毒蛾一家の頭・タダナカと扉間の戦い。
扉間に勝機を与えたのは・・・・
続け、物語。
※アサヒとキリン(ハイネケン)の戦いwww
◆
「アンタ、しつけぇなぁ…娘は返した。もう用は無いはずだろ?…まさか、暗黙の了解の事忘れてんのか?…ワシはアンタとやり合う気はねぇ。五里五影に目ぇつけられちゃあ商売できなくなるしな。」
「その口ぶり、まるで俺を殺せるとでも言っているように聞こえるが?」
「ハハッ。そりゃ被害者妄想ってもんだぜ。アンタに怪我でもさせちゃぁ大変ってことだ。」
ヒュウウウゥゥ・・・・
冷たい木枯らしが荒野の枯れ草を揺らし、砂埃を立ててゆく。干上がりひび割れた小川を挟み、扉間とタダナカは向かい合っている。
「・・・イサリビ・・・」
「何でアンタがその名を知っている?」
「あいつは砂隠れの抜け忍…里を抜ける時、多額の金品を奪ったうえ、十人もの上忍を殺している重罪人だ。砂の里にとっては面汚しだから公表はしていないが、そんな危険な抜け忍が木ノ葉の里に来られては困るからな…こちらも調査していた所だった。」
扉間はここに向かう途中、塩専売店に行き店主を尋問した後、感知を行い、昨晩そこに来て居たのはイサリビ本人と突き止めていた。
「なるほど。家業を継ぐ前は砂隠れの里で忍として修行していたって事までは調べがついてたが、アイツ抜け忍だったのか…だとしても、アイツも俺たちと同じく、山岳の墓場で商売する黒寅一家の若頭になったんだ。もうアンタ達には関係ねぇだろ。」
「フフッ…」
扉間は腕を組み、斜めに俯いて不敵な笑みを浮かべた。
「? 何がおかしい。」
「いや。関係など、後から幾らでも作れる。貴様を殺せば尚更、な・・・」
「⁉」
扉間はその場で宙に飛び、そこからタダナカに向かって数本のクナイを放った。だがそのクナイはタダナカではなく、全て明後日の方向へ飛んで行ってしまった。
「ハハハハッ!さっきのワシの攻撃がまだ効いてるのか?手元が狂い過ぎだぜ?…仕方ない、やるしかねぇみてぇだな。まぁ今のアンタなら簡単そうだ!…『超土雷』!!!」
タダナカが印を組み口から泥を吐き出すと、その土はいくつもの固い塊となり、その全てはバチバチと電流を纏っており、扉間へ向かってものすごいスピードで飛んでいく。
「水遁・水龍弾の術!!!」
扉間が水龍でそれを迎え撃つ。本来なら土遁に対して劣勢の水遁は威力が低下するのだが、そこは実力の差で扉間の水龍が勝り、電流を帯びた土の塊を相殺した。水を吸収して土に還った塊が扉間の下、そしてタダナカの足元にボトボトと勢いよく落下し、地面を水浸しにしていく。
しかし、バチバチと光る電流だけは勢いを止まらず、そのまま扉間に襲いかかってきた。扉間は瞬時にその場から姿を消す。
そしてタダナカの頭上に現れた。
「無駄だと言ってるだろ! 雷遁・朝日!!!」
タダナカが扉間に両掌を向け、そこから強烈な電流を放ってきた。そして同時に先ほどの電流も方向を変え、再び扉間に向かってくる。
・・・やはり、こいつ電流を操れるのか。ならば・・・
「水遁・水龍咬爆!!!」
ズゥアアアアアアアァァ・・・!!!
扉間がその場で印を結んだ瞬間、桶をひっくり返したかのような大雨がタダナカの頭上に降り注いだ。
バチバチバチバチィィィ!!!
しかしその雨をものともせず、タダナカが放っている電流と、もう一方の電流が水を突き抜け同時に扉間の身体を直撃した。
「何⁉」
電流を喰らった瞬間、扉間の姿は消え失せた。影分身だった。
その様子に驚くタダナカの周囲5メートルにだけ、扉間の放ったクナイが作る結界によって円形に水溜まりが出来ていた。そこから水龍と無数の水弾が現れてタダナカに襲いかかり、その身体はあっという間に水の塊に包まれた。
ビリビリビリビリ…バリバリバリバリ…
水中に居るタダナカは、自分の掌から放たれている電流で感電していた。
「フン!俺の水遁の中で、貴様自身の電流で感電死しろ。」
扉間は結界の外に現れ、タダナカの様子を見ると目を見開きニヤリとした。
しかし。
タダナカは苦しむどころか、笑っている。
そして素早く印を結ぶと、ビカビカと光る電流がタダナカの身体全体を包み込んだ。
「電流を、身体に纏っただと⁉」
ブワッシャアアアアアッー!!!
