闇金融、紫陽花金融は五日で十割という暴利で債務者から金を毟り取る
違法業者だった。
紫陽花金融が闇金融界隈の猛者に成り上がる
残酷で非情な話。
------闇金融------
ドンッ!事務所に鈍い衝撃が走る。
「なんで返済日に来なかったんだ?ゴラァ!」
その衝撃と共に男の怒鳴り声が鳴り響いた。
「うるせぇよ、もっと静かに取り立てろよ」
そこに社長が割り込む。
私が勤めている金融屋、紫陽花金融(あじさいきんゆう)は一般的な闇金融だ。
その闇金融の社長、神崎棟一郎(かんざき とういちろう)は冷酷無情そのものだ。
そして、神崎社長が割り込む前に怒鳴っていた男、東城晃(とうじょう あきら)は
紫陽花金融の取り立て役らしい。
「すいやせん、社長」
「...で、斎藤さん、返済どうすんの?」
「そ、それがぁ...」
「それが?」
「もう少しだけ待っていただけないでしょうか...」
と、女性債務者が言葉を言った瞬間。
ガコン!事務所に鈍い衝撃が走った。今日で何回目になるのだろう...。
「もう待てねぇ、お前の借金はとうに300万を超えた」
この負債者は紫陽花金融に5万を借りに来た。
私が勤める紫陽花金融は五日で十割なので5万が10万、10万が20万と膨れ上がり
現在、彼女の借金額は320万円。とっくに払い切れる額ではない。
「だ、大体!、あなた達闇金でしょ!」
「...」
「俺が被害届出して、困るのはそっちでしょ!!」
そう言い放った債務者。その言葉で神崎社長の逆鱗に触れてしまった。
「お前、普通の金融から金借りれねぇからうちに来たんだろ?
自分の身分考えろ、馬鹿野郎が」
「うぅ....」
恐らく、神崎社長が言い放った事が図星だったのだろう。
完璧に論破された。
「で、返済どうすんの?」
「今は、払えません...」
その言葉に神崎社長は唇を斜めに上げて鼻で微笑した。
「だったら他の仕事もすっか」
「他の仕事?ですか?」
「お前には裏フーに流れてもらうぜ」
裏フーとは、所謂裏風俗店の俗語である。違法な性的行為が行われている風俗店である。
「嫌よ!そんな下品で危険なところ!」
「じゃあ、どうやって返済すんの?」
「それは....」
瞬く間に、事務所内が閑散とする。
「親戚を周ってお金集めてきます...」
「金集まらなかったら、本当に風俗に流れてもらうぜ」
「はい...」
「んじゃあ、五日後に100万、返済してください」
「わかりました...」
五日で100万。無理な話だ。返済できても十分の一がいいところだろう。
「神崎社長、流石に五日で100万は酷過ぎやしません?」
「東城、お前何もわかってねぇな」
「はい?」
「裏フーは紹介料が50万、年齢や顔に沿ってプラスの金額がつく、
彼奴の年齢は21歳だろ?だから80万は下らないんだよ」
「成程、そういうことなんすね、これなら彼奴が五日後に100万返済できなくても儲かるってことなんすね?」
「は?何言ってんだ?お前」
「え?」
「五日後は利子が掛かる日だぜ?」
「ってことは...」
「そう、借金額は320万の十割増し、詰り640万の負債ってことだから320万が本当の返済額だよ」
神崎社長はいつもこうだ。人をいいように陥れて、最終的には自分のいいように事を運ぶ。
今回もそうだ。女を限界まで絞って、酷な選択をさせる。
「詰り、五日後に女は返せるだけの金額を持ってくる。でも返済額を満たしていないから
結局裏フーに流れる、ってことっすね?」
「あぁ、そういうことだ」
「それに、裏フーに流れたら、一ヶ月の稼ぎの半分をウチが掻っ攫える」
「クゥー、神崎社長は頭が切れますねぇ」
「フン、あの糞金主がいなければの話だがな」
------金主------
今日は神崎社長が金主に会う日。
金主というのは、金融屋の元手を担う人の事。
俺が勤める紫陽花金融は、五十嵐財閥っていう大きい財閥から借りてる。
その財閥には3億借りている。それを月に500万返すことになっている。
詰り、五年間、月500万返すということだ。今は三年目。残りは1億2千万だ。
これだけ聞くと、デメリットしかないように見えるが、ちゃんとメリットもある。
この財閥には配下としてとても大きい暴力団組織を置いている。そこにも多額の資金を貸しているらしい。
その暴力団組織の配下の組合をケツ持ちとしてくれるという話だ。
ケツ持ちというのは、企業のバックについて揉め事の仲介に入ってくれる役の事。
木々の茂みの中から神崎社長の顔が見える。こちらに戻ってきた。
神崎社長の顔は言うまでもなく怒りに満ち溢れている。
金主に会うときは神崎社長の機嫌が悪い。
これを知ってるのは恐らく俺だけだろう。
金主に会うときは必ず俺と社長の二人で行くのだからな。
「金ヶ崎、開けろ」
「はい」
黒塗りフルスモークのBMWを開ける。
「神崎社長、どうでした?」
「フン、相変わらず腹が立つやつだったよ、畜生」
