※この作品はR-18です。

罪の向こう、愛の絆   作:千野 伊織

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罪の向こう、愛の絆】番外編シリーズ【 if you XXX 】をお送りします。

今回(No.4)は、うちはカガミ×芙蓉です。登場人物はこの二人のみ。
結婚後、芙蓉は生きている設定です。
カガミはうちは私塾を退塾した後、芙蓉への想いを断ち切ろうとします。
しかし芙蓉が突然カガミの家に訪ねて来て・・・
カガミが探し続けて見つけた答えとは?
・本編(17)、(18)、(21)~(23)を読んで戴くとよりカガミの心情が解りやすいと思います。

※カガミと芙蓉の性描写があります。

【 if you XXX 】は基本的に、
芙蓉×誰かの濡れ場がメインです。
ですが、芙蓉が「誰とでもしちゃうイケナイ子」なのではなく、作者の都合で色んな相手とさせられていて可哀想って思ってあげて下さい。(芙蓉、ごめんね…)
また、「if」ということで、「もしも」がテーマなので、本編の話に沿いながらも、本編の展開とは関係ありません。



【 if you XXX No.4 】うちはカガミが見つけた答え

 

天の川。

今年も、昨年と驚くほど変わらない星たちが広大な夜空に横たわって輝いている。

しかし、いまカガミがその天の川を見上げている場所はもう、うちは私塾ではない。

私塾は昨年十六歳になり、規定により昨年末で退塾した。

しかし今でも、友と机を並べて勉強に打ち込んでいた頃が恋しくなる。任務だけの毎日は正直、味気なかった。

カガミは顔を空から正面の道に戻し、家路を急いだ。

 

七月だというのに、真っ暗な家の中はひんやりとしている。

…ポチャッ。

蛇口から水が滴った音だけがカガミの帰りを迎えた。

明かりをつけ荷物を床に降ろすと、今夜もまた、机上に置いて在る写真が目に入って来た。

にこやかに微笑み、まるでカガミの帰りを待ちわびてくれていたかのようである。

「芙蓉・・・ただいま。」

カガミは洗面所で手を洗い着替えると夕食の支度をし、それを机に運んで椅子に座った。

頬杖をついて、また写真を見つめる。

芙蓉は昨年の秋、扉間と結婚した。

カガミも披露宴に出席したが、芙蓉の花嫁姿、幸せそうな笑顔を見ていたら耐えられなくなり、途中で黙って帰ってしまった。

目の前の芙蓉の写真は、カガミが退塾する日に二人並んで撮影した写真だ。

しかしカガミはその写真を見ていると芙蓉の結婚の事実までも思い出されてしまい、また胸が苦しくなってきた。急いで箸を持つと白飯に沢庵をのせ口にかき込んだ。

・・・初めて食べた芙蓉先生の卵焼き、美味かったな…錦谷の時のいなり寿司も美味かった。また、食いたいな。先生が俺の奥さんだったら、今頃・・・

カガミは箸を置き、下を向いて首を横に振る。

もう何百回考えたか知れないことをまた考えてしまった。

食事を早々に済ませ、風呂に入り、忍術書に目を通して勉強を始める。

それが終わると、忍術書の隣りに立ててある私塾の数学の教科書を広げ、久しぶりに問題を解いてみる事にした。

・・・この問題、何度やっても間違えるんだよなぁ。あれだけ芙蓉先生に教えて貰ったのに。くそっ!・・・

カガミは間違えた問題を復習すること無く、教科書とノートを閉じて強引に本棚に押し込んだ。

そしてバタンと寝台に横になった。

まだ部屋はひんやりと冷たい。ぎゅっと身体を丸めて毛布に包まる。

・・・なんでこんなに肌寒いんだよ・・・

 

 

「カガミくん、おはよう。朝ごはんは卵焼きと目玉焼き、どっちがいい?」

「・・・ああ、うん。卵焼きかな・・・」

 

バサッ!

