お話の舞台は「続・六花の森」(一)のずっと前、「六花の森」(完)から暫くしたある日という感じです。
六花が芙蓉である記憶を取り戻し六道仙人に会った後、マダラと六花が一緒に偵察に出かけていた頃です。
タイトル通り”ふたりのマダラ”をめぐるお話。
マダラVSマダラ・・・決闘と冷戦の結末は???
※連載作品です。次回は年明けの更新予定です。
※マダラさんの誕生日お祝の為に書き始めた小説ですが挿絵が間に合いませんでした(泣)追って挿絵も入れたいと思いますので、更新しましたら活動報告でお知らせしますね。
☆マダラさんお誕生日おめでとうございます!(^^)
「マダラ・・・さま・・・?」
六花は目の前に居るマダラを見て驚き、急いで右隣へ顔を向けた。
しかしマダラといえば、全く動揺する様子も無く前を見据えている。
「クククッ…それは貴様の完全なる複製だ。能力も技もチャクラの量も同じ。…だが一つ違う所がある」
『⁉』
男の言葉に、六花とその左肩に載るゼツの二人が目を見開いた。そして六花は忙しく頭を動かし、右隣りのマダラと目の前のマダラを交互に見る。
しかし隣のマダラは相変わらず、腕を組んだまま目の前の自分を見据えている。
そして六花の目の前のマダラも同じく腕を組んで目の前の自分を見据えている。
「この複製には、貴様にとって大切な物が無い。つまりその分、本体の貴様よりも強いということだな」
「…なるほど」
マダラは少し口角を上げ、そう答えた。
が、やはり二人のマダラは全く動かない。
「大切な物って…いったい…?」
六花は不安な顔で隣のマダラを見た後、目の前のマダラの方を見た。
「複製は貴様を殺せば本物になれる…まぁせいぜい自分に殺されないよう頑張るんだな。ハハッ!じゃあな!」
「待ちなさいっ!」
六花はその場から姿を消した男を追おうとしたが、六花の眼の前のマダラが六花の正面に瞬間移動し、それを制止した。
「追わんでいい・・・フン。面白いじゃないか」
六花の右隣りに居るマダラはそう言うと、六花の両腕を掴んでいるマダラの背後に瞬間移動し踵落としをした。
しかし、踵落しをされた方のマダラはそれを受け止めるまでもなくその場から姿を消し、マダラの足は鋭く宙を斬りながら六花の鼻先をかすめ、ドシンと大きな音を立てて地面に穴を開けた。
六花は身体をのけ反らせ、地面の穴を見てごくりと唾を飲む。直ぐには言葉が出ない。
「…マダラさま…」
「六花、お前は避難して居ろ」
マダラは背中でそう言うと、腰の刀を抜いた。
それとほぼ同時に、目の前のマダラの複製も刀を抜く。
「マダラがこの世に二人も居るとか嫌だよねぇ~。さ、巻き込まれないように逃げよう。六花に手出しが出来る闘いじゃないよ」
「…は、はい!」
六花は急いでその場から姿を消した。
ビュン!ビュン!ビュン!・・・
「⁉」
走っていた六花は頭上から落ちてくるクナイを前転して何とか避けると、飛び上がって地面に着地した。
『六花』
目の前に居る二人のマダラの声が重なる。
「…どっちが本物のマダラさまなの⁉」
「落ち着いて。本物の方がコピーマダラを止めてくれるからじっとしてるんだ」
ゼツの言葉に六花は静かに固まった。
すると、冬晴れの空を越冬の為に北国からやって来たシメがピチ、ジューっと鳴きながら横切って行った。そしてシメに連れられてやってきた北風が、その場に居る三人の長い髪を揺らしてゆく。
「お前の目的は俺だろ」
「・・・・」
マダラは刀をいったん鞘に収めると、コピーマダラに向かって走り出した。コピーマダラは向かって来るマダラに向かって刀を構えたまま無言で走り出す。
二人は直ぐにぶつかり、マダラはコピーマダラの刀を素早く避けると懐に入ってしゃがみ、コピーマダラの顎めがけて右手を突き上げた。
その拳は確実に当たったように見えたのだが、マダラの視界にはもうコピーマダラの姿は無い。
そしてコピーマダラがしゃがんでいるマダラの背後に現れ、後頭部を左手で殴ろうとしたが、マダラは腕でそれを受け止めると、刀を握っているコピーマダラの右手首を右足で蹴り上げた。
コピーマダラの右手の握力が弱まったと同時にマダラはジャンプしてコピーマダラの両肩に飛び載り、その勢いと圧力でコピーマダラの右手から遂に刀は離れて落ちてしまった。
そうして、二人の体術での組み合い勝負が始まった。
「…もう完全にどっちが本物のマダラさまか分からないわ」
「今のうちに逃げて。コピーマダラは六花を狙ってくるよ」
「でもそれなら逃げてもまた追われて逃げての繰り返しだわ!体力も消耗するし、かえってマダラさまの足手纏いになる。逃げるくらいなら一緒に戦った方がいい」
「ここに留まるにしても逃げるにしてもせめて見た目で見分けがつけばいいんだけどね。コピーには大切な物が無いって、それは目には見えないものだしね」
「ゼツ、大切な物って何か分ったの⁉」
「え?逆に分かんないの?コピーマダラが何で君を狙うかも?…心が無いからじゃん!」
「…心が…無い…?」
六花は目の前で激しく殴り、蹴り、交互に左右と天地を入れ替わりながら戦っている二人を改めて見据えた。
・・・それならば・・・
六花は深呼吸をし、胸いっぱいに空気を溜め、そっと両掌を口の両側にそえる。そして。
「マダラさまのお弁当のいなり寿司、川に落としましたぁぁぁぁぁあーっ!!」
「なんだとテメェふざけんな!」
ガンッ!
