今回(11)主な登場人物は、千手柱間、千手扉間、OC:芙蓉の親友・千手樹です。
芙蓉はマダラとの再会を密に待つ日々。
そこへ突然、樹との別れの危機が訪れます。
樹の幸せを願う芙蓉。どんな手を使っても樹を救うと決めます。
たとえ罪を犯してでも・・・!
そして芙蓉は、自ら柱間のもとへ・・・
※柱間と芙蓉の濡れ場があります。ご注意ください。
(R18タグ、入れ忘れていてすみません…)
「いらっしゃい。樹ちゃん。…どうしたの?そんな悲しそうな顔して!大丈夫?とにかく早く中に入って。」
玄関に立っている樹は、今にも泣きそうな顔をしていた。
芙蓉は心配しながら樹を部屋に通し、少しでも落ち着いてもらおうと緑茶を淹れて樹の前にそっと差し出した。
「芙蓉・・・私・・・火の国の大名の娘の侍女になることになった。」
「え?でも、時々は帰省はできるんでしょう?」
「ううん…この七月にその娘が水の国の大名の息子と政略結婚することになって、それで侍女として私も水の国に付いて行くんだ。侍女っていうのは隠れ蓑で、実際は火の国のスパイなんだよ…だから、里に帰ってくることはかなり難しいと思う。」
樹の眼からは大きな涙がボロボロと零れ落ちた。芙蓉は急いで樹の肩を抱き、自分の袖口でその涙を拭う。
「・・・いつ帰って来られるか、分らないってこと?」
「うん・・・」
「そ、そんな・・・それにスパイだなんて危険だよ!」
樹は天井を仰ぎ、涙を拭いて平常の顔を作って言う。
「しようがないよ。だって最初からこうなる運命なんだ。だからあの学校に通ってスパイ教育と高等教育を受けさせられてたんだしね。その結果を出す任務ってわけ。」
「なんとかその任務を断ることは出来ないの?だって樹ちゃんは柱間さまの側近として活躍しているじゃない!樹ちゃんが居なくなったら里は困るよ!」
「ありがとう。芙蓉。でもね、残念ながら私の代わりは沢山居るんだよ…そう、火影以外の人間はみんな、代わりなんていくらでもいるんだ。」
芙蓉の眼からも大きな涙が零れ落ちる。樹にすがって懇願する。
「お願い!スパイだなんてやめて!私にとって樹ちゃんの代わりなんて居ないの!樹ちゃんにはずっとずっと、この里で幸せに生きていてほしいの!」
樹が芙蓉を強く抱きしめる。
しばしの沈黙が訪れる。緑茶からほのかに湯気が立ち上っている。
「…ありがとう。でも私は忍だから。この任務は火の国のためだけど=木ノ葉隠れの里を守る=芙蓉を守るための任務なんだ。だから、芙蓉の事を守るためなら私、頑張れる。」
「嫌っ・・・嫌だよ・・・行っちゃだめ!」
子供のようにぐずる芙蓉が樹はたまらなく愛おしくなり、胸が張り裂けそうになった。
ふいに芙蓉は顔を上げ、気丈な顔をして樹に言う。
「私、柱間さまに直接お願いしてみる。」
「芙蓉…ありがとう…」
例え柱間に直談判したところで、火の国の大名と官僚、そして里の上層部とスパイ部門で決定したことが覆ることは無いだろう。
任務を回避できる可能性はほぼゼロだと分かっているが、芙蓉の自分への気持ちを大切にしたいと思い樹は芙蓉の言葉を否定しなかった。
