※この作品はR-18です。

オリ主探訪日記   作:mimick

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41.レイナース過去編①ー4

「あぁ……わたくし、やっぱりもうだめなのですわ……」

「隊長さん、飲み過ぎなんだよ……」

「こんな顔じゃ、生きてる価値なんてないの……ずっと独り身で死んでいくのよ……ずっと一人で……呪いのせいで私の人生滅茶苦茶ですわ……」

「そんな事ないって……これからこれから」

 

 背中の上で愚痴り続けるレイナースに相槌を打ちながら、男は彼女にバレないように地味に完全不可知化の魔法を使いつつ、宿への道を小走りにゆく。

 

 自棄になり酒をしこたま胃へと収めたレイナースは当然の如くへべれけになり、自力で帰るには心配になるほどになっていた。

 

 そんな彼女を運んでいる理由だが……このまま一人で帰して、誰ぞにこんな姿──ベロベロに酔っ払った軍衣の女──を見られてしまえば今後の仕事にも差し支えるだろうからと、男がレイナースを宿まで送ることを提案し、彼女がそれを受け入れた……という流れではない。

 

 むしろ、あなたが私を誘ったのだから酔った私を介抱し宿まで連れて行く責任がある、とまでレイナース側が強弁したという経緯がある。

 

「これからですって……? あなたに何がわかるって言うのよ……」

「ぐっ……」

「あなたは男ですし、呪いがあると言っても見た目だって普通ですわよね……女の苦しみがわかるのかしら……」

「す、みません……」

 

 レイナースが無感動に男の首を絞めてゆくと、男は腕をタップして即座に謝った。それにレイナースはふぅ、と息をつき口元を緩める。

 

「……よろしい」

 

 ──本来、レイナースは自身の半分も他人に見せない、と自認しているほどに他人を信用していない。普段は表情だって人形のように殆ど動かすことはなく、常に無表情を貫いている。男が数日前に彼女と知り合ってからもずっとそうであった。

 

 しかし、酒の力は恐ろしいものだ。他人を信用しないという警戒心が麻痺してしまったとみるべきか、解呪が困難であると未来に対する絶望で忍耐のタガが外れてしまったとみるべきか……

 

 普段、誰にも打ち明けないような話──呪いに対する恨みつらみ、職場への愚痴、誰それがムカつくなどなど……不安に後悔、不平不満、が一度口からついて出ると止まらなくなってしまったのだろう。そこには、普段なら絶対に人に見せることなど無い感情が込められていた。

 

 つまりは、男はレイナースの長い長い愚痴に付き合わされることになったのだった。始めこそ男もしっかり話を聞いていたが、延々と愚痴を聞いているのは疲れるもので、段々と返答はおざなりになっていった。

 

 幸いだったのは、彼女に意見することなく、ただ話を聞いてたまに共感していれば機嫌を損ねることは無かったということ。反対に、厄介なのは少しでも下手な意見を言えば言葉でも物理的にでも反撃が来るということだった。……ちょうど、今の首締めのように。

 

 男は何でこんな面倒くさい女に興味を持ったんだと若干、後悔していた。

 

「私はね……本当はこんな騎士になんて、なりたい訳じゃなかったのよ……」

「そうなのか……」

「本当は貴族家の子女として……普通に結婚して……子どもを産んで……善良な夫を支える夫人になって……平穏に暮らして……」

「うんうん……」

「でも、もう行き遅れだもの……一生、呪いは解けないし、ずっと一人なんだわ……」

「そんな事はないと思うぞ……」 

 

 男はレイナースの愚痴に相槌を入れつつ、時に否定して求められている答えを出し慰める。

 

 男の目から見ても、レイナースは顔立ちも整っているし、スタイルも良い。それに加えて貴族生まれとしての人間から醸し出される気品のようなものもあり、下町の飲み屋で働いている女のような野暮ったい感じもない。

 

 ただ、呪いの一点を除けば、だが。実際、呪いが解けさえすれば彼女の人生は大きく好転するだろうに……と男は思った。

 

「本当にそう思っているのかしらね……男の言葉は信用ならないし、女は裏で好き勝手陰口を叩くもの……私が裏で何て言われてるか教えてあげましょうか……あぁ、なったら女として終わり……醜い顔でよく出歩けるわね……何で自死しないか不思議……一人ぼっちで憐れな女……」