カガミは飛び起きた。

・・・夢かよ・・・

再び寝台の上に横になった。朝の六時だった。いつもなら起きる時間だ。

しかし今日は休み。再び目を閉じて、もうひと眠りすることにした。

だがもう陽は昇り雀がチュンチュンと囀り、部屋の中も随分と明るい。

その爽やかさと明るさ、そして先ほどまで見ていた夢を思い出し、無駄に元気な下半身だけが疼いて一向に眠れない。

「ああもうっ!」

自分に苛立ちながらも、つい下半身に手が伸びてしまう。

 

『カガミくん大好きよ・・・もっと、もっとして・・・ああん・・・』

どれだけ頭の中で芙蓉のことを汚したか分らない。

もうこれだけ汚してしまえば、いっそのこと、本当に汚してしまいたい…。

そう思った瞬間にカガミは果ててしまった。

そして再び深い眠りに入っていった。

 

 

コンコンコン!

「ごめんください。カガミ君、居ますか?芙蓉です。」

 

バサッ!!!

カガミは飛び起きた。

・・・なんだ、また夢かよ。いい加減に・・・

 

コンコンコン。

「カガミ君。居ませんかぁ?・・・」

 

「は、はいっ!居ます!!!」

夢じゃない!!!

カガミは立ち上がり、急いで髪を手櫛で整えながら自分の姿を見て確認し、走って玄関に向かう。途中洗面所の鏡で顔を確認し、そして玄関の扉を開けた。

「芙蓉先生・・・ど、どうしたの⁉」

「おはよう。お久しぶり。ごめんね、突然家まで来ちゃって。今日はお休みだって聞いたから…ちょっといいかしら?」

「う、うん。散らかってるけど、どうぞ。」

カガミは、突然の芙蓉の訪問にドクドクと心臓が高鳴り続けるのをなんとか抑えながら、芙蓉を家に招き入れた。

 

芙蓉に会うのは退塾したあの日以来、約半年ぶりである。

会おうと思えばいくらでも会う機会はあった。

しかし、退塾を機会に、カガミは芙蓉への想いを断ち切ろうと決心した。敢えて芙蓉を避けてきたのだ。

本来なら芙蓉を家に上げるべきでは無いだろう。

しかしそんな事も考えられない程、芙蓉が訪問したことに驚き、そして舞い上がるほど嬉しかった。

ずっと忘れられなかった。ずっと会いたかった。

 

芙蓉は玄関に入ると靴を脱ごうとはせず、カガミを見て言う。

「まだ寝てた?ごめんなさい。起こしちゃったかな?」

「ああ全然!最近疲れが溜ってるみたいでさ…久しぶりの休みだったからつい二度寝しちゃって。ははは…」

「本当に毎日忙しそうだものね。お疲れさま…扉間さまから聞いてるよ。直ぐ帰るから。ごめんね。」

そう言いながら芙蓉は鞄の中に手を入れて何かを取り出した。

「遅れてしまったけど、十七歳のお誕生日おめでとう!これ、私からのプレゼント。この半年間全然会えなかったから、どうしても顔を見て渡したかったの。」

カガミは驚きで声も出せず、茫然としながらそれを受け取った。白い和紙の包みに赤い水引で華やかな蝶結びがしてある。

「・・・あ、ありがとう・・・ございます・・・」

「でも疲れている以外は元気そうで良かった!顔色も良いし。あまり無理をしないでね。たまにはまた家に遊びに来て。ご馳走するから。じゃあね。」

芙蓉は部屋を後にしようと扉のノブに手をかけた。

「待ってよ!せ、せっかくだから、お茶でも飲んで行ってよ!」

「だけど、ご迷惑じゃない?」

「だってほら、これ、先生の前で開けてみたいし!…それに!それに昨夜久しぶりに数学の問題解いてたらまた同じ所で間違ってさ…ちょうどまた先生に教えて欲しかったんだ。ダメ…かな?」