「んなこたぁどうだっていいんだよ、さっさと車を出せ」
「うい」
如何にもな車を国道で走らせる。
「神崎社長、この後はどこへ?」
「取り敢えず、大友組の事務所に行くか」
大友組というのはウチのケツ持ち組合である。
ケツ持ち料として年間で金主への返済料500万の半分250万を支払っている。
「うい」
と言って、俺は大友組の事務所へ車を走らせる。
神崎社長はというと、大友組の組長、大友純一郎(おおとも じゅんいちろう)の側近
後藤真輔(ごとう しんすけ)に電話を一本入れていた。会話の内容から察するに恐らく確認の電話だろう。
「そういえば神崎社長、どうして大友組の事務所へ?」
「あぁ、それはな...」
「はい」
「この前、俺にヤンキーの居残りみたいな奴が金借りてきてよ」
「その時に、そのヤンキーがよ、所謂半グレ連中でよ」
半グレというのは、ヤクザに所属しないで犯罪犯してる連中っていうこと。
「半グレ、ですか」
「あぁ、その半グレ連中がヤケにしつこくてな、ちょっと大友組長にお願い出来ねぇかなって思ってよ」
「成程」
そして、大友組の事務所まで車を走らせて行った。
------大友組------
大友組の事務所へ着いた。その事務所というのは、ビルのようなもので
外見は証券会社のように見える。駐車場もそこそこ広い。
だが、奥の日陰になっているところに停まっている車は黒塗りの高級車ばかり。
どれもフルスモークで、厳つい車である。
「神崎社長、着きました」
「あぁ、んじゃあ行くか」
「はい」
大友組長は細身で白スーツに紫のワイシャツを着ている厳つい人。
外見によらず意外と優しい一面を持っているが、事が変わると人も変わる。
ビルの自動ドアを開けると、取引先と思われるサラリーマンが居たり、従業員が居たり
一見普通の会社にしか見えない。
エレベーターで二十五階まで上がる。すると『関係者以外立ち入り禁止』という文字が書かれた扉がある。
その扉を開けると新しいエレベーターがある。そのエレベーターで更に五階上がると、大友組長の事務所になっている。
事務所に入ると全員厳つい黒スーツの人たちが出迎える。
「誰だ?お前は」
「関係者以外はお引き取り願いたい」
事務所内の新人らしき人間が神崎社長に威嚇をする。
「お前等こそ誰だ、見たことねぇ顔だな」
「アァ?なんだとゴラァ!」
「んなことより早く後藤呼べよ」
「後藤さんを呼び捨てにしやがって、舐めてんのかゴラァ!」
「舐めてなんかいねぇよ」
何故か組の事務所内でちょっとしたイザコザが生じてしまった。
「てめぇふざけてんじゃねぇぞゴラァ!」
そういって殴りかかってきた新人。その拳は神崎社長の右手で軽くあしらった。
「んなことしてる暇ねぇんだよ、さっさと後藤呼べよ」
「こ、この野郎!」
そういって新人は胸ポケットから刃物を出そうとした瞬間。
「グハッ!!...」
後ろから思い切り殴り掛かったのは後藤だった。
「神崎社長、すいやせんね、此奴新人なもんで、許してやってください」
「あぁ、早く大友組長のところまで案内しろ」
「はい畏まりました」
神崎社長の恐ろしさはどうやらこの地域に流布しているらしい。
神崎社長と共に、俺は大友組長のもとへ行く。
「こちらの部屋に親父はいらっしゃいます」
「おう、ありがとな」
そういって部屋に入る。
「大友さん、お久しぶりです」
「おぉ、神崎チャンじゃねぇか、なんだ、俺に用か」
「はい、そのために伺いました」
「そうかい、まぁ座んな」
「はい」
そうして、例の半グレ連中の話をした。
「そんなん神崎チャン一人で片付くだろ」
「それが、その半グレ連中、意外と大規模らしくて」
「なんだっけ?半グレ連中の名前」
「嶽斗(がくと)です」
「そうそう、その嶽斗とかいう奴らから金を分捕れば言い訳?」
「はい、金額が300万程ですので、そのうちの三分の一、100万を大友組へ寄付させていただこうかと」
「うまい話じゃねぇか」
「でもな、半グレの案件となると俺は飲めねぇな」
「どうしてですか?」
「俺のところは半グレとか一本独鈷とかは取り立てに行けねぇんだよ、会長に言われちゃ仕方がないだろ?」
「そうですか...」
「それによ、俺は会直属組合じゃねぇしな」
大友組は大元の大組織、慧罵会(えばかい)の直属組合ではない。
慧罵会直属組合の蘊狽組(うんばいぐみ)の傘下に位置する組合なのだ。
「だからよ、俺の兄貴分に頼んでやるよ」
兄貴分というのは、蘊狽組組長、蘊狽知宏(うんばい ともひろ)の事だ。
どうやら、大友組の上の組合にまで話が進んでいった。
これは事の大きさが尋常ではない。俺は今初めてそう確信した。
皆様、はじめまして!飛穢髏(ぴえろ)といいます!
今回の作品は僕の処女作です。
処女作というだけあって、文の推敲はしたのですが
話に齟齬があったかもしれません。
その辺りはご了承ください。
次回の投稿は未定ですが是非ご覧ください!