そして、その電流はタダナカを包囲していた全ての水を撥ね飛ばした。
…パチッ。ピチッ…パチパチ…
ガハハハと大笑いしているタダナカの身体の表面で電流が小さな音を立てている。
「・・・・」
「ワシは電気を身体に纏い、体内に電流を流して操れる血継限界でな…感電死なんてしねぇんだ。…さて、これでもまだやるか?火影の弟さんよぉ…ヘヘヘヘ…」
扉間は、そっと目を閉じた。
「ワシの勝ち。ってことでいいよな?ワシもアンタほどの忍と手合わせできて楽しかったぜ。」
チャッ。
扉間は腰に差している刀を抜こうと、柄に手を添えた。
「オイオイ、まだやる気かよ!刀で向かってきたって感電して死ぬだけだぞ?」
扉間は無視して刀を抜いた。そして、その刀を地面に放った。
「⁉」
その行動にタダナカが驚き反応する前に、更にその次の扉間の行動に驚いてタダナカは身構えた。
が、扉間の速さには勝てなかった。
扉間は刀を放った瞬間、タダナカの身体にマーキングしておいた事を利用し、タダナカの懐に飛び込み腰を低くし、先端を鋭く切り取られた刀の鞘を構えた。
ブスッッ!!!
扉間はその鞘でタダナカの心臓を一突きにした。鞘は心臓を貫通し、背中からどす黒い血の付いた尖った先端が顔を出す。
その鞘は柱間の木遁で作られた特殊な木材で出来ており、そして扉間自身のマダラとも対等に讃えるほどの剣術の腕前、忍最速を誇る瞬身の扉間を前に、タダナカには為す術は無かった。
ドシッィ!!!
大きな音を立て、タダナカは地面に倒れ動かなくなった。
・・・・・・・・・・・
「そんなに逃げ回っているだけでは稽古にもならんし、俺には勝てんぞ。」
「・・・・。」
扉間が芙蓉の頭上に木刀を振り下ろそうとした瞬間、芙蓉はすっと腰を落とし、扉間の腹めがけて木刀を突きだした。
剣先が僅かに扉間の術着の胸元をかすめそうになった所で、扉間の木刀が芙蓉の木刀に追いつく。
カアアアン!・・・・・ドシャッ!
扉間は芙蓉を木刀もろとも弾き飛ばし、芙蓉はかなりの距離を飛ばされて地面に倒れた。
ハア…ハア…ハァ…ハァ…
扉間の息が上がっている。体を動かしたからではない。
・・・俺は、芙蓉が好きだ。
・・・・・・・・・・・
「芙蓉…お前の口癖から取って今のは『杯音剣』って技名でどうだ?…お前のお陰で、俺とお前の娘を、守れたぞ…」
◆
ザザアァァン・・・ザザン・・・サァァァ・・・
青い空に少し灰色がかった白い雲の塊がいくつも浮かんだ冬晴れ。そして海は紺碧に輝いている。打ち寄せる穏やかな白波が、ゆっくりと白い砂浜を潤わせてゆく。
扉間は濡れないように波を避けながら、ゆっくりと波打際を歩いている。
いつか見た、光景と重なる。
タダナカを倒したあと扉間はホロの元へ戻り、もう心配は要らない事を伝えた。ホロは助けて貰ったことに対し何度も、何度も頭を下げて礼を言った。
そして、
「それから…私のことを娘だと言ってくれた扉間様が、“ホロ(幌)”って私の名前を呼んでくれて、凄く嬉しかったです!
