今も身を隠しつつ虎視眈々と生き続けているマダラ。
ある日、そのマダラの前に一人の若い女が現れた。
一方、木ノ葉の里では柱間亡き後、扉間が二代目火影に就任していた。
しかしその扉間にも最後の時がおとずれる。
そして、扉間の死により、主人公・芙蓉の秘密が明らかになってゆく。
マダラと芙蓉、二人を離さないように絡みつく因縁とは?
◆主な登場人物◆橘芙蓉(o.c)、うちはマダラ、ゼツ(黒)、千手扉間、うちはカガミ、猿飛ヒルゼン、志村ダンゾウ、水戸門ホムラ、うたたねコハル、秋道トリフ、金角・銀角兄弟、千手樹(o.c)、大筒木カグヤ、大筒木ハゴロモ。
※黒ゼツの性格は白ゼツのようなお調子者な感じにしてあります。
※うちはカガミはヒルゼンたちと同年代にしてあります。私の考えではヒルゼンが三代目火影に就任したのは35歳を過ぎてからだと考え、その設定で描いております。
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今回(2)の登場人物は、うちはマダラ、ゼツ、金角・銀角兄弟。
マダラの右腕にまで忍として熟達した六花。
自分の軽率な親切心で不幸を招いたことに深く反省し、変わっていきます。
先日の竹林での行為に現れるように目的の為には心を冷徹にすることも…
そして、ついにマダラが長年考えてきた計画を実行することになりました。
その足掛かりとして、六花は雲の国に向かい、雲隠れの里最強と名高い忍、金角・銀角兄弟に会います。
※マダラと六花(芙蓉)の性描写があります。
【挿絵表示】
橙色の灯りが壁にくっきりとした影を作る。
その影は昔よりもずっと曲線を増し、美しい。
マダラがそう思っていると、目の前に六花の顔が現れる。そして、ぎこちなくマダラの唇に自分の唇を重ねた。
・・・これだけは相変わらず下手だな・・・
そう心の中で呟くと、六花の後頭部を抱き寄せ、舌を入れて強く唇を吸う。
「あっ…」
マダラが右手で六花の左乳房を掴み、親指で乳首を撫でると、六花は小さく悶えて唇を離した。しかしマダラは強引に六花の頭を引き寄せ、再び唇を重ね舌を入れる。
「んっん・・・んんっんっ・・・・・・はぁあっ!」
マダラが右手で六花の乳首を弄びつつ左手を六花の下腹部に這わせて擦ると、六花は堪らず唇を離し両手をマダラの顔の横について身体を反らせ、目をつぶって身悶えた。
「マダラ・・・さま・・・」
虚ろな目と僅かに開いた唇でマダラを見下ろす。マダラはその左乳首に吸い付いた。両乳首、下腹部の三ヶ所を同時に刺激する。あまりの快感に六花は大きな喘ぎ声をあげる。
「はぁああんっ・・・あんっ・・・ぁっ・・・ああああんっ!」
六花はマダラに激しく追い込まれ、遂に果ててしまった。
「ハァハァハァハァ・・・」
六花はぐったりとマダラの右脇に顔を埋め、肩で息をしながらそっと顔を右に逸らした。
虚ろな視線の先に、マダラでは無い男の顔が在る。
その顔は決して目を開ける事など無いのだが、第三者に見られているようで恥ずかしくなり、六花はまたそっと顔を埋めた。するとマダラが六花の肩を押して顔を上げさせる。
「主よりも先にいくとは、けしからん奴だな。」
そう言って、マダラは意地悪そうに微笑を浮かべている。
「・・・申し訳、ありません・・・」
六花は少し戸惑いながら答えて身体を起こすと、マダラの下半身に移動してその股の間に座った。
そして既に大きくなっているマダラの男根を両手でそっと支えた。目を閉じ、口を開けてそれを咥える。
一度では口に入らず、何度も口を開け、舌を使って奥まで咥えた。
そして、頭だけではなく、身体全体を上下させて、舌と唾液で滑らせながらそれをしゃぶる。
じゅるじゅるぐぽっ・・・
その音に六花は、この恥ずかしく屈辱的な、しかし、主に使える喜びを感じさせられる行為をいつ覚えたのか、思い出そうとした。しかし直ぐにその思考を止める。そんなもの思い出しても仕方が無い。今は行為に集中しないと…
マダラは懸命に、しかしいつまでも恥じらいを捨てられずに男根をしゃぶる六花の顔を見ながら、満足そうに小さく息を上げていた。
