奪われた愛する人を救うため。そして、世界のため。
ファンタジーおねショタです。
幾百幾千の槍の石突に叩かれ、大地は唸り声を上げていた。
「我等は、これより一人の『戦神』と呼ばれる存在を迎え撃つ。」
その槍持ち達の前で、馬を駆り立派な鎧を身に付けた男が大音声で鼓舞する言葉を述べている。
「諸君らは、我等がシグーンの兵である。
大陸の東域を支配する、シグーンの精兵である。」
彼の腰には騎馬戦用のロングソードを佩き、兜を小脇に抱えていた。
「はっきりと言おう。
諸君らは、強力である!!」
男としては少しばかり長い髪を振り乱し、そう叫ぶ顔には鬼気というものが張り付いているように見える。
「その力に驕り、単身乗り込んでくる彼の者を、倒せまいか?
否、必ず倒せる!」
しかし、その瞳には、隠し様もない焦りの色が浮かんでいた。
「我等は、戦神を倒す!!」
万の軍勢で尚、勝てる確証が無いからであった。
「「「「「応!!」」」」」
雷鳴の如く兵達もその言葉に応えるが、
無色透明で、気付き様も無い程微かな指揮官の不安は何処からか彼らに伝播していた。
ビリビリと震える鎧は、その雷鳴からだろうか、それとも不安からであうか。
当人たちにも、判じ得ない問題だった。
「ははぁ…威勢が好いねぇ。」
大地も抉れよと繰り返し槍を打ち鳴らす兵士達から離れること数里。
ごろりと、無造作に一人の女性が横たわっていた。
「おちおち眠ってもいられないや。」
皮革とも金属とも取れる不思議な質感の防具に身を包むその身体は、
抑え付けられていても判るほど女性らしい、艶やかな魅力を放っている。
「まったく、人は今も昔も騒がしいものだね。」
そして尚且つ、激しい活動に堪えうる独特の『精気』を帯びて、引き締まっていた。
その連想させるものは、超一流の踊り子、あるいは当代屈指の曲芸師。
しかし、どちらも正解ではない。
件の戦神とは彼女のことである。
「まあ、私がもうすぐ攻めるって言ったからね。
うん、しょうがないしょうがない。」
肩書きに比して行動や言動は迫力に欠ける感じではあるが、
「う〜ん…ハルトも暇しているだろうし、早く行ってあげなきゃ。」
跳ね起き、パシンと頬を叩いた途端に「人同士で争う暇なんてないのってに。」
その瞳から、途端に緩んだ空気は消えた。
「まあいいや、個人的な恨みで暴れよう。」
〜イクサガミ〜
その時代、その大陸には多くの国が有った。
そしてその国々には、神と呼ばれ、崇拝と畏怖とを同時に享ける者達が散らばるように存在していた。
遥か先の世、百の国の時代<レギオンズ・エイジ>と歴史家達に呼ばれるこの時代は、
神話の世界が現在進行形で紡がれる時代でもあった。
「戦闘配列着けぇーい!」
先の長髪の男に代わり、十名程の軍団長が各々の軍勢を整えていた。
横に広く兵士を並べ、それを三層に敷いた列は、後方に鎮座する砦への進入を阻むべく組まれている。
その中に囚われるは、戦神の求めるハルト…という人物だろう。
この上なく堅牢に見えるが、逆に一人だけの敵に対して有効なのかは未知数である。
おそらく、この様な戦闘はこれまでもこの先も無いだろう。
それ程にイレギュラーで、一見すれば安っぽい物語の様な戦いが始まろうとしている。
さっき兵らの前で演説を打っていた長髪の男…名をシムルト・ドゥーサと言う壮年の将軍は、
脇に抱えていた兜を従者に預け、剣を仕舞って陣営の幕の中の奥まった腰掛けていた。
「報告します。
最前線に配置する第一から三軍、約一万五千は配置完了。
残りの部隊も順次完了する模様。」
「第二軍の先頭部隊より目標の発見報告有り、間もなく戦闘開始するようです。」
数人の伝令が細々とした情報を報告し、それを彼は目を閉じて聞いている。
「王より<兼ネテノヤウナ将軍ノ活躍ト凱旋ヲ期待ス>とのことです。」
「…また簡単に言ってくれる、あの狸め」
突然にボソリと呟いたのは絶対的な存在であるはずの王への侮辱。
だが王の言葉を伝えた伝令も、その他の部下も、シムルトの言葉に何の反応もしなかった。
彼の性格としてはこれが真であり、彼らには慣れっこでもあるからだ。
「尽力すると伝えてくれ、俺は寝る。」
一般の兵らの前での英雄じみた姿は、彼の仮面に過ぎない。
「相手が一人しかいないんじゃ、用兵なんて出来やしねぇよ。」
ならばどうするのか、その答えは心の内に秘めたまま、彼は本当に寝始めた。
「例の戦神ってのは、女の姿をしてるらしいぜ」
シグーン兵の最も前の列の近接斧槍兵の一人がそんなことを漏らした。
「でも神さまなんだろ?