 

 ……いや、呪いを解いてもこの暗黒面をどうにかしなければ人生は好転しないかもしれない。所々で彼女が暗黒面を晒してくるのは、彼女がかなりの人間不信に陥っているせいでもあるので、それもこれ迄の経験からすれば仕方の無いことではあるのだが。

 

「……ねぇ、あなた、ちゃんと聞いているかしら……」

「聞いてるよ」

 

 とはいえ、人間不信でも話は聞いて貰いたいらしい。たまに男が話をちゃんと聞いているかどうか不安そうに確かめて来るあたり、まだ可愛げはあるのかもしれなかった。

 

 ──歓楽街はまたまだ人出も多く賑やかだ。通りから中を覗く事の出来る酒場にはまだ人が沢山いたが、時間的には明日も早いレイナースの部下である騎士達はそろそろ帰る頃合いかもしれなかった。

 

 道行きの最中、どこからか酒場からのざわめきに混じって女の嬌声が聞こえてくる。男が聞いた話では、ここらの酒場では給仕が遊女としても働いていることが多いようで、気に入った客がいれば酒場の二階にある部屋に連れ込んで一夜を共にする仕組みになっているらしい。

 

「……」

 

 背負われたレイナースの、男の首元に回された腕にキュッと少し力が入った。レイナースの体温が伝わるほどに距離は近く、その鼓動まで男には感じられた気がした。

 

 

 彼女の泊まる宿は、歓楽街からは外れ、都市の政治機能を司る庁舎や行政施設が多く敷設された区画の近くにあった。それは遠目から見ても明らかに大きく、都市内でも上位を争うほどに壮麗な建物であることは分かっていた。

 

「でっか……」

 

 男は士官に相当する隊長とは言え、帝国騎士はこんな良いところに泊まれるのかと内心で戦慄していたが、実際には彼女は軍の大将に相当する権力を持った帝国の最高戦力、四騎士の一人であるので、当然の事ながら別待遇である。本来、騎士達が寝泊まりするのはもっと安い宿か、騎士宿舎である。

 

 宿の前でレイナースが男の背から降り、そのまま別れるのかと思えば──帰さぬように腕を組んで中へと誘う。彼女も少しは酔いが覚めて来たのか、歩ける程度にはなっているようだった。

 

「……ありがとう。さ、いきましょう」

 

 男もいいのか、などと言う野暮な事は聞き返さなかった。今更機会を失するのも惜しいし、どうせ後腐れ無し、双方了承済みの一夜の関係だ。人肌恋しいのはお互い様であろう、と勝手に都合良く考えていたからだ。

 

「隊長さんの宿は随分と高級なんだな……帝国騎士の隊長って凄いんだな……」

「そうよ、もっと敬ってもいいですわよ」

「ああ。隊長さんは凄いよ」

「ふふ……そう。私は凄いし、偉いのよ。だから、今日は特別にここに泊まらせてあげましょう。金級冒険者程度では泊まる機会など今後もないでしょうから」

 

 中は煌びやかに飾り立てられ、高級宿の名に恥じぬ内装だった。また、コンシェルジュと思しき者が居たが、男女問わず金持ちが異性を連れこむのはよくあることなのか黙って二人を見送ってくれたのだった。

 

 男は、レイナースの案内の元、彼女の部屋へと通される。普通の部屋よりも何倍も広く、そして高価な調度品が並ぶ部屋だった。部屋の隅には綺麗に磨かれた帝国騎士の甲冑が置いてあり、そこだけが部屋の内装に見合わず異次元のようになっている。

 

 室内に入り扉を閉めると、レイナースは堰が決壊したかのごとく衝動的に男に抱きつき、そして男の顔に手を添えた。レイナースの柔らかな唇が男の唇と重なり、積極的に舌を捻じ込ませる。

 

 男は驚いたものの、抵抗する事はなかった。むしろ歓迎ムードですらあった。男の舌がレイナースの舌と絡み合う。酒の芳香が微かにする息を弾ませて、貪るように舌を絡めあい、お互いの唾液を交換しあう。口を離せば二人の間に銀色の橋がかかることだろう。

 

 お互いにどれだけ口づけをしていたのだろうか、男がレイナースをやんわり引き剥がすと、彼女は男の手を取って引くようにして別室のベッドへと誘った。宿の格に見合う豪華で広いベッドだ。その大きさは二人で寝転がってもかなり余裕で余る程である。