◆
次の日。芙蓉は火影になった柱間の居る木ノ葉の里本部に来た。
建物を出入りする忍たちが芙蓉の美しさに見惚れて立ち止まる。そんな視線を気にすることもなく、芙蓉は一直線に火影室へと向かった。
「貴方は確か…あぁでも、火影様とのお約束はしてありますか?」
火影室の前には監視役の忍が二人立っており、当然ながら火影になった柱間は、もう簡単に会える存在ではなくなっていた。
「…約束はありません。でも、どうしても柱…火影様に聞いて戴きたい大切なお話があるのです。中に入れて下さい。」
「ではまず一階の窓口で用件を言って下さい。火影様にお伝えする内容かどうかを審査した上でお伝えします。どうしても火影様に直接進言したいというなら、許可書を提出して下さい。それにも審査はありますが。」
・・・芙蓉が来たって伝えて下さい・・・
思わずそう言いそうになるが、ぐっと耐える。もうここはきちんとした決めごとに則りシステム化された里なのだ。柱間の元許嫁だった自分が駄々をこねるわけにいかない。
芙蓉は監視役に言われた場所へ行き、火影との面会許可書を提出する手続きをしようとした。
「うーん。既に火の国側で決まった人事を火影様に文句言われてもなぁ。無駄だと思うよ?」
「だとしても火影様に面会させてください。私がちゃんとご説明します。」
「でもねぇ、火影様も忙しいんだよ。面会希望者だって大勢順番待ちしてんだよ。こんな用件なんじゃ面会の許可はできないなぁ。」
「こんな用件なんて言い方はないんじゃありませんの⁉」
芙蓉は思わず、悪態をつく中年男の忍に対して大きな声を出してしまった。
周りに居た忍たちが一斉に注目する。室内と廊下に居る忍が芙蓉の場違いな美しい容姿と、その大きな怒りの声にザワザワと騒ぎ出す。
「なんだ?この騒ぎは。」
近くの階段を通りかかった扉間は異様なざわつきを不審に思い、隣に居た忍に尋ねる。
「あの、たぶん芙蓉さんだと思うんですけど、申請課でなんか揉めてるみたいです。」
扉間は急いで階段を駆け下り申請課の窓口へ向かった。
「どうした?」
「きゃあっ! と、扉間さま⁉」
「…驚きすぎだ。俺は化物か何かか…で、どうした。何を揉めているんだ。」
「それがこのお嬢ちゃんがくノ一の人事を変更しろって、火影様に直談判したいみたいでして。そんな用件じゃ面会できないって言ってんですけどねぇ、全然聞かなくてぇ。」
窓口の男が扉間に大げさに困った顔をして見せた。
「樹の件か。あれはもう火の国とこちらで決定したことだ。変えられん。」
「でも!樹ちゃんは柱間さまの秘書で優秀な人材のはずです!スパイよりも秘書の方が絶対合っています!」
扉間まで登場し、ますます忍たちがその場に群がり大騒ぎになってきた。
「フー…ここで叫んでも仕方ない。他の者にも迷惑だ。ちょっと来い!」
扉間は芙蓉の左腕を無理やり掴み、引っ張って別室へ連れて行こうとした。
確かにここで言い合いをしていても解決しない。ここは扉間に従う方が正解だろう。芙蓉もそう思って黙って引っ張られていく。
・・・バタン!
