※この作品はR-18です。

罪の向こう、愛の絆   作:千野 伊織

48 / 85
※挿絵(自筆)を入れてみました(^0^)b

マダラが柱間との戦いに敗れ死したとされてから二十数年以上が経っていた。
今も身を隠しつつ虎視眈々と生き続けているマダラ。
ある日、そのマダラの前に一人の若い女が現れた。
一方、木ノ葉の里では柱間亡き後、扉間が二代目火影に就任していた。
しかしその扉間にも最後の時がおとずれる。
そして、扉間の死により、主人公・芙蓉の秘密が明らかになってゆく。
マダラと芙蓉、二人を離さないように絡みつく因縁とは?

◆主な登場人物◆橘芙蓉(o.c)、うちはマダラ、ゼツ(黒)、千手扉間、うちはカガミ、猿飛ヒルゼン、志村ダンゾウ、水戸門ホムラ、うたたねコハル、秋道トリフ、金角・銀角兄弟、千手樹(o.c)、大筒木カグヤ、大筒木ハゴロモ。
※黒ゼツの性格は白ゼツのようなお調子者な感じにしてあります。

=============
今回(4)の登場人物は、うちはマダラ、ゼツ、千手扉間、猿飛ヒルゼン、千手樹(o.c)。

六花が助けた男は扉間だった。
失った全てを取り戻すため、そして新たな力を得る為に六花は扉間の元へと向かいます。
そこで最初に対峙したのは、かつての親友・千手樹でした。
刃を交える六花と樹。その二人を止めたのは、扉間、本人だった・・・
そして扉間と六花がついに対峙した時・・・

※扉間と六花の性描写があります。
※挿絵(自筆)を入れてみました!ぜひクリックしてみて下さい(^0^)b




六花の森(4)扉間から全てを取り戻す為に

◆

 

 

【挿絵表示】

 

 

大戦中というのに、この里の人々はどこか呑気で、夕方の町は平和そのものといった感じで賑わっている。

野分の嵐が過ぎ、吹き返しの風が吹いている。

そして今、六花はその町を髪を靡かせながら歩いている。

客に元気よく声を掛ける店員、手を繋いで買物をする親子、酒を飲む男達、吟じている旅芸人…初めて見るはずの光景だが、どこか懐かしい気持になる。

六花はふと、自分はマダラに救出され下僕にされる前はいったいどんな町で、どんな暮らしをしていたのだろうかと想いを巡らせてみる。

そして気づけば長い坂道の前に立って居た。

・・・何をぼーっとしているんだ。失敗すれば二度とマダラ様の所に戻れないぞ・・・

六花は自分を戒めると拳をギュッと握り締め、陽が沈んで暗くなった坂の上をギロリと睨みつけた。

 

夜は更け辺りは完全に暗闇に包まれた。目の前にある家にのみ、灯りが煌々とついている。

風は止み、静かになっている。

六花は林の影からその家を見張っている。夕方から合計五人ほどが家に入ったが、そのうち四人は直ぐに出て行き、入るのを見ていない医療忍者と思しき男一人が出て行った。おそらく、さっき入って出てこない女一人と任務を交代したのだろう。

 

・・・中には医療忍者の女一人と…風性質の忍が一人か。この時間になっても護衛が増えないとは、やはりもうお役目御免の人間の護衛はそんなものか。いや、だが真夜中になって増えるかもしれない。ここは夜明け前、夜間の護衛達が一瞬気を抜く瞬間を狙うのが正解か・・・

 

六花は未明に襲撃すると決め、それまで、このまま様子を見ることにした。

 

 

「!!」

医療忍者二人が交代してから、まだ一時間も経っていない頃だった。

六花は気配を消しつつも、身体を少し木の幹から乗り出してその姿を見た。

誰かは判らないが、少なくとも今日、その家を出入りした忍の中では一番強い忍である。

「…こいつが二人目の護衛か⁉こんな強い忍が護衛につくなんて…」

六花は想定外の事に心の中で少しばかり焦る。

元・火影とはいえ、今や死を待つばかりの人間にこれほど強い忍の護衛がつくとは考え難かった。

しかし、“絶対無い”などと決めつけることは出来ない。

勿論、六花も想定はしていた。

・・・このままだと扉間が死んだ後に死体を狙うしか無くなる。だがそれではマダラ様と同じ能力が得られる保証は無い。どうすれば・・・

六花は必死に頭の中で策を講じる。そう、必死に。

 

