大人になった雪乃が八幡と結衣の子供と偶然会い行動を共にする話になります。

人が亡くなっている描写があるので残酷な描写にチェック入れてます、あと数行ですがベッドシーンもあるのでR18にチェック入れてます。
キャラが酷い扱いされたりグロい内容とかではないです。

内容的には暗いですが最後に救いは用意してます。


1 / 1
一夜の幸せ

いつもの奉仕部、雪ノ下は読んでいた本を閉じ二人に向かって言った

 

「私結婚するの」

 

突然のことに戸惑う二人

 

「え?ゆきのん?」

「は?おまえ何言ってるんだ?」

「高校卒業後うちの建設会社のパートナーとなってくれる会社の社長さんの息子と結婚することになったのよ、結婚後はすぐ海外へ行くことになるからもう会えなくなるわ」

 

「え?マジ??」

「ゆきのん…それ本当のことなの?」

「由比ヶ浜さん、本当のことよ、もう私やあなた方がどうこう言っても止められない所まで来てるの」

 

「おい雪ノ下、本当にそれでいいのか?」

比企谷は雪ノ下をじっと見つめる

「それは…私だって…でももう仕方ないのよ」

雪ノ下は視線をそらして下を向いてしまう。

 

「わかった、今から俺がお前の家までいって直談判してやる」

そう言い帰り支度を始める比企谷

 

それを縋り付くようにして止める雪ノ下

「やめて!もうあなたが傷つくのは見たくないの!もうやめて!、もうどうしようもないのよ!」

部室に絶叫といってもいいぐらいの声が響く

雪ノ下に何があったのかはわからないが必死にすがり付いて止める様子を見て比企谷も諦める

「わかった…おまえはそれでいいんだな?」

「ええ、ごめんなさい…」

 

「ゆきのん…」

由比ヶ浜もどうすることも出来ずただ雪ノ下を見ているだけだった。

 

それから結局奉仕部はぎくしゃくした関係になり受験も重なった為奉仕部は卒業を待たずして実質消滅した。

 

それから二十数年後、すでに苗字を藤堂と変えた雪乃は日本へと帰国する、父の仕事を手伝うためである。結局子供は授からず、養子をとった為ずっと仕事にのめりこんでいる状態だった。帰国後は雪ノ下建設の色々なセクションに回され忙しい毎日を送っていた。

 

雪乃がとある現場に視察に行った時のこと、休憩中の作業員に見覚えのある顔を見つけた

「比企谷くん…?」

懐かしい顔によく似た人がいる、でもあの時と違うのは彼の周りにたくさん人がいることと目が生き生きとしてるところ。

現場責任者を呼び、彼は何者か問う。

 

「あー彼はですね、ものすごく優秀なんですよ、トラブルがあるといつも誰も思いつかない方法で解決するし、人当りも良くていつも皆の中心にいるんですわ、名前はたしかヒキタニ?違うな、ヒキガヤそう、比企谷 勇って名前です」

 

もしかして比企谷くんの息子?

雪乃は彼のところへ行き問いただそうとする、と初めに彼の方がこちらに気が付いた。

「あれ?もしかして雪乃さんですか?」

「そうだけど、なぜあなたが私の名前をしっているのかしら?」

 

「やっぱり、父さんと母さんが言った通り本当に美人な人だ」

そう彼は言い、一枚の写真を取り出す、そこにはまだ奉仕部の3人が仲良かったころ、皆で一緒に撮った写真だった。

「すごいなー雪乃さんって、この時よりもずっと美人になってる」

もう40も中盤だというのに雪乃はその美しさにさらに磨きをかけていたのだった。

 

「その名前で呼ぶのはやめなさい、私は一応あなたより上の立場の人よ?せめて苗字で呼びなさい、今は藤堂雪乃と名乗っているわ」

「すみません藤堂さん、父さんと母さんから貴方のことをよく聞かされていたもので」

「そうだったの…もしかしてあなたのお父様とお母様の名前は八幡と結衣という名前では?」

「ええ、そうですよ」

 