多分二軍の奴らはあっと言う間に殺されるだろ。
人生最後に女を見れるのは願ってもないが、女の手にかかるってのはいやだねぇ」
「まあ、行くなら行くで二軍の真ん中を突っ切って直行するだろうから、
俺たちは大丈夫だろう。」
そんなことを第一軍の兵らが喋っているのもつかの間、
「……!!!
おい、おま、よけ…!!」
ぐしゃり
遥か向こうから投射され、兵の頭をトマトのごとく潰したのは短槍。
亜音速で、全く弧を描かずに、当に"飛んで"きたというに相応しい。
「敵襲!敵襲!
戦神は第一軍を狙っている!!」
直接中った兵にとどまらず、懐紙のように数人の頭が吹き飛び、
一気に周囲は混乱に見舞われ、大盾を持った兵が前に出されたのがやっとだった。
そして、第二射。
今度はさっきとは違う場所が狙われ、金属と金属の衝突した激しい音が響く。
だが、止まらない。
盾を貫き、持ち手を貫き、さらにその後ろの兵士に僅かに刺さって止まった。
「なんて威力だ」誰ともなく呟く。
悪い冗談のような威力に、微かな笑いがこみあげて来る。
笑いは元来恐怖の時に浮かぶ物なのだ。
「まだ来るぞぉ!」切っ先の反射で目の良い者が第三射を認めるが、
ここまで密集していれば避けられたものでは無く、変に避けてしまった性で無為に犠牲者は増えた。
第四射、第五射も場所を変え、どの位置にいても危険な事は無理やり理解させられた。
次はどこに来る?
短槍はあと何本だ?
極度の緊張でパーソナルな時間感覚は狂い、
なおも亀のように防御を固める。
そして、それこそが戦神の意図するところだった。
戦神の手許に投げ槍は、既に無い。
幻の攻撃を予想して固まってしまっている間に、静かに身隠しの魔法を唱え、全力で疾走する。
完全に透明になることは不可能だし、走れば砂煙も巻き上がるが、
今の状態なら、謀って作り出した今の状態だからこそ、まったく勘付かれる事なく接近を果たした。
神も不死身ではない。
数万の矢を浴びては、さすがに身が持たないのだ。
「隠形の魔法か!」
ようやく魔術師が気付くと同時にその魔法を解除し、攻撃魔法を当てんと呪文を唱える。
が、「遅い」と戦神が声に出さないレベルの大きさで呟くと、自ら魔法を消し、
「聴け!我は戦の神にして火の大神の守護、唯一神より神兵《渦巻く炎》を賜りしナルガである!」
柄の両端に刃の付いた、大槍とも薙刀とも見える武器を掲げ、高らかにそう謳いあげた。
逸って必死で斬りかかる者を鎧袖一触、胸を貫くと、
そのまま大地に縫い付けて宣言する。
「命惜しくばかかってこい!」
その言葉を皮切りに、周りの者が一斉に攻撃を仕掛ける。
あるものは斧槍を、メイスを、あるいは大盾自身を武器にして。
しかし、当たった攻撃は無かった。
ナルガが踊るように回転する動きにあわせ、槍が兵士の斧頭を切り落し、
そのまま流れるようにもう一端の刃で首をちょん切られた。
完成した魔術師の火球も、同胞の死体が盾になって防がれてしまう。
死に切れずのたうつ者は無視し、彼らの後ろに隠れていた魔術師たちを目指して切り進む。
半ば殺戮に近いが、己の主の愚かさを恨むべきだったろう。
ナルガの大事なひとを奪っていったのだから。
戦神の逆鱗に触れたのだから。
魔術師らは喉笛だけをぱっくり斬り裂かれていた。
大勢の魔法を封じるなら、これが一番だ。
また、隙を狙おうとしたシグーン兵は目も呉れられずに石突の方の刃で一突きされ、
それに続こうとした愚か者どもも鎧ごと斬られた。
神の武器とはかくも圧倒的な物か、刃こぼれ一つ見せない。
「そこな戦神!」
そう呼ばれ、振り向きざまに刃を振り下ろすと、
キンッ
「何!?」
そこにいたのは、熊のような体躯の大男。