会議室と書いてある部屋に連れてこられた。
芙蓉はここに来て、無理に手を引っ張らなくても良かったのではないかと少し怒りを覚える。
「座れ。話は俺が聞いてやる。」
「でも、柱間さまじゃないと・・・」
「俺は火影の相談役。右腕だ。」
そう言って芙蓉を睨みつける。芙蓉は柱間だけではなく、扉間もいまや千手ではなくこの里の権力者ナンバー2となり、遥か高い場所にいってしまったのだと実感した。
しゅんとして芙蓉は膝に目を落とす。
「さっきも言ったが、樹の人事を覆すのは無理だ。これは忍の任務だ。感情論で覆すことなど絶対にあり得ない。」
「感情論…確かにそうかもしれません。私にとって樹ちゃんは唯一の親友です。ずっと幸せでこの里に暮らしてほしいと思います。でも、樹ちゃんは里の設立時からあんなに尽力して、とても貢献してきたではないですか。そんな人をスパイにしてしまうなんて、里にとって損害だと思います。」
「フッ…仕方がないとはいえ、お前はやはり忍のことなど全く解ってないな。マダラと二年も一緒に居てこの程度とはな。」
「・・・・!」
芙蓉は唇を噛み、扉間を睨みつける。
「里がほぼ完成した今、樹の役目はもう終わったのだ。そして次はスパイとしての任務を命じられた。忍はそれを遂行するのが務めであり、その為にこれまで厳しい修行と勉強をしてきたのだ。」
「…なぜ樹ちゃんじゃなきゃいけないんですか?忍には代わりが沢山居るんでしょう?じゃあスパイ役だって他に代わり居るはずです。」
「優秀だからだ。」
「・・・・・。」
芙蓉は言葉を失った。
優秀。
そう、樹はその優秀さゆえに第一線で任務をこなさなければならないのだ。
芙蓉の眼にうっすらと涙が浮かぶ。
「代わりが登場する時は、その優秀な人材が使えなくなってしまった時だけだ。」
芙蓉は定まらない視点を泳がせながら、暫く何かを考えている様だった。
「解ったらもう諦めろ。じゃあな。」
扉間が立ち上がり、部屋を出ようとした時だった。
「あの!今日、お家に伺ってもいいですか?柱間さまはいつでも来て良いって仰っていました。」
芙蓉も立ち上がり、扉間の背中に叫んだ。その声に扉間は呆れて振り返る。
「ハァ…諦めが悪すぎるぞ!馬鹿な兄者にお前が泣き付けば状況が悪化し、火の国との関係にヒビが入りかねん。来るな!」
「違います。今のお話はしません。他にお願いがあるんです。」
「なんだ。言ってみろ。」
「柱間さまご本人にしか言えません。」
「なんだと?お前、ふざけるなよ。」
ガチャ!!
突然会議室のドアが開けられた。
「扉間、もういい。」
入ってきたのは火影の制服を身にまとった柱間だった。
芙蓉の騒ぎが柱間の耳にも入り、扉間と会議室に入ったと聞いて急いでやってきたのだ。
「いやーすまんな芙蓉!火影ってのも面倒なもんだ。普通に我が家に来てくれれば会えたものを。大変だったなぁ。」
扉間が柱間をキッと睨む。
「あの!柱間さま、お話があります。今日、お家に伺ってもよろしいですか?」
「もちろんだ!大歓迎だぞ!今日は五時には帰宅する。その頃来てくれぬか?」
「兄者!樹の人事の件はもう決まったことだ。覆すことなど出来ぬ。解っておるな。」
「ああ…そうだな。だが芙蓉の話とてしっかり聞くことも必要ぞ?まぁそう固く考えるな。」
ハァーと大きな溜息をついて、扉間が先に会議室を出て行った。
「すまなかったな…芙蓉。嫌な想いをさせてしまった。」
「いいえ。大丈夫です。扉間さまも、ここの忍の方たちが仰ることも正論です。ただ、私の意見を火影である柱間さまに聞いて戴きたかったんです…。でも個人的な感情で言うのではなく、正しい手順で論理的に進言したくてここに来ました。」
