「キミのことが好きです。ボクと、ボクと付き合ってください!」
学校の校舎裏。誰かはそこで殴りあい、愛の告白をし、告白と見せかけた罠を張り、別れ話をし、どうせ付き合っても一年もせずに別れる儀式をする。あろうことか俺はそこで、別れ話が鉄則の告白をされてしまっていた。
しかし告白というのは嬉しいイベントだ。そして俺はふと思い出す、「女っぽいよねー」と言われた俺が、「女っぽいし背小さいし、異性として見られることはまず無いよ。絶対に」と言われたこの俺が、そう言われてスカートを穿いて鏡の前に立ってみたら、思いの外似合っていて胃酸を吐いた俺がだぞ? 告白をされている。これはもう、なんというか自分が認められた、みたいな感じになって嬉しくなるはずだろう。
だってお前、告白するってことは俺のことが好きだってことだからな? 俺は目の前にいるこの子の一番になれたってわけだ。嬉しくないはずがない、嬉しくない奴がいるとすればそいつはホモだ。
そして俺は嬉しくなかった。まったくこれっぽっちも嬉しくなかった。
「…………あ、アストルフォ?」
「ひゃ、ひゃい!」
自分でも分かるくらいに震える声色で、俺に対して愛の告白をしでかした人物に語り掛ける。
肩まで伸びた女性のようなサラサラした桃色の髪に、黒いリボンを頭の左右に付けていて、後ろの方で伸ばしている髪を三つ編みにしている。くすみのない雪のような肌に、桃色に近い薄紫色の瞳を潤ませて、白を基調としたセーラー服を身につけながら、いつもは明朗快活、天真爛漫とした「彼」も不安そうに俺を見つめていた。
俺は告白されて嬉しくなかった。つまりホモかもしれない。
俺は男に告白されていた。つまり俺はホモとなるのかもしれない。
いや、ヤバい、なんだこれ。おいおいおいおい、ヘイヘイヘイ、落ち着けよ。落ち着いてパスを回せ、ワンツーで行こう。好きです、ごめんなさい、やっぱりねー。みたいな、ワンツーフィニッシュで行こうじゃないか。しかし、その手軽で気軽な俺という司令塔の最高の指示も、目の前に居るアストルフォという「彼」の、告白を断ったら泣くんじゃないかというくらいの不安そうな顔を見て、俺は気軽に何かを言うことなんてできなかった。
けれど俺は呼びかけてしまった。何かを言おうとしてしまった。だからこそ、何を言われるか不安がっていうアストルフォに、何かを言わなければならなくなった。
「…………」
でも何を言えば良いのか分からなかった。逃げたくなった。ドッキリ大成功という看板が出てくるのを待ち望んでいた。
アストルフォという「彼」は、冗談でもなく可愛くて美しい。俺という男か女か微妙な中途半端な存在とは違い、半端なく可愛い。その中性的で女性的な見た目は羨ましいことに、女子からも男子からも告白されていて、もう「また告白されちゃったよー」と笑って報告する彼に、俺は心底嫉妬したものである。そして今気づいたが、その報告は俺がアストルフォを女性として見るための、ちょっとした計画だったのではないのだろうか。
……あ、なんだろう。ところどころ思いだしてきた。例えばアストルフォと二人きりでゲームをしながら遊んでいた時の提案で「これ負けたら服を脱ごう! 野球ゲームだ!」ということがあった。今思えばこれってそういうことなんじゃないのだろうか。さらに思いだすと、この前こいつが急に「恋愛映画とか、見てみない?」みたいな、こいつらしくない提案をしてきたのだってそうかもしれない。第一、こいつは見たくなったら俺を強引に引っ張って見に行くやつだ。その時はなんでわざわざいじらしく聞いてきたのか疑問に感じたのだが、そういうことかもしれない。
「……アストルフォ」
うん、色々思い出したし、まあ、アストルフォにとったらそういうことかもしれないものだった。けれど、それでもアストルフォは俺の大切な「友人」だ。掛け替えのない、友人だ。それこそ――命を懸けたって惜しくないくらいの。
この告白が真剣でも、嘘でも、俺の言うべきことは最初から決まっていたんだろう。
「ごめん。俺はお前と付き合えない」
多分、ドッキリじゃあないんだろうけどさ。お前はそういうの、嫌うっていうか、やらないから。
こういう告白だって、俺に取ったらすごい意外だよ。頬を赤らめて、不安そうにして、誰にも聞かれないようにひっそりと愛の告白をするだなんて。
お前だったら、好きになったその瞬間に、俺を好きだと思ったその刹那に、いきなり告白するような、そんな脈絡なくて、勇気と無謀を併せ持つ正真正銘のバカだと思ってた。お前のそういうバカも、引っ張られる立場からしても、そんな嫌いじゃあなかったけど。こうやって、そうやって、お前が不安になりながら、すっごい悩んだかもしれなくて、滅茶苦茶大きいはずの勇気をさらに振り絞りながら俺に告白するだなんて、正直、惚れ直したよ。やっぱり俺は――お前が好きで、大切だ。
でも、お前の告白はやっぱり受けられないよ。
「あ……うん。そっか……」
だって俺――――ホモじゃないもん。
「正直、お前の一番になれたかもしれないのは嬉しかった。だけど、うん、あー……お前、男だろうが!」
だから思い切り、この野郎に指摘してやろう。指をさしながら、俺はホモじゃないんだよバーカって言ってやろう。
「だから俺はお前とは、ずーっと恋愛的な意味で付き合うことはできない。それでも、お前に付き合ってくれって言われても気持ち悪くならないくらい、友達として好きのままでいれるくらい、アストルフォのことが好きだから、だから、また、友達としてバカしようぜ」
