津のせいで麗子の身体は限界にきていた。

 それに無理に働こうとしても中川に止められるだろう。大事(だいじ)に至ってはいけないと、真面目に麗子を心配していることは目を見てわかった。

「……そうさせてもらうわ」

 疲れを見抜かれてしまったことだし、ここは中川に甘えさせてもらうことにした。

 

 和室の休憩室へ行くと、麗子は折りたたみ式テーブルの前に座り、顔を突っ伏せる。

 軽く休むだけのつもりだったが、麗子の身体は麗子が思っている以上に疲労が溜まっており、テーブルの上に顔を突っ伏し目を閉じた瞬間、一気に疲れが出てしまった。

 そのまま泥のように麗子は眠ってしまった。

 

 

 

 麗子が休憩室に行くのを見送ると、中川はやる気でみなぎっていた。なぜなら――

「……久しぶりに座れる!」

 麗子が葛飾区亀有公園前派出所にやって来たことにより、中川の席は奪われ、それからというもの、中川は立って調べ物をするのが日常になってしまっていた。

 両津が中川と体が入れ替わったふりをする回で、「そ、そうか……。席がなかったんだ……僕は」という悲しいセリフを両津がもらしてしまうくらいには、不遇な扱いを受けている。

 今では中川が事務室で座っている姿はなかなかのレアシーンとなってしまっていた。

 中川は麗子の席に座り、久しぶりの感触を味わう。

「懐かしいな~」

 目に涙を浮かべて中川は言う――厳密に言うと、初期の中川の席は今の両津の席の位置にあったのだが、その程度の違いは関係なかった。とにかく――

 座れるって素晴らしい!

「よ~し、やるぞ!」

 やる気に満ちた声でそう言うと、中川は書類を広げ事務仕事にとりかかった。

 

 

 

両津、間違える

 

「うぃ~す、ただいま~」

 しばらくして両津がパトロール(という名のパチンコとゲーセン巡り)から帰ってきた。

「麗子、お茶!」

 自分の席に着き、麗子にお茶を要求する。

 いつもなら「はい」と返事があり、すぐにお茶が出されるのだが、今日は返事すらない。

「麗子! 無視するな、早くお茶を出せ!」

 怒りながら麗子の席の方を向き、そこでようやく異常事態(・・・・)に気付く。

 中川が麗子の席に座って事務仕事をしていた。麗子の席に座っているのですっかり麗子だとばかり思っていたが、それにしても――

 何で中川が座っているんだ?

 中川のくせに生意気だぞ、とまでは思わないが理由がわからない。というか麗子はどこへ?

「おい、中川! 何でおまえが座っているんだ。麗子はどこへ行った」

 中川に質問するが、書類から目を離さず仕事に集中している。

「無視するな!! おい、こら! 聞こえてんのか、中川!!」

 中川の耳元で大声で怒鳴り、身体を大きく揺するがそれでも中川は両津に気付かず仕事を続けている。

 中川の集中力は、久々に座って事務仕事が出来る喜びで最大限まで高まり、周りのことなど見えなくなっていた。

 一心不乱に仕事をする中川に「……こわ~」と、恐怖すら覚える。

 いくら怒鳴っても気づかないので、中川のことはほっといて麗子を探すことにした。

「麗子~、どこだ! いないのか~」

 引き戸を引き休憩室を見渡すと、折りたたみ式テーブルに顔を突っ伏して眠っている麗子の姿を発見した。

「あっ、麗子!」

 発見したのはいいが寝ていやがる。勤務中に眠るとはどういうことだ、と怒りが込み上げてくる。

 自分はよくても他人がサボるのは許せなかった。それが普段、優等生面して説教をかましてくる奴だったらなおさらだ。

「おい、麗子! 起きろ、勤務中だぞ!!」

 中川にしたのと同様に、大声で怒鳴り、大きく肩を揺する。

 だが一向に目覚める様子はない。

 大きく肩を揺すり続けると、麗子は畳に仰向けの状態で倒れてしまった。

 それでも起きない麗子にまたがり、馬乗りになると麗子の頬(ほお)をビンタし始める。

 そこまでされても麗子は起きない。それほどに疲れが溜まっており、深い眠りに入っているということなのだが、ここまで疲れを溜めさせる一因を作った張本人である両津は、そのことには気づかない。

 むしろ眠っている麗子という、最近よく見ている光景と重なり、事実とは違う方向に思考が向かっていく。

 ここまでしても起きないのなら、これは本物の麗子ではなく――

「もしかして『安眠麗子』なのか……?」

 本物か確かめるように麗子の顔をまじまじと見つめる。

 本物に似せすぎてもはや判別がつかない。

「それにしても、よく見るとやはり美人だな」

 麗子の顔を見つめていくうちに、あらためて麗子が美女であることを再確認させられる。

 このまま見つめていると惚れてしまいそうだ。

「いかんいかん」と思いつつも視線を外すことができない。

 そのまま視線を下にやり身体の方も見てしまう。

「…………」

 ごくり、と生唾を飲み込む。

 麗子のダイナマイトボディを見て下半身が膨らんでくる。

 そういえば、ここのところ安眠麗子を売ることに忙しくてご無沙汰だった。

「丁度いいし、この安眠麗子で一発抜いとくか」

 断定はできなかったが、あれだけやって起きないのだから安眠麗子である可能性が高い――それだとなぜ安眠麗子が派出所にあるのかという疑問が浮かび上がってくるが、そこまで考えは及ばない。