◆

 

「…猿か。貴様、こんな所に来ている場合では無いだろう…嵐の被害調査は終わったのか?…」

扉間は横になったまま、ヒルゼンが部屋に入って来るや否や、直ぐにそう言った。

「…申し訳ございません。先に雲隠れと結んだ同盟の件でお話があります。宜しいでしょうか。」

「そうだったか…ああ、構わん。聞かせろ…」

ヒルゼンはクーデターによって雲隠れと結んだ条約を白紙にすべきか検討していたが、扉間が生存して帰還し同盟は続行しろと言った事により、同盟関係を続行するための会談に向けた手続きに追われていた。

今日はその相談の為に来た。

 

だけ、では無かった。

ヒルゼンは扉間が里に帰還してから毎日、扉間の所へ通っているのだ。

火影の任務を最優先することが今の自分の責務。

だが、やはり敬愛する師匠であり、先代火影の扉間のことが心から心配だった。

出来れば回復し、後進の育成に携わって欲しかった。そして改めて扉間と酒盛りがしたかった。

しかし、怪我の後遺症と感染症に冒されている扉間が助かる確率は極めて低い。

そして兄弟弟子であるカガミは、もう居ない。

ヒルゼンは毎日布団に入り眠りにつく前、声を殺して一人で泣いていたのだった。

 

「解りました。ご指摘、ありがとうございました。その様にしてみます。それでは、失礼いたします…」

「‥ああ。ご苦労だったな…頼んだぞ」

ヒルゼンは頭を下げた後、一度扉間に背を向けたが直ぐに振り返って言う。

「あの…やはり護衛に上忍をもう一人増やしましょう。万全を期した方が良いと…」

「突然火影が交代し混乱している時に、死にそうなジジイの護衛の為、数少ない上忍をつけるだと?馬鹿者…必要ない。」

「・・・解りました。失礼致します。」

ヒルゼンは再び扉間に背を向けて部屋を出て行った。俯くその顔は、唇を噛み、やり切れない表情だった。

 

◆

 

六花の心配は杞憂に終わった。

先ほど目の前の家に入っていった強い忍は、三十分も経たないうちに急ぎ足で帰って行ったのだ。

扉間の護衛以上に重要な任務があるのだろう。

・・・だよな。扉間はチャクラからしてまだ意識があるようだし、余程の馬鹿でなければ死を間近にした己の護衛など、寧ろ断るはずだ。

よし、予定通り夜明け前に行く!・・・

芙蓉は大きく目を見開き、うっすらと歯を覗かせ、口角をぐっと上げて微笑んだ。

 

 

朝またぎ。

秋冷。

その二つが六花に色々な事を思い出させる。

朝またぎは、今のこの六花の状況を作り出したあの日の事を思い出させる。

・・・あの日、あの時、あんな男を助けたりしなければ・・・

しかし、扉間への怒りと憎しみと共に、何故かその底に熱いものを感じる。

その熱いものとは、マダラを想う時に感じるそれと似ており、六花は酷く戸惑い、自分を嫌悪し、苦虫を噛み潰したような顔をした。その原因について自然と思考を働かせてしまう。

…秋冷。群青色の空。それから…

「!」

六花は思考を停止して目を見開き、前を見据えた。

その家から、女が一人出て来たのだ。

どうやら見張り役の風性質の忍で間違いなさそうである。

女は玄関を出ると、石畳の短い通路を歩いて門の所まで歩いて来た。

六花は息を殺し気配を消したまま、写輪眼の目を細めてそれを見つめた。

すると女は大きなあくびをしながら両手を天に伸ばし、首をぐるりと回した。そして大きなため息をつくと険しい顔になり、当たりを見回している。

・・・もう見張りの交代の時間なのか?ならば交代し、この女が去った後の隙を突くか・・・

六花が猛烈な速さで頭を回転させて作戦を立て直していると、その女はこちらに背を向け再び玄関の方へ歩き出した。また家の中に戻るようだ。

 

ガシィィィィンッ・・・!!!