恋人にはなれないけれど、友人ではいたいから。
贅沢かもしれない。相手の好意を拒否しておきながら、残酷かもしれない。
それでも――やっぱり俺はお前が好きで、大切で、離れてほしくない。一緒に笑って、悲しんで、喜んで、怒って、成長し合いたい。
お前が嫌でも、俺は嫌じゃないから。お前が離れるなら、俺は引き止められないけれど、俺は離れてほしくないって言うから、離れないでほしい。
「うん……」
「あー、もう、アストルフォらしくない。ぜんっぜんらしくない。アストルフォはもっと、知恵も理性も蒸発した感じだろ! 告白が失敗したなら、笑ってみせろよ。挫折を失敗とはとらえないし、良い思い出だって笑うのがお前だろ。ほら、だから……」
悲しんで項垂れている彼の頬に両手を伸ばした。そのままアストルフォの顔を俺の目線と同じところに直して、頬を横に引っ張って無理やり笑わせてやった。
「……!」
そして、思い切り殴られた。
右の拳で俺の伸ばした腕を振りほどくかのように、そのまま左から右に振り払い、裏拳を俺の頬にぶちかました。
無様に俺は地面に崩れ落ちていて、すぐに立ち上がることもできず、俺にできるのはアストルフォの顔を見るくらいだった。
「…………」
無理やり笑わせた表情の顔はなく、息は荒れ乱れ、髪と同じ色の眉も逆八の字になっていた。薄紫色の瞳からは涙が零れそうで、見ていて分かるくらいに歯を食いしばっていた。
「あす、とるふぉ……?」
何も分かっていないように俺は呼ぶが、分かり切っていた。
俺が彼を――アストルフォを怒らせてしまっていることくらい、簡単に分かっていた。
地雷を――踏んでしまった。
「…………!」
そのままアストルフォは俺を助け起こすことも無く、涙を零しながら踵を返して、駆け出していった。
ポツンと無様にしりもちをついたまま一人残る俺。いや、ホント、失敗……しちゃったなあ。
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家に帰ってベッドに腰掛ける俺は、唯一無二の大切な親友――アストルフォの告白を思い返す。それと同時に、自分が一体何を言ってしまったのかが、俺の心に突き刺さる。
あいつがらしくないことをしてるってことくらい、簡単に気づいていたはずなのに。それなのに、そのらしくないを、どうして俺は笑ってしまったんだ。
くだらないことだと一笑に伏すようにしてしまったんだろう。それはきっと、俺は本当は嬉しかったからじゃないのだろうか。
相手が男でも女でも、好意を持たれることは嬉しいものである。告白されるようなものなら、「好意」どころか「愛情」に達するような、そういうステップアップが分かるから、いや、なんだ、どっちでも同じかもしれないんだけど。ただの好意じゃないってことで、俺はそれを凄く、本当に凄く嬉しかったんだと思う。
だから――――舞い上がった。
好意を持たれた側だから、調子に乗って上から目線で、あんな、「笑え」などと言うことができたのだ。
その時の俺はそれが一番正しいと思ったんだろう。だけど、思いだせばそれはまるで違う。大きな間違いだ。アストルフォをいつもらしくすることが正しいと思ったら、それは全くもって正しくなんかない。
俺はあの時、フォローなんて余計な真似をすべきではなかった。だって俺は、アストルフォと対等なはずだったんだから。
しかし告白を俺が断った時、立場は確実に――――上下関係になった。
アストルフォの願いを俺が断る、そんな、上下関係。だけどそれでも、その時だけのはずだったのに。にも関わらずに俺はアストルフォをフォローしてしまった。自分が上だと示すように、フォローをしでかしてしまった。
どんな気持ちだっただろう。
告白をした人間に断られ、「さっさとこんなこと忘れろ」と、「良い思い出になるだろうから笑え」と、そう言われた人の気持ちは。
それはきっと――――ひどくみじめだ。
「あー……」
腰掛けたベッドに、俺は背中に重心を乗せて、そのまま背中をベッドに落とす。見上げる天井は真っ白で、しかし俺の心はひどく黒く汚れていて、なんだか泣きそうになった。
バカだなあ、俺。理性とかなんだとか、蒸発していたのは俺の方じゃないか。
いや、ホント、消えてしまいたい。
この理性ごと、知性丸ごと、蒸発してしまいたい。
そんな願いが、叶うはずもないのだけれど。
「ん……?」
枕元に充電しながら置いていた携帯電話が通知音を届ける。俺は右手を伸ばしてその携帯電話を手に取って、画面のディスプレイを見て見る。するとそこにあった名前は――
『アストルフォ:家に、来てくれない?』
まあ、そんな感じの簡潔な内容で、簡潔過ぎて逆に少し考えてから、俺はゆっくりと起き上がる。一度は脱いだ外用の上着を一つ羽織り、そして俺は部屋を出た。
たった一人の親友と、また対等になるために。
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さて、どうだろう。素晴らしい決意で部屋を出たはずの俺はなんと、見知らぬ部屋のベッドの上にいた。
もうベッドというか、大人三人が寝ても余裕があるんじゃないかというくらいのベッドである。こういうのってキングサイズとか言うんだっけか?
