現れたもう一人のマダラ、”コピーマダラ”
六花とマダラは協力してコピーマダラを倒すことが出来たのだが、コピーマダラは生きていた・・・
しかし二人はコピーマダラを巡って対立します。
眼を奪って殺すというマダラ、寿命まで生かしてあげようと言う六花。
一方、対立する二人を、いえ、六花の事を見て、コピーマダラは考えます。
コピーマダラはどうなるのか?
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「続・六花の森」の番外編です。
お話の舞台は「続・六花の森」(一)のずっと前、「六花の森」(完)から暫くしたある日という感じです。
六花が芙蓉である記憶を取り戻し六道仙人に会った後、マダラと六花が一緒に偵察に出かけていた頃です。
「さてと。さっさとトドメを刺して写輪眼を奪うぞ」
「えっ!マダラさまも、敵の居場所と情報を聞き出すおつもりじゃ…?」
「バーカ。遊んでたに決まってんだろ。俺自身と闘えるなんてこんな楽しい事があるかよ。飽きたら殺すつもりだった」
「あの…その…いくらニセモノとは言え、ああして血を流し苦しんでいるということは生きて居るということですし、それに…マダラさまのコピーなわけですし…助け」
「ない!…お前の言いそうな事くらいすぐ解る。全く!見るに耐えられぬなら先に帰っていろ」
「でも!せめて殺すんじゃなく、術を解いてあげるとか、もっと違う方法は無いでしょうか?」
「別にいいじゃん。あれは影分身って思えばさ。それに第一アイツは君を殺そうとしてたんだよ?」
「でも…」
「しつこいぞ!」「もういい」
二人のマダラの声が重なった。
驚いた三人の視線はコピーマダラへと向けられる。
コピーマダラは、なんとか眼だけを六花に向けると言葉を続ける。
「…どうせ俺の存在は二十四時間だ。本体を倒せなければ必然的に消える…さっさと殺せ」
「そ、そうなんですか⁉」
「俺に訊くなよ」
マダラはそう言い、渋い顔で六花を見た。
しかし、六花の眼はマダラではなく、コピーマダラを心悲し気に見つめている。六花が訊ねた相手はコピーマダラだった。
それが判ると、マダラはフンッと不機嫌そうに顔を背けた。
「本当だ。お前が見たく無いのなら、俺の眼を取って後は放置しておけばいい」
「そんな!…マダラさまっ!どうしましょう⁉」
「五月蠅い!どうするも無い。眼を取って殺す!お前はニセモノの言う事を信じるのか?嘘に決まっているだろ。そう言って近づいた隙に反撃して来る気だ。まぁそんな事はさせんがな」
つい数秒前までコピーマダラを見つめていた六花の思慮の眼は、今は何の後ろめたさも無くマダラの顔を見つめており、腕まで掴んできたことにマダラは苛立ち、声を荒げてその腕を振り払った。
「フッ…せっかく守ったってのに、今度は仲間割れか?」
「…んだと?」
「止めて下さい!コピーマダラさんの言う事はきっと本当です!」
六花は、コピーマダラの元へ足を踏み出そうとしたマダラの前に立ちはだかりマダラの両腕を掴んだ。
「六花、アイツには心が無いんだよ?僕も嘘ついてると思うけど」
六花の左肩のゼツが、マダラが再び写輪眼を出す前にそう言った。
「心が無い人が“お前が見たく無いのなら”なんて言わないわ!」
「・・・・ハァーーー」
六花の言葉に、マダラは写輪眼を出すのを止め、眼を閉じて大きなため息を吐き、自分の腕を掴んでいる六花の腕を除けた。
そして六花の右横に踏み出した時だった。
「あのっ!…二十四時間だけ、コピーマダラさんを仲間にしてあげることは出来ませんか?…」
「ハァ?」