「うん!勿論いいわよ!じゃあ、ちょっとお邪魔するね。」

その言葉を聞いて芙蓉の表情は更に明るくなり、靴を脱ぎ始めた。

カガミは急いで部屋の中に入り、机の上を片づける。写真も慌てて一緒に片づけた。

「あら。全然散らかってないじゃない。綺麗にしてるのね。偉いわ。」

カガミの部屋は確かに整理整頓されているのだが、驚くほど物が少なかった。

芙蓉は感心する言葉を言いながらも、その部屋の風景を見て、毎日ここでカガミが独りで暮らして居るのかと思うと寂しい気持になった。

「先生、どうぞ座って。」

カガミは机に二つある片方の椅子を引き、芙蓉を座らせた。そしてもう片方の椅子の前に芙蓉から受け取ったプレゼントを置く。

「お茶、冷たい麦茶でいい?」「うん、ありがとう。」

カガミはコップに入れた麦茶を芙蓉の前に置くと、芙蓉と向かい合って座った。

「開けていい?」

「うん。どうぞ。大したものじゃないんだけど…気に入ってくれると嬉しいな。」

芙蓉から貰えるものならなんだって嬉しい。

だが、こうして芙蓉が自分の家にわざわざ贈物を届けに来てくれて、今、二人だけで向かい合って座り、芙蓉の目の前でそれを開けようとしているのだ。

これまでになく胸が躍る。

ゆっくりと水引を解き、丁寧に白い和紙を開いた。

すると、薄紫の扇子模様の手拭いが出て来た。

手拭いの端には、黄色の刺繍糸で『鏡』と自分の名前が刺繍されている。

いつ以来だろう。こんな気持ちは…

気付けば両親が生きていた幼い頃、誕生日に二人からプレゼントを貰った時のことをぼんやりと思い出していた。

「…カガミ君?カガミ君?大丈夫?」

芙蓉の声に我に返ると、目の前が滲んでいた。

カガミはそれを隠そうと俯いて斜めに顔を逸らし、鼻を吸って涙を喉の奥に押し流すと、大きな笑顔を作って芙蓉に向けた。

「芙蓉先生。ありがとう!カッコいいじゃん!凄く気に入ったよ!」

「うん…良かった!“うちは”と“扇子”をかけたんだけど、安直過ぎたかな?」

「いや、意外と団扇や扇子の柄って家紋以外に持ってないから、嬉しいよ。」

「扇子や団扇の末広がりは未来への展望が広がるって、縁起も良いのよ。カガミ君が火影になる夢が叶いますようにって、願いを込めたの。任務の時使ってね…」

「…うん。大切に使うよ…ありがとう…」

「・・・カガミ君・・・。そうだ!お腹空いてない?お昼ごはん一緒に食べに出かけない?何が食べたい?私がご馳走するよ。」

 

芙蓉はカガミの目が潤んだ理由が、贈物に感激しているだけでは無いことに直ぐに気が付いた。

しかし、もう芙蓉はカガミの家族になってやることは出来ない。

それでも、今もなお、カガミとは教師と生徒を越え、芙蓉にとっては本当の弟の様な、二人の間には特別な絆が在ると思っている。温かい時間を二人で過ごしたかった。

 

カガミは芙蓉の言葉を聞いて、一瞬目を輝かせたかと思うと、俯いて小声で言う。

「うん・・・ありがとう先生。あの・・・出来れば、外食じゃなく・・・先生の手料理が、食べたいんだけど・・・ダメかな?」

「私の手料理なんかで良いの?」

「芙蓉先生の・・・卵焼きが、また、食べたい・・・」

「そ、そう…分った。じゃあ、一緒にお買物に行きましょう!ね?」

 

 

十一時前。二人は町へ出かけた。

梅雨はまだ明けていないが今日は天気が良い。青空が広がり白い雲が浮かんでいる。

「お天気が良くて良かったわね!」

芙蓉がニコニコしながら右隣のカガミを見上げた。すると目が合った。カガミは空でも前でもなく、芙蓉を見ていた。

「あ、うん。今年は空梅雨だね。水不足が心配だなぁ…はは。」

カガミは急いで空を見上げて誤魔化した。それを見て芙蓉がクスッと笑う。

生鮮食品の店に着くと、二人であれこれ話しながら食材を選んだ。何気ない会話、珍しくも無い行動、そして芙蓉の笑顔…しかしその全てがカガミにとって新鮮だった。

・・・毎日こうして、二人で買い物に来られたら・・・

カガミはまた、芙蓉の横顔を見つめていた。

 