いやいや、今はそういうことを考えている場合ではないだろう。まずは現状を詳しく知る必要がある。
部屋は豪華絢爛。一般的な男子高校生のちんけな部屋なんぞとは比べ物なら無いくらい広く(少なくともキングサイズのベッドを置いてなお余裕があるくらい)、高そうな本棚があったり、高そうな照明器具があったり、高そうな壺が置いてあったり、あるものすべてに「高そう」という文字が文頭に付きそうである。
で、だ。ここが誰の部屋かというと、恐らくはアストルフォの家の一室なんじゃないのかなと思う。なぜって、アストルフォは滅茶苦茶金持ちだから。
アストルフォが生まれる前はそうでもなかったのに、生まれてから急に宝くじが当たった、働いている会社でどんどん昇進していった、株を買ったら一攫千金……etc。なんて、そんな感じで冗談みたいな大豪邸にアストルフォは住んでいる。
……うん、こんだけ高そうな部屋なんだから、多分アストルフォの家で合っていることは間違いないだろう。少なくとも、俺の家の近くにはもう、こんな部屋がありそうな家はそれ以外見当たらない。
「…………アストルフォー」
寂しくて、大親友の彼の名前を呼ぶ。
いや、なんだこの状況。アストルフォの家だって分かったのに、何度も遊びに行った家だって分かったのに、全くもって状況がさっぱりつかめない。家まで来たのは覚えているけれど、そのあとの記憶がさっぱり抜け落ちている。
軽く腕を動かそうとすると、どうやらベッドの……こう、高いベッドにありがちな、四隅にそれぞれある一本の柱、その頭の方で、そこに俺は右手左手、長めの鎖を付けた手錠で拘束されているらしい。いや、固い固い、力づくで脱出できる気がしない。
なにがどうしてこうなった? むしろどうやったら俺は大親友のアストルフォ様の家のある部屋の一室で、ベッドに拘束されることになる。
「あ、起きた?」
そう言って部屋に入ってきたのは、桃色の髪を三つ編みにしたアストルフォだった。
全裸だった。
「…………」
何を言えば良いだろう。アストルフォのその染み一つない綺麗な肌について言ってみたり、顔が女性に近いからか、なぜか胸がやや膨らんでいるように錯覚して見えたり、あるいは半勃ちの状態である秘部について言ってみたり、スラっとした綺麗な脚に見惚れてみたり、そういう、そういう何かしらの何かを言った方が良いのかもしれない。しかし俺は何も言えない。せいぜいが、震える声色で親友の名前を呼ぶだけである。
「あ、アストルフォさん?」
「やだなー、そんな他人行儀で。君らしくもない。そうだよー、君の大好きでやまない、アストルフォだよー」
にっこりと、アストルフォは笑う。
全裸で笑う美少女のような美少年に、多少の背徳感のようなものを感じて少しだけドキリとしたのは墓の中に持って行くとして、しかし、なんだろう。スゴイ怖い。笑顔というのはここまで恐ろしいものだっただろうか。
アストルフォはその自身の裸体を少しも恥ずかしがることなく、ベッドに拘束されている俺へと向かって来て、俺の身体を挟んだ状態で膝立ちになりながら、ベッドの上に乗る。
そして俺の右頬にそっと左手を添えるアストルフォ。その手は少しだけひんやりしていて、身体が勝手に大きく震えた。
「……ごめんね。痛かった、よね?」
大きな薄紫色の瞳は、どこか揺らめいているように見えた。その瞳が凄く綺麗だと思って、目を逸らせないまま、それでも咄嗟に、そんな心配そうで心配してくれるアストルフォに、フォローの言葉を発していた。
「えと、いや、俺の方こそごめん。ホント、お前から告白されて調子に乗ったんだ。馬鹿なこと言っちゃって、ホントごめん。理性が蒸発してたのは俺の方だった」
仲直りできそうなやり取りだったが、以前、俺は拘束されているし、アストルフォがその小ぶりなお尻を落とせばマウントポジションを取られる体制である。怖い。
「君は……優しいよね。そういうところ、大好き。本当に――――大好き」
また、瞳は揺れた。ゆらゆらと、息を吹きかけたロウソクの火のように。
「……なあ、アストル――――」
だから、何かを言いたくて、それでも俺が言えなかったのは、唇を塞がれたからだ。
アストルフォの顔は揺れている瞳が見えないくらいに近くなっていて、そしてそのアストルフォの唇で、俺の唇が塞がれた。
キスを――――していた。
「ん……」
何が起こったのかは咄嗟に理解はできなかった。理解できないまま、唇同士は離れていく。
「ふぁーすときす、あげちゃった」
先ほどまで繋がっていた自身の唇に、アストルフォは手を添えながら笑った。それは普段からは似ても似つかないくらい煽情的で、だから、まるで、世界が違って見え始めた。