 両津はこれが安眠麗子であると確信し、下半身を鎮(しず)めるために安眠麗子を使う(・・)ことにした。

 まずはこの安眠麗子が使える(・・・)オプションを装着しているか確認する必要がある。

 スカートをめくりパンツを下ろし、R美少女堂のオナホが装着されているか確認する。

「……あれ?」

 オナホが付いているか否か、二つに一つだと思っていたので一瞬驚く。

 オナホは付いていなかった。だがまんこはあった――まるで本物であるかのようなリアルなまんこが。

 これは一体、どういう……。

 一瞬何が何だかわからなかったが、「あっ!」っとすぐに解答にたどりつく。

「試作機(プロトタイプ)か」

 麗子に見つかる前の下半身もリアルに作ったあの試作機だ――オナホよりも精巧に作られ、気持ちよさも数倍ある、あの――。

 ――普通、リアルな下半身を見たら、これは本当に『安眠麗子』なのか検討し直すところだが、単細胞の両津は一度そうだと確信したものを後から疑うことはしなかった――というか早くこの安眠麗子で自慰に耽(ふけ)りたいという考えしか頭にない。

「試作機がここにあるとはわしもついているな」

 満足のいく自慰ができるとニヤつく。

 両手でまんこをくぱくぱと開く。

「さすがはわしが作っただけある。エロさも完全再現だ」

 わしって天才かも、と自画自賛する。

 しばらく指を入れたりしてまんこをいじっていると

「んっ……」という艶(なま)めかしい声が聞こえた。

「今の声は?」

 ――安眠麗子が出したのか? だがそれはおかしいと訝しむ。

 声を出す機能は搭載しているが、寝息のみしか収録はしていない。それは試作機も同じだった。

 そして不思議なことがもう一つ起こった。

 まんこをいじっていた手が濡れている。安眠麗子の股間を見ると愛液が溢れていた。

 そこまでの機能は付いていなかったはずだが、これは一体どういう――

「……そうか!」

 ここまでくれば、流石の両津もこれが本物の麗子であると気づく――と思いきや、さらに真相から遠のく推理をする。

「あいつらが試作機を改良したのか」

 『安眠麗子』は両津が主導の元作成したとはいえ、一人で作ったわけではない。

 フィギュア造形師から下着デザインまであらゆる専門家を集めて製作されていた。

 その専門家達が両津に内緒でそっち(・・・)方向に特化したドール製作を水面下で行っていたとしたら――そして改良した試作機が完成し、両津に見せる為に派出所にドールを持ち込んだ。しかしあいにく両津はパトロールに出ており不在で、ドールを派出所に置いて帰っていった――だとしたら――