それから二人は必要な食材を買い終え、カガミの家に戻ってきた。

カガミは玄関の扉を開け、芙蓉を先に入れてから自分も中に入った。すると部屋の空気は暖かく、蒸し暑く感じるほどだった。

「今、窓開けるね。」

カガミは急いで部屋に上がり、窓を開ける。爽やかな風が吹き抜けてゆく。

「ああ~気持ち良い…ありがとう。じゃあ、お台所借りるわね。」

芙蓉はその風に目を細めて深呼吸をした後、台所に立ち早速調理を始めた。

「芙蓉先生、俺も何か手伝うよ。いつも自炊してるし、けっこう何でも出来るんだぜ?」

「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えようかな。ごはんを炊いてくれる?それからキャベツの千切りできるならお願い。」

「当ったり前だろ。任せろ!」

カガミは手を洗うと、米を研ぎ始めた。そして釜に入れる。米の吸水の間に、まな板にキャベツを載せて刻み始めた。

芙蓉は隣で、水から煮干しで味噌汁の出汁を取りつつ、醤油・砂糖・酒・生姜のすり下ろしを平皿に入れて混ぜ、そこに薄切りの豚肉を並べてゆく。

「あら、千切り凄く上手ね!私より全然上手!すごい!」

芙蓉はカガミの華麗な包丁さばきに感心した。

「へへっ。凄いだろ?」

二人で笑い合いながら調理を進めてゆく。

あとは米の蒸らしが終わるのを待つだけになった時、芙蓉は卵焼きを焼き始めた。

カガミは隣でワクワクしながらそれを見守っている。

甘く香ばしい香りと共に、黄金色の見事な卵焼きが出来上がり皿に載せられた。

「はい。これ先に運んでおいてくれる?」

芙蓉はカガミに笑顔で卵焼きの載った皿を手渡す。

「う、うん・・・」

カガミの目は小さな子供の様にキラキラと輝いており、芙蓉はそれを見て堪らなく嬉しくなった。

机の上にはずらりと二人分のおかずが並んだ。

キャベツの千切りとトマトが添えられた豚の生姜焼き、油揚げとネギの入った味噌汁、オクラの胡麻和え、そして卵焼き。

「ごはんも上手に炊けているわね。ありがとう!」

最後に芙蓉は茶碗に白飯を盛り、カガミに手渡した。

カガミはもう既に満腹感でいっぱいだった。

この光景が、ずっとずっと続けばいいのに…。

「ん?どうしたの?私の顔に何か付いてる?さっきネギを切った後の手で顔を触ったのよね。」

芙蓉はそう言ってハンカチを取り出し顔を拭って見せた。

「ううん。何もついてないよ。大丈夫。」

 

二人は料理の並んだ机に向かい合って座った。

「結局ほとんど手伝って貰っちゃったね…。でも男の人と料理するのって楽しいのね!」

「うん。俺もすげー楽しかった!・・・・扉間様は料理、手伝ってくれないの?」

「う、うん。だって家事や料理は妻の仕事だし。夫を台所に立たせるなんて…」

・・・妻じゃない時から、先生しか台所に立ってなかったじゃん・・・

「ふーん…俺ならそんなの関係無く、手が空いてればいつでも手伝うけどな。」

「フフッ。カガミ君は本当に優しいのね。そういう所がカガミ君の素敵な所の一つね。」

・・・素敵な所?扉間様に無くて、俺には在るってことだろ?・・・

「さっ!冷めないうちに食べてね。」

「あ、うん!いただきます!!!」

カガミは早速、卵焼きから手をつけた。

「・・・うっま!!!すっげー美味い!!!世界一美味いよ!」

「フフフ。大袈裟ね…ありがとう。」

芙蓉はカガミが望んだ卵焼きがカガミの口に合ったようで安心しつつ、先ほどのカガミの質問が頭に浮かぶ。

確かに扉間は料理を手伝ってくれることはまず無いが、それに不満を感じた事など一度も無い。しかし、今のカガミの様に“美味い、美味い”と感動して言ってくれたことも、無い…。