「ぐっ!」
マダラは顔にコピーマダラの右ストレートを喰らい、唇が切れて血が流れた。
「ちょっと六花!!本物を動揺させてどうすんのさ!!殴られちゃってるし!」
「これで目印は付いたわ」
「鬼かっ!」
「須佐能乎の闘いになる前にコピーを止めるわよ」
「目印は付いたけどこの激しい闘いに割って入るなんて無茶だ!」
「私に良い考えがある・・・あっ⁉二人が森の方へ!追うわよ!」
「なんか今の六花ならやれる気がしてきたよ…でも気を付けてね」
六花が二人を追って森へ入ると、開けた場所で、未だ二人は素手で取っ組み合っている。
・・・まだ体術だけで戦っているということは、やっぱりマダラさまも同じ事を考えているのね・・・
六花は音を立てないよう少しずつ茂みを進み、二人との距離を縮めてゆく。
そして遂に、二人との距離は十メートルを切った。
二人はこちらに気付いているのかいないのかは分からない。だが、互いにそれを見せる隙もなく真剣に闘っている。二人の眼には全く同じ写輪眼が浮かんでおり、全く互角の闘いである。
六花は唇から血を流す本物のマダラ、ではなくコピーマダラの方を懸命に目で追った。
開けた森の、丸い空の端に浮かぶ太陽は、白く分厚い雲に隠れている。
先ほどから北風も吹き続けており、それが森の針葉樹の葉を揺らしてくれるお陰で、六花の気配は一層消されている。
上空の風は地上よりも強く吹いているため、分厚い雲は直ぐに形を変えた。するとその隙間から太陽が顔を出して光が差し始めた。
その時だった。
六花の写輪眼が光る。そして…
「マダラさまのベッドの下のえっちな本、全部捨てましたあぁぁぁっ!!!」
『⁉』
マダラとゼツは顔で驚いたが、その後の言葉が出てこない。
マダラは昔、絶対に大人にはバレないと思っていた子供だけの秘密の悪さが、ある日突然、母親からその証拠を目の前に突きつけられた時に味わった首筋の冷たさと、顔全体の熱さを思い出した。
その隙に、コピーマダラは素早く腰から刀を抜くと振りかぶる。
が、目の前に居る筈のマダラの姿は消え、そこにはクナイを構えた六花が居るではないか。
コピーマダラもこれには流石に驚き、僅かの動揺を見せた。
しかし、コピーとはいえマダラの方が実力は上だった。
スパッ。ドス!
「…っ!…」
コピーマダラの刀の先端が六花の胸に触れ、その襟を切り開いた。
その瞬間だった。
マダラはコピーマダラを背後から羽交い締めして動きを封じ、それと同時に六花はコピーマダラのみぞおち目がけクナイを力いっぱい突き刺したのだった。
顔を歪めて動きを止めたコピーマダラと、六花の眼が合う。
「ふふっ」
六花はコピーマダラ、の背後のマダラに向かって微笑んで見せた。
・・・バタァン!!・・・
「やったね!!すごいじゃん六花!!」
六花の左肩のゼツは喜びの声を上げると地面に飛び降りた。
そして仰向けに倒れて動かなくなったコピーマダラへと近づいて行った。
「なぜ殺さなかった?」
「ちょっと六花!死んでないじゃん⁉」
ゼツは焦って六花に、そして六花の隣に立って居るマダラに振り返って叫んだ。
「殺しに行くほうがリスクは高い。うまく痺れの急所が突けた様だな。俺に隙を作り、複製が俺をやれると確信したその隙を漁夫の利で狙う…よくやったな」
「はい…でも、マダラさまの援護が無ければどうなっていたか…」
「うむ。だが俺の本気の殺気を見られて良い経験になっただろ?」
「は、はい…けど…すごく怖かったです…」
六花は今になり、恐怖で全身が震えてきた。自分の身体を抱き寄せ、腕を擦りながらその場にしゃがみこんでしまった。
「ハハハハッ…ってオォォイ!!さっき叫んでいた事は本当か⁉」
「あ、はい。いえ、もちろん嘘です。でも本の中身は見ちゃいました…へへっ」
六花は眉を寄せ泣きそうな顔でマダラを見上げると、笑って答えた。
「っ。・・・マジか・・・」
つづく