※この作品はR-18です。

罪の向こう、愛の絆   作:千野 伊織

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『罪の向こう、愛の絆』シリーズの番外編です。

マダラがどうやって九尾を手に入れ、そして扉間とどう対立していたかを描いています。

今回(1)の登場人物は、うちはマダラ、千手樹(o.c)、千手扉間、千手柱間、橘芙蓉(o.c)です。

木ノ葉の里が完成し、柱間が火影に就任して直ぐ。マダラが里を出て行く前。

里が石炭と砂鉄の供給先のひとつである三隅村(みすみむら)に異変が起き、マダラが調査に行きます。
その調査報告会議が開かれますが、マダラと扉間の意見が対立します。
しかし事は緊急な事態。
二人は対立したままどうなってしまうのか・・・

※本編の関連話:(8)~(10)および、(15)、(16)をぜひお読み下さいませ♪



マダラと扉間の共闘(1)~過去の傷跡

 

『扉間さまには感謝しているんです』

 

「…ああ。」

 

「扉間様・・・扉間様?」

 

「あっ。ああ。何の用だ?」

気付けば扉間の机の前に、火影である兄・柱間の秘書をしている千手樹が立って居た。

「ちょっ、なんなんですかその顔!怖いんですけど⁉・・・えっと、火影様が上忍のみで緊急に話し合いたい議題があるそうで、扉間様の今日の予定を聞いてくるように言われたんですよ!今日はいつなら時間ありますか?」

「・・・・。今日は他に会議は入っていない。兄者の都合に合わせると伝えろ。」

「了解でーす。あの、からだ大丈夫ですか?ろくに休みも取ってらっしゃらないみたいだし。里も完成間近だし、今倒れられたら皆が困るんですからね~」

そう言いながら、樹は扉間の背後にある窓辺に歩み寄り、眩しそうに里を見渡した。

処暑を迎え、里と森の境界線に在る稲田は薄っすらと黄色く色づき、早くも豊かな秋を感じさせる。

「解っている。心配は無用だ。」

「あの、そういえば扉間様はもう芙蓉のことは諦めたんですか?」

樹の問いを受け、扉間は今し方頭の中で考えていた事を見透かされたのかと思い、ドキリとした。しかし動揺を見せることなく、手元の資料を広げながら問い返す。

「何の話だ?」

「何って、結婚ですよ。許嫁は解消したって聞いてますけど、柱間様は全く芙蓉のこと諦めて無くて、私から芙蓉の情報を聞こうとして秘書にしたくらい未練タラタラだし…扉間様はもう、芙蓉のことはいいのかなぁって」

「今は勤務中だ。私的な話は止めろ。急ぎの要件なのだろう?早く兄者へ伝えに行け!それに、兄者は馬鹿だが色恋沙汰の為にお前を秘書にしたりはしない。そんな気構えで秘書をしているなら即刻辞めることだ。」

扉間は窓辺の樹に振り返り、怒りの形相でそう言った。

「は、はい・・・すみません・・・失礼しました。」

樹は先ほどとは比べ物にならない険しく怒りを露にした扉間の顔を見ると、焦って部屋を出て行った。

独りに戻った扉間は、再び資料を手に取ったが、また手を止め、目をつぶってうな垂れると首を何度も横に振り、ハァーと大きく息を吐く。

・・・いい加減、この思考回路を止めなければ・・・

 

 

「結論から言うと、三隅村からの石炭および砂鉄の供給停止の原因は、忍犯罪集団による村の占領だ。」

午後四時。

会議室には柱間、扉間、その他には上忍の一部が集められていた。

そして、調査任務から戻ってきたマダラが皆の前で調査報告を始めていた。しかしマダラが次の言葉を発する前に、柱間が立ち上がり発言する。

「と、いう事だ皆の者!今すぐ討伐隊を結成し、奴らを退治しに行くぞ!」

「おい柱間、人の話を最後まで聴け…」

「まだ他に何かあるんぞ?」

「…はぁ。敵の詳細とか、状況説明とか色々あんだろ…ったく…」

「兄者、この会議はマダラの調査報告と、それを踏まえての対策会議だろう?最後まで話を聞け。」

「う、うむ。そうだったのう。すまぬ…マダラ、続けてくれ。」

「…。でだ、敵の数は五十人程と大したこたぁ無い。だがそれよりも、現在三隅村で起きている原因不明の自然災害の原因のほうが大問題だ。ちなみに犯罪集団の親玉はどうやら女三人。奴らは村人から横取りした石炭と砂鉄を横流しして金品を得、忍術によって災害から逃れて贅沢三昧をしているがな…。で、その自然災害の原因というのは、おそらく、村の近くに眠る尾獣のチャクラの仕業だ。現在の村の状況からして、尾獣の復活は予断を許さない状態だ。犯罪集団はそれを知ってか知らずか、この状況を利用している。そこで俺は、忍犯罪集団の討伐よりも先に、尾獣の捕獲及び封印に向かう事を提案する。以上だ!」