「くはっ!なんとまあ重い一撃か。」
手には一際大振りの刀が在る。
「我こそは第一軍大将ごせ…ぅぬっ!?」
「あんたが勝ったら死ぬ前に名は聞いてあげる。」
いなされた槍を構えなおし、少し腰を落とした。
出来る者と認識された証拠だ。
「参る」少し不満げに男は動き出すが、その歩みに淀みは無い。
構えた真横から超重量級の斬撃を繰り出す。しかも迅い。
くっ、と洩らし、両手で柄を支えて受けるが、横に飛ばされ…いや、跳んだ。
(さすがに一味違う。)
そう考えつつ、体勢も整えずに突きを繰り出す。
一回、二回と大男はいなし、「軽い」と三回目で柄を掴んで、ぐいと引き寄せた。
が、ナルガもされるがままにする訳もない。
グリーブ(足甲)を穿いた足で痛烈な一撃をお見舞いする。
「卑怯なッ!」すぐさま大男は飛び退いてかわし、
「何それ」とナルガはすまし顔で、互いに構えなおすが、状況は等しくない。
「私は武神じゃなくて戦神だよ」
なんとなく、二人共に次の一撃で決まる気がしていた。
「はっ、道理。」
そう男は言うと、刀を大上段に構え、
対してナルガは下段に構えた。
じり、じり、と互いに回るような動きを見せる。
そして、半周を回ったとき、高まる集中力の中、男の眼がすうっと細まった、
キンッ
ザッ
「見事」
一撃を決めあい、果たして戦神は額を負傷し男は足元から一閃、逆袈裟に断ち切られていた。
どうと地に倒れ、血だまりが広がる。
「名前、教えてよ。」
次元の違う圧倒的な闘いに驚かされ、周りの兵らは未だ近づけない。
「ギリアム。ビルゴ・ギリアムだ。」
「忘れない」
そう短く言うと、介錯とばかりに首を断ち切った。
「紅い。」
砦の端の尖塔に、ハルトは居た。
驚くことに、まだ少年である。
「戦い…お姉ちゃんが来た?」
窓から見ると、舞い上がる砂埃がうっすら赤く見える。
気のせいだろうか?
「そのようですね」
「!?」
外の景色を見ている間に、唯一の扉から男が姿を現していた。
「さて、そろそろ本当の姿を見せてくださいよ。
あの女の足止めも長くはできない、そう、時間がないです。」
どうやら、ハルトを奪った首謀者らしい。
三十代と思しき見た目だが、眼鏡という珍しい装身具もあいまって、年齢以上に落ち着いた雰囲気をまとっている。
「いったい、どうやったら君は覚醒するんだい?」
そう言って歩み寄る足取りにも、切れ長で細い眼にも、確かな苛立ちが含まれていた。
「食事を抜いても全く痩せ衰えない。
傷つけても次の日には全快している。
次こそ本当に殺す気で傷つけないといけなくなりますよ?」
「…知らないよ、僕でもあの力は制御できないんだ。」
「解らない子ですねぇ」
そう言うなり突如ハルトの胸倉をしめあげ、
「本当に死ぬ一歩前まで痛めつけてやろうか?今ここで!!」
突如として怒りを爆発させる。
「貴様の《英雄の血》さえあれば、我々の大陸統一も夢じゃないんだよ。」
痛い、痛いともがくハルトを寝台に投げつけると、
「早くしないと、私が王に処分されるんだ。」
これぞ本当の理由と、切羽詰まった表情で告白した。
「まあいい」
始まり同様、突如怒りを納めると、
「あの戦神を生け捕りにして、聞き出しますよ。」
踵を返し、扉を出ていった。
「良い洗脳魔術はあるんだ、君には効かないがね。」
その言葉を最後に、ガチャリと重苦しい音が響き、また少年は一人になった。
それは殺戮だった。
ギリアムが倒されたという衝撃的な事件が起きた後、周囲を取り囲んでいた兵士達が放心状態から抜け出したのは、
戦闘を再開したナルガの手によって幾つかの頭が宙に舞ってからだった。
将を失った彼らの動きはバラバラで、恐怖で逃げようとする者と功名心で向かおうとする者がぶつかり、
