そして、初めての方には、はじめまして。
皆様、閲覧ありがとうございます。
ようやく新作を書き上げました(^^;)
今回は扉間が主役で、最終回からの続きのお話になっています。
宜しければ最終回を読み返してから読んで戴けますと嬉しいです(^^)
ついに二代目火影に就任することが決まった扉間。
就任する前に一人旅に出たいと言い出します。
扉間の最初で最後の一人旅・・・
しかし、その旅で思わぬ事が次から次へと起こります。
扉間は無事に木ノ葉の里に帰還し、火影に就任できるのか!?
今回はバトルも多めに描いております(オリジナル忍術あり)。
濡れ場は・・・・無い、ハズ!(苦笑)
(1)のあらすじ
扉間は宿泊した温泉旅館でホロという仲居に出会います。
ホロとの出会いがこの先の旅の行方を変えていく事に…
そうとも知らず、扉間は温泉に浸かって卑劣な想像をしながら、まったり癒されます(笑)
しかし、やはり頭の片隅から消えないのは芙蓉の存在…
※シリーズ単位でしかR-18指定が出来きません。今回も毎回必ず性描写が登場するわけではございませんのでご了承ください。
「水遁・水龍弾の術!」
「土遁・煉瓦の術!」
ズンッ!!!ブワッシャァァァ…
土遁で現れた土壁に扉間の放った水遁の水龍がぶつかるが、それと同時に土壁に吸収されて消えてゆく。
・・・土遁の壁に、いくら水龍弾をぶつけても無駄か・・・
扉間はクナイを取り出して投げたと同時に姿を消した。
宙を斬るクナイの場所に影分身の扉間が現れる。そしてまたクナイを五本、敵に向かって投げた。
「フッ…無駄な事を…」
そう言う敵の背後に落ちたクナイの場所に扉間が現れた。しかし。
ビリビリビリビリッ!!!
扉間の全身に強烈な電流が走り、身動きが取れなくなった。
「貴様…土遁だけでなく、雷遁…もか…」
◆
「ついにお前に火影を譲る日が来るとはのう!わしも年を取るはずぞ!ワハハハ!」
「って、俺たち二歳しか変わらんだろ…それに見た目年齢は三十代くらいのままだしな。まぁ兄者は外交に専念してくれた方が俺も色々やりやすい。…本音を言えばもっと早く退いて欲しかったがな…」
「初孫だ!これからはジイジ業に専念せねばなぁ!…まぁ、娘が結婚したいと言ってきた時は早婚だと反対したものの、いざ孫が産まれるとなるとやはり嬉しいものぞ!ワハハハハ!」
「フゥ…姪っ子も結婚し、子を産む歳か…確かに…」
「なんだ、やはりお前も歳を実感しておるではないか!」
「あ?・・・ああ。」
火影室の机で柱間と向かい合って椅子に座っていた扉間は、おもむろに立ち上がると窓辺に歩み寄り、里の風景を僅かに細めた目で見渡した。
里が出来てもうすぐ二十年になる。
その間、危機はいくつもあった。
他里も出来上がり、それらとは協定を結んでいるものの、やはり対立や冷戦もあった。しかし、それでもなんとか、木ノ葉隠れの忍一丸となってここまで里を発展させてきた。
師走という事もあってか、里はいつもより多くの人が行き交い賑わっている様に見える。扉間はつい、その人混みの中に在るはずの無い姿をまた、探していた。
「・・・そうか。もうすぐ、芙蓉の命日だな・・・」
「ああ。」
「芙蓉が生きていれば、お前たちにも子が居たかもしれんな。」
「・・・・・・」
「…すまん…。今年は法要の年ではないが、命日には芙蓉の所へ、お前の火影就任を皆で揃って報告に行こうぞ。きっと喜ぶ…」
「そうだな・・・・・。兄者、ひとつ頼みがあるんだが。」
そう言う扉間の顔には、どこか陰りが見える。その様子を見て柱間は心配になった。そして扉間がこんな深刻な顔をして頼み事をしてくるのは初めてだ。思わず扉間の方へぐいっと身を乗り出す。
「な、なんぞ?どうした?言ってみろ!」
「火影になれば今まで以上に自由は無くなる。その前に・・・一人旅をしたい。」
「一人旅?お前ひとりでか?いや、だがしかしだの・・・うむ・・・。もう行く場所は決めておるのか?」
「ああ。海を見に行きたい。年内には帰って来る。」
「そうか…そうだな。周りには視察と言っておけばよかろう…行って来い!!あっ、土産を買ってくるのを忘れるなよぉ?ワハハハハ!」
キシッ…
居間に足を踏み入れると床が鳴った。
この家も随分と年を取った。
目を凝らして台所を見つめる。
しかし、その姿は見えるはずもない。
キシッ、キシッ、キシッ、キシッ・・・