芙蓉は柱間の眼を見てしっかりと言った。
「そうか…いや、別にいいのだが、ではなぜ今日これから家に来るのだ?」
「それとは別にお願いがあるのです。個人的な事ですからここではお話できません。」
「もしや!やっと一緒に住んでくれる気になったか?」
「ですから、ここではお話できません!」
「ああ、すまん・・・あははは・・・」
柱間はずぅ~んとあからさまに落込んだ。
◆
二月半ば。冬至からまだ二ヶ月も経っておらず五時にはもう完全に暗闇になっていた。
前の家とは違うはずなのに、家の門に向かう道の灯がどこか懐かしい。
門まで来ると門番が重い扉を開けた。家は外側から見えたよりもはるかに大きく、前の家よりもずっと大きい。
やっと玄関に着くと、庭に見覚えのあるシルエットの葉を落とした木があった。
「・・・これ。もしかして、芙蓉の木?・・・」
芙蓉が呟くと同時に玄関が開き、中から柱間が出てきた。
「芙蓉!よく来たな!寒かったであろう。さぁ早く中に入って。」
恐る恐る玄関の中に足を踏み入れると、そこに扉間も居た。
「俺も一緒に聞くからな。」
「えっ・・・。」
「すまん。どうしても一緒に聞かせろと五月蠅くてな。なに隅っこに置いとくだけで何も口出しはさせん。気にしないでくれ。」
「フン!」
マダラと芙蓉の繋がり疑っている扉間は、樹の件とは別件で話があると言う芙蓉に対して疑いの念しかなかった。
同席を拒否する柱間には、その疑いを晴らす為にも一緒に同席させろと言って押し切った。
「・・・分りました。大丈夫です。その代わり扉間さま。どうか私の話を最後まで聞いてください。お願いします。」
「・・・分った。」
扉間は芙蓉から視線を逸らし、不服そうに返事をした。
「その前に、腹ごしらえせぬか!腹が減ってはなんとかと言うではないか。な!」
「結構です。お話したらすぐにおいとましますので。」
「まぁまぁそう言うな。この前のいなり寿司の礼だと思ってくれ。芙蓉の手料理の味には及ばないかもしれぬがな。」
「確かに腹減ったな。そこは俺も兄者に賛成だ。」
「・・・なら、お言葉に甘えて・・・」
「よし!おーい、オトミ、オシオ、花守寿司のやつ、部屋に運んでくれ!」
中年の女性と若い男が出てきて一礼し、台所へと向かった。
廊下を歩いていると、使用人たちに加え、部下や弟子思しき若い忍たちを数人見かけた。火影という存在の大きさを感じる。家の中は以前の家の面影はまるで無い。
そして大好きな椿の姿も…。
椿は平和協定が結ばれた直後、芙蓉を守れなかったことに責任を感じて女中を辞めたと柱間から聞いていた。それ以来、椿がどこへ行ってしまったのか分らない。
厳しくも優しく、いつも傍に居てくれた椿の事が心配になる。
感傷に浸っていると柱間の部屋に着いた。
広々として畳と板間の二つの床があり、板間には大きなテーブルと大きな布張りの椅子が両側に三脚ずつ向かい合って置いてある。
「さ、芙蓉は左側、奥の椅子に座ってくれ。扉間は右側の隅っこな。」
「隅って…さほど距離変わらないだろこれ。」
三人が椅子に着くと、先ほどの使用人二人が盆に寿司や料理を載せて運んできた。次々とテーブルの上に色鮮やかな品々が並んでゆく。料理好きな芙蓉はつい観察してしまう。
「おお、先にこれを持って来ぬか。じゃん!芙蓉の好きな“清酒・いろは”だぞ!」
柱間は使用人から手渡された清酒の瓶を嬉しそうに芙蓉に見せた。その清酒は芙蓉が成人した祝いの席で初めて飲んだ酒で、それ以来時々晩酌に出してもらっていた。
