※この作品はR-18です。

罪の向こう、愛の絆   作:千野 伊織

50 / 85
マダラが柱間との戦いに敗れ死したとされてから二十数年以上が経っていた。
今も身を隠しつつ虎視眈々と生き続けているマダラ。
ある日、そのマダラの前に一人の若い女が現れた。
一方、木ノ葉の里では柱間亡き後、扉間が二代目火影に就任していた。
しかしその扉間にも最後の時がおとずれる。
そして、扉間の死により、主人公・芙蓉の秘密が明らかになってゆく。
マダラと芙蓉、二人を離さないように絡みつく因縁とは?

◆主な登場人物◆橘芙蓉(o.c)、うちはマダラ、ゼツ(黒)、千手扉間、うちはカガミ、猿飛ヒルゼン、志村ダンゾウ、水戸門ホムラ、うたたねコハル、秋道トリフ、金角・銀角兄弟、千手樹(o.c)、大筒木カグヤ、大筒木ハゴロモ。
※黒ゼツの性格は白ゼツのようなお調子者な感じにしてあります。

=============
今回の登場人物は、うちはマダラ、千手樹(o.c)、ゼツ、大筒木ハゴロモ。
(千手柱間、うちはイズナ)

「私は芙蓉です!カグヤじゃない!私はもう…」

最終回です。





六花の森(完)その結晶はいつかまた輝く

「・・・樹・・・ちゃん⁉」

 

「フン!“ちゃん”付けした所で、今更私を騙せると思ってんのか⁉」

「え?」

芙蓉が反応すると同時に樹がこちらに大刀を構えて走って来る。そして芙蓉の前で大刀を振り下ろして来た。

 

ガシィィンンッ!!!・・・コトンッ。

 

気付けば芙蓉は腰の刀を抜き、樹のそれを受け止めていた。しかし手に持っていた写真立ては床へ落としてしまった。

芙蓉は自分自身でも今何が起きているのか、自分がどうしてこんな動きが出来るのか分らず、そのまま固まり、怯えた目で樹を見た。

「なんだ。次は演技まで覚えて来たのか?そんな目で私を見るな!!」

「…い、樹ちゃん…私…私のことが分らないの?」

良く見ると、樹の美貌は昔と変わらないのだが自分より十歳以上は年上に見える。

「ああ分かんねぇーな。お前はいったい何者だ!目的は何だ!!あの日、扉間に何をした!!答えろ!!」

 

芙蓉(六花)が樹にかけた幻術は、芙蓉が別人格の魂を覚醒したと同時に消えていた。

樹だけではなく、芙蓉がこれまで幻術をかけてきた全ての人間の幻術が消えている。

樹が幻術から覚めた事により、芙蓉が六花の姿で扉間を襲撃した日の事が明らかになった。

そして、六花の襲撃は扉間の死因とは関係無かったものの、三代目火影・ヒルゼンの命令で上忍数人が六花を捜索していたのである。

しかし樹はこの日、捜査の為では無く芙蓉の遺品を引取るために扉間邸にやって来たところ、六花のチャクラを感知し、今に至っている。

 

・・・あの日?…もしかして私は、六花で居る時に扉間さまに会ってるの⁉・・・

 

芙蓉が何も答えず黙っている間にも、樹の殺意のこもった大刀がグイグイと芙蓉の刀を押してくる。このままでは切りつけられてしまう。

「い、樹ちゃん…とりあえず、落ち着いて話をしない?」

「うるさい!お前に策を練る暇など与えるか!早く質問に答えろ!!」

樹は、芙蓉の言動を受けて更に怒りが煮えたぎる。

「答えないなら拷問して吐かせるだけだ!!」

樹は大刀をいったん離すと、後ろに飛び上がり、再び大刀を振りかざし芙蓉へ身体ごと向かってきた。芙蓉は瞬時に飛び退き、寝台の上に飛び載った。

ズガァァァン!!!