「もっかい……ちゅっ……」
考える間もなく、唇は落とされる。俺は気も唇も逸らす暇もなく、ただ、されるがままだった。
「ちゅう……」
拘束されているにも関わらず、俺の頭には逃がさないように両手を添えられて、そして、そのキスは今度は浅いだけでは終わらない。
唇を割って、目の前に居るアストルフォの舌が、口内に侵入してくる。
それに驚愕しながら、なんとかしようと思いながらも、何もできることはない。ただひたすらに――――蹂躙される。
「じゅる……れろ……ん……ちゅうじゅる……」
唾液音が響き渡る。
耳に、部屋に、脳に、響き渡る。
驚いて、息が乱れて、苦しくて、興奮した。
「破くね」
なんのことかは分からなくて、何も言えなかったけれど、答えを言う間もなくアストルフォは俺の首元――下着ごと襟に両手をかけたかと思うと、そのまま左右に、力任せにビリビリと破いていった。そういえばこいつは、意外と力持ちだったり、頭が良かったり、素早かったり、色々凄い奴だったなあと、なんとなく思いだしていた。
それで、気が付いたら、上半身が裸になった。視線を向ければ、服だったものがベッドに散乱している。
「すごく……良い。うん、すごいよ。すごい、好き」
「ふ……ふざけんな!」
そこで急に今の自分を褒めらたからなのだろうか、俺は普段の自分とやらを思いだせて、ようやく今の現状に思考が追い付いた。
なんだこれは。なんで俺はアストルフォにキスされて、ディープキスまでされて、なんで、こうなってるんだよ。
「バカトルフォ! 今なら拳骨とデコピン一発ずつで許してやるから、さっさとこれ外せ! じゃなきゃお前、後で本当に、酷いぞ! 俺がホント、怒るぞ!」
ガチャガチャと手錠を鳴らす。さりげなくこれが壊れてくれないかと願うが、拘束している手首が痛いので今すぐやめたい。
「…………」
対して、アストルフォはただ俺を見降ろすばかりだった。手錠が壊れないか心配する様子も全くない。どうやら手錠が壊れない自信か、壊れてもなんとかできる自信があるように見える。ひょっとしたら、俺の提案に悩んでいてくれるのかもしれないけれど、それにしては瞳の光が薄暗い。
「……うん、そっか。そっかそっか。優しくしてあげようかなって思ったけど、別に良いみたいだね?」
「この現状が優しくないつってんだ……ば、バカバカ! なんで、ズボンに手かけ……!」
慌てて俺は膝を曲げて、前の方のズボンに手をかけられないよう邪魔したりするけど、その分後ろの防御がおざなりになっていたようで、お尻だけ出された状態になってしまった。ペニス隠して尻隠さず、みたいな言葉が俺の頭に浮かんだが、それを口に出して笑いを取るほどの余裕は俺にはなかった。
「そーれっ!」
そう掛け声をかけたと同時に、アストルフォの力づくで引っ張られるズボンに従って、俺の膝は真っ直ぐに伸び、そのままスポーンと下着だけ残して脱がされる。
「ば……バカバカバカトルフォ! アホトルフォ! さっさと返せ! もうお前なんて大嫌いになるぞ!」
「うわぁ……すごい、太ももとか白いし柔らかいよね、キミって。あ、だから暑い時でも長ズボンとか履いて隠してるの?」
「さーわーるーなー!」
まるで女性のおっぱいでも触っているかのように、慎重に優しく揉んでくるアストルフォの手を振りほどくため、俺は拘束されていない足を縦にバタバタと振る。こんな動作もまるで子供が駄々をこねているかのようで、俺のプライド的なものがべきべきと音を立てて崩れていくのを感じるが、しょうがない。背に腹は代えられないように、プライドに太ももは代えられない。実害を被るくらいならば俺の安いプライドなんて捨ててやる。
「はいはい。大人しくしてないと、こっちも拘束しちゃうよ?」
縦にしか振らないという極めて単調な動作の俺の攻撃は、どうやら相手にとってはとても律しやすいもののようで、アストルフォはいとも簡単にただ上から手の平で俺の太ももを押さえつけるだけで、俺の攻撃は封じられてしまった。
そしてそんな脅し文句を聞いてしまい、 手だけでも多少のストレスなのに、これに加えて足まで拘束されてしまったら、今以上の多大なストレスを得るだろうし、今現在簡単に封じられてしまっている行動を続けるなんて無駄なことをこれ以上やる気にもなれず、俺は項垂れながらそっと足から力を引いた。
「なあ、アストルフォ。ホント、もう止めようよ、ね? もう十分に恐怖を感じたし、うん、すごいビックリした。だからもう『ドッキリ大成功』っていう看板を俺に見せてくれても良いと思うんだ」
「ドッキリ? 何の話?」