やっぱり、きっと誰も思いつかない発想をするのは比企谷くん、人当たりの良さは由比ヶ浜さんの遺伝ね、腐った目つきが遺伝しなくてよかったわ雪乃はそう思い、はやる気持ちを抑え問いかける

「今どちらにいらっしゃるのかしら?」

胸が高鳴る、最後は酷い終わり方だったが二十数年ぶりに彼らに会えるかもしれないのだ。会ったらまずどうしよう、色々な思いが頭の中をめぐる。

「死にました」

予想外の返答に体が固まる。

「え?」

「僕が高校一年の時、自動車事故に会いまして」

体から力が抜ける、目の前が真っ白になり、そのまま意識が遠のき雪乃は倒れてしまった。

 

 

目を覚ますと現場に仮設されてる簡易ベッドの上だった

「目を覚ましましたか」

比企谷勇が声をかける

「大分疲れていたようですね?」

雪乃はそれに答えず体を起こす。

「比企谷くん、貴方のお父様とお母様が亡くなられたって詳しく話してもらえないかしら?」

 

「…わかりました、あれは高校一年の冬に東北の温泉地へ家族旅行に行ったときです、車が雪でスリップしてがけから転落しまして、僕は運よく車外に放り出されて助かったのですが、父と母は車が潰れて出られなくなってしまい、僕が駆け付けたときには両親とも出血も酷くて、その場で救急車やレスキューとか思いつく限りのところに連絡しました、でもその日はとても寒く雪も降っていて救急車が到着した時は既に父も母も眠るように…その後僕は小町おばさんに引き取られて今に至ります」

 

「そう…」

 

「父も母も即死ではありませんでしたから死ぬ間際にも、自分を大切にしろということと、あなたに出会ったら必ず助けになってくれと、あいつはいつもなんでも自分で抱え込んで辛い思いをしているからと、そういってました。」

「ごめんなさい、辛いことを思い出させてしまって、でもどうしても聞きたかったの、二人とも私の大切な友人、いえそれ以上の関係だったから」

 

「知っています、父も母もあなたのことをよく話してました。特に父は酒が入るとこの3人が写ってる写真を見せながら『高校時代俺は母さんとこの雪ノ下二人に惚れられていたんだぞ、特にこの雪ノ下は俺にべたぼれでな、しかもこいつはいいところのお嬢様だったからもしかしたらお前は御曹司になってたかもしれん、俺も専業主夫になって働かずに暮らせてたのかもな』なんてこといってました」

 

「バカね…私と結婚したら勇くんは生まれてこないじゃない…」

雪乃は照れくさくなって下を向く

「母も『ゆきのんと母さんは恋のライバルだったんだ、でもお父さんはひねくれてて二人とも苦労したのよ?』なんて言ってましたね」

「ふふふ、そうね…」

懐かしさと悲しみが雪乃の胸にこみ上げてくる、

「そして必ず父も母も『将来雪乃に出会うことがあったら必ず助けてやってくれ』といっていました。ですので何か助けになれるかもしれない、そう思って高校卒業後僕は雪ノ下建設に入社したんです」

 

「比企谷くん、由比ヶ浜さん…」

こんなに二人から思われていたんだと、なんでもっと早く会いに行けなかったと雪乃は悲しみと後悔で胸がいっぱいになり涙がこぼれる

 

比企谷勇は話を続ける

「それで父も母も深くは話さなかったのですが、僕としては大変疑問なことがありまして」

「何かしら?」

涙を拭きながら雪乃は答える

「なんでも雪乃…藤堂さんは突然知らない人と結婚をすると言っていたそうですね?、父と母は不本意な結婚だったんだろうとか言ってましたが、なんで事前に相談とかしなかったんです?解決できなかったかもしれませんが心の準備とかあると思いますが」