芙蓉は、ふと心に影が落ちるのを感じたが、目の前の、美味い美味いと言いながら食事を頬張るカガミの顔を眺めてそれをかき消した。

 

「間違ったのはまたあの問題?どれどれ見せて。」

食事を終え、二人で片付けや皿洗いをし、綺麗になった机の上でカガミは数学の教科書を広げて芙蓉に見せた。

「ノートも見せて・・・なるほど、またこの解き方で引っかかったのね。ここは確かに間違いやすいわよね。でもまずはこっちを・・・」

芙蓉の解説が始まった。芙蓉の解説は解りやすいのだが、なぜにこうも何度も間違ってしまうのだろう…カガミは解説を聞きながら自分に対して苛立ちを感じた。

「じゃあ似た問題を出してあげるから解いてみて。大丈夫。類似問題を沢山解いてアプローチ方法を覚えれば、数字が変わってもちゃんと出来るようになるよ。」

芙蓉はノートをめくって新しいページに類似問題を書き、カガミに解かせることにした。カガミは早速、今教えて貰ったアプローチ方法で挑み始める。その眼差しはとても真剣だ。芙蓉はそんなカガミを見て微笑むとそっと立ち上がった。

「さっき買って来たジャスミン茶、淹れましょうね。」

カガミは反射的に手を止め、芙蓉の後ろ姿を見た。

あの日、芙蓉が熱燗で火傷をし、扉間にひどく叱られていた時のことを思い出す。

『芙蓉先生。火傷には気を付けて』

そう言おうと思ったが、カガミは立ち上がり、台所に立つ芙蓉の元へ静かに歩いて行った。

芙蓉はカガミが後ろに立って居ることに気付かず、茶葉を急須に入れている。

先ほど開けた窓からは爽やかな風が吹き続け、後ろで束ねられた芙蓉の長い髪と白いうなじの後れ毛を僅かに揺らしてゆく。

この後ろ姿を、どれだけ長い間、見つめ続けてきただろう。

しかし、教室以外でこんなにも見つめるのはこれが初めてだった。

ジャ―――…

芙蓉はやかんの蓋を開け水を注ぐ。

 

・・・水の音・・・水遁・・・扉間・・・芙蓉・・・

 

だけど、今、芙蓉は俺の目の前に居る。

この時間は、誰が何と言おうと、俺たち二人だけのものだ。

 