そしていつものように、六花の長いまつ毛に目がいく。どこかで見覚えがあるように感じるのだが、思い出せない。過去に関係を持った似たような女だろうか…。そう思っていると六花が上目遣いでマダラを見上げ、目が合った。
「乗れ」
そう言われ、六花はしゃぶるのを止めて身体を起こした。その肩はゆっくりと上下している。
黙ってマダラの上に跨ると、マダラの男根の根元を支え、自分の膣の入り口に押し当てた。
「あっ…」
膣の入り口に亀頭が入ると六花は小さく声を洩らした。
「愚図愚図するな」
マダラは六花の腰を両手で掴むと、強引に男根を膣の奥へとねじ込んだ。
「ひゃぁああああんっ―――・・・・」
六花は一気に身体を貫かれ、怯えるような声で叫んだ。
「ほら、早く動け」
六花はマダラの両腕を掴み、自分の身体を上下に動かし始めた。
眉を寄せ快感に悶えながら、懸命にマダラの快感を高めようと動いている。
上品な丸い形の胸がゆさゆさと上下に揺れ、腰のくびれはよりくっきりと際立っており、程よく筋肉と脂肪が付いた身体は、出会った頃の幼さなどもう微塵も無い、艶めかしい大人の女の身体だった。それを実感すると、マダラの快感は頂点へと向かっていった。
気付けば、マダラはまた六花の腰を両手で掴み、自ら六花の身体を上下に動かしていた。
「んっうっ・・・!!」
「あんあんあんっ・・・あああっ!!」
マダラの男根がより固くなり、ビクビクと身体の中に熱いものを注ぐ感覚に、六花もまた絶頂を迎えた。
・・・マダラ様、愛してる・・・
決して口には出せない言葉を心の中で呟き、六花はマダラに口づけをした。
その背中を、マダラは優しく抱き締めた。
「木を見て森を見ず」
寝台に腰かけ寝間着を着ている六花の背中に、寝そべるマダラが話しかけた。六花はゆっくりと振り返り、何のことだか分らずに不思議そうにマダラの顔を見た。
「昔のお前は、木しか見れてなかったな。」
その言葉に六花は己が下僕であることも忘れ、マダラに褒められるのかと思い表情を緩めて目を輝かせた。
「だが、今もまだ、林くらいしか見れていない。」
「・・・?」
「今日のはやり過ぎだ。俺の正体が割れることはまず無い。だがお前には俺が死んだ後も働いてもらうんだ。派手な事をして五里五影にお前の存在が知られては厄介だ。もっとよく考えろ。いいな?」
「・・・はい・・・」
六花は己の期待が外れ、マダラから叱られて、悲しい顔をすると目を伏せた。
その顔を見てマダラが苦笑して問う。
「不服か?」
「いっ、いえ…ただ、自分の愚かさが嫌になって…昔と変わってないなんて…申し訳ありませんでした。」
「お前はまだ若い。学ぶ時間も成長する時間もまだある。まぁ俺の為にもっと早く成長して貰わなければ困るがな。」
「・・・はい。」
六花は悲しそうな笑顔で俯いたまま答えた。
今の六花には、どうしても、マダラの顔を見ることは出来なかった。
◆
どんよりと分厚い雲が広がる鈍色の空。
その色に姿を紛らせるように、灰色の大きな羽を広げた一羽のハチクマが南へと飛んで行った。
その空の下には、真っ黒な焦土と化した平原が広がり、無数の死体が転がっている。
所々から立ち上る白い煙は、未だ鎮火しない炎から立ち上っているものなのか、それとも、これから始まるもっと大きな戦火の火種なのか…
六花はそう思いながら、崖の上からその風景を眺めていた。
「第二次忍界大戦ねぇ。あはは。相変わらず人間は殺し合ってばかりだよね。焦げ臭いし早く帰ろうよ~六花。」
六花の頭上でゼツが笑いながら言った。
第一次忍界大戦後、五里五影が興り、里間で条約締結を結んだ。そして各国各里は発展を遂げ、泰平の時が過ぎていた。
しかし、皮肉にもその発展により新たな争いの火種が生じていた。
資本主義を基礎とした発展の中、当然ながら各国の間には経済格差が生じた。それを各里間条約の不平等のせいだと訴え、“公平なる利権拡大”を理由に各里で武闘派が台頭し、武力行使による領土拡大が進められ始めたのだ。