結果、急激に人と人とが密集した空間が生成される。
そこを狙い込んでナルガは突進し、槍の一振りで幾人もの命を吹き飛ばし、血煙があがる。
おそらく、ハルトが見た紅いもやはこれであっただろう。
その勢いのまま道を"切り開いて"ナルガは駆けてゆき、分厚くも脆い壁が途切れた。
すると、「槍もて、突撃用意!」鋭い指揮の声が響き渡る。
整列した騎兵からランスが水平に突き出され、
「車掛かり、始めッ!」遭遇からわずか五秒、圧倒的な質量の奔流が押し寄せてきた。
横に五騎を一纏まりにして、それを扇状に横三列。縦方向にはどれだけ並んでいるかは分からない。
豪快でいて、実に緻密な計算の必要な攻撃だ。
「また凄いね…」
それを、当たり前の様にやってのける。
思わず足を止めてしまった所を寸分の狂いなく三方向から攻められ、さすがにナルガも必死でかわすしか途は無い。
絶えることなく波のように攻撃が繰り返され、次第に傷も増えてゆく。
それを見ていた指揮官はナルガを、あの戦神を撃破できるかも知れないと胸を躍らせる。
そうすれば、英雄だ!
貴族出身ということで騎兵長に抜擢され、それなりの技術、いや水準以上の腕を持っているにも拘らず、
伸び悩んでいる…と自ら評する彼にとって、
もっと上の地位に、いや、五千人長に昇格する可能性すら目の前にちらつき、
思わず戦場の興奮にそんな期待を上乗せしてしまうのも無理からぬ話であった。
ただ、相手がナルガでなく、只の豪傑や、英雄気取りの者であれば。
ふわり
僅かな突撃の切れ間を見切り、ナルガは跳躍し、それと同時に後方へ体を捻る。
理解が出来なかった。
ギリリと音がするほど引き絞るのも、その先端にまっすぐ伸びる槍も見えていたが、
理解が出来なかった。
一瞬の後に開放されたその回転エネルギーは、何の支えもない空中から放たれたにも関わらず、騎兵の首を見事に刎ね、
緩やかに回転する首が地に落ちるより早くナルガはその馬に飛び乗ってしまう。
これまで連続突撃の要であったはずの"勢い"そのものに邪魔され、もたついている騎兵らがまず薙ぎ払われ、
それらを全て見ていた指揮官、どこぞの貴族の次男坊は腋から背骨にかけて横に断ち切られ、
抱いていた期待を失うことすら許されず、心臓の破裂による急激なショックで絶命した。
遭遇と同様に、その幕切れも唐突なものだった。
「退け!邪魔するものは斬る!」
そして、ナルガは振り返る事も無く馬を駆る。
立ち塞がる歩兵を踏み潰し、なぎ払い、
時折落馬させんと突き込まれる長物の一撃をも巧みな手綱さばきで避けてしまう。
早く、速く、ハルトのいる場所へ。
前から矢が迫る。
冷静に槍で叩き落すと、弓兵を守る壕を飛び越え、近すぎて矢を打てない弓兵を雑草のごとく刈る。
砦はすぐそこだ。
しかし、
ドっ
馬首を砦方向へ向けた瞬間、時間にすれば十分の一秒ほどのわずかなタイミングで一本の矢が馬の額を貫いた。
「ヒトの所の馬で砦まで行こうとは横着じゃァないかい?」
馬は、即死だった。
再び矢が飛来する。
避けられないと判断し咄嗟に槍で払おうとするが、予想以上の"重さ"で軌道を変えきれず、
朱の線が鮮やかに頬に走った。
「女の顔に傷つけると高くつくわよ?」
射手の周りを見てみると、大勢いる兵らは弩を携え、彼だけが弓…らしき物を手にしている。
「女である以前にアンタは敵だからねぇ」
視界の確保のためか兜は外しており、ナルガへ話しかけるその顔には片目がなかった。
そして何より、目に付くのはその弓。
一見して金属の塊にしか見えない素材構成、明らかに打撲用と見られる突起が大量についている非常識な代物だ。
「さて、流石にこれだけの矢を食らえば危ないでしょ?