扉間はゆっくりと二階へ繋がる階段を上る。踊り場からすぐの扉を開けてその部屋に入った。そこには冬の鋭角の強い斜陽が窓から差し込み、扉間の顔を照らした。思わずその眩しさに片眼をつむり、左手でそれを防いだ。しかし直ぐにその手を外し、目を細めてその光を真っ直ぐ強い眼差しで見つめる。やがて、また眩しさに耐えられなくなって目を閉じた。
瞼の奥に、懐かしい姿が蘇る。
斜陽を受けて輝く亜麻色の髪、琥珀色の瞳、濡れた唇・・・そして白く透き通る冷たい両手は自分の両頬を優しく包み込んでいる。
そっと、二人の唇が重なる。
斜陽が窓枠の外に消え部屋の中が薄暗くなると、寝台の上で二人は初めて裸で抱き合った・・・
ザァァァーッという音で扉間は目を開け、現実に引き戻された。
その音は家の周囲の梢が風に吹かれ、色褪せた葉が散り積もる木の葉の雨の音だった。
落葉・・・。
扉間は目の前の机に歩み寄り、その上に立てて在るいくつかの写真の一つを手に取った。
『ね?ここ、小さな錦谷みたいでしょう?本当は錦谷で結婚式したかったんですけど、流石にそれは無理ですものね。ウフフフ!』
その言葉で、目の前の白黒写真が一瞬で色鮮やかな色付きの写真に変わってゆく。そこに写る、扉間の手で肩を抱かれニッコリと微笑む芙蓉の顔はまるで生きているかのようだ。すると扉間の両手が小刻みに震え、左手薬指の白金の指輪が放つ光りも一緒に揺らいだ。
・・・ポタッ。
「フフッ…すまんな。俺はこの時のような笑顔を、お前に見せてやることがなかなか出来ん…すまん…芙蓉。だが、お前以外に俺を笑顔にさせる奴なんて、もうどこにも居ないんだから、しようがないだろ…ハハッ…」
◆
「二泊したいのだが、空いているだろうか。」
「あ、はい。二~三名用の十三畳のお部屋ならご用意があるのですが、そちらで宜しければ…お一人用よりはお値段は上がりますが、部屋に露天風呂が付いておりまして、お好きな時に温泉をお楽しみ戴けますのでお勧めでございます。」
「ああ。それで構わない。頼む。」
「ありがとうございます。畏まりました。」
接遇教育がしっかりと施されているであろう背筋がすっと伸びた受付係の青年は、穏やかな微笑みで返事をすると、優雅な動きで扉間の前に用紙と万年筆を静かに差し出した。
「では、こちらの宿泊名簿の欄に、お名前、性別、ご年齢、ご住所、ご職業のご記入をお願い致します。最後に誓約事項にご同意戴きましたら丸を付けて下さい。」
「・・・。これらは全て記入しなければならないか?」
扉間は柔らかい口調で訊ねた。すると受付係は指をきれいに揃えた右手で、その用紙の欄の一番下を差し、少しだけ申し訳なさそうな口調で答える。
「申し訳ございません。当館ではご宿泊者皆様に安全に、安心してお過ごし戴く為、全ての項目の記入をお願い致しております。」
手で差された部分には、
“私は反社会的勢力・抜け忍ではありません。( )”という誓約事項と、
“上記事項及び誓約事項が虚偽だった場合、即刻退館して戴きます。また場合によっては適切な対処をさせて戴きます。”と、小さな文字ではあるが、しっかりと明記されていた。
・・・なるほど。山岳の墓場に近い温泉旅館とあって気を遣っているのだな・・・
「分った。しっかり記入しよう。」
「ありがとうございます。」
扉間が全ての記入を終えると、受付係が受付台の奥に待機していた若い女に手で合図をすると、その女は早歩きで受付にやって来た。そして扉間が記入した宿泊者名簿に目を通し、受付係から部屋の鍵を受け取ると、早歩きで扉間の所へ来た。
「この者がお部屋までご案内致します。どうぞごゆっくりお過ごし下さいませ。」
「千手様、いらっしゃいませ。仲居のホロと申します。お部屋までお荷物お持ち致します。」
仲居はそう言うと荷物置きに置いてあった扉間の荷物を手に持った。
「あ、ああ・・・よろしく頼む。」
扉間は、仲居と言えども初対面の女、そして子供にも見える背の低い小柄な女に己の大きな荷物を持たせることに少し戸惑ったが、これがここのルールだろうと思い任せることにした。
「左手奥は温泉浴場、右手奥が休憩所になっておりましてそちらの飲物はご自由にお飲み頂けます。浴場は朝四時から夜一時まで開いておりまして…」