樹の大刀が床に突き刺さり、絨毯が裂け下の板がめくれ上がった。

「やめて樹ちゃん!!家が壊れちゃうよ!!」

「はぁ?お前とこの家に何の関係が有るんだよ…下手な芝居続けやがって…それになぁ、こんな家、私にとっちゃどうだって良いんだ。寧ろもっと早くぶち壊してやりたかった!…芙蓉と扉間の愛の巣なんて…」

そう言う樹の最後の声は小さく、芙蓉にはよく聞き取れなかった。

樹は床に刺さった大刀を乱暴に抜くと更に床の板が更にバリバリとめくり上がった。

芙蓉はその様子を見たあと、一瞬、目を閉じた。

 

・・・樹ちゃん…ごめんね・・・

 

「お前!!その眼、うちは一族か⁉…忌まわしきうちは一族め…なんとしてでも目的を吐かせてやる!!

風遁・風縄縛りの術!!」

 

ゴゴォォォォォォォバリバリバリバリ…ドカーン!!バリーンッ!!

 

部屋の中央に竜巻が発生し、屋根を突き破った。同時に窓ガラスが割れて吹き飛ぶ。部屋中のあらゆる物が舞う。その竜巻は渦を巻きながら、蛇が蛙を喰らうように、芙蓉の頭の上から襲いかかって来た。

「キャァァァーッ!!」

芙蓉は悲鳴と共にその竜巻に飲み込まれ、風の渦で姿が見えなくなった。

そして芙蓉を捕らえた竜巻は次第に消え、白く太い縄にグルグル巻きにされている芙蓉の姿が現れた。

「さぁ…これから楽しい拷問の時間だぞ…ハハハッ…」

締め上げられて苦しそうな顔をしている芙蓉へとニヤニヤしながら歩み寄っていく。

そして寝台に上がって芙蓉の前でしゃがみ、左手で六花の顎を掴み、右手を芙蓉の下半身に手を伸ばそうとした時だった。

 

ガシィィィィン!!

「⁉」

 

芙蓉は樹の後ろから、樹の背中に収まる大刀に切りつけた。

大刀を支える革紐は切れ、大刀が床に落ちた。樹は急いで後ろに飛び退く。

そして締め上げられて居たはずの芙蓉を見たがその姿は無く、縄だけが寝台の上に落ちていた。分身だったようだ。

樹は直ぐにまた目の前の芙蓉を見据えた。

樹の大刀は芙蓉の足元に在る。

・・・どうする?風遁だけで戦うか…それとも・・・

すると芙蓉は足元に転がる樹の大刀を左手で拾い上げると、樹の方へ放り投げた。

「はい、これ」

「⁉・・・」

敵が自分に向かって武器を返してきた事にも動揺したが、同時に芙蓉が片手で軽々とその大刀を持ち上げて自分に放り投げて来たことにも驚いた。

この大刀は柱間が木遁と秘術で作ったチャクラの詰まった大刀である。

その重さ、比重たるや見た目以上で扱うには腕力だけでは無く、繊細なチャクラのコントロールも必要である。樹が柱間からこの大刀を受継ぎ、使いこなせるようになるまで二年近くもかかったほどだ。

・・・それなのに、この女は・・・

樹に緊張が走り、ごくりと唾を呑み込んで芙蓉を睨みつけた。

 

「真剣勝負しよう。忍術は無し。貴方が勝ったら、私の全てを教えてあげるわ。」

そう言うと芙蓉も右手に持っていた刀を両手で握り締め、樹に向かって構えた。

 

先ほど樹が屋根を吹き飛ばして出来た穴には、四角い青い空が出来ている。

その青はどこまでも永遠に続いていそうなほど、青かった。

 

「…いいだろう。受けて立つ!!」

樹も大刀を両手で握り締め、芙蓉に向かって構えた。

 

四角い空から風が吹き込み、部屋の塵を舞い上げる。

 

ガシィン!! カン!カン! ガンッッ!!