「馬鹿か!話があるって来てるのに酒飲ませるとかおかしいだろ。」
「で、でもせっかくご用意いただいたので一口だけ頂きます。ありがとうございます。柱間さま。」
柱間は勝ち誇った顔で扉間を見てニヤついた。扉間は腕を組みそっぽを向く。
「乾杯!!」
「何にだよ。」
「・・・乾杯。」
「扉間、お前は乾杯しなくていいぞ。」
「はぁ⁉」
「…うふふふ。」
芙蓉は思わず二人の様子に笑ってしまった。二人は昔のまま、仲のいい兄弟だった。
その笑顔を見て柱間と扉間もふっと顔が緩む。
この二年間の時の流れも、悪い出来事も、全て無かったように、昔のまま今があるように感じてしまう。
三人は食事を始めた。
芙蓉は美しい飾り切りの南瓜や胡瓜、大根を皿に取り、じっくりと観察してから口に運ぶ。
柱間はその様子を微笑みながら見ていた。ふと、芙蓉の箸を持つ指先に目がいく。ガサガサとした見た目でとても荒れている。同じく手の甲も粉を吹き荒れが目立っている。
・・・マダラが居なくなって治癒を施す者が居ないからか。苦労しているんだな・・・
「芙蓉。この前のいなり寿司は絶品だったぞ!あれは樹が言うように専門店が出せるな。」
「兄者…!」
無神経に樹の名前を出す馬鹿な兄に扉間がそれとなく注意する。
「ありがとうございます。樹ちゃんったら本当にお金まで頂いてしまって…扉間さまも、ありがとうございました。」
「いいのだ!また作ってくれ。今度は一個三〇〇円で買うぞ。」
「高けぇーよ。」
柱間の無神経な話題を中心に会話をしながら食事を終えた。
すると柱間はおもむろに立ち上がり、芙蓉の傍へ行き、膝をついた。
「芙蓉。手、出してみ。」
「え?え?なんですか?やめて下さい。立ってください!」
「いいから、いいから。」
柱間は戸惑う芙蓉の両手を優しく取り、そっと自分の両手の上に重ねた。
「あ・・・」
みるみるうちに荒れた手が、白く滑らかで美しい手に治っていく。
「これからはこんなになる前に俺に言ってくれよ!」
「・・・・・・。」
芙蓉は荒れた手を柱間に見られていたことに恥ずかしくなり、顔を赤らめて俯いた。
「そんなこと言って触りたいだけだろ。フン。」
そう皮肉を言う扉間は、自分には出来ない柱間の行動に胸がモヤモヤとする。
「さて。ではそろそろ芙蓉の話を聞こうかのう!」
テーブルの上は使用人たちにより綺麗に片づけられ、三人は畳の上に場所を移した。
芙蓉と柱間が向き合って座り、扉間は広い部屋の隅、板間と畳の中間に片膝を立てて座っている。
「柱間さま・・・あの・・・・私・・・・・・」
「うん。」
「あの・・・・その・・・・・。・・・・・・・。えっと。」
・・・・あーもうじれったい!早く言えよ!!・・・扉間が心の中で呟く。
「私と、結婚して下さい。」
「「はぁ⁉」」
柱間と扉間の声が揃う。
「私なんかが今さら、こんなことを言える立場ではないことは重々承知しています。でも、マダラさまが居なくなって私、恋しかったのは柱間さまのほうだったんです。それで本当に私のことを愛して、大切にしてくれるのは柱間さまだけだって解ったんです・・・。私も・・・愛しているんです。今でも柱間さまのこと・・・」
「ぶざけるな!何言ってんだよ!」
怒鳴る扉間を柱間が強いチャクラを込めて睨んだ。
ゾクッ・・・扉間の背中に冷たいものが走る。
「芙蓉。ありがとう。頭を上げてくれ。」
芙蓉は恐る恐る顔を上げ、柱間の表情を伺った。柱間の返事はどうなのだろうか。