仲居は両手でしっかりと扉間の荷物を抱えながら、時々後ろの扉間の顔に振り返りながら館内の説明をしながら前を歩いていく。しかし扉間は、何度も荷物を抱え直しながら懸命に説明と歩みを進める仲居の様子を見て、感心しつつも少々申し訳ない気持になり僅かに俯いた。
「お待たせ致しました。こちらが翡翠の間でございます。どうぞお先にお入り下さいませ。」
仲居はそう言いうと片手で扉を開けた。扉間が急いで中に入ると仲居が続いて入り、ようやく畳の上にゆっくりと荷物を置いた。そして部屋の説明を端的に終わらせると、座卓の上にある茶器でお茶を淹れ始める。扉間は立ったまま、障子を開けて窓の外の風景を目的も無く見ながら、それが終わるのを待っていた。
「千手様、どうぞお座り下さいませ。お疲れでございましょう?煎茶と茶菓子をどうぞ。こちらの茶菓子の温泉饅頭は温泉水を使っておりまして…」
気まずい想いをしている扉間とは正反対に、仲居は明るくハキハキと楽しそうに説明を続けながらお茶を差し出してきた。扉間は座布団の上にゆっくりドスンと座った。
おそらく部屋に入って仲居が部屋の説明と茶を準備するまで五分もかかっていないだろう。(扉間にはずっと長い時間に感じられたのだが)扉間は仲居のその無駄のない動きと説明に、これは接客の達人だな、と最後は感心して仲居の顔を眺めていた。
「ではごゆっくりお寛ぎ下さいませ。御用の際は何なりとお申し付け下さいませ。失礼致します。」
「丁寧にありがとう。助かった。…荷物も、重かっただろう。本を沢山持ってき過ぎてしまってな。悪かったな。」
「いいえ!とんでもないことでございます!子供の頃から力仕事をしておりますので力自慢です!それにも~っと重い荷物のお客様の方が多いですし!あははっ」
そう言って仲居は、先ほどまでの接客の笑顔とは違う、おそらく素の笑顔だろう顔で笑った。扉間もそれを見て緊張が解け、思わず微笑んでしまった。
◆
バシャ、バシャ・・・
「フゥー・・・落ち着くなぁ・・・」
扉間は部屋に在る温泉の露天風呂に入り、両手でお湯をすくって顔にかけると、ヒノキの湯船に背を預け大きく息を吐き、呟いた。
こんなにもゆったりと過ごすのはとても久しぶりである。家の風呂だと、どうしても仕事や新術開発に思考を巡らせてしまう。だが今は、開放的な空間と時間の束縛からの解放感、そしてトロリとした湯の温もりが五臓六腑に染み渡る感覚に浸っていた。
・・・自分への被け物(ご褒美)か、それとも、最後の晩餐か・・・
外の風景に目を向けると、目の前にそびえる低い山の木々はすっかり葉を落とし灰色の枝だけが空に向かって伸びている。正直言って面白味も無い、ただ物悲しい冬ざれの風景である。寒風が吹き湯船の表面の湯気を攫っていく。湯船の外に出していた扉間の腕も一気に冷たくなった。
その冷たさに、否応なしに思い出す。
ほどけたはずの心が、また、絡まってゆく。
しかし、扉間はその感覚にホッとするのだ。
芙蓉との美しく輝かしい想い出は勿論だが、芙蓉が死んだあの日の事を忘れてしまうなど、絶対にしたくはなかった。
あの痛みと悲しみを繰り返し、繰り返し、何度も思い出すことで、芙蓉の存在を近くに感じられるような気がいしていた。
そして同時に、その更に底に在る、どす黒い感情も否応なしに浮上してきた。
怒りと憎しみ。
あの時の、写輪眼。
・・・だが、ついにこの時が来た・・・
扉間が二代目火影の座に就くのだ。
この十数年間、周到に進めてきた計画をようやく完遂することが出来る。
芙蓉の死後七年が経った頃、うちはカガミのスパイ任務を解いて里に戻し、警務部門の責任者に就任させた。それ以降、扉間の思惑通りカガミは己の罪に苛まれ、心を削り苦悩しながら現在も罪人たちに罰を与え償わせ続けている。
そして、うちは一族の殆どの忍には、今や警備・警務の任務を与えられていた。
“里の平和の守り人” そう言えば聞こえが好いが、反面、嫌われ者でもある…。
・・・計画が完遂すれば、うちは一族は・・・
扉間はいつの間にか、目を細め微笑していた。
その目に映っているのはもう、冬ざれの風景では無かった。
「温泉はいかがでしたか?ここの温泉は疲労回復だけではなく、美肌にも効果があって女性に大人気なんですよ!」
そう話ながら仲居のホロの手で座卓の上に次々と料理が並べられてゆく。扉間は腕を組んで少し背中を反らせながらその様子を眺めている。
「いい湯だった。温泉に入るのは久しいが、やはり身体の芯まで温まるな…」