「⁉」

カガミは芙蓉を後ろから抱きしめた。

バシャ――――・・・・・

芙蓉は突然の事に身体が固まり、やかんからは水が溢れた。

「ど、どうしたの?急に・・・」

芙蓉は気を取り直し、冷静を装いながら蛇口を閉めた。

「なんで俺があの問題を何度やっても間違うか、解ったよ…」

「そ、そう・・・・良かった、わね。」

そう言って芙蓉はカガミの手を外そうとした。しかし、カガミは更に強く芙蓉を抱き締める。

「セオリー通りにしてるから、解けないんだよ。」

「・・・?」

「先生、数学は答えは一つだけど解き方は沢山あるって教えてくれたよね…」

「え、ええ・・・」

「でも公式通りにやるのがセオリーだ。それが正しくあり、近道でもある。」

「・・・・?」

「だけどそれでも解けなかったら、どんな手を使っても良いってことでしょ?」

「そ、そうね…何か、他に、新しい解答方法…見つけられたの?」

「うん。」

カガミは芙蓉の身体を自分の方に振り向かせると、芙蓉の背中と後頭部を抱え、思い切り芙蓉の唇に吸い付いた。

「んっ!んっんん!!!いやっ!!!んん!!やめっ・・・んん・・・」

夢中で芙蓉の唇をむさぼる。

芙蓉は必死にカガミの胸を押して身体を離そうとするが、敵わない。

暫くすると芙蓉は諦めたかのように抗うのをやめ、脱力する。

カガミはそれを感じると、今度は芙蓉の首筋に吸い付いた。

「・・・やめなさい・・・やめなさいっ!!!」

これまで聞いたことのない、強く厳しい声で芙蓉が叫んだ。

カガミは思わずビクリとした。ゆっくりと顔を上げ、その芙蓉の顔を見る。

しかし、カガミは全く動揺などしていない。

カガミもまた、強く厳しい目で芙蓉を見つめ返した。

それに反してそよ風はカガミの柔らかいくせ毛の黒髪を優しく揺らしてゆく。

芙蓉は自ら叱っておきながら、カガミの強い視線に思わずうろたえ目を逸らした。

「・・・帰ります。」

芙蓉は自分の両腕を握っているカガミの手を払おうとした。しかし、その手に力がこもり更に強く握られる。痛い…。

「やっと問題の解き方をみつけたんだ…帰さないよ。芙蓉…」

そう言うとカガミは芙蓉を抱きかかえた。

「やめなさいっ!!離して!!!」

 

ドサッ!!

「きゃっ!」

バサッ!!

乱暴に寝台に落された芙蓉の上に、カガミが四つん這いに覆いかぶさった。

「・・・自分が何をしているのか、解ってるの⁉やめなさい。貴方はそんなに愚かな子じゃないはずよ。」

芙蓉は必死に、しかし冷静な口調でカガミを見上げて言った。

「もう“子”じゃないぜ。先生の前に居るのは、うちはカガミという、男だ。」

「⁉」

カガミは芙蓉の左手を抑えながら、芙蓉の腰帯を強引に解いて床に投げた。そしてスカートを剥ぎ取る。腰帯とスカートを外され、左合わせの白い半袖ブラウスが全開になり、白い絹の下着に支えられている芙蓉の真っ白な胸が現れた。

「やめてーっ!!!」

芙蓉の両手首を寝台に押し付け、カガミはその胸の谷間に顔を埋める。

これまで芙蓉の通り過ぎた後に微かに感じるだけだった甘い香りが、いま強烈に鼻と脳、そして下半身を刺激する。

「いやぁっ!!!やめて!!!やめてぇっっ!!!」

芙蓉は何とか抗おうと身体をくねらせるが、白い肢体と栗色の髪が乱れる様子が、更にカガミの興奮を刺激する。

胸の谷間から芙蓉の顔を見上げる。

涙ぐみ怯えて震える琥珀色の瞳、苦しそうに歪めた顔が…堪らない。

口づけをする。

強引に舌をねじ込み口を開かせ、舌を絡ませる。芙蓉は舌を喉の奥に引っ込めようとしたが、カガミは更に口を強引に開けさせ、その舌を唇で吸った。

「っ・・・・!!!」

口づけを拒もうと必死になっているうちに、カガミの右手が芙蓉の股間に伸び、まさぐり始めた。そしてカガミの口が離れ、その口で強引に芙蓉の上の下着をずらすと、露になった乳首に吸い付いた。

 

「やめてっ!!!お願い!!!・・・やめて・・・・」

 

・・・誰か助けて!!!扉間さま、助けて!!!・・・

そう叫びたい。しかし、芙蓉はこんな状況でも戸惑っていた。

こんな事が明らかになってしまえば、カガミの将来は…。

それに妻がこんな目に遭ったとなれば扉間の立場は…。

自分の貞操を守る事よりも、カガミと扉間を守らなければという気持ちが頭から離れないのだ。

 

「カガミ君、こんな事許されない!今ならまだ間に合う。やめなさい!」

乳首を吸われ、股間をまさぐられながら芙蓉はカガミの頭に向かって言った。

しかしカガミは全く耳を貸さない。

それどころか、ついに芙蓉の上下の下着を無理やり剥ぎ取り、全裸にさせられてしまった。

カガミは全裸になった芙蓉に跨りながら、自らも上着を脱ぎ棄て上半身裸になった。

「俺はもう、どんな手段だって使う…先生が俺のものになるんなら…」

「こんなことをしたって、私は貴方のものにはならない。そんなことくらい解るでしょう⁉」

「そんなこといいんだ…俺にとっての答えが何か、分かったから…」

「・・・??」

カガミは両手で芙蓉の左右の乳房を優しく掴んで揉み始めた。

乳房は温かく、そして柔らかい。カガミが妄想していたよりも小ぶりな乳房だが、掌から僅かに溢れる大きさで、品の良い丸い形をしている。揉むたびに転がる乳首の感覚に、掌が痺れる。