 

再び二人は刀を交えて、互いの顔を見た。

 

【挿絵表示】

 

死する直前の姿と全く変わらない、若く、美しい芙蓉…亜麻色の髪は風に靡き、写輪眼の消えた琥珀色の大きな瞳は、真っ直ぐ樹の瞳を見つめている。

生命力の強い千手一族とはいえ三十年近くの時が経ち、年齢のサインが現れている顔に、昔腰まであった長い金髪は、今では肩にかからないほど短くなっておりサラサラと樹の顔にまとわり付く。その髪の間から、殺意を放つ強い視線で芙蓉の瞳の奥を見つめている。

 

バッ!!!

 

二人は同時に刀を離し、後ろに飛び退いた。

そして体勢を整え刀を握り締めると、再び相手に向かって行く。

 

ザシュッッ!!!・・・

 

ポタッ。ポタ、ポタ・・・ バタンッ。

 

血が床に数滴落ちたあと、うつ伏せに倒れた。

 

ハァハァハァハァ・・・

 

樹はバタンと床に倒れる音を聞くと、肩で息をしながらゆっくり後ろへ振り返った。

目の前には芙蓉がうつ伏せに倒れ、腹からは血が流れている。動かない。

樹はそれを見た瞬間、何かを考える前に、身体が動いていた。

 

「芙蓉!!!」

「・・・樹・・・ちゃん・・・ありがとう」

 

気付けば芙蓉を起こして抱きかかえていた。

すると、芙蓉は震える手で自分の髪に巻かれている赤い紐を触って見せた。樹の視線がその紐の端に行くと、眼球が落ちそうになるほど大きく目を見開いた。息は止まっていた。

「・・・芙蓉。本当に、芙蓉だったんだね・・・」

樹は茫然とし、続かない息で言い終わると、過呼吸になり始めた。瞬きすら出来ない樹の眼からは、大粒の涙がボタボタと芙蓉の顔に落ち始めた。

芙蓉はその樹の顔に手を伸ばし、頬に優しく触れた。

 

「…私の命を…終わらせてくれるのが…樹ちゃんで良かった…樹ちゃん…大好き…」

「芙蓉⁉芙蓉⁉…嘘⁉嫌っ!!!嫌ああああ―――っっ!!!」

 

芙蓉は静かに目を閉じ、樹の腕の中で息を引き取った。

 

◆

 

紅葉し始めた木々、それに絡まるツタ、紫色のアケビ、山葡萄、鈴生りの山柿や棗…

豊かな秋の到来を知らせる森の中で二人は向かい合っている。

 

「こんなに早く僕を呼ぶなんて、どうかしたの?」

「・・・知ってるくせに・・・」

「うん。知ってる。あはは。六花の記憶が無いのに、影分身と幻術を使ってあそこまで戦うなんて、やるじゃん!」

ゼツはまたも馴れ馴れしく、当然の様に芙蓉の左肩にぴょんと飛び載ると笑ってそう言った。

「私をまた、マダラさまの所に置いてほしいの。芙蓉ではなく、六花として…」

「別にいいけど…僕ならマダラに君を許させる事は出来るだろうし…でもたった一日でどう心変わりしたってのさ?樹に何か言われた?」

「マダラさまは、もうこの世に生きてはいてはいけない存在よ…」

「それは君が決めることじゃないでしょ。」

「ううん…私と同じ、この世に留まって居てはいけない存在なの。」

「で?マダラの事を殺して自分も死ぬとか?そんな事させないよ。」

「同じ存在のマダラさまと一緒に居たいの…それに私は自ら命を絶つ気は無い…私はこの命が尽きるまで、マダラさまと一緒にこの世界の為に生きるわ。」

「なーんか矛盾してない?君もマダラも、生きてちゃいけない存在なんでしょ?」

「…マダラさまのことを縛ることが出来るのは、同じ存在の私しかない…」

「なるほど。でもそんな穏やかじゃない事言う奴をマダラの所に連れて行くと思う?」

「うん。思ってるわ。連れて行って…くれるでしょ?…ゼツ…貴方なら。ね?」

芙蓉はそう言うと、ゼツを両手の上に載せてそっと優しく包み込み、心から愛する者を見る眼で見つめ、微笑んだ。

 