 

 レイナースは男を部屋に連れ込むと、そのままベッドへと自身ごと倒れ込むように押し倒した。男は、ここ数日の彼女の普段の様子とは異なる、その積極的な行動にドギマギつつ、彼女の求めるまま、流れに身を任せた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 その荒い息遣いはどちらのものか。男の身体にレイナースの細い指が這い回り、ボタンを外しにかかる。男も反撃とばかりに彼女の身体を弄り、そして彼女の軍衣を剥くように脱がせていった。

 

 レイナースの、軍衣の下に隠されていた肌は、騎士という過酷な職場環境に置かれて尚、白く透き通るような美しさだった。そして、その肌に映える純白のブラとショーツ。彼女の統一された白さは、まるで雪原のようで美しい。男は、その雪原に欲上を堪えることが出来ずに顔を埋めた。

 

「んぁっ……」

 

 酔った彼女の高めの体温、汗の匂いと香水の香りが混じりあった甘い体臭が男の鼻腔をくすぐる。その匂いに、男は更に興奮し、ブラを剥くと雪原に出現した桃色のホルンにしゃぶりついた。男が乳頭を口に含んで舌で転がすと、彼女は切なげに嬌声を上げる。

 

 そして、お返しとばかりに男の下腹部へと手を伸ばして愛撫を行う。彼女の細い指が男根に絡みつき、軽く扱くだけで男のペニスはギチギチと張り詰めた。

 

 下着の上からでも分かるほどに怒張した男根は、酷く卑猥なテントを張っている。彼女がその下着をも剥ぎ取ると、ブルンッと音を立てそうな勢いで、男根が天を突くように反り返った。

 

「逞しいのね……ふぁっ……ぁんっ」

 

 レイナースは男の剛直を熱に浮かされたように見つめ、そして、上下に手淫し始める。男も負けじと、彼女の陰裂に指を這わせ、時に陰核を弾くと男の脳髄をチリチリと炙るような甘い嬌声を響かせた。

 

「もっと……もっと、して……」

 

 二人はしばらくの間、夢中になってお互いの性器を弄んだ。男がこれから自身の剛直を挿れることを考えて、秘穴を解すように指を挿入しながら愛撫していると、中からは熱い愛液が漏れ出してきた。

 

「あっ、あっ、あっ、あっ……これ、すごっ……っ、くぅっ……!」

 

 そのまま、その膣壺の中に指を突っ込んだまま掻き混ぜるようにして、上下左右に手を激しく揺らす。すると、レイナースは余裕の無い嬌声をあげて身体を弓なりに仰け反らせた。その瞬間、彼女の秘部からはプシャッ、プシャッと潮が吹き出て男の手を濡らしたのだった。

 

「きて……」

 

 挑発するように、くったりと気怠げに男を見る女。その澄んだ蒼色の片眼には隠しきれない情欲が籠もっている。そして、当然の事ながら彼女の秘裂はもう十ニ分に解れて潤っており、男を受け入れる準備が整っていた。

 

 二人が生まれたままの姿になり、彼女はベッドの上に仰向けに横たわる。そして、家でいつもしている様に、片手で胸を揉みしだき、もう片手で秘所を弄って見せた。明らかに男を煽る行為であった。

 

「んっ……」

「澄ました顔してた癖に……とんでもない淫乱だな」

 

 男はレイナースに覆い被さると、秘所に狙いをつける。お互いの性器がキスするように触れ合い、クチュっという水音がした。男が腰を動かす度に擦れ合い、お互いの欲望をより強く煽る結果となる。

 

「ぁ、ん……はやく……」

 

 レイナースは男の首に抱きつき、耳元で囁いた。既に発情仕切った彼女のそれは甘ったるく、熱の籠った、オスに強請るメスの声音。

 

 男は腕を彼女の足の膝裏を通すように抱え上げると、怒張した太いペニスをレイナースの秘所に宛がい、そしてゆっくりと挿入、埋没させていく。男の胸板でレイナースの柔らかな双丘が潰され、むにゅりと変形した。

 

「き、たぁ……おっき……おなかっ、あぁっ!」

 

 男と女が抱き合いながら、荒い息を吐く。どちらからとも無く、口づけして互いの熱を確かめるように舌を絡ませた。

 