「俺も芙蓉の事を今でも心から愛している。友であるマダラと愛し合っていることを知った時、身を引く覚悟をした。だが、気持ちは変えられなかった。まさか芙蓉の方から俺の元に戻ってきてくれるなんて信じられないぞ。」
そう言って少し涙ぐんで柱間は優しく微笑んだ。
「結婚しよう。芙蓉!」
「柱間さま・・・!」
「ちょっと待て!おかしいだろこの展開。兄者も馬鹿か!冷静になれ。芙蓉、お前何を企んでいるんだ。マダラと組んで何か企んでいるんだろ?白状しろ!今なら見逃してやる。」
立ち上がり、芙蓉にそう迫る扉間の顔を見て芙蓉は悲しそうな顔を見せた。
「疑われても仕方ないと思います。都合が良すぎですし。でも、私は本当に柱間さまと結婚がしたいのです。一緒に居たいのです…」
「扉間、お前の気持ちも解る。だがもともと俺と芙蓉、二人で話をする約束だったのだ。それに、自ら勝負を棄権したお前には口を挟む権利はもう無いはずだぞ。」
「兄者・・・」
扉間はやり場のない怒り、嫉妬、そして疑念をなんとか抑え、黙って部屋を出て行った。
柱間と芙蓉は抱き合った。
「柱間さま…今まで本当にごめんなさい。」
「お前が謝ることはない。なに、ちょっと遠回りしただけだ。問題ないぞ。」
柱間は芙蓉の顎をそっと支え、口づけをした。
芙蓉が十五歳の時、芙蓉の木の隣りで初めて口づけを交わしてからもう五年が経っていた。
柱間はまるで芙蓉の花が満開に咲いているあの暑い夏に戻ったかのように、体が熱くなるのを感じていた。
そっと目を開け唇を離し、柱間は芙蓉の顔を見る。
涙が滲んで潤む大きな琥珀色の瞳と長いまつ毛、真っ白な肌にすっと通った鼻筋、上品な唇…十五歳の頃のあどけない可愛らしい少女から、今は立派な大人の女に変わっていることに改めて気づかされる。
これまで子供だと思って我慢していた芙蓉に対する欲望が一気に溢れ出してくる。
「芙蓉・・・もう絶対に離さない・・・」
気づけば芙蓉の頭を座布団の上に載せて畳の上に横たえていた。
芙蓉の長い艶やかな髪が畳に不規則に広がる。
柱間は芙蓉の唇をむさぼりながら、この現実を思う存分噛みしめる。
・・・どれだけ長い間、この時を待っていたか・・・
一方、芙蓉は何も考えないように心を殺そうと必死だった。
マダラへの罪悪感。
柱間への罪悪感。
強い自己嫌悪。
そして恐怖。
だが、それらを全て無視してでも守りたいものがある。
そして、守れる強さが、今の自分にはある。
柱間の唇は芙蓉の首に移り、首筋を優しくなぞっている。
「芙蓉、愛している。」
どこかで聞いた言葉と声とが、柱間が甘く囁く言葉に重なる。
先ほど自分の手を癒してくれた大きな掌が、今は芙蓉の胸を包み込み揉んでいる。
上着が脱がされ、白い胸が露になる。柱間はそれを確かめるかのように、胸の谷間に口づけをした。そしてスカートが脱がされる。今度はへそに口づけをする。
それから身体全てに唇と舌、指先の愛撫の雨が降り注ぐ。
そのしぐさから、柱間の自分への愛の強さが伝わってくる気がした。
「あんっ・・・っ」
我慢していた声が思わず洩れる。
「木遁でこの部屋の密閉性を上げているから、いくら声を出しても大丈夫だぞ。」
柱間は芙蓉の乳首を弄びながら耳元でそう囁いた。
「違っ…そんな、私は…」
芙蓉は思わず気持ちと正反対の身体の反応に対して言葉で否定をしてしまった。
「恥ずかしがらなくてもいいんだ。芙蓉の感じている声を聞かせてほしい。」
柱間はそう言って、とても優しい笑顔で芙蓉の顔を見る。
芙蓉は快感と嫌な気持ちで顔を少し歪ませ、目を潤ませる。