・・・芙蓉は母さんの器だった人間。母さんの言葉では芙蓉は生かしておけと言っていた。それに・・・

 

「ちぇ。しょうがないなぁ。まぁどうせ君はまたマダラに惚れて恋に盲目になるのさ。」

「ふふ…そうかもね…」

 

僅かに黄色い空の方向へ二人は走り始めた。

深い森は、その姿を直ぐに見えなくした。

 

◆

 

―――芙蓉とゼツが落ち合う数時間前―――

 

・・・私は、死んだの?・・・

 

思考が働くことに気が付き、芙蓉はゆっくりと目を開けた。

真っ白な世界に横たわっていた。

しかし、なんとなく見覚えのある景色である。

 

「ようやく会えたな…ヒミコの転生者よ…名は、芙蓉」

 

その声に芙蓉は飛び起き、立ち上がった。

目の前には見た事の無い男の老人が居る。

胡坐をかき、宙に浮いてこちらを見ている。

左手に錫杖(しゃくじょう)を持ち、額には二本の角の様なものが生えている。そして老人の周りには黒い球体がいくつか浮んでいる。この世の人とは思えない姿だった。

 

「・・・どなたですか?・・・それに、ここは一体どこですか?」

芙蓉は両手を胸に当て不安そうに周りを見回した。

「我は安寧秩序をもたらす者…名はハゴロモ…忍宗の祖、六道仙人とも呼ばれている…」

「六道仙人…様⁉…マダラさまの言っていたあの…じゃあここはやはり冥界ですか?」

「ここは御主の精神世界…ワシは遠い昔に死し、チャクラだけでこの世を彷徨っておる」

「・・・・・」

芙蓉は訳が分からず、眉をひそめて俯いた。すると足元には水が張っており、その水面に不安そうな顔をした自分が写っている。

いったいこれから自分はどうなるのだろうか…

「御主は我が妹、ヒミコの転生者…そして御主には、これからして貰わなければならない事がある…」

「私に…ですか?いったい、何を…?」

「生きることだ。いま死ぬでない。生き続けてほしい」

「ヒミコ…?生きろ…?何のことだかさっぱり分かりませんが、私はもうこの世に生きていてはならない存在なのです。他者の力と都合によって生かされているに過ぎません。貴方が安寧秩序を成すお方なら、そんな事くらいお判りでしょう⁉」

「まぁそう興奮するでない…どうかワシの話を聞いてほしい。この世界の為に…御主にはその役目がまだ残っておる」

芙蓉の返事を待たず、ハゴロモが錫杖を水面に当てると、波紋が広がり何かが水面に浮かび上がってきた。

「・・・⁉」

水面には白く長い髪、白い眼、頭に二本の角の様なものを生やした美しい女性が映し出され、芙蓉は驚いた。しかしその女性は恐ろしく冷たい表情をしている。

「これは我が母、大筒木カグヤ…遥か彼方より御主達の住むこの地に来た。そして母はこの地に在る大きな力を手に入れ、戦や飢餓、疫病で混沌としていたこの地を、その力を使い一人で平穏に治めた」

「・・・救世主?」

「最初はそうだったかもしれぬ…人々は母を兎の女神だの、鬼だのと呼び崇め怖れていた」

「・・・・」

「その後母は双子の息子を産んだ。その一人がワシ、もう一人をハムラという。そして数年後、娘であり、我が妹であるヒミコを産んだのだ」

ハゴロモは再び水面に錫杖を当てると、そこには芙蓉自身にどこか雰囲気が似ている白く長い髪の女性が写っていた。しかし額には目の前のハゴロモ同様の角があり、瞳には写輪眼が浮かんでいる。