「はい!朝、夜、一日二回、ニ十分ずつ入ると効果抜群ですよ。では、お食事の御説明をさせて頂きますね。まず…」
仲居はテキパキと料理の説明をしてゆく。簡潔で分りやすく食欲を掻き立てるその説明に、扉間はまたまた感心した。かなり若そうに見えるのに、しっかりしている。
「ありがとう。食すのが楽しみだ。」
そう言うと扉間はまず一口酒を飲もうと銚子に手を伸ばした。
「お注ぎ致します。」
「あ、ああ…」
仲居はサッと銚子を手に持つとニコリとして扉間の方へ差し出す。扉間は少し戸惑いながらもぐい呑みを差し出した。
トクトクトク・・・ゆっくりと酒が注がれる。
「名はホロと言ったか。君はここで何年くらい働いているのだ?」
「まだそんなに長くはありません。二十三の時からだから…まだ二年ちょっとです。」
「いま二十五なのか?見えないな!」
「あはは…よく言われます。背が低いのと童顔のせいで十五くらいに見られることもあって…」
そう言って、ホロは少し恥ずかしそうに目を伏せながら銚子を座卓の上にそっと置いた。トンボ玉の髪留で前髪を留めた黒いおかっぱ髪、太めの眉、黒目がちの大きな丸い瞳。小さな丸顔の頬にはそばかす、すっぴんにも見える薄化粧…確かに、扉間も十代後半の少女だと思っていた。しかし随分と若く見える女性も居るものだと驚いた。まぁ、自分とて人のことは言えないのだが…。
「まぁでも歳は関係無いな。君の接客は素晴らしいと思う。ありがとう。」
その言葉に一瞬ホロの顔が固まり、直ぐに顔が真っ赤になる。ホロは焦って俯き、そのまま扉間に向かって頭を下げた。
「あっ、ありがとうございます!勿体無いお言葉でございます…で、では、温かいお料理は随時お持ち致しますね。お銚子のお代わりはいつでもお申し付け下さい。失礼致します。」
ホロは顔を赤らめたまま、襖を閉めてそそくさと部屋を出て行った。扉間は少し微笑んでその襖を見つめた。
「あの…お口に合いませんでしたでしょうか?」
ホロは気まずそうな笑顔でそう訊ねた。
「あ、いや。そんな事は無い。どれも美味かった。すまない。今日は少し食が進まなくてな…」
扉間は後半に出された料理には殆ど箸をつけていなかった。
料理は本当にどれも美味かった。
しかし、次々と出される料理を見ていると、次第に箸が進まなくなっていった。
美しく美味そうな料理が並んでいくほどに、目の前に居ない、いや居るべきはずである存在を思い知るのだ。
『わぁ~凄く綺麗な料理!ね?扉間さま。今度、家でも真似してみようかしら…』
この十数年の間、豪華で美味い料理を数知れないほど前にしてきた。その場、その場でそれを食せていたのはひとりでは無かったからだ。柱間、義姉、姪、樹、弟子、部下、そして大名、豪商、他里の影…誰かしらと一緒だった。
…いや、実際は味など感じていなかったのかもしれない。
事実、芙蓉が居なくなって以来初めて、今たった一人でこのような美しく美味い料理の数々を味わったとたん、急に味覚というものを想い出し扉間はひどく戸惑った。
・・・芙蓉が見たら喜びそうだ。芙蓉が食べたらどう思うだろう・・・
料理を味わえば味わうほど、どんどん喉を通らなくなっていったのだった。
「あの…差し出がましいようですが、空腹に近いままお酒をそれほどの量召し上がっていては胃腸に悪うございます。宜しければ雑炊でも作ってまいりましょうか?」
「いや・・・・・ああ、うん。では頼もうか。」
断ろうとも思ったが、これから火影になる身だ。これまで以上に健康管理も職務の一つになる。旅行で体調を壊して帰っては周囲に示しがつかない。扉間はホロに雑炊を頼んだ。
暫くするとホロが鮭とミツ葉入りの雑炊を作って持ってきた。ホロが雑炊の入った土鍋の蓋を開けながら扉間に訊く。
「あの、千手様は日頃お仕事がお忙しくていらっしゃるのですか?温泉に入って日頃のお疲れがいっきに出たのかもしれませんね。」
「あ、ああ。仕事はまぁそれなりだな。あ、扉間と呼んでくれ。千手様というの呼ばれ慣れていなくてどうも変な感じがする。」
「畏まりました。扉間様。もし胃腸薬などが必要な時は仰って下さい。お持ちします。」
「ありがとう。」
ホロが静かに部屋を出て行くと扉間は雑炊を茶碗によそってレンゲで口に運んだ。
「・・・うまい。」
そう呟いてそっと目を閉じた。とても懐かしい味がした。