「ああ・・・とっても綺麗だよ・・・芙蓉。」

カガミの顔はもう、芙蓉の知っている顔では無かった。

紛れもなく、そこに居るのは、一人の男だった。

 

・・・もう、何を言っても無駄、かもしれない・・・

 

芙蓉はそっと目を閉じた。

抗うことを諦めた芙蓉の身体に、カガミの口づけの雨が降る。

顔、耳、髪の毛、腕、指先、胸、脇、腹、背中、尻・・・足の甲、ふくらはぎ、足の指先…そして、手で愛撫しながら何度も何度も太腿を唇と舌でなぞっている。

カガミにとって芙蓉の身体の部位はどこも欲情を駆り立てるのだが、カガミが昔から目で追っていたのは芙蓉の太腿だった。

ひざ丈のスカートやズボンからチラチラと覗く、見えそうで見えない白い太腿が、堪らなかった。一度でいいからその太腿の素肌を見たい、触ってみたいと願っていた。

そして、カガミの口は芙蓉の陰部に辿り着く。

ゆっくりと足を広げ、そこに顔を埋めた。

じっとりと湿った部分全体を舌で舐めてみる。

「・・・・っ・・・ん」

芙蓉は顔を両手で覆い横に逸らしていたが、その掌の間から思わず声が洩れた。

「芙蓉・・・芙蓉のここも、すごく美味しいよ・・・」

カガミはそう言うと先ほどよりも固く大きく勃起した部分を舌ではじき始めた。

「・・・・んっ・・・・あっ・・・いやっ!」

押し殺している芙蓉の声に反して、芙蓉の陰部からは甘酸っぱい香りがより強く漏れ始める。そしてカガミは、顎が当たっている部分から温かくねっとりとした蜜が溢れていることに気が付いた。そこへゆっくりと右手の指を這わせ、中指の先端を入れてみた。

「あっ・・・」

芙蓉の小さな声が聞こえると、カガミはその指を更に奥まで入れた。

「やぁっ・・・・んっ・・・」

芙蓉は必死に声を殺しながら、身をよじらせた。何度か指を出し入れすると、さらに蜜が溢れ出し、カガミの掌までをべっとりと濡らしていく。その様子を見てカガミは喜びと沸き立つ欲情で、胸が焦げてしまうかと思うほど熱くなる。

もう我慢などできない。

ズボンと下着を脱ぎ棄てると芙蓉の足を大きく広げ、蜜壺の入り口に、これまで見てきた中で一番大きく固くなっている男根を挿入した。

「やめてっ・・・!!ああああああっ・・・・んっ・・・!!!」

抗うことを諦めていたと思っていた芙蓉が、再び抗おうと上半身をじたばたと動かし始めた。カガミはその両手首を寝台に強く押し付けて身体を密着させ、男根で奥まで貫き、芙蓉の動きを封じた。

「・・・・んっ・・・んんっああっ!」

芙蓉は子宮を突き上げられ、その快感に思わず身悶えてしまった。

 

・・・駄目なのに、こんなこと、許されないのに、どうして!・・・

 