 

「それは…いまのあなたに関係ないわ」

雪乃は鋭い目つきに戻り勇をにらみつける

 

「そうですか、それは失礼しました。ですがこうして会ったのです、父と母の意思通り藤堂さんの手助けがしたいと思っています。何かありませんか?」

「貴方はお父様とお母様が今でも大好きなのね」

「当然です!父も母もとっても僕によくしてくれましたし、それに父にも母にも尊敬するところがたくさんあって、僕も将来こうなりたいって目標の一つになっているぐらいです」

「ふふふ…愛されていたのね…では今度の出張に同行してもらうのはどうかしら?荷物持ちがほしかったのよ」

「ええ!喜んで!父もよく荷物持ちをしたと言ってましたし!」

「ありがとう、ついでと言ってはなんだけど、出張まで数日あるし、それまで雑用もお願いできるかしら?」

「もちろんです!」

こうして比企谷勇は雪乃の臨時荷物持ち兼秘書としてつきそうことになった。

 

 

数日後、出張日当日の飛行機の中

「行先は福岡ですね、中州ってところにあるモツ煮込みがおいしいらしいですよ?楽しみだな」

「勇くん?遊びに行くんじゃないのよ?」

雪乃はいつのまにか勇を名前で呼んでいた。

これは単に親しくなったからだけではなく無意識に比企谷八幡と区別しているからであった。

 

そしてこれもいつも会話である、数日身の回りで働かせて気が付いたが、勇は適当なようでいつも締めるところはきちんと締める、以前の比企谷八幡を彷彿とさせるその態度に雪乃は信頼を置いていた。

かといってそばに置いておけるのは今回が最初で最後である、雪乃はこの件が終わったらまた別なセクションに移動する予定が有あるからだ。

 

「ねえ勇くん」

「なんですか?モツ煮込み以外はラーメンもおいしいそうですよ?」

「そういうことではなくて…」

雪乃はいつになく真剣な表情で話し始める

「この飛行機が落ちたらどうなるのかしら?」

突然の質問に勇は無言になる

「…」

「いえ…まだ死にたくないわね…」

「藤堂さん、悪い冗談はやめてください」

雪乃は続けて言う

「女の幸せって何かしら?これじゃあ浮かばれないわね…」

雪乃の目には恨みが光っていた。

 

雪乃のそばで数日働くうち、雪乃が子供が出来ないということを理由に、夫は外に女を作り遊び歩いているらしいということを何度か耳にしたことがあった、勇は雪乃の気持ちを理解できるような気がした。

 

雪乃は続けて言う

「女の幸せってどんなものなのかしら、一度でいいからその幸せを手に入れてみたいと思うわ、そしたら私このまま死んでもいい」

「藤堂さんそんな縁起でもないこと言わないでください」

勇はそう言い座席に体をうずめるのだった。

 

空港に到着する、今回の飛行機は小型便であり全員エコノミークラスだったため体力のない雪乃はへとへとになっていた。

その為かタラップを降りる際、足を滑らせてしまう

「危ない!」

先に降りてた勇が振り向きざまに雪乃を抱きしめる。

勇の頬が雪乃の胸元に触れ、強烈な年増のにおいと体の温かさを感じ少しめまいを感じた。

雪乃は思わず髪が崩れるのも構わずギュッと勇の体を抱きしめるのに必死になった。

この年まで女を知らない勇にとっては女性を抱きしめたということは衝撃的なことであった。

 

福岡到着後のスケジュールはあまり順調とは言えなかった。

台風が近づいてるということもありここ福岡でも荒れ気味の天気になっていたためだ。

その為スケジュールを早々に切り上げホテルにチェックインしたのだがここでも問題が起きた。

 