「あひっ……イッ……」

 

 レイナースの感じる快楽に呼応するかのように、膣中がまるで別の生き物のように蠢き、男の剛直に絡みつく。その膣壁は、無数のヒダが付いており、それが竿に擦れる度に得も言われぬ快楽を男に与えてくる。

 

「な、にこれぇ……きもち……こんなのしらな……」

 

 それに抗うようにゆっくりと奥まで進め、更に一段、深く沈めるようにして停止させた。

 

 挿入だけで膣はキュウキュウと男根を痙攣するように締め付けて動き、たっぷりと蜜で濡れた熱い膣内は奥まで男の性器を引き込んで逃そうとしない。

 

「あ、ぁひっ……しゅごっ、おくまではいってっ」

 

 剛直によって圧迫される子宮。レイナースは熱い芯が自身の中に存在しているのが分かった。空隙が隙間なく埋められ、不思議な精神的な充足感すら感じる。

 

 その状態のまま、本能的に唇と唇が合わさり、舌と舌が絡み合う。オスとして、メスとして、今、口づけするのが最も気持ちいい行為なのだと本能で理解しているように。

 

 剛直を抽送せずとも、精神的な充足感だけでオーガズムが高まってゆく。レイナースの体が震え、彼女の腕が男の体を強く締め付け、開脚した状態で脚が指先まで真っ直ぐに伸ばされた。

 

「んぅ〜〜……!! んむ〜〜……!!」

 

 レイナースの絶頂とともにギュウ〜〜! と、只でさえ狭い膣中が締め付けられる。呼吸も止まり、目の奥がチカチカするような強烈な快楽だった。今までして来た自慰が児戯に思えるほどの快感。脳髄に快楽を伴う電流を直接流し込まれ、体の中心から末端にかけて、ズンと重く痺れてゆくような感覚だった。

 

 その暴力的にも思える快楽に、思わず男の背に爪を立ててしまう。だが、その程度。男は一般冒険者を装ってはいるが……本来は生物としての、存在としての強度が違う。引っ掻く程度の痛みなど男にとっては些末な事であった。

 

「は、ぁ……は、ぁ……」

 

 普段抱えている些細な不安などそのまま洗い流してしまうような快楽の波を乗り越え、その頭がいっそ馬鹿になってしまうような、中毒になってしまうような快感の余韻を味わった。

 

 一気に体力を持っていかれたような気がして、クタリと男の背に回した腕を脱力させる。レイナースが感じるのは身を包む男の肌の熱さと、自身の正中を貫く槍が胎に納められている感覚。とても心地が良く、安心する。未だ酒の酔いが残っていることもあってか体がフワフワとし、どこか現実感がなかった。

 

「もう満足した?」

「ふ、ぇ……?」

「まだまだこれからなんだが」

 

 そして、レイナースの力が緩んだ隙に、ゆっくりとエラの張った怒張を引っ掻くように後退させた。

 

「あ、あ、あ、あああぁぁぁ──」

 

 ゾリゾリと膣壁が擦られ、内臓が引き抜かれるような快感が腹部を中心に溜まってゆく。そして引き抜いた怒張を再び腰を彼女に臀部に押し付ける。最初は浅く、そして段々と深く。低速から高速へとギアを変速するように少しずつ力強く加速してゆく。

 

 膣内にある肉の襞を掻き分けるようにして進み、臆を叩く。再び入口近くまで引き抜く。そして、彼女の心身に二度と忘れることの出来ない楔を打ち込むように、一気に奥まで腰を打ちつけた。

 

「んあぁっ……!!」

 

 子宮に響く衝撃。その強い衝撃でレイナースの腰が跳ねようとも、男は彼女の身体を貪るように幾度も激しく腰を動かす。

 

 その激しい反動で丈夫に作られたベッドがギシギシと軋みを上げた。

 

「あんっ……あぁっ……だめっ、つよ、っ……こんなっ、しらないぃっ」

 

 レイナースは、男の身体にしがみつき、顔を彼の肩口に埋める。その、快楽から来る甘い嬌声が男の耳にかかった。お互いの体液が混じりあう水音が立ち、それが静かな室内に卑猥な音として響き渡る。

 