マダラが尾獣の単語を口にしたとたん、会議室がざわつき始めていた。

一方、柱間は思っていた以上に状況が深刻な事に、腕を組み渋い顔をして目を閉じ黙って聞いていたが、マダラの報告が終わるとバッと顔を上げ、両手の拳を机にドンと置いて口を開いた。

「尾獣となると…俺とマダラ、二人で行くのがベストだな!扉間は里を頼む。」

「いや、俺一人で充分だ。この万華鏡写輪眼があれば、尾獣くらい手懐けるのは容易だ。お前の出番は無い。お前は里で火影の役目をしていろ。」

マダラの発言に対し、うちは一族の上忍たちは頷くが、その他の一族の上忍たちは一層ざわつき始めた。

「いや、そうかもしれんが、九尾だったらどうする?他の尾獣に比べて相当な力ぞ?ここは二人で行くのが最善というものだ!念には念を入れるべきぞ!」

柱間は立ち上がり、マダラの方に身を乗り出してそう言った。その発言を受け、更に会議室はザワザワとやかましくなった。

「静かにしろ!」

それまで腕を組んで黙っていた扉間が騒ぐ上忍たちを一喝すると、ぴたりと静かになる。そして扉間が言葉を続ける。

「確かに兄者とマダラ二人で向かえば万全だろう。しかし、火影が里を空けるにはリスクがある。会談ならともかく、尾獣捕獲の為だと他里や他の犯罪集団に知られれば、漁夫の利を狙う者が出てくる上に、木ノ葉の里の戦力が兄者とマダラ一極であると認識されてしまう。それではこの先、他里と交渉する際に不利になりかねん。ここは、俺とマダラ二人で行く。しかし、万が一犯罪集団の親玉である忍が尾獣を操れる能力だとしたら、マダラの瞳力だけではどうにもならないかもしれない。状況を見て、兄者の力が必要な場合は戻って来る。」

「何だと?俺一人の力じゃ無理だって言うのかよオイ!」

マダラの言葉を無視して扉間が話を続ける。

「また、尾獣捕獲は俺とマダラ二人で遂行するが、お前たち上忍たちには、炭坑入り口を塞ぐ班、犯罪集団の食糧庫を開ける班、住民を結界内で保護する班に分かれて任務を行って貰う。まず炭坑の入り口を破壊して奴らを引き付け…」

「ちょ、ちょ、ちょ、たんま扉間!一気に言われても分らんぞぉ。それに俺はお前とマダラ二人で行く事をまだ認めるとは言っておらんし」

「反対なのか?」

「いや、反対ではないのだが、のう…」

「じゃあ黙ってろ。それに、ここに居る奴らは俺の話が解らんほど馬鹿じゃない」

そう言って扉間が話を続けようとしたが、マダラが大声でそれを遮る。

「いや、てめぇが黙れよ!俺もお前と二人で行く事を認めちゃいねぇぞ。」

「…。何、マダラ、お前の邪魔はしない。寧ろやりやすいよう俺が結界を張ってやる。そのほうが早いし村にも被害が…」

「必要ねぇ!!てめぇも“兄者”と一緒に里を守ってろ!今日の報告会議では尾獣確保の許可さえ貰えりゃそれでいいのさ。尾獣捕獲は俺一人でやる。そして忍犯罪集団は俺の部下、うちは一族の上忍に始末させる。他の一族の上忍にゃできやしねぇーさ。」

マダラの発言に、再びうちは一族以外の上忍たちがざわつき始める。

「マダラ、確かにうちは一族の上忍は優秀だ。だが他の一族の得意な能力を借り、チームワークで事を運んだほうがいい。」

「それは、うちは一族に欠点があるっていう意味か、柱間?」

「そうは言ってない。だがどの一族にも不得意分野はあるものぞ。これまでの大戦とはちがうのだ。一族という縛りではなく、里という単位で考えてくれマダラ!」

「里という単位、か…フッ。取敢えず今日はこれ以上話し合っても無駄だな。オレに反対するなら代案を持ってこい。…帰るぞ。」

マダラは言い終わる前に立ち上がり、うちは一族の部下たちを連れて出口へ向かってゆく。

「マダラ!・・・おい待て!・・・・・ハァ。」

柱間も立ち上がってマダラの背中に向かって叫んだが、マダラは振り向きもせずさっさと出て行ってしまい、それを見て柱間は大きな溜息を吐いて椅子に座りこうべを垂れた。

 

◆

 

ハァハァハァハァ・・・

 