「これが・・・ヒミコさん?・・・私はこの人の生まれ変わりなのですか?」

「うむ…そうだ」

「だから、そのヒミコさんの代わりに何かしろというのですか?」

「代わりにではない…理由を最後まで聴いてほしい…」

「は、はい…すみません。」

芙蓉は謝りつつも自分の謝罪の言葉が腑に落ちず、少しモヤっとした気持になる。

自分がヒミコの生まれ変わりだからと言って、自分が何かをする義務がるのだろうか。そもそも自分の意思を曲げ、六道仙人に従わなければならないのか?…

芙蓉に僅かな苛立ちと不安が込み上げてきた。しかしそれをぐっと抑え、真剣な目でハゴロモを見据えた。

「母は我々息子、娘を産んでかから、徐々に人が変わっていった」

「変わった?」

「力に固執し始めたのだ。力で民を押さえつけ、逆らう者達には殺戮すら厭わなくなった…完全な支配者と化した」

「そ、そんな…」

「御主には解っておるのではないか?力が独りに集中すればどうなるか…」

「・・・・」

芙蓉は少し俯き、目を逸らした。

「ワシら兄弟は母を止める為に母と闘うことにした。しかし妹のヒミコだけは母の味方だった。どんなやり方であれ母が正しいと言ってきかなかった」

「えっ!」

「・・・。結局ワシとハムラ二人で母と闘い、そして母を月へと封印した。ヒミコは母の封印直後は酷く嘆き悲しんでのだが、数日後、突然自ら現実を受け入れ立直った…」

芙蓉は何も言えず、怪訝な顔でハゴロモの顔を見つめ次の言葉を待った。

 

「母を封印した後ハムラは封印を見守る為に月へと向かうことに、そしてワシはこの地で母の罪を贖う事となった。我々二人は妹が生まれた時から、母からどちらかが妹と結婚せよと言われて育てられてきた。しかし母を封印した事でその命も意味を無くし、ヒミコ自身に意思を問うてみた…」

芙蓉はドキリとした。

なんとなく自分の境遇に重なるものがあったからだ。

しかし、カグヤと自分とでは許嫁の意味が違う…その先を聞くのが怖い。

息を飲み、ハゴロモの次の言葉を待つ。

 

「カグヤは我々兄のどちらとも結婚したくないと言った」

芙蓉はその言葉にほっと胸を撫で下ろす。芙蓉は自然とカグヤに感情移入してしまっていた。

「しかしハムラはヒミコに結婚を申込み共に月へ行って欲しいと言った。ヒミコはそれを頑なに断り続けた。だがハムラは決して諦めなかった…そして遂に、ヒミコを無理やり己のものにしたのだ…」

「⁉」

「…所詮我々兄妹も母の子という事だろう…力でねじ伏せる術しか持っていなかった」

芙蓉はその事実に唖然とし、更に何も言えなくなった。

「喪心したヒミコは自ら命を断とうとしたがワシが阻止した。しかしその時、重大な事が発覚した…ヒミコの魂に母の魂の欠片が封印させていたのだ。それは母が自らの身に何か起きた時、母がヒミコの身体を利用しようとしていた証だった。そしてワシはヒミコから力を奪った。つまりチャクラを永遠に使えなくしたのだ。その為ヒミコの子孫にあたる橘一族はチャクラをもたない。その代わりにヒミコと同じ特殊な能力は受け継いでいるようだが…」

「・・・傾国の術・・・」

「そうだ。ヒミコはハムラからされた非業とワシにチャクラを奪われた事で人が変わってしまった。乱心のままワシの元を去った後、ヒミコは特殊な瞳力を生み出し、その力で多くの男を支配して一国を作り上げたのだ」

「結局、お母様と同じ事道を辿ったのですね・・・」

「その通りだ。やがてその国も突如消滅す…強力な力の独裁では決して民は幸せになどなれはしない…なに、そんな顔をするでない。御主にその罪を償えと言いたいわけでは無い」