「今の話……ひんっ……! だから、触るなよぉ……! こんなのお前らしくないじゃん。お前はもっと馬鹿でさぁ、自分の利益になっても人の嫌がることはしない、そんな馬鹿じゃん……。なんでこんなことするんだよぉ……お前、おかしいよ……」
そう、こいつはおかしい。
こいつはもっと、理性が蒸発していて、人を振り回して迷惑かけて、だけどそれでも正しいことしかしない。こいつは悪に立ち向かい、正しく生きている、そんな格好良い人間だ。俺よりも格好良くて、俺よりも可愛くて、俺よりもずっと正しい友達なんだ。
なのになんでこいつは、俺が嫌がることをしてるんだ。
悔しさや悲しさで口を一文字にしている俺に、アストルフォは薄い桜色の唇を俺の耳に近づかせて言う。
「キミのことを考えると、おかしくなる」
途端に、その声は凛とした涼やかな音色を響かせた。それはさながら――騎士のようだった。
あるいは役者っぽいと言っても良い。格好良すぎてそう思ってしまうくらいの、聴き惚れるような声音だったから。
「キミはよく、ボクのことを理性が蒸発しているって言うけど、そうだね。キミのことを考えるだけで理性が、言葉が、思考が、蒸発する」
「…………」
「だから、ごめんね。ボクらしくないなんてボクが一番分かってるけど、それでもボクはこうしていたい」
「俺が嫌でも、か?」
「キミが嫌でも、だよ」
「そんなの、アストルフォじゃない。お前なんて、俺の友達じゃない」
「…………うん、ごめんね。だから、もう良いんだ、嫌われても。ボクはもう、我慢なんてしたくないんだ」
誰よりも自由に生きているように見えたはずのアストルフォが、そう言った。
だからきっと――俺の目は節穴だったんだろう。
「もう良い。お前なんて大嫌いだ」
なんとなく、腕を使って目元を隠しくなった。
それでも俺の腕は変わらず拘束されたままで、碌に動けない。
「うん。ボクはそれでもキミのことが大好き」
アストルフォの顔が降りて、彼の唇と俺の唇が触れ合った。
もう太ももを押さえる手もとっくのとうに離されているけれど、これ以上動く気なんて俺には無かった。
「……ん、ちゅっ」
せめてもの抵抗として、口だけは開かなかった。アストルフォの舌がその門を搔い潜ろうとしても、俺はただ固く唇を結び続けた。
顔を上げることすら手間なのか、そのまま体も下ろして、お互い服を見に付けないままに密着された。そして頬へとアストルフォの唇は移動していき、そこにまた口づけをする。左にして、また口に戻って、今度は右に。
「れろぉ……」
それが終わったら、今度は舌で舐められたりもした。
そしてそうやって口で攻めている間にも、アストルフォの手はわき腹辺りに移動していって、手の平全体で確かめるように擦っていた。
「すべすべしてて、気持ち良い」
その触り方がくすぐったくて、固く結んでいる口を開いてゆっくりと呼吸をしたくなるけれど、それでも俺は我慢した。我慢したくないけど我慢した。
わき腹から鎖骨に、鎖骨から胸に、移動していった。
アストルフォの顔はすぐ前にあって、その見た目は美少女にしか見えなくて、その美少女に身体を触られたりして、だから俺は興奮したのかもしれない。
「うぅ……」
嫌になるけれど、俺は自分のペニスが固くなっていくのを感じていた。
こんなことになりながら、大嫌いな奴に触られたりしながら、俺は興奮しているのだ。アストルフォもその固くなっているものを下着越しに気づいたのだろう、微笑を浮かべた。
「固くなってるね」
いちいち言うなと言ってやりたい。
いちいち俺を見ないでくれと声を荒げたい。
いつものアストルフォに―――--―戻ってほしい。
「お前なんて――キライだ」
キライだ。キライだ。お前は今まで俺を騙して、わざと自分を馬鹿に見せていたんだな。そうやって自分は馬鹿だから安全だよとアピールしていたに違いない。それに騙されていたのは紛れもなく――――俺自身であるのだけれど。
やっと開いた口からそんな小生意気な発言を聞いたからか、アストルフォは何も言わずに、指一本で俺のペニスの幹を下から上に通るように触った。
それだけで、反応してしまう自分もキライになる。俺のペニスは無様にもっと触ってくれと、意思に反して――――意志に従って、反応する。
今までのような、それだけで射精することにはなり得なかった現状からやられた、直接的な性接触とでも言うべきか、俺の身体は急に温まりだす。肌と肌が密着し合って、アストルフォの女の子みたいに可愛い顔が目の前にあって、興奮して、もっと気持ち良くなるためにと俺の身体は赤みを帯びた。
「れろぉ……」
だからもう嫌になった。
我慢していた口を閉めるなんて行為も、もう止めてアストルフォの思いがままにしてやった。