 

六花が宙から女の背中に刀を振り下ろすと、女は腰に携えていた幅の広い大刀でそれを即座に防いだ。二人の刀が交わり、静寂の朝またぎの空間に甲高い音が響か渡った。

ストッ。六花は地に足を突き、刀を真っすぐ女に向ける。

ズサッ。女は足を踏ん張り、刀を両手で構える。しかし。

「・・・ふ、芙蓉⁉」

女は急に怯えたような悲しむような、しかしどこか嬉しそうな顔で六花の顔を見て刀を降ろした。

六花はその隙に瞬足で女に向かって行くと無表情で女に向かって刀を振り下ろす。

ガンンッ!!

女は一瞬遅れ大刀で何とか六花の攻撃を防いだものの、六花の勢いに押され、数メートル後ろに飛ばされ地面に倒れた。

六花は表情一つ変えずにズンズンと女に向かって歩いて行く。

「芙蓉!!!芙蓉なんでしょ!ねぇ!!私だって!樹だよ!覚えて無いの⁉」

六花は右目をピクリと引きつらせ、立ち止まった

「…芙蓉。誰だそれは?…答えろ」

「誰って!…もしかして、記憶が無いの⁉」

「芙蓉とは誰だと聞いているんだ。さっさと答えろ」

「橘…いや、今は千手芙蓉…私の親友。私の愛する人…そして、扉間様の妻…」

「・・・フフッ・・・あはははは!なるほどな。解ったぞ」

「?」

六花は十五歳の時にマダラに命を救われ下僕にされた。

現在還暦手前の扉間の妻であるはずが無い。それに目の前の女はどう見ても三十路半ばである。そんな女と親友などという事は不自然すぎる。

故に六花は樹の言葉に動揺することなく笑い飛ばした。

しかし目の前の女の反応から、自分は扉間の妻と瓜二つなのは事実のようである。

六花は少しだけ面白くなってきた。

自分の事を親友だと思っている女、そして妻だと思っている扉間。

・・・お前たちの愛する芙蓉とやらに殺されるがいい・・・

六花は残酷な結末を想像すると、楽しみで堪らなくなり身震いがしてきた。そして、とても優しい微笑を浮かべて見せた。

「芙蓉…やっと私の事思い出したんだね⁉」

六花の優しい微笑みを見た樹は涙をにじませ、嬉しそうにそう言った。

「うん、樹…私、貴方の事、思い出したよ…」

「・・・芙蓉」

六花は樹のことを愛おしそうに見つめながら、再び樹の方へ歩き出した。

 

ビュン!

 

「何するの!樹!」

樹は懐からクナイを取り出して六花に投げつけ、六花はそれを避けた。

「・・・お前。芙蓉じゃないな・・・誰だ⁉扉間様を狙いに来たのか!」

「何言ってるの?ほら、よく見て樹?私よ。芙蓉だよ?」

「・・・芙蓉はな、私のことをいつも“樹ちゃん”って呼ぶんだよ!!!」

樹はそう叫ぶと再び大刀を両手で構えて立ち上がり、六花に向かって飛びかかった。

しかし目の前の六花の姿は一瞬にして消えた。分身だった。

「火遁・豪火球!」

樹の後ろから六花が火遁を繰り出して来た。樹は地を蹴りそれを避けると、宙に浮かんで大刀を大きく振りかぶった。

「風遁・羽砂亜斗!」

すると六花の放った炎が船の形に変わり、六花に向かって物凄いスピードで跳ね返っていった。

「須佐能乎!」

六花が両手をクロスさせると、六花を包み込むように半透明の巨人が現れ、大きく口を開いくとその炎をパクリと食べてしまった。

「樹とやら・・・お前、なかなかやるな。」

「なめんな!芙蓉の姿を装うなんて絶対に許さない!その化けの皮、剥いでやる!」

樹は大刀を再び強く握り締めた。ふっと頭の中に初代火影・柱間の顔が過ぎる。この大刀は柱間から譲り受けたものだった。

この大刀を手にしている以上、誰にも負けるわけにはいかない。

 

◆

 

タンタンタンタン…ガチャ!