大人しく、降参しなよ」
弦を引いたまま保持できる強みを生かし、周りの弩兵は全員矢を番えたままこちらに照準を合わしている。
一太刀薙ぎ払っても、恐らく全員を倒すことは不可能だ。
どうするのか
その間も、弓兵たちはぶれる事無くナルガを狙っている。
ナルガは、槍をドン、と地に下ろす。
生け捕り出来るか?
そう、弓兵の長、ジョーイは考える。
口調こそ飄々としているが、その実考えうる限りの安全策を引いた。
濠を掘り、弓兵を配置し、
彼らを最初から、囮としてしてナルガに斬らせた。
勝てる策だと思っていた。が。
「術式開放、一から三番…」
彼女の口からもれ出たのは、不可解な言葉。
「開始。」改めて、もう一度槍を打ち付けると。
ひゅう…びゅうびゅう…
「風?」周りの空気が渦巻き、次第にその速さを増してゆく。
「賜りし我が武器の名、思い出せ。」
虚空を見るような瞳で、彼女の口だけがそう紡ぐと、
「…不味い!?
皆の者、撃て!早く奴を撃て!!」
意味するところに気付いたジョーイの言葉もむなしく、
突如炎を噴出して、旋風は一気に加速した。
神兵《渦巻く炎》
その真の能力は、炎の竜巻。
ジョーイの言葉が届く前に、多くの兵らは火達磨となり、
免れた者達は、炎の壁に阻まれて撃てる状態ではなかった。
「形勢逆転。だ。」
あるいは、相手が女神である時点で、
戦の神である時点で全ての策は意味を無くしてしまっていたのかもしれない。
風は炎を吹き消すのではなく、ますますに煽り立てて体に纏わりつく。
言うまでもなく、反則的な強さだった。
そして、ジョーイとナルガ、双方何もせずに…ジョーイは何も出来ず、ナルガは敢えて何もしなかった…佇み、
やがて、竜巻は二つに分かれて、更なる獲物を求めて疾っていった。
周りには黒焦げの死体がごろごろと転がっている。
「さて、勝負をつけようか。」
ジョーイは、半ば自棄になって打ちかかっていった。
お姉ちゃんだ、お姉ちゃんの炎だ。
ハルトは、いよいよ近づいてきた女神の戦いを見ていた。
竜巻は二つに分かれ、少しも勢いが衰える事無く周りの兵を貪欲に焼き尽くしていく。
そして、血の華が咲いて、ジョーイはあえなく殺されたようだ。
いよいよ、ナルガお姉ちゃんがくる。
希望を抱いた、その時である。
「えぇぇい!」
ドアが蹴破られる勢いで開くと、先の男と、もう一人太った男が入ってきた。
「もう知らん!なんだあの馬鹿みたいな進軍速度は!
精鋭が聞いて呆れる!」
先の男が、自分の思考を断片的に口にしながらハルトにせまる。
せめて此処から逃げるくらいの時間は稼ぐと思っていたのだろう、
乗馬装束で身を固めている。
「何?何をする気?」
そして、隣の太った男は、大斧を持っていた。
「どうせ死ぬなら、せめてお前を殺して見せ付けてやる!」
人の血のこびりついた、醜悪な斧を。
「さあ、ゴンズ、ひき肉にしてやれ!」
男はそういってけしかけ、部屋には、鈍い音が響いた。
「!?」
ナルガは一刀のもとにジョーイを切り捨て、いよいよ砦へと向かっていた。
言い知れない、胸騒ぎを覚えたのはそんな時だった。
ハルトに何かあったのだろうか
そう想い、自然と首をめぐらせた塔は、まさしくハルトのいる場所だ。
「急がなきゃ」
そういって再び足を進めると、
「総大将のシムルトである!一騎打ちを所望する。」そんな声がかかった。
壮麗だが、実用のレベルの鎧兜。
腰には剣を二本指し、一本は抜いている。
型には嵌って一見隙がないように見えるが、威圧感がない。
「指揮で鈍った貴方の相手なんてする必要もないわ。」
最後の最後に、見栄だけで出てきた。
そう断じて、再び砦へと駆けていこうとするが、
「道を教える。力技で通ろうとすると塔は崩壊するぞ。」
シムルトは、小声でナルガにだけ聞こえるようにそう付け加えた。
「卑怯ね、腕一本は飛ばすわよ?」
「死ぬよりはましだ、言い訳も立つ。」
当然、ナルガもハルトの詳しい場所は知らない。
「受けよう。」
槍を下段に構え、最後の一騎打ちは始まった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