かくして第二次忍界大戦が勃発した。
「マダラ様の先の夢が実現するまでの間、どれだけの戦が起て、どれだけの人が死ぬんだろう…その人たちも皆、幸せになれるのかな…?」
「なれるんじゃん?でもその為にも早く先の夢を実現しないとね!さ、ほら早く帰ろ!」
六花は物憂げな顔でもう一度目の前の風景を見据えた後、そっと背を向けた。
すると目の前からマダラが歩いてこちらに向かって来ていた。
「マダラ様…遅くなって申し訳ありません。」
「問題ない。いや、俺もこの眼で戦場を見ておこうと思ってな。」
マダラは六花の左隣に立つと、腕を組んで目の前の風景を見渡し、そして急に大声で笑い始めた。
「ハハハハハッ!・・・見てるか柱間。これがお前の夢の成れの果てだぞ。里という枠組みに縛られた結果がこれだ。所詮、敵同士、腑を見せ合い手を取り合うことなど永久にできんのだ。この世で、人間が己の利益と幸福を追求し続ける限りな・・・ハハハハッ・・・」
六花は少しだけ目を凝らして、そのマダラの様子を見ていた。
すると先ほど飛び去ったはずのハチクマがピーエーと鳴きながら戻ってきた。隣には、つがいと思われるもう一羽を連れている。
六花はその二羽を見上げた。
人間の憎悪・厭悪・怨恨・激憤、そして死への恐怖が潰えた焼け野原の上で、そんな事はどうでもいいと言わんばかりに、二羽が仲良く愛を語らいながら飛び回る。
六花は、これもまた人間が争い合うのと同じ自然の摂理なのだろうと思い、それ以上は何も思わなかった。
「六花。次の任務、失敗は許さんぞ。」
その言葉に急いでマダラの方を向く。
「はい。承知しております。必ず、完遂いたします。」
「多少手間がかかったとしても確実に目的を果たさなければ意味が無い。無理だと思ったらすぐに戻って来い。バックアップはある。判断を誤るなよ。」
「はい。」
「僕もついてるし大丈夫だよ。」
ゼツがそう言って六花の頭からマダラの右肩へ飛び載った。
そして三人は、再び目の前の風景を見渡す。
ハチクマのつがいの姿は消えていた。
◆
「お二人の間に座っても、よろしいかしら?…金角様と銀角様…」
髪を下ろし、真っ赤な紅を引き、金の耳飾りと首飾り、腕飾りを着け、下着が透ける薄い桃色の羽衣を羽織って金糸の帯を締めた婆娑羅(バサラ)な六花は、カウンターで並んで酒を飲む男二人の背中に向かって言った。
その声に男二人は同時に振り向いた。
「誰だてめぇ。なんでここに入って来てんだ!」
二人は身構え、チャクラを発動して警戒している。しかし六花は気にすること無く、微笑みを讃えてゆっくりと二人に近づいていく。
「この店には誰も入れるなと、入り口の部下に命令していたはずだがな…」
「私、お二人のファンなんですの。ずっとお話ししたくて機会を探しておりました。そう言ったら、皆さん眠ってくださいましたわよ。うふふ。」
そう言いながら二人を見て、六花はそっと体をくねらせ、耳に髪を掛け直しながら上目遣いでニッコリと微笑んで見せた。
二人は顔を見合わせてニヤリとした。
「そうか。俺たちのファンなら仕方ねぇな。少しだけ相手してやるよ。なぁ金角。」
「おう銀角。お前、こっちに来い。」
「ありがとうございます。嬉しいですわ…」
六花は二人の間に一つ空いていた足の高い椅子に、二人の視線が自分の胸と太ももに注がれるのを感じながらゆっくりと腰掛けた。そして改めて二人の顔を交互に見て微笑んで見せる。
銀角が目の前に並んでいる空いたグラスを一つ手に取り、酒を注いで六花の前に置いた。
「で、何が本当の目的だ?こんな女に化けて。」
「確かに私は忍ですけど、化けてなんていませんわ。確かめてみます?」
そう言って六花は右側に座る銀角の右手をそっと握りその手を自分の乳房に当て、そして次に左に座る金閣の左手を握ると自分の股間にその手を当てた。二人の手は自然と六花の乳房と股間をぎゅっと握る。
「はは。なんだ娼婦か。」
「まぁ…そんな所ですわ。」
そう言って六花は二人の手を退けた。
「いくら欲しいんだ?」
「お金は要りません。ただ、私のお話を聞いて戴ければそれで…」