 剛直が膣内をかき乱す度に、彼女の口からは吐息混じりの余裕のない喘ぎ声が漏れ出した。一瞬でも油断すれば、気をやってしまいそうな刺激にレイナースは腰をくねらせて逃げようとするも、男はガッチリと彼女の脚を抱えて逃さない。

 

「いっ、ひぃいぃぃっ! だめ、こわれっ、こわれるっ」

 

 男の剛直に奥の壁を叩くように力強く突き込まれる。そして、そのままグリグリと押し付けるように、子宮口と亀頭が激しくキスを交わす。そうされる度に背筋に駆け抜ける脳髄を焦がすような快楽に、彼女は悶え、髪を振り乱して喘いだ。細く長い脚が強張り、爪先が開く。

 

 もはや、この時の余裕の無い彼女の頭の中には顔の呪いの事など存在しなかった。振り乱した髪はベッドへと垂れ落ち、隠された半顔を顕にさせる。赤黒く爛れ、水気を含んだ醜い肌が見えようとも、それがどうしたと。男は気にもとめず何度もレイナースへと接吻をせがんだ。

 

「あぁっ、いくぞっ……!」

 

 男はそう言うと、レイナースの身体に押し潰す勢いで密着し、彼女の白く柔らかな尻たぶを鷲摑みにすると、猛然と腰を動かした。その様は相手の事など考えない、身勝手なオナニーにも思える。

 

 グチグチという水気を帯びた激しい運動。レイナースが潰れたカエルのように見動きの取れない中、男の肩口に噛み付き、その嵐のような快楽に耐える。身体の奥を突かれる度に頭の中で何度も快楽を伴う電流がスパークし、ビクビクと身体を痙攣させた。その重怠く、気持ちの良い痺れが全身へと何度も伝播される。

 

「んひぃっ……いっ……たっ、もう、いったぁっ、だめっ」

「駄目? もっとして欲しいの間違いだろ?」

 

 耳元で囁いた男の言葉に対して、いやいやをするように首を振った。男はそれに興奮したのか、剛直を更に膨張させる。挿入感が増したのか、レイナースは涙を流して啼いた。

 

「ひぃっ……! いやっ、まだイっでるっ……もう、だめっ……しぬっ、しんじゃっ……あ、あ、あ、ああぁっ……」

 

 もはや意味のある言葉など出なくなっている。彼女にとって全てが未知の領域だった。

 

 恐怖を感じて男を押し退けようとするも、ビクともしない。帝国四騎士として最も攻撃に長けていると言われた力も、男の前では何故か普通の女と同じでしか無かった。男に力で屈服するのも、快楽に沈められるのも、それを心地良く感じてしまっている自分を知ったのも、全てが未知だった。

 

 支配される。支配を受け入れるように必死に男の体に縋り付く。男の背に回した腕をキツく絞めて、許しを請うようにして喘いだ。だが、男はオーガズムから逃げることを許さず、レイナースの口を塞いで泣き言を止めると、今度こそ彼女の抵抗の意思を根こそぎ掻っ攫った。

 

 未だ果てを知らない発情で、どこまでも昇りつめてゆく。パン、と極限まで張り詰めたレイナースの乳首が男の胸板に擦れ、切なさを伴う得も言われぬ快感と新たな未知の感情を萌芽させる。

 

「んっ! んむ、っ〜〜〜!」

 

 そして、そのまま快楽でドロドロに溶けているレイナースの顔を間近で眺め、絶頂を迎えるまで激しくスパートをかける──絶頂の直前、レイナースの膣中で男が果てる前に、剛直を引き抜き彼女の腹部に放精した。

 

 彼女の、汗に濡れた白い腹部に白濁液が降りかかる。レイナースは、ガクガクと、剛直を抜いた後でも尚止まぬ快楽の波に身体を震わせた。

 

「はーっ……はーっ……はーっ……」

 

 剛直が引き抜かれた事によって、彼女はようやく一息つく事が許された。そして、そのまま力無く目を閉じ、全力で長距離走をした後のように荒く早い息をつく。その呼吸に合わせて、彼女の形の良い胸が上下した。

 

 彼女の余裕の無さを見た男は、レイナースの隣に身を横たえると、そのまま彼女の体を抱き寄せた。それはレイナースにとって、久しく感じる事の無かった、ジンワリとした人肌の穏やかな温もり。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 心地よい疲労の中、眠気で朦朧とし始めたレイナースはそれが自然のこととばかりに男の首へと腕を回し、口づけをする。それは行為中の熱に浮かされたものとは異なり、まるで恋人同士の挨拶のようであった。