マダラは眼を開け、怒りと呆れの顔で六花の顔を見た。
「お願いします!」
「六花やめなって!ダメに決まってるじゃん」
「じゃあせめて…眼を取るだけにして、コピーマダラさんが消えるまで…私に見張らせて頂けないですか?…」
「テメェな…」
「俺からも頼む…敵の情報を教える代わりに、仲間にしてくれ」
『⁉』
三人が目を見開き一斉にコピーマダラを凝視した。そして目の前の現実に言葉を失う。
「仲間でなくとも構わん。俺の事が信じられないなら眼を取るといい。術に繋いでもいい。僅かな時間だとしても…生きていたい」
その言葉に、六花は堪らずコピーマダラに向かって走り出した。
「危ないって六花!!マダラ!六花を止めてよ!!」
しかし、マダラは腕を組んで仁王立ちのままだ。
遂に六花はコピーマダラの右隣りに辿り着くと、しゃがんでその顔を覗き込んだ。
すると北風が強く吹いて、六花の後ろで束ねた長い髪が舞って顔に纏わり着き、六花の表情を覆い隠した。
六花は急いでその髪を指ではらうと、更にコピーマダラに向かって膝を寄せた。
目の前に六花の表情が現れると、コピーマダラも六花のその表情を見た。
たった数秒の間に、コピーマダラは僅かに眼球を動かしただけで六花の眼、鼻、口、輪郭全てを見回し観察した。
力んだ眉間、細めた眼の中にある琥珀色の瞳は潤んでおり、下唇を軽く噛んでいる。
しかし、寒さで肌の表面の血の気が引いて白磁の様に冷たく光る白い肌、輝き開いた瞳孔が強い意志を物語っている様だった。
その六花の表情を見て取ると、コピーマダラは六花に向かって口角を上げて見せた。
しかし六花はそれに気づかずに、後ろのマダラに振り返ると瞳で強く懇願した。
「・・・わあぁったよ!・・・くそっ!」
「マダラさま…ありがとうございます!」
「勘違いするな。俺の姿をした奴が命乞いしているのをこれ以上見るに耐えられんだけだ!」
「じゃ…」
「その代わり!…先に眼を取る。信用など出来んからな」
マダラの言葉に六花は振り返り、心配そうにコピーマダラの顔を見た。
「…構わん。好きにするといい」
「でもそれじゃ…」
「眼が見えぬくらいで困る様な“俺”じゃないってことくらい、お前が一番知っているんじゃないのか?」
「!・・・」
六花は僅かに驚き、それを隠すように俯いた。
そしてコピーマダラは続ける。
「一つ教えておいてやる。眼を取るのはいいが、俺を生んだあの魔鏡の光に当てなければ俺の身体と同時に消滅するぞ」
「チィ!…ったく面倒な!」
マダラは大きく舌打ちをして腕を組み直した。
「マダラどうすんの?ていうかそもそもホントに仲間にするの?僕はここで始末しておいたほうが良いと思うけどね。六花を甘やかさない為にも」
ゼツが六花の肩でマダラに向かって冷静な声で訊ねた。
「ゼツ?…」
「勿論仲間にするつもりなど無い。捕虜だ。まぁ二十四時間の命らしいから捕虜と言えるのかってのはあるが…生かしてやる代わりに情報と眼はいただく。あの山賊堕ちの忍どもが占拠する土地には十尾の器(のちの外道魔像)の召喚方法に係わる遺跡がある。何としても討伐せねばならん。それに写輪眼はいくつあっても良い。しかも複製とはいえ俺の眼だ。欲しい」
マダラはそう言うと組んでいた腕を解き、コピーマダラと六花の元へゆくりと歩き始めた。
「でも眼を手に入れる為には魔鏡を取りに行く必要があるじゃん。どうすんのさ?」
こちらに歩いて来るマダラに向かってゼツが声を上げる。
しかしマダラはその問いに答えず、無言で歩いて向かって来る。六花は、その姿に感じる威圧で何も言えないで居た。