「話?」
「私、屈強で野望に溢れてる男性でなきゃ抱かれたくないんです。お二人共もう充分素敵な男性ですけれど、お二人には里に仕える忍のまま、収まっていて欲しくないんです…」
二人はそれを聞き、再びちらりと互いに目を合わせると、まんざらでもない顔で酒をぐいっと飲んだ。
「そうか。じゃあ奥で、三人でじっくり楽しみながら話さねぇか?なぁ銀角よ。」
「いいえ。これでも私、真剣なんですのよ。お話を先に聞いて戴けません?ね?お願いですわ…」
六花はそう言って二人の太腿に手を遣り、いやらしい手つきでさすりながら、困ったような顔をして見せた。
「しょうがねぇなぁ…じゃあ話してみろ。」
「ありがとうございます…お二人はいま、七星剣、芭蕉扇の二つの宝具を里から授けられてお持ちですよね。でもあと三つ…五つ全ての宝具が欲しいと思いませんか?それに、雷影の座も…」
「確かにあと三つ、幌金縄、紅葫蘆、そして琥珀の浄瓶が揃ってこそ七星剣の正しい使い方が出来るってもんだがな…」
「俺たちは雷影の座なんざ興味はねぇが、今の雷影の生ぬるいやり方にはイライラさせられる。ついに木ノ葉の里と同盟を結ぶなんて事になってるしな。そうなっちゃ俺たち戦闘部隊の権限まで削られるだろう。」
二人はそう言うと正面を向いて、苦い顔をしてまた酒を飲んだ。
「私も、これまで里の為に戦ってきたお二人と戦闘部隊の方々が蔑ろにされるなんて許せませんわ。それに、お二人にはぜひ、この雲隠れの里を五里最強の里にして欲しいんです!私も協力いたします。その為ならこの身体、いくらでも差し出します!…どうか、立ち上がって頂けませんか?…」
六花は必死の形相で二人の顔を交互に見ながら力説して見せた。
「…クーデターか。悪かねぇな…」
「…ああ。それにはまず、宝具を手に入れねぇとな。」
二人がそう言って沈黙すると、六花が口を開く。
「決行するなら木ノ葉との同盟締結式の当日です。警備は影たち周辺に集中し、その他の警備は手薄になります。」
「でも…俺たち封印術が苦手でよ。なぁ金角。」
「ああ。まずは封印術に長けた忍を探さねぇとな。なぁ銀角。」
話の流れから、二人の関心がクーデターへ傾いていることを察して六花はそっと微笑んだ。そして言う。
「あの…私、封印術を得意としておりますの。ですから勿論、解印術も出来ます。実はこの能力のせいで、最近まで木ノ葉の里で捕虜にされていたんです…大戦に乗じて、何とかこうして雲隠れの里まで逃げ帰ってきたんですの…」
「マジかよ⁉雲隠れの忍を捕虜にしてやがる木ノ葉なんかと同盟なんて、やっぱり雷影は馬鹿だ!許せねぇ!なぁ金角よ!」
「ああ…その話が本当なら許せねぇな…。だが、お前の話が本当かどうか証拠はあるのか?」
金角が急に厳しい目で六花を睨んだ。
「はい。私がお二人の前で、宝具の封印を解いてお見せいたしますわ。」
金角・銀角の二人は目を見開いて互いに顔を合わせると、金角の方が口を開こうとしたが、六花がすかさず言葉を付け加える。
「その代わり、封印を解いたらクーデターを起こして下さい。それがダメでも、私を捕虜にして甚振った二代目火影を…殺して下さい。お願いします。」
真剣な顔で二人の顔を交互に見ながらそう言うと、六花は深々と頭を下げた。二人はずっと頭を下げ続けている六花を暫く黙って見つめた後、また顔を見合わせると頷き合った。
「よし。分った。封印が解けたらお前の願いを聞いてやる。いいよな、銀角?」
「ああ、それでいい金角。だが、封印が解けなかった時は…覚悟しとけよ。ククッ…」
「じゃあ今夜はその約束の印に…」
金角がそう言って芙蓉の腰に手を回そうとすると、芙蓉はするりとそれを除け、椅子から降り数歩行った所で立ち止まり、満面の笑みで振り返る。
「では明日のこの時間に、封印塔の前で待っていますね。お楽しみは、その後で…うふふっ。では…」
そう言いう六花の姿は次第に薄れてその場から消えてしまった。
「ケッ。食えない女だぜ…」
「なぁに、封印が解けても解けなくても、たっぷり味わってやろうぜ。ま、約束なんて守らねぇがな。ハハッ。」