アストルフォの舌は俺の口内で暴れ回って、それに反応して俺のペニスも快感を求めて跳ねてしまう。
そんな現状が嫌で嫌でたまらないけれど、それでも俺にできることなんてもうなくて、だから俺はきっと色々と諦めてしまったんだと思う。
こんなアストルフォはやっぱりキライで――――でも受け入れて。
こんな自分は嫌でたまらなくて――――だからもう見るのを止めて。
感情も、思考も、そのなにもかもを、棄ててしまおう。
肉欲に溺れて死んでしまおう。
性欲に溺れて沈んでしまおう。
高そうなベッドにばんざいしながら寝ている中で、高そうな部屋に俺と彼との水音が響き渡った。
「好きだよ。好き、好き、大好き」
そう言ってまた深いキスをした。彼の手は俺の不自由なものと違って自由に動き回り、俺の身体をまさぐり触り、微弱な快感を引き起こした。
俺はその行為にいちいちみっともなく反応をしてしまい、彼のことを余計に喜ばせていることだろう。一度キスを止めて身を起こしたかと思えば、見下ろした状態で触るのに集中し始めて存分に俺の身体をイジメていった。
手の平全体でわき腹から胸に行ったり来たりを繰り返して、またキスをした。
軽いキスを一度して、もう一度して、今度は深いキスをした。その間に彼の手は俺の胸の乳首の辺りを巡り始める。
なんとなくもどかしくて、拘束されていながらでも体をねじった。それでも決してそこにある点だけは触ってくれないから、何度も体をねじった。
「なんでだろうね。ホント、ボクだったらもっとちゃんと気持ち良くしてあげるだろうに、どうしてキミ相手だとこうしてイジメちゃうんだろう」
月が――――近いからかな。そう言ってから、いきなりその膨れた左右の乳首を両手で力いっぱいにつねられた。
「それとも、キミにこうすれば、そういう顔を見せてくれるから?」
気持ち良かった。もどかしかった。良く分からなかった。くすぐったかったかもしれない。
この感覚がどういうものか上手く説明できないけれど、俺の息はもっと荒くなって、もっと快感を求めるようになって、もっと体を捻るようになった。
「ね、キミの口から聞きたいなあ――――気持ち良いって」
「…………」
「うん、じゃあこっちも触ってみよっか」
彼は右手を後ろ手にやって、直立した
それだけで俺は歯を食いしばっていた。食いしばって食いしばって、快感を噛み殺していた。
「すごく熱いよ。……ね、こうしてちょこーっと動かしてみるだけで、もっと触ってーって言ってくる。キミ風に言うなら、下の口は正直だぜーってヤツ?」
「…………」
「うん、じゃあ、一回止めよっか」
それは真実で、彼はどちらの手も動かすのを止めた。
もしもそれが俺の口を割らせるための、いわゆる快感に我慢しないためにも素直になれという、そういうものであったのなら良かったと思う。
だから、アストルフォにそれを言われて、俺は少しだけ希望を持ってしまったのだと思う。
もしかしたらこれで終わりなんじゃないかっていう、そういう期待を持って、持ち戻してしまったのだと思う。
「よいしょ……」
一度足をベッドから降ろして、快感に我慢するために曲げた膝に回り込むようにして、またベッドへ上がると、その膝越しから俺のことを見てゆっくりと笑った。
「……!」
「あ、大丈夫大丈夫。ちゃんと寝てる間に綺麗にしたよー、メイドさんと一緒に」
アストルフォは俺の、いわゆる
「アス、トルフォ」
「ん、なーに?」
「やだ、お願い。気持ち良かった、さっきの、本当は気持ち良かったから。だから、そこは……」
「大丈夫だってー。ボクのキライなものは嫌なこと以外全部で、好きなのは全部で、君のことは全部好きなんだから」
あ、そーだ、とアストルフォは急に何かを思いついたように言うと、またベッドから降りて、近くにあった机の引き出しから、小さい入れ物に透明な液体が入った何かを持ってきて、また先ほどの態勢に戻ると、入れ物を傾けて液体を――ゲル状のなにかを手の平たっぷりにこぼした。
「『ろーしょん』って言うんだって、これで入りやすくなるらしいよ?」
「入れるって……」
「うん、ボクも気持ち良くなりたいから」
拘束されていない足を動かして暴れることはできなかった。
無駄だって分かっていたから、それでもなんとかできないかっていう思考は止めなかった。
その『ぬるぬる』はアストルフォの言う通りに、潤滑油のような役割を果たして彼の指一本は驚くほどすんなりと入ってしまった。
もちろん、入ればその分変な圧迫感があったりして、俺の身体はそれを出そうと勝手に反応してしまったりするから、今入っているその現在のことを踏まえればすんなりとと表現するのは違うのかもしれない。
「……あ、ごめんごめん。こっちも、ね」