「…なぜ、ヒミコさんを殺さなかったのですか?ヒミコさんを殺せばカグヤさんの魂も消えたのでは?」

芙蓉は自分自身がなんて恐ろしい事を言っているのだろうと驚きつつも、無意識に口から飛び出した疑問をハゴロモに言った。言い終わると両手で口を押え、俯いた。

「それはワシの甘さだったのかもしれぬ…ワシも妹を愛していた。チャクラさえ奪えば母はヒミコを使って復活できないと考えた。しかし時を経て、母の本当の狙いが解ったのだ」

「本当の狙い?…何ですか?」

「ワシにはアシュラとインドラという二人の息子がいた。アシュラの転生者は柱間、インドラの転生者がマダラだ。母はヒミコの転生者の魂に自分の魂の欠片を受継がせ、アシュラかインドラどちらかの転生者に接触させて月の封印を解かせようとしているのだ。御主も知っている通り、マダラはワシの残した碑石の文章を読み解き柱間の力を得た。それは御主と出逢い交わることで母の魂がマダラの意思を動かしたからだ。今のマダラはインドラの転生を終えてたのち、復活して母と同じ事をしようとしている」

「マダラさまの先の夢って・・・」

「無限月読とは云わば、幻術で人間を奴隷と化す術だ…」

それを聞き、芙蓉の眼には涙が浮かべ悔しそうに顔を歪めて唇を噛み、声を震わせて言う。

「・・・なんだが、私が産まれてきてこと自体が罪のように、感じます」

「それは違う。御主には御主の人生があり幸せがあったはずだ…御主が愛する者達との幸せが…」

「・・・そうです!!その通りです!!私はっ、私は芙蓉です!ヒミコじゃない!私はもう、愛する人の元へ行きたいのっ!・・・」

そう言って芙蓉は両手を覆い声をあげ泣き出した。

 

自分はヒミコではないと否定し、自分の人生は自分のものだと主張みても、マダラをあのようにさせてしまったのは自分自身だと思うと、余りに罪深く、息をしているのさえ辛かった。

今すぐ消えてしまいたい気持になる。

 

「落ち着くのだ…御主の今の気持ちは良く解る。改めて言うが、ワシは御主に母とヒミコの罪を贖えと言いたいのでは無い…」

「じゃあ何だって言うの⁉」

「御主はマダラを、そして柱間のことを良く知っているはずだ。彼らもまたアシュラとインドラの魂を受継ぎ、運命的に対立していた。だがそこには憎しみだけでは無く、愛も在った。そして柱間とマダラが手を取り新たな時代を作り出した…それは御主が二人の愛を繋いだからに他ならない。御主が居なければ彼らもこれまでの転生者たち同様共倒れし、憎しみを後世に残しただけだったかもしれぬ」

「…木ノ葉の里…!…でも、でも結局二人は…マダラさまは…私なんて、全く無力でした…」

「そんな事は無い。これまでにワシを呼び寄せられたヒミコの転生者は御主以外、誰一人居ない…母の強い思念を越え、愛を結び、そしてワシを呼び寄せてくれた…御主はそういう存在なのだ。ありがとう…」

「・・・」

 

【挿絵表示】

 

芙蓉はハゴロモから礼を言われ、思わず顔を上げてハゴロモの顔をじっと見つめた。

 

「マダラが復活した際、次のヒミコの転生者が現れマダラに接触すれば世界がどうなるかわからない…頼む。生きてくれぬか」

 

芙蓉は、ようやく生きろと言われている意味が分かった。

 

そして今、自分が死の淵に在る事も。

芙蓉の心には、もう自らの力では取り除くことが出来ないほど重いものが圧し掛かっていた。その重圧に潰されそうな気持になる。

しかし、その心の中に一瞬“青色”に光る美しい光を見た気がした。

それを確かめるように瞬きをして、もう一度ハゴロモを見据える。

 