「ハァハァハァハァ・・・」
六花は取っていた宿の部屋の窓から室内に入ると、畳の上に両手をついて俯き、肩で大きく息をしている。鼓動は速く身体もまだ震えている。顔は高熱でもあるかのように熱い。
暫くすると、閉めた窓の隙間をゼツがするっと通り抜けて、六花の視線の先の畳にやって来た。
「六花!めっちゃエロかったね。演技上手いじゃん!」
「う、うるさいな!余計な事言うな…で、ちゃんと洗脳できたの?」
「当然じゃん!完璧。六花が演技してしっかりその気にさせてくれてたから超楽勝だったよ~。僕の力は要らなかったんじゃない?だって超どエ…」
「うーるーさーいっ!黙れ!言うな!」
「あはは。顔真っ赤。あ、ちゃんとマダラにもさっきの演技の様子、報告しておくね!」
「やめて!もうっ!さっき買っておいた雲隠れ名物・雷饅頭、ゼツにはあげない!」
「いいよ~奪ってでも食べるから~」
「させるか!」
六花はゼツを捕まえようと狭い部屋を走り回っていると、隣の客からうるさいと怒鳴られた。
次の日の夜。
暖かかった昨夜とは打って変わって、今夜は雁渡しの北風が吹いており、肌寒い。
その風で髪を揺らしながら、戦闘服姿の六花は封印塔の前に立って居る。
周囲の足元には警備の忍十人ほどが、六花の幻術で眠らされ転がっている。
「金角様、銀角様。来てくださったんですね。ありがとうございます。」
目の前にスッと音もなく現れた二人を見て、六花はニッコリと微笑んだ。
「早速、封印を解いて貰おうじゃねぇか。」
「はい。お任せください。」
六花は封印塔の扉に歩み寄ると、右手の人差し指と中指を揃えてそっと扉にかざし、その右手の甲を左手で覆って目を閉じた。
・・・いい?やるわよ?ゼツ・・・
・・・うん。オーケー・・・
「 解!!! 」
六花が小さな声で叫ぶと、観音開きの扉が一瞬、白く光った。
ギイイイィィィ・・・
そして、扉がひとりでに開いた。
「あっ、開いたぞ!金角よ!」
「おおよ!銀角!・・・だが、まだ本当の封印は更に奥だぞ。」
驚く二人に振り返り、六花はまた優しく微笑む。
「さぁ中へ。早く宝具を取り出しましょう。」
二人は頷き、六花の後ろに続いて封印塔の中へ入って行った。
六花は起爆札を灯り代わりにして進むと、六花の背と同じくらいの高さがある、正方形の分厚い扉の前に着いた。そして起爆札を放り投げ、両手で素早く印を結ぶ。
「 封印よ全て無に還れ。解っ!!! 」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
扉に封印術の術式が浮かび上がるとそのまま消え去り、扉は轟音を立てて左右に開いた。その次にも、更にその次、その次にも扉があり、その全ての扉が轟音を立てて開いてゆく。
ギシィン。
全ての扉が開き終わると、目の前に目的の宝具である幌金縄、紅葫蘆そして琥珀の浄瓶の三つが現れた。
「す、すげぇ…本当に解けた…」
「お、お前…本当に一人でこの封印を解くなんて…」
二人は唖然としている。しかし六花は気にすること無く二人に歩み寄り笑顔で言う。
「さあ、どうぞ。お手に取ってください。あなた方お二人にしか触れられない代物ですわ。」
二人は駆け寄ると早速その三つの宝具を手に取った。
「やったぞ銀角!これで俺たちは最強だぜ!!」
「ああ金角!この五つの宝具が有れば雷影なんてたやすく倒せるぜ!」
二人は五つ全て揃った宝具を撫でながら喜び合っている。
六花は目を見開き、口角をきゅっと上げてその様子を見つめた。そしておもむろに二人に近づいてゆく。
「お二人共・・・」
その声に二人が反射的に六花の顔を見た。
すると二人の動きがピタリと止まる。
六花の目には、写輪眼が真っ赤に浮かんでいる。
そしてゼツは身体を棒状に変化させ、二人の後頭部に同時にくっ付いた。
「一週間後の同盟締結式の後、クーデターを起こせ。そこで二代目火影を殺すんだ。その後はこの里を抜けろ。二度と里に戻って来るな。オレの言うことは絶対だ。いいな?」
「「・・・分った・・・」」
フッ・・・