そう謝罪して、今度は左手で俺のペニスを握った。
息がこれ以上ないくらいに荒くなって、玉の汗が顔のどこかにあるのを感じた。
アストルフォは俺のお尻に集中しているからか、その左手をぎこちなく動かし始めた。しかし、そのぎこちなさが逆に、変に気持ち良かった。
お尻には違和感があった。ペニスは触られるのは変わらず気持ち良かった。
わけがわからなくなりそうなくらい、気持ち良いような、そうではないような、そんな感覚に陥らされた。
しこ、しこ、しこと。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅと。
快感が聞こえた。
「やだ……」
親友に裏切られ、その親友にお尻を使って辱められ、そしてそれに気持ち良くなっている。これらの事実に俺は涙が滲み出てきた。
悔しかったかもしれない、恥ずかしかったかもしれない、気持ち悪かったかもしれない、気持ち良かったかもしれない、情けなかったかもしれない、辛かったかもしれない。
その声を聞いたのかは知らないけれど、アストルフォは一旦ペニスとお尻の中、両方の指を動かすのを止めてくれた。
俺はその時、初めて『なんとかなるんじゃないのか』という期待が少しだけ降って湧いた。俺の知っているアストルフォに戻ってくれるんじゃ無いかとう淡い期待だ。自分の身体越しに見ると、アストルフォも俺の開いた股の間からペニスを押さえつけながら俺を見ていた。
無表情という表情をしているだけで、それはたまらなく美しくて、手も足も出せないその状況が嫌にストレスだったのか、勝手に自身のペニスがアストルフォの手の中で跳ねた。
無言で見つめるその表情のままで、その反応については言及してこなかったのがなんとなく嬉しかった。
「今日は入れないよ」
と、安心させるように言った。
この状況で、『何を』入れないというのかは言われなくとも分かっていた。言われなくとも、今の今まで恐れたいてのだから簡単に理解できた。
しかしそれで嬉しいと思うには、まだまだ俺は堕ちていない。今日はそうでも、明日は分からないのだからそれを嬉しく思って歓喜に震えるなんてものは余程の愚か者か子供くらいだろう。
「……」
だから、お礼は言わずに睨みつけた。安心したという感情を相手に教えたくなかった。
その俺への答えにアストルフォは――――お尻の中の
「い”い”!?」
目の前を白い火花が弾け散る。潜んでいた汗はぶわっと体中を噴き出して、シーツに吸収された。それでも体の熱さは収まりを見せずに今の状況を知ろうと目が慌ただしく焦点を合わそうと動いた。
刺激が刺激が刺激が刺激が刺激が俺を包み込む。
痛いくらいに熱い快感で、いや、快感なのかどうかすら定かではない。痛みなのか快感なのかはたまた別の知らない言葉なのか、日本語でその状態を正確に表せるのか分からない。
いつの間にか体は指し込まれた指を中心にしてのけ反っていた。その状態で肺の中に溜まった二酸化炭素がうめき声のように斜め上空に吐き出される。まだ焦点は合わず、羽虫のように周りを飛んでいる。
「ん”あ”あ”あ”あ”!」
荒い息を吐きださされて、日常で
痛みも快感もあらゆる思いを置き去りに、のけ反った体は丸ませて恐怖で震えながら俺がアストルフォの方を見ると、ベッドの上に糞尿を垂れたわけではないと知って俺はよく分からなくなる。
何が起こったのか、何が起こってなかったのか、何も分からなくなる。怖くて恐怖で俺の口は言葉を作り出そうとごまごまと形にならないものに変化して、安心の感情も混じって涙が出た。
はっはっはっと、犬のような荒い息は収まりを見せず、無様に歯を鳴らして打ち震えていた。
「指を抜いただけだよ」
痛かった? とアストルフォ。
彼の的外れな付け足しの言葉にようやく俺はその確たる事実を知って、強い安心感が身を包んだ。そしてなんと俺は彼に怒りの感情を覚えるどころか、むしろよく教えてくれたという感謝の気持ちさえもが湧いたのだ。それでもまだ感謝をするというほどに俺は洗脳されていない。堕ちていない。
だから、睨みつけ――――はしなかった。
ブンブンブンと、言葉を出す暇さえ惜しいように俺は首を縦に振って彼の問いに答えた。涙はまだ止まらず、視界はぼやけたままだけれど、アストルフォはそれを見て笑ったように思えた。
「そっか……ねえ」
「…………」
言葉を忘れたかのように、俺は何も言えず彼からの問いを待った。
「今日はお尻、もう止めて欲しい?」