「扉間様!!!大変ですっ!!…」

「落ち着け…」

扉間はそう言うと、なんとか寝台から起き上がろうとした。

「駄目です!ご無理をなさらないで下さい!隙を見て私が三代目様に知らせて来ますので!」

医療忍者の女が必死に扉間が起き上がろうとするのを止めるが、扉間はその手を振り払って起き上がり、寝台に腰かけた。

「知らせなくていい。貴様は直ぐにここから逃げろ。」

「何故ですか!!」

扉間は答えることなく、ゆっくりと立ち上がると、窓辺に向かって歩き出した。医療忍者の女がすぐさま脇を支える。

「止めて下さい!何をなさるおつもりなのですか⁉そんな身体では危険です!」

「…なに、ワシはもう長くない。だか今直ぐは死なない…一人で歩ける。」

そう言ってゆっくりと窓辺に立つとカーテンを開け、窓を開けようとした。医療忍者は察したように何も言わずに窓を開けるのを手伝った。

 

『 ⁉ 』

 

ガタンと窓の開く音とそのチャクラに、六花と樹は同時にその窓を見上げた。

 

「…ワシに用があるのだろう?…入れ」

 

「何言ってんですか⁉こいつ、芙蓉の姿に化けて貴方の命を狙いに来たんですよ⁉」

「樹…ワシはその娘に命を助けられたのだ。その心配は無い」

「はぁ⁉」

樹は改めて怪訝な顔で六花の顔から足まで見た。

六花は須佐能乎を解き、無表情で扉間を見上げて言う。

「今日は、アンタに返して貰いたいものがあって来た」

「…ああ。入れ」

「ちょっと扉間様!!!」

「樹、貴様はコサトと共に里本部へ帰れ。だがこの事は誰にも言うな」

「そんな事できるわけ・・・」

そう言いかけると、樹はゾッと身体に冷たいものが走った。扉間はチャクラを強め、険しい顔でジッと樹の顔を睨んでいる。どうやら本気の様である。

「ワシもその娘に礼が言いたいのだ…心配要らない。」

「でも・・・・・・」

すると家から医療忍者のコサトが出て来て、樹の隣りに駆け寄った。

そして樹とコサトは並んで六花の顔を見た。

その視線に、六花は二人の眼を交互に見てニッコリと微笑みながら言う。

「安心してくれ。用が済んだらすぐ帰る。」

「・・・解った。誰にも言わない」

「・・・解りました。誰にも言いません」

二人の眼には写輪眼が浮かんでいる。そしてその写輪眼が消えるとおもむろに歩き出し、六花の隣りを通り過ぎて長い坂道を二人並んで下って行った。

六花は二人が振り返らない事を改めて確認すると、また窓を見上げた。

しかし、そこには扉間の姿は無かった。

何かを考えるように何度か瞬きをしながらその窓を見つめた後、六花は一人、家の中に入っていった。

 

◆

 

六花は部屋の扉の前に立ち、その扉をジッと睨んだ。

扉間のチャクラは先ほどより格段と弱くなっており、下忍レベルと言ったところだった。

しかし木ノ葉の里の元・火影である。油断は出来ない。

六花は意を決して扉の取手に手を掛けた。

 

ガチャ…

 

「まさか、君の方から会いに来てくれるとはな…」

六花はその言葉に扉間がもう一度自分に会いたがっていた事を察した。ゆっくりと寝台に横たわる扉間の元へ歩いてゆく。

六花が扉間の枕元に立つと、扉間はとても優しい眼差しで六花を見上げて言う。

「…ワシの、命を取り戻しに来たのだろう?」

「なぜ解る?」

「フッ…それは樹とあれだけの戦闘をしていたのだから、解るだろ…。それにおそらく君はどこかの里の忍なんだろう?ワシを助けた事を上司に咎められたのではないのか?」

六花は最後の言葉に思わず、無意識にほんの少し目を斜め下に伏せて瞬きをしてしまった。

「…やはりか。ワシは君のお陰でこうして里へ帰り、自宅の寝床の上で死ねる。本当に感謝している。ありがとう。さあ…やれ。」

扉間は尚も優しい顔で六花の顔を見つめている。六花は今度は明らかに大きく顔を逸らすと、目をつぶって大きく深呼吸をした。

 

ストン・・・

「⁉」

 