カガミを守る為、夫・扉間を守る為、自分の身体を犠牲にしようと思っていたものの、その行為に否応なしに芙蓉の身体は反応してしまう。

憎らしい、忌まわしい、汚らわしい快感が芙蓉の身体と頭を支配してゆく。

「芙蓉の中、すっごく気持ち良いよ・・・たまんない・・・」

カガミは天井を仰ぎながら激しく腰を動かし始めた。

「んっんんっ・・・はぁはぁ・・・んっんっんっ・・・あっ・・・ん」

「我慢しなくていいんだよ?芙蓉のいやらしい声、もっと聴かせてよ・・・」

カガミは芙蓉の顔に顔を近づけてそう囁くと、腰を止め、乳首に吸い付いて舌で舐め回す。

「・・・・んっ!いやぁあっ!!はぁぁんっ!」

芙蓉の膣の中がぎゅうっと締まり、カガミの男根を締め上げた。カガミはその感覚に驚いたが、芙蓉が快感を感じているのだと気づき嬉しくなる。

そしてカガミの男根が更に大きくなると、芙蓉はその感覚に思わず目を見開き、カガミの顔を見てしまった。目が合った。

ハァハァハァハァ・・・

二人の視線と呼吸が一つになった。

先ほどまで爽やかな風で心地良かった部屋の中は、温度を上げ、二人の身体はじっとりと汗ばんでいる。

「芙蓉・・・心から愛してる・・・君は俺のものだ」

そう言うとカガミは再び腰を動かし始める。

パンパンパンパン…クチュクチュクチュクチュ…

いやらしい音が響く。

「ああもう出る・・・出すよ・・・芙蓉の中で・・・っ」

「やめてっ!中で出すのは!やめっ・・・・・ああ・・」

「うっ・・・ああっ!!!」

カガミは芙蓉の中で思い切り射精した。男根は芙蓉の子宮の中にびくびくと精液を注ぎ続けている。

「・・・・」

芙蓉はその感覚に目を閉じると、両目から涙が流れ頬を伝う。

カガミはその涙を無視して芙蓉の唇に口づけをすると、うつ伏せにさせた。

ぐったりとしている芙蓉の背中を愛撫すると、ピクンピクンと反応する。

そして芙蓉の尻を持ち上げ、今度は後ろから挿入する。

「んあっ!いやぁあもう、もうやめてぇっ!!!」

「芙蓉の中、もうぐちゃぐちゃだね・・・もっとめちゃくちゃにしてあげる」

芙蓉の膣の中は先ほど自分が放った精子と芙蓉の愛液でドロドロとしている。先ほどとは違ったいやらしい感触に男根はあっという間に元の大きさと固さになる。そして芙蓉の膣の中をこれでもかというほど掻き回した。芙蓉もグチュチュグといやらしい音を立て、ねばねばと泡立つ膣の感触に、もう理性は保てなかった。強い快感が押し寄せる。

「いゃっあっあっあっあああ…あんあんあんあああああんっ!!!」

ついに、芙蓉は果ててしまった。

カガミは脱力し茫然としている芙蓉を再び仰向けにさせ、また前から挿入する。腫れあがりねばつく芙蓉の膣は、カガミの男根を抱き締めるように包み込んでくる。すぐにまた頂点へと近づいてゆく。

涙を浮かべた虚ろな目で口を開け舌を浮かせている芙蓉のいやらしい顔を見ながら、カガミはいっきに頂点に達した。再び芙蓉の子宮にカガミの精液が大量に注がれる。

芙蓉は涙を流しながら、カガミをじっと見つめた。

肩で息をしながら、カガミも芙蓉の目を見た。

 

愛する者を守り、尊重し、慈しむ。

それが“恋”のセオリー。

それが愛だと信じ、貫いてきた。

でもそれでは欲しいものは手に入らない。

ならばどうするか?

 

感情のまま強引に奪うまでだ。

 

「これが俺の答えだ…」

そう言うとカガミの目に、真っ赤な写輪眼が浮かんだ。

芙蓉はそれを見て、息が止まり、心臓まで止まりそうになる。

大きく顔を背け、何とか息を飲み込んだ。動揺して目は泳いでいる。

「先生はまた俺に抱かれに来る…絶対に。この眼を見た反応で、分る…」

「⁉」

「先生は忍としての扉間様のことを知らなすぎる。これから知れば知るほど、きっと先生の気持ちは揺れる…卑劣と呼ばれるあの人の本性を知っても、愛して居られるかな?…」

そう言ってカガミは写輪眼の目でほくそ笑んだ。

 

 

・・・卑劣。知っているわ。私がきっと一番知っている・・・

 

夕方の家路を一人、トボトボと歩きながら芙蓉は心の中で呟いた。

・・・それでも、私は扉間さまを心から愛してる。もうマダラさまのことなんて・・・

ほんの少しだけ陽が傾いて色を薄めた空を見上げると、再び、先ほど見たカガミの写輪眼とマダラの写輪眼が重なって見えた。芙蓉は急いで下を向き、目を閉じる。

 

忘れよう。もう思い出さない。

今日の事も。

過去の事も…

 

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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