まだ言葉は取り戻せてなかったので、首を大きく振って勘違いされないように俺は応えた。前言を撤回するようで申し訳ないけれど、俺はそのアストルフォの『今日は』という断りに対してとても嬉しくそして心を軽くしてたまらなかったのだ。本当に嬉しくて、それだけで笑顔になってしまいそうで、いや、自分では分からないだけで自裁には笑顔になっていたのかもしれない。まるで世界の破滅を止める方法を知ったような、それだけ嬉しい事実だったのだ。
安心させるためか、アストルフォは一度だけ了解の意思を告げてから迷った風に天を見上げた。
「うーん……あ、じゃあさ!」
良い案が浮かんだとでも言うように、嬉しそうにアストルフォは両脚の間から乗り出してきた。恐怖は――――もう覚えなかった。アストルフォがそんな風に俺の嫌がることをするはずがないと本気で思っていたのだ。
「自分でしてるところ見せてよ!」
「じ、自分で……?」
「うん!」
それには応えたい気持ちで一杯だし、異論もあるはずがなかった。しかしそれを阻むものがあるのだと知らせるために、俺は軽く手首を縛っている手錠の鎖を鳴らしながら言い淀んだ。
彼もそれは承知の上だったのか、「大丈夫!」と元気
「鍵だよ。手錠の鍵」
「……外して、良いの?」
逆に俺は心配になってしまった。なにせ、それを外してしまえば俺は逃げてしまうのかもしれないのだから。今現在、俺はそんなつもり更々ないけれど、それでもアストルフォを心配させたくない一心でそう口に出していたのだ。
「大丈夫。ボクは
優しい声音だった。格好良い声色だった。聴き惚れて、聴き惚れて、開いた口から感動の息が漏れた。
「あ」
――――あ。
「
と、俺は言っていた。
アストルフォは薄く笑うと、手錠の鍵穴に鍵を差し込む。ガチャリと数秒もしないうちにあれほど固く脱出不可能かと思われた手錠から俺は解き放たれたのだ。もう片方の手も続けて手錠が落ちる。たった一時間も経っているとは思えないが、ようやくといった開放感が出る。
俺の視線の前で笑うアストルフォがまたベッドの上に女の子座りになって俺の股の間に座ったので、慌てて足を引いた。
「じゃ、見せて♡」
緊張で俺は喉を鳴らして、少しでもアストルフォに見やすいようにと、正座に近い形に座り直して膝立ちしてから自身の硬いままのペニスを握り込んだ。なんとも言えない息が潜まる快感がそこから始まる。
「ん……」
亀頭の手前の所で親指ともう一つの指で輪っかを作り、それを上下に動かし始める。輪っかが行って、来て、行って、来て、それから自分がその動きに夢中になっていることに気が付いて、慌てて沈んでいた顔をアストルフォの方に向けた。
そこには変わらず笑顔のアストルフォがいると思っていたけれど、そうではなかった。
俺と同じくアストルフォも真剣な赤みのさした興奮している顔つきで、俺の行為を見ていたのだ。
「あ――」
跳ねあがった心臓と興奮で、声が漏れた。
その興奮のまま吐きだされそうになった快感を前に、俺は倒れこむようにベッドに手を付いた。
もう片方の竿をしごいている手は、それでも止まらなかった。息が漏れて、なんとなく泣きそうになる俺の肩にアストルフォの手が置かれた。
流れのままにアストルフォの顔を見ると、今度は笑顔だった。笑みを押さえられない興奮した雌のような顔だった。
「良いよ、体重こっちに乗せて。そのままで
「う、ん……!」
しごいてしごいてしごいて。
波打つ快感がまた波を呼び、膨れ上がってくる。
「ボクの名前、呼びながらやって欲しい、かな」
「あす……とるふぉ。あすとる、ふぉ。アストルフォ!」
無様に泣くように、鳴くように、俺は彼の名前を言われるがままに呼んだ。
逆らいたくなかった。快感に余計な考えを付け足したくなかった。もっと気持ち良くなりたかった。
ぐちゅくちゅぐちゅくちゅ。親指で人差し指で中指で、もっと気持ち良くなろうと剥き出しになったところの肉の部分をそのどれかの指で直接触れた。
快感に、たまらない射精感が込み上げてくる。
「……キミのこと、好きだよ」
肩に置かれた手を首の後ろに回して抱き付いてきた。アストルフォの顔が、俺の顔のすぐ横にある。
「好き、好き、好き、大好き。この世界の誰よりも何よりも好き。だから、だからキミも――――」
――――好きって言って。
「――――す……き……! あす、とるふぉ、しゅき。あすとるふぉ、すき。あす、ぁ、う、あ、好き、好き、好きだ……」
好きだ。
好きだ。
好きだ好きだ。
好きだ。
俺は――――アストルフォのことが好きだ。
「ん、あ、ぁぁ、ああ――――――!」
泣くように、もう何も気にしないで出た快感のまま大声をあげる。その快感は、アストルフォの雪のような肌に放たれた。
アストルフォに学校で告白されて監禁される……。
……(許可を取ろうか迷いましたが)男子校じゃないからセーフ! セーフ! セーフ!