「大変申し訳ございません」

ホテルの支配人が目の前で頭を下げている。2部屋予約したはずが手違いでツインの部屋になっていたためだ。

「現在全部満室になっていまして他に部屋が取れず申し訳ございません」

支配人はもう土下座せんばかりの勢いだ。

「僕はその辺のカプセルホテルとかに泊まるからいいっすよ?、なんなら漫画喫茶でもいいですし」

勇はそういって自分の荷物をまとめようとする。

 

「だめよ、明日の打ち合わせもあるじゃない、特別に同じ部屋で寝るのを許可するわ、それにあなたのお父様は女性と二人っきりになっても絶対手を出すような人ではなかったわ、あなたもおなじでしょう?」

「なんか父さんは悲しい意味で信頼されてたんだな…わかりました、それに自分の上司に手を出したりしたら後が怖いですものね」

 

そう言って勇は二人分の荷物を抱えて雪乃をあとをついて行く。

部屋で明日の打ち合わせを軽く行い、交互に風呂に入った後、フロントからは今回の侘びとして近所のダイニングバーの大幅な割引券をもらったので食事に出かける、二十歳になったばかりの勇も雪乃と一緒に食事をしながら飲むこととなった

「この私がお酌をするのよ?有難くいただきなさい」

そういって酌をしながら笑う雪乃は美しく、勇は飛行機のタラップで抱きしめた感触を思い出し緊張であまり飯が喉を通らなかった。

 

部屋に戻りテレビを見ながらぼーっとしていると雪乃は真剣な表情で勇に話しかけてきた。

「あなた私と初めて会った日、何故私はあなたのお父様とお母様に何も言わず結婚を決めたのか聞いたわよね?」

「ええ、でもそれは話したくないことでは?父も母もいない今となっては無理に聞いても仕方がないことです」

「いいえ、話すわ、罪滅ぼしにはならないと思うけど今話さなかったら永遠に機会は失われてしまうもの」

そういい雪乃は何故二人に黙っていたのかを話すことになった。

 

雪ノ下家では海外進出も視野に入れていたためその手助けとなるパートナーが欲しくそのつながりが必要だったこと。

陽乃という姉もいたが姉は婿養子を取るので嫁にはいけない、よって当時まだ高校生だった雪乃に白羽の矢がたったこと。

 

もちろん雪乃は反対したが、雪乃の母はこれを受け入れないと、比企谷八幡と由比ヶ浜結衣の両親の職場へ圧力をかけると言ったこと。

雪乃の父は県議会議員でもあり各方面に顔が利く、無論地元企業とも関係が深く影響力がある上に雪ノ下建設自体様々な企業に食い込んでおり影響力があるため人を数人どうにかするなど簡単だったこと。

その為雪乃は結婚の話を受け入れたこと。

 

「もしこれをあなたのお父様お母様に話していたら、たぶんあなたのお父様は本当に全てを捨てて私を守ってくれたのかもしれない、しかも自分だけが傷つく方法で、それだけは嫌だったの、だって私あの人に惚れていたもの」

 

そして雪乃は話を続ける。

死んだつもりで嫁いだこと、夫がだんだん離れて行って今はうわべだけの間になってること、八幡と結衣が死んだと聞いた時の悲しみ、勇と出会ったことに対する喜び、学生の頃の記憶

 

愚痴と恨みと遠い思い出の数々を言い終わると雪乃は勇の手を取って涙を流した。

勇は思わず雪乃の手を握り返す、それから二人の間はなんとなく主従関係の垣根が低くなり急に温かい心の通じる思いが走るのを感じた。

 

そして深夜に差し掛かったこともあり二人はそれぞれのベッドで寝たが何故か寝苦い夜を過ごした。

 