「お願いします。クーデターを起こしてこの里を木ノ葉から守り、そして憎き二代目火影を殺して下さい。どうか、どうか、お願いでございます!」
六花は二人に向かって深々と頭を下げて懇願した。
「…分った。任せておけ…」「…宝具、感謝するぜ…」
そう言うと二人は頭を下げ続ける六花の横をすり抜け、走って出て行った。
「お疲れ~。ねぇねぇ昨日の雷饅頭美味しかったからマダラにもお土産で買って帰ろうよ。」
「ハァ―…自分が食べたいだけでしょ?ていうかもうこの時間じゃ店やってないし!それにマダラ様にはいなり寿司のほうがいいでしょ?って、そうじゃなくて兎に角!!まずは封印を元に戻すよ!ほらっもう!」
「へーい。あ、一週間後また来た時には買おうね。雷饅頭。」
「はぁ…」
ゼツに呆れて溜息を吐く六花だったが、実は無事に任務を遂行した安堵の溜息だった。
六花の幻術とゼツの洗脳により、間違いなく金角・銀角は一週間後に行動を起こすだろう。
だが、絶対に大丈夫などと決めつけるのは危険だ。
一旦は安堵したものの、一週間後、二人がマダラの思惑通りに行動するのを見届けるまで安心はできないのだ。
六花とゼツは協力して封印術をかけ終わると、秋風に紛れてその場から姿を消した。
◆
「あ~早く雷饅頭食べたいな。」
「あれから毎日言ってるし。フフフッ!」
六花は左肩に載るゼツと共に栗拾いをしている。足元の笑み栗同様、六花も笑顔である。
雲隠れの里に赴き任務を遂行して帰って来ると、珍しくマダラから褒められた。
いや、初めて褒められたかもしれない。
『 よくやったな。褒めてやる 』
まさか任務で褒められるなどと思ってもおらず、六花は嬉しい驚きで有頂天になっていた。
一週間後も、きっと計画通り、うまくいく。
浮かれる心で、いつのまにか緊張と不安は消えていた。
「きゃあ!」
「びっ栗した?なんちゃって。」
「も~ゼツったら何やってんのぉ?アハハハハ!」
六花が開いた毬(イガ)の中にゼツが入っていて、六花を驚かせた。二人は笑い合う。
その様子を、マダラは遠くから見ていた。
マダラは無意識にいつも寄せている眉間のしわを緩め、口角も上げている。どこか懐かしい気持と、愛おしく温かい気持になる。
そして、遠い昔に亡くなった、弟たちのことを想い出した。
戦の日々の中でも、束の間の休息には皆でこうして笑い合って遊んでいた…
ふと、森の木々が風に吹かれ揺れる木洩れ日が、幼い弟たちが走り回る姿に重なって見えた気がした。
『 兄さん、騙されるな… 』
その言葉にマダラはハッと目を見開いた。
「・・・イズナ・・・」
目線の先に在る六花の姿が、一瞬、誰だか分らなくなる。
マダラは恐る恐る、両方の掌を開いて見つめた。すると、あの日の生温かい鮮血が掌のうえに蘇る。
マダラは小さく頭を振り、急いで六花の方向に背を向けた。
暗く重く、しかし決して消えることのない胸の奥の赤黒いマグマが、沸々と熱を上げるのを感じていた。
それは、怒りと憎しみだった。
その対象は勿論…
しかし、その対象に対してイズナを殺された怒りと憎しみ以外の、もっと他の感情もあるのだが、それがなんだかマダラ自身にも良く解らない。
確かにその感情も怒りの類なのだが、イズナを殺された事とはまた違う、別の何かに対する感情である。
しかし、そんな事はどうでも良い。
扉間が、千手一族が、戦が、人間が、この世界が、そして…友であった柱間が憎いのだ。
それでいい。それで…
「マダラ様―!栗が沢山採れましたぁ!」
その声に振り返ると、六花が満面の笑みでこちらに手を振っている。
マダラは、ほっと心の中で小さく息を吐いた。
「…ガキみたいにはしゃぐな。帰るぞ。」
マダラはそう言って六花に背を向け、顔がほころぶのを隠して歩き出した。
すると直ぐに六花がマダラに追いつき、斜め後ろから自分の顔を窺っているのが分かったが、マダラはそっと反対側に顔を逸らした。
そして、思う。
・・・コイツは…六花を…失いたくはない・・・
夕暮れ迫る静かな森の中、落ち葉を踏みしめる二人の足音だけが鳴っていた。