六花は寝台に横たわる扉間の上に跨った。

扉間は思いもよらないその行動に驚き戸惑ったが、首を絞めて殺すつもりなのだろうと思い、気持ちを落ち着かせ、再び六花の顔を見つめる。

・・・芙蓉の生き写し。いや、やはり、この者は芙蓉だ・・・

扉間は無表情で冷たい眼差しを向けている六花の顔を見て、改めてそう思った。

亜麻色の髪、琥珀色の大きな瞳、長いまつ毛、真っ白な肌、卵型の顔、上品な口元…毎日眺めている生前の芙蓉の写真、そのものだった。

 

六花は冷静を装いつつも、心臓の鼓動は初めて一人で任務を任された時以上に高鳴り、緊張していた。

そして、迷っていた。

ゼツの言う通り、扉間と性交渉して細胞を体内に取り込みマダラと同じ能力を手に入れれば、マダラの下僕としてまた傍に置いて貰える。

ただその想いだけで、今、ここまで来た。

それまでに迷いなど無かった。しかし。

・・・でも扉間などと関係をもった私のことを、本当にマダラ様は受け入れてくれるだろうか。嫌悪されるのではないだろうか・・・

・・・迷うな。やるんだ。やらなければマダラ様の元へ戻れることは二度と無い。しかしやり遂げれば一割以下でも戻れる可能性はあるんだから・・・

 

自分の上に跨り、無言でジッと自分の顔を見つめている六花に、扉間は僅かに苦笑して言う。

「どうした?一度助けた人間を殺すのは、やはり苦痛か?…」

その言葉にハッと六花は瞬きを何度かした後、もう一度扉間を見つめた。

どれくらいの時間見つめ合っただろうか。

それは数秒だったが、六花にはもっともっと長い時間に感じた。

そしてやっと、六花が口を開く。

「お前を殺す前に、お前にはして貰うことがある。黙って従え…」

そう言うと素早く印を結び、六花の出来うる最上級の回復術を扉間に施した。

「・・・⁉・・・」

扉間は六花が何をしたいのか全く分からず、何も言えずにその様子を見ていた。

すると、先ほどまで鉛の様に重く息をするのも辛かった身体が軽くなってゆく。

「今、お前を走れる程度の体力まで回復させた。だが勘違いするな。お前を助けるつもりは無い。変な真似をしたらお前を殺して、さっきの女ども、そしてこの里の人間を殺すぞ…」

六花は両手を扉間の顔につき、顔を近づけ、小さな声でそう言った。

「何をするつもりだ?」

「黙れ!お前に質問する権利は無い」

そう言うと同時に、扉間の目の前に六花の亜麻色の髪の毛が写っていた。

一瞬、何が起こっているのか分らなかった。

六花は扉間の口を塞ぐように口づけをし、強く唇を吸った。

扉間は驚き、どうしていいのか分らない。

しかし、拙いながらも必死に自分の唇をむさぼり続ける六花に、扉間は自然と両手を六花の背中に手を回した。しかしその瞬間、六花が口を離して身体を起こした。

扉間が次の思考をする前に、六花は扉間の浴衣の襟をグイっと両手で開き、露になった扉間の胸に顔を埋め、右の乳首を舐め始めた。

「⁉」

扉間は驚きと快感に思わず首を上げて、六花の顔を覗き込む。六花は気にせず舐め続け、扉間は気づけば六花の頭を抱いていた。すると六花の頭はその舌と共に下腹部の方へ下がってゆく。そしてその舌は扉間の脇腹に移り、上下になぞっている。

「・・・っ」

・・・こんな事をして、どういうつもりなのだ・・・

扉間は小さく悶えながらそう心の中で呟いた。

 