次の日、先日のスケジュールの遅れを取り戻すべく朝早くからホテルを出、あちこちを駆け回ることとなった。

天候も回復し、元々余裕をとっていたたこともあり順調にスケジュールは消化でき、夕方の飛行機の便には余裕で間に合う形となった。

「この分だと夜には帰れそうですね、でもモツ煮込み結局食べられなかったな」

「ふふふ、そうね、こんど一緒にもう一度来ましょうか?」

そう言って笑いあう勇と雪乃は傍から見ると主従関係には見えないのであった。

 

しかしまたここで問題が生じる、飛行機が悪天候で飛べないというのだ。

もうホテルはチェックアウトしている為本社に連絡しもう一泊していく旨を伝える。

本社ではついでなので明日もう一つ河川工事の現場の視察をしてくれと言ってきた、ただホテルは自分たちで取ってくれとのこと。

 

なんとか宿泊先を見つけチェックインをする。

部屋は全開と同様ツインにした、ここで雪乃はいたずら心を出し宿泊者カードに「比企谷雪乃」と書き、勇と顔を見合わせて笑い別れの日が一日伸びたことを喜び合った。

 

夕食を取りに街へ出る前、雪乃は化粧を整える、雪乃が鏡の前で長い髪を整え白いうなじをさらしている後姿は勇にはまぶしく映った。

雪乃は思い切って化粧を濃くしてみることにした。

そうして二人は弾む思いで夕食を取る、安い酒も今晩はとてもおいしく感じられた。

 

その晩二人はベッドで一つになった。

雪乃は勇と目を合わせると

「おねがい、今だけは雪乃と呼んで…」

「…雪乃…」

勇は本能の赴くまま雪乃を抱く

「比企谷くん!比企谷くん!」

雪乃はもはやこの世にはいない思い人の名を呼び続ける。

そして雪乃は女の幸せを握ったと確信したのだった。

明日の別れを前に雪乃と勇は主従関係やしがらみやお互いの年なども忘れ外が白むまで愛し合った。

 

次の日、河川工事の現場へ赴く二人、川は増水しており流れがかなり急になっていた。

「急場しのぎで作った橋ですので足元にお気を付け下さい」

現場責任者から案内され鉄パイプでできた仮設の橋を渡る。

 

雪乃が増水した川を覗き込んだその時、つかんできた鉄パイプが何故か外れ雪乃は川に放り出される。

「雪乃さん!」

勇は服を着たまま増水した川へ飛び込む、そのまま流され二度、三度と勇が顔を出したのが見えたがそれっきり見えなくなった。

 

現場は騒然となり、レスキューやら救急車が呼ばれ捜索が開始され、かなりの下流で流木に引っかかっている二人が発見された。

勇の腕は雪乃の体をしっかりと抱いていたところ見ると一度は水面に上がろうとしたらしいが流れが急でそのまま上がれなくなってしまったものと思われた。

必死の蘇生措置によって勇は蘇生したが雪乃が目を覚ますことは二度と無かった。

溺死にもかかわらず雪乃はほとんど水を飲んでいなかったらしい、その為自殺では?とも思われたが川に落ちた状況からみてそれは無いと判断された。

 

それから月日がたち比企谷家の墓の前

「父さん、母さん、ごめんなさい、雪乃さんに出会えたけど結局助けてあげられなかった…」

墓の前でうなだれる

 

「あと…やっぱり雪乃さんは父さんの事が大好きだったみたい、あの人は俺を見てるようで俺を通してずっと父さんを見てたよ」

そして勇は雪乃に会ってから今までのことを墓前の前で語る。

 

「助けてあげられなくて本当にごめんなさい、でもきっと雪乃さんもそっちに行ってるだろうから寂しくは無いと思うよ」

ポケットから3人が映っている写真を撮りだす。

「これはもう不要だね」

そう言って写真に火をつけるとあっというまに写真は灰になって空へ消えて行った。

 

「さて父さん、母さん、僕はもういくね、雪乃さんがいない以上雪ノ下建設にいる意味なくなったからもう辞めたんだ。しかも事故の時雪乃さんを助けようとしたってことでお礼として退職金に色つけてもらって結構なお金ももらっちゃったしね」