裸で仰向けになったマダラの右肩に、同じく裸の芙蓉が左手を回して抱き着つき覆いかぶさる。まだ芙蓉の息も上がっており、肩で息をしている。

ふと、マダラの眼が、自分の肩に回されている芙蓉の左肩にいく。

枕元の灯りに照らされ、そこに在る傷跡がくっきりと浮かび上がっていた。

その傷跡は、マダラと芙蓉が出逢った日に出来たものである。

瀕死の芙蓉をマダラが助けた。しかし、マダラの医療忍術でもクナイが貫通した深い傷の跡は完全に消えなかったのだ。

マダラは芙蓉の下敷きになっていた左手を出して、その傷跡に手を伸ばした。そしてその傷跡を撫でながら芙蓉に問う。

「…芙蓉。お前、扉間のこと、いまも憎んでいるか?」

「えっ!・・・・・・いいえ。もう、憎んではいません。」

芙蓉はそう答えると、マダラの胸に顔を埋める。

「何故だ?」

その問いに、芙蓉はゆっくりと顔を上げると、マダラと眼を合わせた。そして芙蓉はどこか悲しそうに微笑みながら答える。

「扉間さまのことは正直今でも恐ろしいです。でも、扉間さまの謀が無ければ…扉間さまが私を消そうとしなければ、私はマダラさまとは出逢えなかったかもしれない。だから私、扉間さまには感謝しているんです。」

芙蓉はゆっくりとした口調で答えると、再びマダラの胸に顔を埋めた。

一方、マダラは天井を仰ぎ、揺れる明かりを見つめて言う。

「だが扉間はどうだろうな。お前のことを今も恨んでいるんじゃないのか?」

「それは…おそらく大丈夫だと思います。少し前にお会いした時、私に謝ってくれたんです。だから…」

「おい、どこで会ったんだ!女学校か?まさか会いに行ったんじゃねぇだろうな」

芙蓉の左肩を握るマダラの手に力がこもる。芙蓉はその感覚が恐ろしくなり心拍数が上がる。しかし、なんとか冷静に答える。

「違います。夏の初め、女学校の帰りに偶然、ノウゼンカズラが咲いているあの坂の角でぶつかりそうになって…それで、その時『謝罪してもしきれない事をした』って…謝ってくれたんです。その時、私も扉間さまに、もう恨んでいない事、扉間さまのお陰でマダラさまに出逢えて良かったと伝えました。だからもう…」

マダラは芙蓉の左肩をグイっと胸に抱き寄せ、芙蓉の顔を覗き込むようにして言う。

「何故それを俺に言わなかった?」

「そ、それは…なんだか言い難くて…ごめんなさい」

「芙蓉、俺は扉間の謀など無くても、俺たちはこうなっていたと確信している。俺たちの出逢いは扉間のお陰じゃあ無い…イズナの、弟の導きだからな…だからこそ、お前を殺そうとしたあいつが俺は許せない。イズナを殺された恨みもある。…扉間は卑劣な奴だ。謝罪の言葉も本心じゃねぇかもしれん」

芙蓉はマダラの話を聞きながら途中で顔を上げ、心配そうに顔を歪めてマダラの顔を見た。その眼は動揺で泳いでいる。

「私の事はもういいんです!お願い…変な事考えないで…もう二人で仲良く、静かに暮らしましょう…ね?お願い…」

「・・・。ああ。そうだな。」

目に涙を浮かべて懇願している芙蓉の頭を撫でながら、マダラは目を細めて優しく微笑んでみせた。

芙蓉もその笑顔を見てホッと胸を撫で下ろし、そっとマダラに口づけをした。

 

◆

 

翌日。

再び昨日の会議の続きが開かれる事になった。

会議が始まる一時間ほど前、マダラは火影室に柱間と扉間、三人で居た。

 

「会議が始まる前に言っときたい事がある。」

「なんぞ?マダラ。」

マダラは柱間では無く、扉間の方に顔を向ける。窓の外を見ていた扉間がその視線に気づいて何度か瞬きをした。そしてマダラは扉間と目を合わせたまま、扉間に向かって言う。

「一緒に来てくれ、扉間。」

「どういう心境の変化だ?」

扉間は驚きも動揺もせず、腕を組み直しながらマダラに問うた。

「感知能力と速さでお前の右に出る者は居ない。残念ながらうちは一族の中にもな…ここはやはり柱間の言う通り、互いの得意な能力を活かしつつ任務を行う方がベストだと思ってな。昨日は少々意地を張ってしまった。悪かったな。」

すると柱間が火影席から立ち上がり、扉間とマダラの間に出て来て、二人を交互に見ながら言う。

「マダラ!俺は絶対にお前なら扉間と手を組むと言ってくれると信じておったぞ!流石、男の中の男!うちはマダラぞ!ガハハハハ!良かった良かった!!」

はしゃぐ柱間を無視して、扉間がマダラに向かって問う。

「じゃあ、昨日俺が言いかけた計画で良いって事か?それとも、忍犯罪集団の方はお前たちうちは一族だけでやるつもりか?」

「いや、そこもお前の考える計画で構わない。うちは一族の上忍も入れ、このあとの会議で班割をしよう。」

「ああ。解った・・・俺は先に会議室に行ってるぞ。」

そう言うと扉間はひとり、先に火影室を出て行ってしまった。

「マダラ、扉間はお前と負けず劣らず、意見を曲げない奴だ。苦労するかもしれんがよろしく頼む。」

「ああ。私情は挟まないさ。重要な任務だからな。」

「うむ…では俺は、里で待機しておる事にしようぞ!わははは」

“私情”という言葉に、柱間は思わず内心僅かに動揺したが、それを隠す様に笑って見せた。

 

 

つづく

 

 

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