 ――すべて合点(がてん)がいく。

「そうか、あいつらがわしに内緒で……」

 ここのところ安眠麗子の販売で忙しかったから、両津に声をかけなかったのだろう。

 両津抜きで裏ルートで販売できる水準のものを、みんなで力を合わせて作ったにちがいない。だとすれば――

「麗子ドール製作総指揮であるわしが自ら、おまえたちの作り上げたダッチ(・・・)機能がどれほどのものなのか、試す責任がある!」

 両津は俄然やる気になった。

 すぐさまズボンを脱ぎ、勃起したちんこを挿入した。

「ローションを使わなくてもすんなり挿入できたぞ」

 腰を振って気持ちよさを確かめ始める。

「締まりのよさも温かさも完璧だ。まるで本物の麗子(・・・・・)を抱いているようだ」

 両津は試作機の完成度の高さに感動した。

 このままじっくりと楽しみたかったが、抜かずにおいた状態でこの気持ちよさに耐えるのは無理な相談だった。すぐに果ててしまいそうになる。

 麗子を抱え正常位から座位へ体位を変える。

 麗子と密着した状態になり挿入感も深まった。

「あっ♡ ボインが……」

 密着したことにより胸が当たり、思わず顔がニヤけてしまう。

 興奮も高まったところで、麗子の尻を掴み、腰を突き上げ激しくピストンしスパートをかける。

「……もう、出てしまいそうだ」

「ん……んん……」

 ――と、上下に激しく揺れる乱暴な動きにより、ようやく麗子が目を覚ました。

 すぐに異物が股間に挿入されている異常事態に気付き、脳が一気に覚醒する。

 そして目の前にいる男を見て思わず叫んだ。

「両ちゃん!?」

「げっ……、本物だったのか!?」

 ここにきてようやく両津は現状を把握した。

 本物の麗子だったのなら、今の状況は非常にまずい。

 挿れてしまったこともまずい――が、これは今さらどうしようもない。

 せめて中出しという最悪の状況は回避しなくてはならない――と思ったが射精寸前でそれすらも間に合わなかった。

 ――いや、正確には事態に気付いた瞬間に抜こうとしていれば間に合っていた。

 抜いたことにより麗子の尻に盛大に精液をぶっかけることになっていたかもしれないが、最悪の状況は回避できた。

 だが両津はその瞬間、自分の気持ちよさを優先させた。

 今さら中出しをやめるなんてできるか、抜こうとしたけど間に合わなかったという体(てい)にして思いっきり中にぶちまけてやる。

 と、開き直り麗子の尻をアナルが広がるほど強く掴むと、ちんこが根元まで咥えこまれ亀頭が子宮口に届きそうになるほど深く押し込み、そのまま射精した。

 どぷどぷ、と麗子の子宮に勢いよく精液が注がれ、あっという間に子宮は両津の精液で満たされる。

 射精し終えるまで尻から手を放さず、がっしりと密着し続けた。

「……ふぅ~、出た出た」

 射精後の余韻まで楽しんだ後、ようやく両津はちんこを抜いた。

 抜いた瞬間、膣内に出した精液が溢れ出てくる。

 両津は立ち上がると、麗子に背を向けズボンを穿きながら軽いノリで謝った。

「いやーすまんすまん、あんまり起きないもんだからつい安眠麗子と勘違いしちまって――」

 と、謝罪しながら麗子の方を見て絶句する。

「…………」

 ぞっとし、頬(ほお)に汗が伝う。一瞬で自分のしでかした事の大きさを理解する。

 麗子が――下半身丸出しで精液を股間からだらだら垂らしたまま、一歩一歩近づいてくる。

 麗子から放たれる不穏なオーラを感じ、思わず後ずさった。

 後ずさって、後ずさって、壁に追いやられ、いよいよ逃げ場がなくなる。

「麗子ちゃん落ち着いて……、話せばわかるから…………」

 なんとか宥(なだ)めようとする両津に、麗子はゆっくりと近づいていき、そして――――

 

 

 

麗子パンチ?!

 

「よし、終わった!」

 久々の事務仕事を終え、中川は達成感で満たされていた。

 集中しすぎて疲れたので、一息入れようと伸びをしたその時だった。

「ほげええええええええええええええええ!!!!!!」

 という大音量の叫び声が聞こえ、中川は衝撃で机ごと吹っ飛ばされた。

「……な、なんだ?!」

 一体何が起きたのか、わけがわからない――が、とりあえず今の声が両津だということは理解した。

 体を起こし、声が聞こえた休憩室の方へ向かっていく。

「先輩、なにかあったんですか?」

 休憩室の引き戸を開けて中の様子をうかがった。

 部屋の中には麗子がいた。そしてそのすぐ近くで壁にもたれ、気を失っている両津を発見した。

「先輩!?」

 すぐさま両津の元へ駆け寄り、安否を確認をする。

「……大変だ、息をしていない!! 麗子さん、早く救急車を!」

 想像以上に致命的な損傷を受けている両津を見て動揺(どうよう)するが、それでも的確に麗子に指示を出す。

 しかし、中川の言葉に麗子は素っ気ない返事をする。

「必要ないわ」

「……え?」

 恐ろしく冷たい声でそう言う麗子を見て、麗子の様子がおかしいことに気付く。

「…………」

 ここで何が起きたのか――中川にはわからない。ただ、麗子の様子から大まかに想像することはできた。

 

 おそらく先輩が何かやらかして麗子さんを怒らせたに違いない。そして怒った麗子さんの返り討ちに遭い、気を失ってしまった。冒頭で見せたドール回でお馴染みの麗子パンチがまた炸裂(さくれつ)したのだろうか。――――いや、先輩の傷の深さからいってそんなものじゃない。ミニパトで轢(ひ)かれてもマンションから突き落とされても何ともない先輩に対して、『救急車』という生々しい言葉(ワード)を出さなければならないほどの致命的な攻撃――想像はできないが、麗子さんはパ(・)ン(・)チ(・)だ(・)け(・)で(・)は(・)す(・)ま(・)な(・)い(・)なにかをしたのだろう。麗子さんにそれほどのことをさせるとは、一体どれだけひどいことを先輩はやらかしたんだ。……いや、それよりも今は先輩の治療を――

「大丈夫よ」

 気付くと、麗子は戸の方へ行き、部屋から出ようとしていた。

「もし死んじゃったら、永眠両ちゃん(・・・・・・)として売り飛ばすから」

 去り際に言った麗子の言葉を聞き、恐ろしさで汗が噴き出てくる。

 中川はただただ呆然と、両津を抱きかかえながら、去っていく麗子の後ろ姿を見つめることしかできなかった。


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