実は芙蓉さんに出逢った頃、幌って名前が大嫌いだったんです。そしたら、芙蓉さんも自分の名前があんまり好きじゃなかったって教えてくれて…でも、いつか本当に大切な人ができた時、その人から名前を呼ばれたらきっと自分の名前が好きになれるからって。自分がそうだったって教えてくれたんです。この温泉街に来て、色んな人に名前を呼ばれるようになって、少し自分の名前が好きになってきてたんですけど…でも、今日心からそれを実感しました!」
扉間は、そう言って嬉しそうに微笑むホロの顔を見てホッとすると同時に、少しだけ胸がチクリと痛んだ。
ホロの話のその頃、芙蓉の名を呼んでいたのは、いや、芙蓉にとって大切な人は、自分では無かったからである。
扉間は、波打際から離れたところに在った大きな岩の上に腰かけ、目を細めて海を眺めた。
『ねぇ、暖かくなったら“新婚旅行”に行きましょう?…新婚旅行っていうのはね、どこかのお侍さんが結婚の記念に奥さんと二人で旅行をしたのをきっかけに、今流行っているらしいの!私も扉間さまと行きたいな…』
「お前の写真はホロにやってしまったが、お前も隣で見ているよな・・・」
「はい!」
「・・・⁉」
その声に隣りを見ると、そこには、見慣れたひとが座って居た。
長い亜麻色の髪を海風に靡かせ、長いまつ毛の大きな目を少し細め、ニコニコしながら扉間の顔を見つめている。膝の上で重ねている左手左薬指には自分と揃いの、白金の野薔薇の指輪が輝いている。
「・・・・芙・・・蓉・・・?」
「私にも良く分らないのですが、扉間さまの声が聞こえて歩いて来たらここに居たんです。どうやらマダラさまの忍術がまだこの近くに残っていて、チャクラがなんとか、幻術がどうこう…良く分らないけど余り時間…」
芙蓉が話し終わる前に、扉間は芙蓉を抱き締めた。
しかし、確かに抱きしめている感触はあるのだが、その身体は海風のように冷たい。
「会いたかった。芙蓉」
扉間の声は震えている。芙蓉も扉間の背中にそっと、優しく両手を回した。
「うふふ。私も…でもほら、言ったでしょ?私たちの物語は終わらないって。ね?」
扉間はバッと身体を離して芙蓉の両腕をしっかりと掴み、芙蓉の目を強く見つめた。
「ああ。もう一生お前を離さない。一緒に木ノ葉の里に帰ろう!」
芙蓉は何も言わず、ただ優しく微笑みながら扉間の顔を見つめている。
「俺は、俺はもうすぐ二代目火影に就任するんだ。お前が居なければやれない。頼む、傍に居てくれ。ずっと、ずっと…」
「わぁ!おめでとうございます!扉間さま!・・・火影のお役目、扉間さまなら絶対、大丈夫!」
芙蓉はそう言い終わると、そっと扉間に口づけをした。
気のせいか、その唇はとても温かかった気がした。
芙蓉はそっと身体を離すと、また扉間の顔を見つめて微笑んだ。
扉間も芙蓉の琥珀色の瞳を瞬きもせず、じっと見つめた。一瞬一秒でも長く芙蓉を見ていたかった。扉間の唇は何か言葉を発しようと震えるが、言葉にならない。何か、何か言わなければ…
「…愛している。芙蓉」
「はい。私も、愛しています。扉間さま・・・
次に会う時は、里やお仕事の話たくさん聞かせてね。あ、でも早くこっちに来ちゃ駄目よ?約束!ね?うふふふ…」
気付けば、芙蓉の姿は消えていた。
しかし、扉間の耳にはいつまでも芙蓉の声がこだましていた。
「こんなにも、人を愛することが出来て、本当に良かった。ありがとう。…これからも、永遠に愛している。」
芙蓉を失ってからの十数年、扉間は愛する人を失ってまでも愛し続ける苦しみで、こんなにも苦しいのなら最初から愛さなければ良かったという思考回路すら作り上げていた。
しかし、この時ようやくその苦しみから解放され、芙蓉を愛することが出来て良かったと、心の底からそう思い直すことが出来た。
◆
扉間が里に帰ると柱間の孫が産まれそうだと聞き、急いで病院へ行くと女児が産まれた。
名は、『綱手』と決まっていた。男でも女でも良いように柱間が考えてつけたという。(勿論、まだ十代で反抗期の姪は自分たち夫婦で名付けると猛反対したようだが…)
しかし柱間は娘二人に続いて初孫までも女とあって、また女か‥と少しばかり残念そうにしていた。だが扉間は、性別など関係なく、新しい命が無事に生まれた事に感動し、心から嬉しく思った。
そして二ヶ月後、姪の体調が落ち着いたと聞き、改めて屋敷に又姪(兄弟の孫娘のこと)を見に行った。
扉間がそうっと赤ん坊の顔を覗いてみると、美しい琥珀色の瞳をしていた。
芙蓉の生まれ変わりなどとは思わなかったが、芙蓉のことを母同然だと必死に探してくれていたホロの事を想い出した。改めて、芙蓉が母として慕われていた事実がとても嬉しくなり、愛おしく温かなものが胸に押し寄せてきた。そして、己の弟子や部下、里の人々の笑顔を想い出し、そして、思った。
・・・俺の命は木ノ葉の里のものだ。そしてここに生きる全ての者たちの為の命だ。
そしてそれら全ては、俺たちの子供だな。なぁ?芙蓉・・・
「行ってくる。」
バタン…
今日も芙蓉は、扉間の背中を笑顔で見送っていた。
完
扉間の旅は終わり、二代目火影に就任しました。
火影の扉間の活躍・・・
それはまた、いつか別の機会に(^^)
主人公が死亡して終わるという、なんとも後味が悪いと私の周囲からは不評極まりなりこの「罪の向こう、愛の扉」シリーズですが、私自身はこれが一番いい終わり方だと思っています。
この後、再び芙蓉とマダラが活躍する続編を現在執筆中です。
マダラがオビトに出会い天寿を全うするまでの間を描きます。
NARUTOの世界・歴史の片隅で、芙蓉とマダラは再びどんな物語を紡いでくれるのか、私も楽しみです(^^)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
千野 伊織