柱間はその表情を見てますます体が熱くなる。
芙蓉の全てを征服してしまいたい欲求に駆られる。
そして芙蓉の首に強く吸い付く。
「ああんっ。いやっ・・・」
白い首に、うっ血した丸い跡が付く。芙蓉は少し怯えたような顔をしている。
そして下着を脱がし、足を広げ、顔を埋める。
「いやっ!だめ!柱間さまっ!やめて・・・っあんっあーっ!」
芙蓉の陰部の一部が固くなるのを舌で確かめ、さらに激しく刺激する。
菜の花のような甘酸っぱい女の香りは男を狂わせる香りだと聞いたことがあるが、その表現は大げさでは無さそうだった。
思考回路にはもう、理性という言葉は無い。
柱間はとろりと濡れた芙蓉の膣を指で確かめると、芙蓉の腰を左手で掴み、自分の物をそこへ押し当てた。
「柱間・・・さま・・・・」
芙蓉が助けを求めるかのように柱間を呼んだが、聞こえない。
「ああんっっ!!いたっ・・・」
芙蓉の叫びに近い声が響く。
柱間は構わず両手で芙蓉の両腕を掴んで畳に押さえつけ、芙蓉の身体を一気に貫いた。
「・・・!!!!」
芙蓉の頭はおのずと真っ白になった。
恐ろしい太さの柱間の男根が激しく芙蓉の子宮を突き上げる。
「あんっあんっ・・・ああっ!ああっ!」
鈍い痛みが次第に快感に変わってゆく。
・・・嫌なのに、嫌なのに・・・・
芙蓉が果ててしまいそうになるのを見て、柱間は動くのを止めた。
苦しそうに困ったような顔で柱間を見る芙蓉の顔を見て、柱間が問う。
「そんなに俺が欲しかったのか?」
「・・・・・」
芙蓉は顔を逸らして何も言わない。
柱間はおもむろに芙蓉をうつ伏せにし、尻を持ち上げて後ろから挿入した。
「芙蓉、欲しいならちゃんと言葉にして言うんだ。」
「・・・ください。柱間さまを・・・私に・・・」
芙蓉はあまりの屈辱に死んでしまいたい気持になる。目からは涙が流れ落ちた。
先ほどまでの優しい愛は、強い支配欲と欲情に変わっていた。
「あんっあんっあんっあんっ・・・」
柱間の腰の動きに合わせて、芙蓉の胸がゆさゆさと揺れる。
屈辱的な気持に反して憎らしい快感が押し寄せる。
・・・いや!いきたくない!・・・・
「芙蓉・・・っ!」
巨大な男根はさらに膨らんだかと思うと、びくびくと激しく芙蓉の中に液体を注いだ。
「っ!・・・・・あああっんっっ!」
それと同時に、芙蓉も果ててしまった。
芙蓉の白いすべすべとした背中に柱間がかぶさって寄りかかる。
はぁはぁはぁはぁはぁ・・・
二人の呼吸が呼応している。
柱間は仰向けになり、芙蓉を自分の胸の上に抱き寄せた。柱間の心臓の音が聞こえる。
・・・もう、後戻りはできなくなってしまった。取り返しもつかない・・・
これ以上悩むのは無駄なだけだと芙蓉は自分に言い聞かせ、そっと目を開ける。
柱間の厚く頼もしい胸板にはいくつか小さな古い傷跡があった。
そっと、その傷跡のひとつを指でなぞってみる。
・・・この傷のどれかは、マダラさまが付けたものかしら・・・
柱間はその指の動きを見て言う。
「その傷はいつのだったかな…もう戦は沢山だ。これからは誰も傷つかずに暮らせる忍の世界を作るぞ…なぁ芙蓉。」
そう言うと柱間は、微笑みながら芙蓉の手をぎゅっと握りしめる。
「それはどんな世界なんでしょうか。」
「一言で言うのは難しいが、しいて言うなら争いと憎しみの連鎖が無い世界か。そのためにこの忍族連合体による里システムをより強固にする必要がある。」
「・・・そのためには多少の犠牲もいとわないと?」