 

「ねぇ……もしも、呪いがとけたら……わたしと……」

 

 消え入るような小さな声で、レイナースは男の耳元で囁いた。スルリ、と男の背に回した腕から力が抜ける。

 

 触れ合う肌の温もりは孤独感を埋め、少しだけ前を向く気力を与える。不安を感じる事もなく、彼女は久方ぶりの穏やかな眠りに落ちたのだった。

 

 □

 

 まだ暗い時分、誰かの寝息だけがその空間に微かな存在感を示している。

 

 ゆっくりとベッドから身を起こした存在。男が隣を見ると、レイナースは未だ安らかな寝息をたてて眠りについている。その寝顔には普段の騎士然とした険や厳しさなどなく、歳よりも幼く、あどけない少女のようにも見えた。

 

「さて、と……また機会があれば。元気でな」

 

 身を起こした存在──男は彼女を起こさないよう静かに身支度を整えると、きっと彼女が起きた時には酷く喉が乾いているだろうと、ベッド脇のテーブルに冷たい水を入れた水差しを置いた。

 

 そして、置き土産として自身の指に嵌めていた指輪を一つ抜いて彼女の指へと移し、金色の長い髪を上から下へ一度梳く。身動ぎしたレイナースの寝顔を少しだけ眺めて、その姿を見納めにすると、静かに彼女の眠る部屋を後にした。

 

 未だ太陽の光の射さない、夜明け前の外の空気は冷たく、澄んだ空気が肌を刺した。一つ、深呼吸をして肺の中を澄んだ空気で満たして、吐き出す。

 

 それから首を一度回してから歩き出した。

 

 男はその足で都市を囲むように存在する城壁の出入り口──市門へと向かう。その足取りは軽い。彼は冒険者だ。そして、未だ背負う物など何も無い旅人でもあるのだから。

 

 □

 

 ──戦っている。

 

 鎧を身に着け、傍らに槍を携えているのは、まだ若い時分のレイナース。それに相対しているのはレイナースへと呪いをかけることになる魔獣。

 

 ──これは夢だ、とレイナースが気づくまでに然程時間はかからない。何故なら、彼女にとってこれは何度も何度も繰り返しみる夢であったから。

 

 夢の内容は何時も決まっている。赤く憎悪に燃える瞳の魔獣がレイナースを睨み、レイナースはそれを怯えながら迎え打つというもの。

 

 その魔獣との戦い事態は先のギガントバジリスク程の厄介さは無い。槍を振るい、魔獣の噛み付きを回避し、出来た隙に槍を突き入れるだけだ。そして、死に絶える間際に魔獣がレイナースを呪う。

 

 レイナースは恐ろしかった。夢を通して何度も何度も繰り返し呪ってくる魔獣が。呪いは彼女自身の半顔に滲み込んで、そして彼女の精神を病のように蝕んでゆく。自尊心を侵し、生来の性格を卑屈なものへと変容させる。その変化が彼女にも分かっていたから。

 

 どんどん歪んでゆく精神が、どんどん自分のものではなくなってゆく性格が、どんどん道を外れてゆく生が。悪意に犯されてゆく。

 

 ──これは夢……これは夢……早く……早く、終わって。

 

 魔獣の腹へと槍を突き入れた。魔獣が憎々しげにレイナースを睨む。レイナースにあるのは諦観の念だけ。抵抗する事も諦め、向けられた悪意を唯々諾々と受け入れる。何時もであれば魔獣が死に絶えるまで、その赤く憎悪に燃える瞳を向けられ、死にゆく様を見せつけられる。

 

 だが、今回に限っては──

 

 何処からか、一矢が飛んできて、その赤い瞳に突き立った。魔獣が悲鳴を上げ、怨嗟の唸りをあげる。激怒した魔獣がレイナースから目を逸らし、矢が飛んできた方向を睨みつけた。

 

 しかし──そこにいたモノを見て、魔獣はすぐに怯えるようにして身を伏せた。そこにいたのは、所々赤熱し、黒く焼け爛れた甲冑を纏い、黒い瘴気を放つ騎士。怨念や呪怨、怨嗟といった言葉を寄せ集めて凝縮し、騎士の形として固めたかのような化け物の姿だった。