そしてマダラの大きな影が六花の顔に差し掛かかると、マダラは立ち止まった。
…ゴクリ。
六花は唾を飲み込み、眩しそうに眼を細め、陰るマダラの顔を見上げた。
するとマダラは腰に付けているポーチに手を入れ、術札を一枚取り出した。
「まさか・・・」
「そうだ。禁固術の札を使い複製の行動を制御する。俺が魔鏡を取って来る間、六花、お前はゼツと一緒にアジトで複製から情報を聞き出せ」
そう言いながらマダラは左手で術札を持つと右手で素早く印を結んだ。
「やはりそう来るか」
「てめぇは黙ってろ」
マダラは六花と向かい合ってコピーマダラの左隣にしゃがむと、術札をコピーマダラの心臓の上に置いた。すると術札はあっという間にその場から姿を消し、コピーマダラの心臓の中へと取り込まれてしまった。
「あーあ。またそうやって六花を甘やかす。六花の我儘に付き合わされる僕の苦労も少しは考えてよね!」
「・・・。ゼツはアジトまで複製の身体に張り付いて連れて行け。六花はアジトの監禁室へ複製を入れ、敵と十尾の器について情報を聞き出したあと封印錠をしておけ。術で嘘は付けないようにしてあるから全て吐くだろう」
「じゃあマダラはせめて早く帰って来てよね」
ゼツはそう言うと六花の左肩から飛び降り、そのままコピーマダラの鎖骨辺りに着地した。そして体を広げ包帯のようにコピーマダラの身体全体を包み込んだ。眼と口とだけ、ゼツの顔の形に空いている。
「マダラさ…」
「黙れ。お前には何も言わさんぞ」
「…きゃっ!」
マダラは六花に言葉を掛けたと同時にコピーマダラの両目に手を伸ばし、眼球を奪った。
六花はその光景に思わず小さく悲鳴を上げ、両掌で顔を覆ってしまった。
「悲鳴など上げるな!何年忍をやっている。しっかりしろ」
「も、申し訳ありません…」
勿論、六花とて上忍以上の忍である。普段ならこれしきの光景で悲鳴など上げない。
しかし、眼を奪われた人物は“マダラ”の姿をしているのである。
マダラは奪った両目を素早く術で真空状態の小瓶の様な空間に入れると、それをポーチの中に入れた。
「・・・・」
絶句する六花を無視してマダラは勢いよく立ち上がった。
北風がそれと同時にマダラの長い髪を横に揺らした。そして気づけば先ほど顔を出した太陽は再び厚い雲に隠れ、周囲には北風に乗って来た木葉が舞っていた。
「俺は行く。情報を聞き出し、しっかり精査と分析をしておけ。解ったか」
「…は、はい」
「しっかりしろ!!」
「はいっ!」
六花は焦って眼を見開き、大声で返事をした。
「それからニセモノ!おかしな真似をすれば即、お前の寿命は終わりだ。素直に全て吐けば魔鏡でお前も消滅させないでおいてやらんでもない…」
「心配は要らん。早く行け」
「・・・・。」
マダラは一度瞼を閉じた。そして再び目を開けコピーマダラを見据えると、その顔を見て僅かに戸惑う様な、気疎い表情になり、次に言おうとした言葉を飲み込んだ。
「…ゼツ。頼んだぞ」
「へーい」
「マダラさまもどうかお気をつけて」
「六花。俺の姿をしているからといって油断するなよ…」
「は、はい」
六花が返事をすると、マダラは口をへの字にし六花に向かって左手を伸ばした。
「…オイ!」
「?…ああ!はいっ!」
六花は急いで背負っていた鞄を下ろして開けると、中からいなり寿司が詰められた小さな風呂敷包みを取り出して立ち上がり、マダラの左手にそれを手渡した。
「すみません。ちょっと崩れてしまっているかもしれませんが」
「構わん。味は変わらんだろ」
マダラはそう言うと三人に背を向け、その場から姿を消した。
つづく