「約二十年後“九匹のケモノノの名を呼び戯れる碧眼の少年”が産まれる。その子がこの世界を救うだろう…その時まで生きてほしい」

「・・・フッ。なにそれ」

「?」

「そんな事を言われたら、普通、断る事なんて出来ないじゃないですか…」

芙蓉は頬に涙を伝わせながらそう言い、ゴロモに向かって微笑んで見せた。

「ありがとう…そして心から謝罪する。御主が愛する者の元へ行かせない事に…」

「そうですよ!!もう嫌っ!!せっかく生き返ったと思ったら愛する人は先に逝き、今度は愛する人にもあと何十年って会えないなんて…そのうえ世界を救う為に生きろなんて…一方的だし勝手過ぎます!流石に私だって怒りますっ!」

芙蓉は泣き笑いしながら、両手でぶんぶん宙を斬り、大声でそう言った。

「すまぬ…」

「でも良かったぁ!私、教師なんです。その碧眼の少年くんにも、何か教えてあげられるかもしれないし。ふふっ。この世での楽しみも出来ましたわ!」

芙蓉は両手で顔をの涙を拭い、改めてニッコリとして見せた。

「…うむ。そうか」

「もぉ~。仕方無いですね。分かりました!私、困った人を放っておけないたちなんです。それに今回は世界の運命がかかってるみたいだし…」

「そういう所は昔の母に、そしてヒミコに良く似ておるな…ありがとう…さあ御主に力を授けよう。両手を出してくれ」

芙蓉は戸惑いながらもハゴロモに近づき、腕を伸ばし、両掌を差し出した。

するとハゴロモは錫杖を芙蓉の頭上に浮かせると、自分の両掌を芙蓉の両掌にかざず。

「右手に御主を加護する力を・・・左手に生命力を授ける・・・」

「・・・!!!」

二人の掌の間から白く強い光が現れると、芙蓉はその眩しさに目を閉じた。

 

【挿絵表示】

 

 

芙蓉が目を覚ますと森の中で、大きな楠木の根元に横たわっていた。

ゆっくりと起き上がり、空を見上げる。

先ほど樹と闘っていた時と変わらない、真っ青な空がそこには在った。

今なら解る。

この青空の向こうには、もっと果てしない世界が永遠に続いているのだと。

永遠は美しいが、しかし、恐ろしい。

 

「…さようなら木ノ葉の里…また、いつか…」

 

そう呟いた後、地面に右掌をつき、目を閉じてゼツを呼んだ。

 

◆

 

ポチャン…。

天井から落ちた雫が沈黙を作る。

 

地下アジトの中。

六花とマダラ、二人は向かい合って立って居る。

マダラは雫が作ったこの沈黙に、二人の始まりを想い出していた。

 

「頭は、冷えたか?」

「はい。貴方の傍に居る為なら、これからはどんな命令にも従います…そして、この世界の為に。“先の夢”を叶える為に」

「…そうか」

 

実は、マダラは六花を追い出した後、ゼツに六花を見張らせ様子を報告させていた。

六花が反省してまた自分の元へ戻ってくるようにと…

 

マダラは六花が自分と同じ千手一族の力を得る為、そして扉間を殺す為に木ノ葉の里に向かった事も知っている。

そして勿論、扉間からどうやってその力を得たかも…。

 

マダラは六花を愛している。

それは単なる色恋ではなく、二人の間には“先の夢”という決して譲れない目的があり、その目的とそれまでの道程が二人を固く繋いでいた。

その意味で六花はもう、マダラの一部だった。

その為、六花がマダラに捨てられたことで自暴自棄、即ち恋に盲目になり“先の夢”の事までも忘れて自害するなら、それまでの存在だったと切り捨てるつもりだった。

しかし六花は自らの身体を犠牲にしてでも、マダラの元へ戻る為、そして“先の夢”の為に力を得て戻ってきた。

それが全てであり、六花が力を得る方法など二人の愛にとっては何の支障にもならなかった。

 

六花がマダラの目の前に現れた瞬間。

それは、ようやく六花がマダラと一心同体になった瞬間だった。

 