荒い呼吸の音が響く。
「それが真の姿か、英雄の血かぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
メギリ
砕け、潰れる音がして、眼鏡の男は泡を吹いて気絶する。
顎の肉と骨が分別不可能な程、激しく破壊されている。
さっきの太った男は、既に塔から投げ落とされた様でどこにも見当たらない。
砕けた斧と、血溜まりが存在を思い立たせるのみだ。
「表の痛みもね、僕は分かるんだよ。」
ハルトの口調は、少し幼くなっている様だ。
「顎、これでお相子だね?」
が、しかし、全身から凄まじいオーラを放出していた。
「でも昨日とか一昨日とか痛いことしたから」
それだけで、大抵の人間は失神してしまうオーラを。
ぽいっと、何気ない様子で、男を窓から投げ棄てると、程なくして全身の潰れる音が響いた。
そして、「ハルト!無事!?」ナルガが助けに来たのは、そんな時だった。
どうやらシムントは既に何処かへ身をくらませたらしい、
そこに現れたのはナルガ一人だけだった。
「遅いよぉ」
にっこりと、無邪気な笑顔で少年は女神を歓迎する。
「折角、高いところでエッチするのが楽しそうだから、待ってたのに。」
二人の時間は、始まった。
その姿は、本当に先の女神のものなのだろうか?
「はァぁん、いぃ…ん…」
少年に攻め立てられ、だらしなく秘所から露を溢れさせて、慣れた調子で腰を振っている。
濡れた音が絶え間なく塔の部屋に響き、窓から空へと消えてゆく。
「ほら、窓から空を見てご覧よ。」
ナルガは窓を支えにして、下半身を突き出す様な姿勢だ。
着ていた鎧は、全て脱いである。
よって、恐らくは、敗残の兵らが見ようとすれば簡単に見える位置でナルガの豊満な胸は揺れていた。
「あッ……こっち向いたら、下の兵士達こっち向いたら見えちゃう…」
風が吹き渡り、羞恥と興奮で火照る身体を冷ます。
「見てもらいたいんでしょ?
さっきまで虫けらみたいになぎ倒してた人たちに。
もし見られたら、今晩のオカズはお姉ちゃんで決定だね?」
「ぃや…言わないで…」
そう言いつつも、彼女は興奮の余り、ハルトのペニスをキュンっと締め付ける。
「嬉しいんでしょ?中が凄いきついし、また溢れてきてるよ?」
それに…と目をやる先には、ほじくられたさそうに尻穴がひくついている。
丸く、滑らかな二つの肉丘の間、色素沈着の少ないその穴は、
「ひぅッ!?」
差し込まれた少年の指をしゃぶる様に、甘噛みするように受け入れていく。
しかし、少年はそれ以上何もしようとはしなかった。
「どうして欲しいんの?ほら、言ってご覧。」
いつもなら有無を言わさず蹂躙するだけに、焦らされる感も大きい。
「指で、ほじって下さい…!!かき回して、ぐちゃぐちゃにして下さい…!!」
そのセリフに口角でニヤリと笑い、
「どこを…だよっ!」
バチンと尻たぶを叩いた。
「ひぎィ!?」
叩いた部分が朱になる程の威力だが、その実悲鳴は悦楽の洩れ出しだ。
尻を叩かれる、しかも少年にされるという屈辱感に、ガクガクと足が震える程よがっているのだ。
「早く答えろ…よ!!」
今度は逆側の尻たぶ。
再び嬌声をあげてナルガは悦ぶ。
嗜虐性を刺激されたかハルトは更に叩き続けると、
それに応じてさらにナルガの締め付けもきつくなってゆき、
動かし辛い位にきついナルガの内をハルトは楽しむのだった。
そして、触れるだけでもイってしまいそうな程尻が赤くなった頃、
「っく…出る!」
ついに堪えきれずに、二人共に達した。
ビクン、ビクンと脈打つ肉棒は、改めてみれば少年のものとは思えない太さだった。
「あぁ…ぁあヒ…いぃ…」
重ねて、濁流の如き精液の勢いに子宮が蹂躙され、
続けてアクメをむかえてしまったナルガは、プシャァ、と、潮と共に小水を漏らしてしまった。
その姿に、「だらしないなあ」とハルトは呟くが、
それも無理からぬ事だ。
もし普通にスパンキングしたとしても、我々にとって蚊が刺された時程も刺激は彼女に伝わらない。
何故か?