六花は舐めるのを止め、扉間の浴衣の角帯を解いて脱がせた。そして自分も服を脱ぎ裸になる。

すると扉間の足を開いてその間に座り、左手を寝台につき、右手で扉間の男根をしごき始めた。

扉間は本能的に高鳴る胸の鼓動に小さく唾を呑む。

六花の顔、美しい肢体、行動から目が離せない。

そして、もう何十年も忘れていた快感に身体全体が熱くなってゆく。

男根が固くなると六花は根元を支え、それを咥えた。

「⁉」

扉間は更に驚き上半身を僅かに起こしてその様子に目を凝らす。もう、これが現実なのか信じられなくなってきた。死ぬ前の幻覚なのではなかろうかと思う。

六花は何も言わず、ただただ、扉間を刺激し続ける。

そう、早くこの悍ましい行為を終わらせ、欲しいものを手に入れる為だけに、ただひたすらに。

しかし、心までは騙すことは出来なかった。

自然と涙が込み上げてくる。

そして否応なしに、閉じた瞼の裏にマダラの顔が浮かぶのである。

それを打ち消そうと更に激しく扉間の男根をしゃぶり、舐め回す。そして口を外して唾液にまみれた男根をまた片手でしごき始めた。

「・・・んっ」

それまで一度も扉間の顔を見なかった六花は、その声に思わず扉間の顔を見た。

目が合う。

扉間は目を細め、快感に悶えながらも、口元は少し微笑している。

六花はそれを見て、今すぐ扉間を殺してやりたい衝動に駆られた。

しかし、怒りの写輪眼と殺意を心の奥に何とか収めると、身体を起こし、扉間の男根を膣の入り口に当て挿入しようとした。

しかし、心と子宮は繋がっているらしい。六花の膣は乾いており、入らない。

すると扉間が突然起き上がった。

「⁉」

六花は驚き一瞬固まった。その身体を扉間は優しく抱き締めた。

そして、六花の首筋に優しく口づけをする。

「あっ」

六花は思わず声を洩らし、唇を噛んで固く口を閉じた。六花の小さな喘ぎ声を聞くと、扉間は舌で首筋を優しく何度もなぞってみた。

六花は主導権を扉間に握られ、口惜しさで直ぐにその身体を押し退けたいのだが、快感で痺れる身体には力が入らない。

「ああんっ・・・んっ」

遂に六花は大きな声を洩らしてしまった。

扉間は更に首筋を吸い、舌で舐める。

「ハァハァハァハァ・・・い、いやっ!」

その声に扉間は舐めるのを止め、俯く六花の顎をそっと支えて自分の方へ向かせると、その顔を優しい目でまじまじと眺めた。

「やっ、やめろ!見るな!」

六花は扉間の手を払って顔を背けた。すると扉間はクスッと笑ったかと思うと、六花の左の乳首に吸い付いた。

「やっ・・・やめろぉ!!!」

扉間はその言葉を無視して、右手を六花の陰部に伸ばし擦り始めた。

「お前っ・・・やめろ!・・・んんっ・・・・」

「だがこのままでは、君が欲しいものは入らないぞ?」

六花はその言葉に何も言えなくなり、ただ憎らしい快感に身を委ねるしかなかった。

そして、否応無しに六花の膣からは蜜がみるみる溢れ出して潤っていった。扉間は指でそれを確認すると、六花の両肩を持ってゆっくりと寝台に仰向けに横たえた。六花は肩で息をしており、虚ろな顔で扉間の顔を見上げ、思う。

・・・もう、もう本当に、後戻りはできない。でも、もう直ぐ終わる・・・

 

「君は・・・本当に美しい。畏怖するほどに」

扉間は目頭をうっすらと光らせた眼で、六花を見て言った。

その言葉は六花の頭の中で何度もこだまし、過去の何かを浮かび上がらせようとした。しかしその瞬間、扉間は六花の両足を持つと左右に開いた。そして自分の男根を六花の膣の入り口に押し当てた。

 

「!!!・・・・ああんっ」

 

六花は固く目をつぶると、その両目から涙が溢れて頬を伝う。

扉間は六花と一つになった身体を動かさず、そっと六花の涙を指で拭った。

「何故泣く?これが君の望みだろう?それとも、痛いのか?」

扉間は六花の耳元でそっと囁いた。そしておもむろに六花に口づけをする。

 

・・・ああ。マダラ様。愛してる・・・

 