 

 しかしながら──その姿は、どこか物悲しくも、美しい。

 

 不思議な事に化け物に恐ろしさを感じなかったレイナースは、離れた場所にあるその姿が、自らを害する存在では無いと確信していた。

 

 いや、それよりもむしろ、それは私を護ろうとしてくれたのだと──

 

 そうして、化け物に視線を向けられて怯える魔獣がとうとう力尽きて息絶えた時──ふと、レイナースが手元を見ると、そこには見知らぬ指輪が存在していたのだった。

 

 □

 

 窓から朝日が射し込み、餌の場所を知らせる小鳥の囀りが耳に入る。

 

 レイナースは寝ぼけ眼のまま、身を起こすと暫く茫洋とした。何も考えずに視線を彷徨わせていると、酷く喉が乾いていることに気づいた。未だ働かない頭で何時の間にか置かれていたベッドサイドテーブル上の水差しからコップへ水を注ぎ、それを口に含み嚥下する。

 

 頭が痛い。それに、妙に体が重怠い。でも、何時もとは異なり寝覚めの気分は悪く無かった。

 

 その原因を探るべく記憶を辿ると──ハッとして昨晩の痴態を思い出した。そして慌てて周囲を警戒し見渡す。取り敢えずベッドルームには男の姿が無いことを確認すると、その時にようやく自分が一糸まとわぬ姿である事に気付いた。

 

「……」

 

 それからシーツを体に巻いて、気配を殺すようにしてベッドルームを出ると、用心深く隣部屋の様子を探る。しかし、他の部屋を含めても物音一つせず、記憶にある男の姿は見えなかった。

 

「はぁ……我ながらなんて馬鹿な真似を……」

 

 一旦、警戒心を解く。ため息をつき、未だ痛む頭を押さえた。どう考えても昨晩の自分は常軌を逸していた。酒の勢いとは言え、一夜の過ちを犯すなどとは……

 

 レイナースは昨晩の事を深く思い出そうとして、ピクリと肩を跳ねさせた。身体は覚えている。あの男に組み敷かれ、身も心も蹂躪された事を、その途方も無い快楽を。自らの体を抱き、無意識に内に残るその残滓を探そうした。しかし、昨晩にはあった身の内から迸るような熱も、負の感情の尽くを洗い流した快楽も全て溶けるように無くなっていた。

 

 理由も判然としないまま、何となく感じる寂寥感に眉を顰めた。

 

 あるのは、腹の上に残った白く乾いた精の跡のみ。レイナースはそれを常備している私物のハンカチを使い、微妙な顔をして拭うとゴミ箱に捨てた。

 

「……まぁ、過ぎた事は忘れましょう。もう昨日の出来事なんて覚えていませんわ」

 

 ため息をまた一つ。それから鞄から新しいハンカチを取り出すと、自身の半顔へと押し当てた。毎日のルーティンとも言える行動。しかし、今日は何だか違和感がある。ハンカチを顔に押し当てても張り付くような感触がない。訝しげにハンカチを半顔から離してみるも、ハンカチは元の白い生地のまま。

 

「……」

 

 一瞬思考が停止して、訝しむ。もう一度呪いのある半顔にハンカチを押し当てて見るも、伝わるのはハンカチのサラサラとした感触。

 

 何故? 思い違いか? それとも単に今日は調子が良いだけ? いつもはベッタリと張り付く黄色い膿が今朝は出ていない。

 

 何度も拭い、確かめ、そして恐る恐る鏡の前に立ち、半顔を覆っている髪を除けた。そこには薄く赤い痣が残るものの膿を出す傷など無い、清潔な乾いた肌があった。自身でさえ久しく見る事の無かった、レイナース本来の端正な顔があった。

 

「あっ……えっ…………くっ、うぅ……ぅ……」

 

 澄んだ蒼の瞳からツ、と流れ落ちた雫。それから堰を切ったように溢れ出す感情。レイナースは信じられないといった面持ちで、自らの半顔を両手でペタペタと触る。

 

 その手の指にはいつの間にやら……夢の中で見た、髑髏の紋様が浮かぶ宝石の、何処と無く不吉な印象の残る指輪が嵌められていた。

 

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