神だからである。
神性能力と呼ばれる彼女の能力のために、彼女はほぼ痛みがキャンセルされるのだ。
しかし、ハルトだけはその力を破ることが出来る。
彼は、いかなる神性能力をも消し去る力を持っているのだ。
故に、今のナルガは普通かそれ以下の女性に変貌している。
被虐の快楽を貪る身体に。
解るだろうか?
常に強く、疾く。
万を超す大軍を一人で制し、国すら単身で脅かす。
そのような超常的な力の彼女は、大抵の男の神からですら遠ざけられ、人間は言わずもがなだ。
望んでやしないのに、男を喰う様な交合しかできない。
被虐の欲求が満たされないのは、ひどく辛いことだった。
…否、むしろその反動からマゾヒストへと彼女の性質は変わったのかもしれない。
故に、自分を絶対的に屈服させ、それどころか物の様に蹂躙するハルトとの出会いには運命すら感じた。
そこには愛があった。
蹂躙し、好き勝手に犯し尽くすハルトだが、必要以上に彼女を傷付ける事は無い。
幾らか歪んではいたが、どうしようもなく愛し合っていた。
「ほら、早く起きなよ」
もしかしたら、ハルトも彼女に応えるために荒々しいその人格を作り出したのかもしれない。
「今度こそケツ穴使わせてもらうよ」と言うなり、無造作に両人差し指でアナルを拡張する。
グイと拡げると、その激しい痛み…快楽に、窓枠に必死でしがみついていただけのナルガは無理矢理覚醒させられる。
「イ…ひギィ‥‥キモチ良いです、オシリマ〇コキモチ良すぎですッ!!」
「じゃあどうして欲しいの?」
中指も加え、ヌラヌラとした腸壁が見え始める。
脳神経が灼けてしまいそうな電撃が目の前を白ませ、
身体全体がブルブルと震える。
「私の、私のオシリマン〇ぐしゃぐしゃに掻き回して下さいッ!壊れる位おチ〇ポでハメハメして下さいッ!!」
再びナルガの愛の露が内から流れ出し、ハルトの逸物もそそり起つ。
「じゃあ尻で孕む位ヤってあげるよ!!」
言うなり、ズジュプっ、と挿入した。
「ビャぁァァぁア、太い、太いぃ!」
指四本ですら呑み込む穴であっても、逸物の量感と衝撃には耐えきれないと見える。
「あッ……拡がっちゃう、拡がっちゃって気持ちイイよぉ!」
内部から圧迫され、さっき中出しされた精液が、そして興奮しきって白濁しきった愛液がヴァギナから飛び散る。
ハルトが肉棒を引くと、名残惜しむかのように肉襞がまとわりついた。
「ははっ、何時もながら最高な穴だね!」
柔らかな脇腹に爪を立て、再度突き入れ、内壁を削れんばかりに刺激する。
そのたび背骨が抜かれる様な快感が走り抜ける。
「あ…らめ…頭、頭バカになっちゃう!
シュごいぃぃ、気持ちイひのぉ!」
ギュッッと肛門がすぼまり、再びハルトのザーメンを搾り取った。
「もっともっとォ!!ハルト様ァ!!!」
そうして、彼らのセックスは、数刻の間続けられ、
「あ…久しぶりのハルト様のチ○コ…
…前マン○も後ろマ○コも…
口も…胸も…!
腋も髪も足も!!!
全部でハルトさまのせーえきぶっ掛けられて、どろどろになって、もっとぶっかけてもらったよ!!!!!!」
そこには、快楽のために半分ほど思考回路が破壊され、一人で悦ぶナルガの姿があった。
そして、翌日。
「…コホン。
ええっと、それじゃあ、次の目的地は、グライナル自治領よ。」
かつてないほど濃厚に、長く愛し合ったナルガは、今頃になって恥ずかしそうだった。
(きのうはチ○コチン○叫びよがってたくせに)
英雄モードのハルトが意識の奥底でそう呟くのが聞こえたか、ハルトも顔を赤らめる。
例の鎧のナルガと、冒険者風の格好をしたハルト。
彼らは、大陸の国々を巡っている。
ハルトの力を伸ばすために。
そして、もう一つの大いなる目標のために。
人間同士で争っている場合ではない。
その真意を知るのは、ナルガだけである。
「じゃあ、いこうか!」