「樹のことか?…政略結婚とスパイ活動…それも水面下で争いの種を摘むには必要なことなのかもしれぬ。俺個人としては互いに腑を見せ合い、協定を順守してゆけば、そんなことは必要ないと思っているのだがな…。俺はこの里の長になったが、支配者ではない。導き役にすぎぬ。俺一人の意見で物事を決める事はできないのだ。」
芙蓉は柱間の手を外し、ゆっくりと起き上がり俯いた。
柱間も起き上がり、その肩に自分の着ていた上着をかける。
「樹のスパイ活動の内容についてなら変えられるかもしれん。考えてみる。」
芙蓉はその言葉を聞き、更に策略を巡らせた。
柱間と婚約し、抱かれて信用させるという計画は成功した。
次の手だ。
この二ヶ月半の間に、必ず樹を救ってみせる。
芙蓉は柱間に背を向けたまま、強い視線で畳に散らかる自分の服を見つめていた。
◆
梅の花が咲いているとはいえまだ寒さの峠は越えていない二月。
この日は朝から雪が降っていた。芙蓉と樹がこたつに入って蜜柑を食べている。
「あのね、樹ちゃん。今日は大切な話があるの。」
「ん?何?どうしたの?」
樹は急いで蜜柑を飲み込み、正座をして芙蓉を見る。芙蓉も正座をして樹に向き合う。
「私、柱間さまと結婚することになったの。」
「・・・・・・・はぁ⁉」
樹は一瞬、芙蓉の言っている言葉が理解できなかった。
「・・・・ほ、本当に?」
「うん・・・。五月に挙式する予定。」
「なんで私に何も相談してくれなかったの!なんで⁉」
樹は芙蓉に怒りを感じ声を荒げる。
「ごめんね・・・でも結婚しようって決めたのは昨日なの。昨日柱間さまの家に行って私から求婚してその場で決まったんだ。だから相談できなかったよ。」
「なにがどうなったら、昨日思いついてその日に求婚できるのよ!意味わかんない!」
樹の怒りは収まるはずもない。むしろ聡明なはずの芙蓉の考え無しとも思える行動にますます腹が立つ。
怒る樹をよそに芙蓉は落ち着いて話を続ける。
「それでね、樹ちゃんに私の侍女になって欲しいの。お願い。柱間さまにはまだお願いしてないけれど、きっと大丈夫だから。」
「でも私は火の国の・・・」
・・・・!・・・
樹は芙蓉が自分がスパイにされる事を阻止しようとしているのだと気づいた。
「芙蓉・・・もしかして、私のために?・・・」
芙蓉は樹の顔を見てニッコリと笑顔になる。
「私、昔から樹ちゃんに守られてばかりだった。ううん。樹ちゃんの存在自体に助けられてきた。樹ちゃんに出会わなければ、大人や周りの言うことに黙って従って、生きてるか死んでるかも分らないような人生を送っていたと思うの。だからね、樹ちゃんは私の命の恩人なんだよ。今度は私に樹ちゃんの事、守らせて。お願い。」
「芙蓉・・・なんで・・・私なんかのために・・・」
樹の眼からは涙が零れ落ちる。
「なんか、って言っちゃダメ。昔から樹ちゃんが私に言ってくれる言葉だよ。樹ちゃんみたいに素敵な女の子、他に居ないよ?うふふ。」
「でも、だからって、好きでもない男と結婚するなんて・・・私は芙蓉が不幸になるのなんて見たくない!」
樹の涙がより一層激しく流れ落ちる。芙蓉は立ち上がり、樹の傍へ座り樹の涙を拭う。
「大丈夫。まだ柱間さまのこと愛してる気持ちが残っていたって気づいたの。何より柱間さまは私のこと心から愛してくれてる。不幸になんてならないから大丈夫だよ。」
「なんかさ・・・いつのまにか私のほうが泣くこと多くなってない?」
二人は顔を合わせてふふっと笑った。
芙蓉はマダラを追って里を出て行くと決まった今、柱間を騙してでも樹だけは必ず守ると決めていた。
そのためには、どんな手でも使う。
たとえ罪を犯してでも・・・