勇は立ち上がり歩き出す。

 

墓地から出て大きく伸びをする。

「さーてこれからどうしようかなー」

勇はそう言って都会の雑踏の中へ消えて行った。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「ここはどこかしら…」

雪乃はそう言って目を覚ます、どこかの廊下らしい所に倒れていたようだ。

「たしか川に落ちて…」

自分は確かに川に落ちてしまったはずだ、不思議に思い周りを見渡す

 

「どうも見覚えがあるような気がするのだけど」

窓の外は黄昏時で薄暗く空は夕焼け色に染まっていた。

ふと窓にうっすら映る自分の姿を見て驚愕した、服装も見た目も高校の時そのままだったからだ

「これは一体どういうことかしら?」

暗い廊下の前方へ目をやると、光の漏れてる教室が見えた、唐突へあそこへ行かなくてはという強い思いが雪乃を支配する、はやる気持ちはそのまま足へと伝わり駆け足になる。

 

教室の扉を開けると高校の時そのままの比企谷八幡と由比ヶ浜結衣がそこにいた。

「よう雪乃、お前までこっちに来ちまったか」

「やはっろー、ゆきのんうれしいけどこっちにくるの早すぎるよ」

 

「何故あななたちが…」

混乱している雪乃に八幡は問いかける

「俺たちの息子は役に立ったか?」

その質問にここがどこなのか、自分がどうなってしまったのか雪乃にははっきりとわかった。

 

「ええ、とっても…」

雪乃は答えながらあふれ出る感情に耐えられずその場に泣き崩れてしまう。

 

「ごめんなさい、私あなたたちにきちんと説明もせず黙って遠くに行ったりして、でもどうしようもなくて…ごめんなさい…」

八幡は泣き崩れている雪乃の頭をそっと抱きよせ黒い髪をなでながら言う

「いいんだ、勇に全部聞いた、おまえは良く頑張ったよ、偉い、すごいよ」

「比企谷くん…」

雪乃は比企谷の胸で泣き続ける

 

「ゆきのん、また3人でいられるね!奉仕部再結成だ!忙しくなるね!」

結衣はいつもの明るさで言う

 

「再結成?忙しくなる?ってどういう意味かしら?」

結衣が奇妙なことを言うので雪乃は顔を上げる

 

「そうだ、実はこっちでも奉仕部の仕事はあるんだよ、今まで二人でやってたんだがやっぱ雪乃がいないとしまらねぇよ」

八幡は嫌そうな目をして言う、でもその口は明らかに笑ってる

「ここにはしがらみも、余計なちょっかい出す奴もいない、3人ずっと一緒だ…雪乃」

「比企谷くん!」

雪乃は八幡の体を強く抱きしめる

「あーゆきのんばっかりずるい!あたしも!」

「おまえは生きているうちに散々やっただろうが…」

 

ここにはもう3人の関係を邪魔をするものはいない

そう思うと雪乃はうれしさのあまり結衣と2人で両脇から八幡を抱きしめるのだった。

 

と、その時扉をノックする音が聞こえる

「ほらきた、いっつも面倒事ばかり持ち込むんだよここにいる連中は」

 

さて鬼が出るか蛇が出るか、何が出てもこの3人なら必ずどうにかできる、雪乃はそう確信していた。

「では二人ともいつもの場所に座りなさい」

「ふ、いつもの調子が戻ってきたじゃないの、ここの住人をみて驚くなよ?」

 

「あなたの腐った目よりははるかにまともだと思うわ腐り目谷くん?」

「おまえ、調子戻りすぎだろう…」

「ふふふ、そうね」

そう雪乃はいたずらっぽく笑い扉に向かって言う

 

「どうぞ」と

 

 

 




終りです。
主役3人はなんか儚いって言葉が合うような気がしてこの話を思いつきました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。