口づけが終わると六花は目を開け、愛おしそうな顔で扉間の顔を見つめた。

今の六花にはもう、そこにマダラを見出すしか、壊れてしまいそうな心を守る方法は無かった。

そんな六花の気持ちを知る由も無い扉間は、六花の顔を見て微笑むと、六花の腰を掴み自分の腰を動かし始めた。

「・・・あっあっあっあっ・・・ああんっああ・・」

六花の喘ぎ声が扉間の脳天まで響き、眩暈がするような快感に浸る。

それは欲しくて堪らなかったモノをやっと手に入れた時の様な、理性など持たない幼い子供に戻ったような、それは本能だけで感じる快感だった。

そしてその本能は、目の前の女が芙蓉である事を教えてくれた。

・・・この娘は、間違いなく芙蓉だ。芙蓉は生きているのだ・・・

 

【挿絵表示】

 

六花は制御できない快感と、ひどく冷静な頭でシーツを掴んでいた。

『 よくやったな。褒めてやる 』

・・・これ以上何を失えば貴方に許して貰える?どれほどの痛みを耐え抜けば貴方に会える?・・・

六花は目の前の“マダラ”に手を伸ばした。

その掌を、扉間は指を絡ませぎゅっと握り締めた。}

 

「うっ・・・ああっ‼︎」

 

扉間は絶頂を迎え、六花の中には熱いものが注がれた。

そして扉間はバタンと六花の右隣りにうつ伏せに倒れ、大きく肩で息をしている。

「君は・・・君の名前は・・・なんというんだ?教えて、くれ」

「・・・名前など、もう、無い。お前のせいで、名も、愛する人も、居場所も、生きる意味も、全て失ったんだから・・・」

扉間はその言葉に顔を少し上げて六花の顔を見た。

六花は天井を睨みながら、唇を震わせて泣いていた。

扉間は力の入らない右手をなんとか動かし、六花を自分の胸に抱き寄せた。

不覚にも、六花は扉間の胸の中で一瞬ほっとしてしまった。その感覚に焦って扉間を突き飛ばし、飛び起きた。そして急いで服を着る。

扉間も何とか上半身を起こし、浴衣を羽織り角帯を締めた。

 

そして服を着終わった六花が扉間の方へ振り返ると、扉間が寝台の上で正座していた。

「・・・さあ、この命、君に返そう。それで君が失ったものが元に戻るかは判らないが・・・悪かったな・・・」

扉間は目を伏せ、悲しそうに微笑みながらそう言った。

六花は、腰の刀を鞘から抜いた。

するとカーテンの開いた窓から差し込む朝陽を受け、刀がギラっと光った。

扉間はそれを見て、いつかの場面を想い出す。

 

一生消えない罪。

これまで受けてきた罰。

そして今、こうして目の前に在る愛の絆。

芙蓉は生きている。

今度は自分が冥界、芙蓉が穢土…

再び二人は引き離されるのだ。

死しても罪は消えないようである。

 

六花は、目の前で正座をして自分を見据えている扉間に向かって刀を向けた。

一歩、二歩、前に出た。

そして三歩・・・

 

「・・・どうした。迷うことは無い。君がワシを殺すことは罪ではない。君に殺されることで己の罪が贖えるとも思っていないが、君に殺されるのは本望なのだ。頼む、やってくれ。」

六花は三歩前に出た所で足が止まり、刀を持つ手はガタガタと震えていた。目には再び涙が浮かんでいる。

 

・・・なぜだ!なぜ迷う。殺せ。殺すんだ。こいつはマダラ様の敵だ。私から全てを奪った男だ・・・

 

【挿絵表示】

 

 

いつまで経っても、立ち止まり手を震わせ泣いている六花を見兼ねた扉間は、寝台から降りるとよろよろと六花の所へ歩み寄った。しかし尚も六花は前に向かって刀を構え、前を見据えて涙を流している。

扉間は六花の震える両手を握り、刀を自分の方へ向けさせた。

 

「永遠に愛している。芙蓉・・・」

 

扉間はそう言うと刀を自分の首に突き刺そうとした。

 

カチャンッ!!

 

六花は焦って扉間の手を振り払い、刀を床に落とした。

ハァハァハァハァ・・・

六花は肩で息をしながら、ギッと扉間を睨んだ。

「・・・お前はオレが手を下さずとも間もなく死ぬ。せいぜい後悔しながら死ぬが良い。」

六花はそう言うと刀を拾い上げ、部屋を飛び出して行ってしまった。

一人残された扉間は、床に両膝から崩れ落ち、うな垂れた。

朝陽が床に扉間の哀しい影を映していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。