芙蓉(六花)にとってもそれは同じだった。

マダラと対峙した瞬間、この世界を救う碧眼の少年が現れるその瞬間まで、自分の存在はマダラとは一心同体で居ようと心に誓った。

ハゴロモから告げられ、頼まれたからだけではない。

使命感だけでもない。

 

芙蓉は知っている。

マダラが誰かと手を取れば、必ず新しい世界が拓けると。

柱間の次は、その碧眼の少年…その人に違いない。

 

・・・それまで私はどんな事でもする。世界が救われるその日を見届けるまで、生き続ける・・・

 

“芙蓉”とマダラは黙って抱き合った。

遠い昔、初めて二人の心が通じ合ったあの夕暮れ同様、地面には一つになった二人の影が伸びている。

その足元には、どこからか運ばれてきた赤いモミジが一枚、落ちていた。

 

 

 

         完

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 




=======

その後、うずまきナルトと忍連合体により、うちはマダラと大筒木カグヤの脅威から世界は救われたのはご存知の通り。
それまでの長きに渡る多くの忍の生き様、死に様、忍の歴史、そして、うずまきナルトの成長は多くの者の心に刻まれているだろう。
描かれなかった一人一人にもきっと多くのドラマがあり、たった一瞬の輝きだったとしても、この世の中で物語の主人公として生きた事を願いたい。
そしてハゴロモと出会い、ナルトが世界を救う間、芙蓉もきっとドラマチックに生きたに違いないだろう。
そのお話は、また、いつか・・・


「扉間さま!!!」
「⁉・・・芙蓉!!」

ガシッ!

「お疲れ様・・・でした」
「ああ・・・ああ・・・」

「くっ!俺の前で堂々とぉ…イズナの件もあるしやっぱアイツ一発殴っておくかな。良いだろ柱間?」
「まぁまぁ、マダラ、お前の気持ちも解らんでは無いがここは・・・」
「そうだよ兄さん!もう暴力はナシ!」
「イズナ!!お前・・・お前ぇぇっ・・・!!」
「おぉ!マダラが泣いとるぞ。ワハハハハハハ!」
「ああいう時代だったんだ。俺が扉間を殺してたっておかしく無かった。もう穢土での事は全部終わり。まぁ扉間に恋人を取られたのは悔しいだろうけどね。アハハハ」
「違うぞイズナ。芙蓉は恋人じゃない。俺の妻だ!!」
「あーもーうっさい!アンタは術で芙蓉のこと縛って無理やり結婚させたんじゃん。芙蓉は私の親友であり恋人なのぉ!」
「おお。樹ではないか!」
「なんだとゴラァ!樹テメェ!!」
「ちょっ、死んでまで喧嘩はやめんか〜」
「なんだよ、自分はミト様と結婚してラブラブだったからって芙蓉に振られた事無かった事にしてるくせに!」
「うっ!…ど、どうせ俺は芙蓉に振られたんぞ…でも、未練なんて無いんぞ…」

「あ。キスしてる」
『止めろーーーっ!!(×三人)』


=============

『罪の向こう、愛の絆』のシリーズを1話からお読みいただいている皆さま、
そして今回【六花の森】を読んで下さった皆さん、
本当にありがとうございました!


今後はまた【if you XXX】の官能小説シリーズや、
芙蓉や創設期メンバーが現代社会で活躍(?)
するようなファンタジー的展開の話を書いてみたいなと思っています。

また、今回、初めて「挿絵」を入れてみました。
これまでは皆さんのキャラクターのイメージを壊したくないと思い、描くことは控えていましたが、やはりもっと私の創設の世界観を楽しんで頂きたいと思い、自分でイラストを描いてみました。
これまで投稿済みの小説にも、今後徐々に挿絵を入れていこうかなぁと思っておりますので、描けましたらまたお知らせいたしますね。

そしてオリジナル小説(一次創作)のネタも貯まってきましたので、
いよいよ取り掛かりたい所でございます。

今後とも私の小説をどうぞよろしくお願いいたします(^^)


千野伊織






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