ルパンをル○バに空目したらこうなった 作:しず(しず)
原作:東方Project
タグ:R-18 ガールズラブ 霧雨魔理沙 アリス・マーガトロイド アリマリ マリアリ リバ 百合 東方Project
奥手なかまって魔理沙と、考えの読めないお姉さんアリスのアリマリ。アリマリえっちが書ければ何でもよかったなどと話しており(ry
(初出:2013/01/20)(他サイトと同時投稿です)
奥手なかまって魔理沙と、考えの読めないお姉さんアリスのアリマリ。アリマリえっちが書ければ何でもよかったなどと話しており(ry
(初出:2013/01/20)(他サイトと同時投稿です)
// はじめに
某キャラ専スレにて「ルパン」を「ル○バ」に空目。
ル○バ魔理沙だと…!?
そして
こうなった
↓
このたびは、当社の製品をお買い上げいただき、まことにありがとうございました。
この製品を目的以外にはご使用にならないでください。
ご使用の前にこの取扱説明書をよくお読みになり、正しくご使用ください。
お読みになったあとは、保証書とともに大切に保管してください。
【1.ご使用の前に】
節気は秋分にいたり残暑は今やすっかり消え失せ、湿気を含んでまとわりつくようだった空気と入れ代わりに、幻想郷にはからりとした風が吹くようになりました。
澄み渡って晴れた空、そのおかげで天が高く感じられる、そんなある日の午後のこと。
中天を過ぎたゆるい日差しを受けて、きらきらと輝く水面の湖上を空を飛んで越えれば、石造りの大きな紅い洋館はすぐそこです。
のんきそうに門柱に寄りかかっていた人物が背中を浮かせてこちらを向くのが見えたので、魔理沙はずいぶん手前のほうで地面に降りて、歩いて門に近寄りました。
「よ、美鈴。いい天気だな」
「……こんにちは魔理沙。今日は正面突破の気分なの?」
片手を上げて気安く挨拶する魔理沙とは反対に、萌葱色の大陸ふうの服を纏った赤い長髪の少女、美鈴はひきつった笑顔でもって出迎えます。
魔理沙には館に、主に地下にある図書館にこっそり忍び込んだり堂々と正面突破したりとにかく勝手に入り込まれることがほとんどです。なので、主人より門番を仰せつかっている美鈴としてはこうして正面から門にやって来られても、警戒せざるを得ない相手なのでした。
「言いがかりだな、まるでわたしが押しかけ強盗みたいじゃないか」
心外だと言わんばかりに肩を竦める魔理沙を見て、美鈴はため息をつきました。死ぬまで借りると称して勝手に物を持ち出すことの何が強盗と違うのでしょう。
けれど、目の前の弾幕ごっこが得意なこの小さな魔法使いを、対話で追い返せるならそれに越したことはないと思い直して、訊いてみることにします。
「じゃあ、何か用なの?」
「掃除をしに来たんだぜ」
「そうじって、掃除? 泥棒の間違いじゃなくて?」
「そ・う・じ・だ・ぜ」
思わず訊き返した美鈴に、魔理沙はスカートのポケットから洋風の封筒を取り出して差し出します。封筒の預かり主より門番に見せるようにと言われているものです。
美鈴は怪訝な表情でそれを受け取って、中の几帳面に整った字で綴られている手紙に目を通すと、ますます怪訝な顔になりました。
「ええっ……魔理沙なの?」
手紙によれば、美鈴より頭ひとつ分より低い位置で三角帽のつば下にどや顔を浮かべている白黒は、たしかに魔法の森の人形遣い、アリスの使いの者でした。
掃除洗濯人事采配まで館のもろもろの業務を取り仕切っているメイド長より、門番の美鈴が言い置きされているのは『今度アリスの使いがやってくるから、来たら案内して』というものでした。誰あるいは何が来るのか、具体的なことは聞かされていません。
相手は警備突破常習犯ですが、手紙に魔理沙を向かわせると書いてある以上、アリスの使いであることには変わりはありません。
「ううん、いいのかなぁ……」
美鈴は門を開けて、言い付けの通りに魔理沙を館内の一角まで案内すると、釈然としない面持ちのまま去って行きました。
【2.使いかた】
【§運転の機能】
魔理沙が案内されたそこは、館の廊下の片端でした。
ただし、まっすぐに奥へ伸びているその空間は、幅は両手を左右に広げた魔理沙が三人ぐらい、指先が触れ合わないですれ違うことができそうなほど広く、円みを付けた天井は、箒を逆さにして上に伸ばして穂先を届かせるのにあと二本ぶんの長さが必要そうな高さがあります。
これは別段、魔理沙が同じ年頃の博麗の巫女や人里の少女と比べて小さいほうであるせいではありません。実際に廊下というには広いのです。
一定間隔ごとに窓が、窓よりは開いた間隔で扉が、左右の壁それぞれにいくつも並んでいて、突き当りの壁には廊下の幅と高さ半分ほどの大きさの両開きの扉がありました。
広さに相応しく、扉に辿り着くまでの歩数を数える気にもなれないほどの長さを兼ね揃えているこの廊下は、掃除のし甲斐については文句のつけようがありません。
が、しかし。廊下を見渡したところ、汚れているところがないばかりか、ぴかぴかに磨かれていてちりひとつ落ちていません。きっとあの完全で瀟洒な従者の仕事によるものなのでしょう。
掃除の必要性を全く感じませんでしたが、しかし、魔理沙には必要があったので、魔理沙は箒を動かすことにしました。
アリスが作ったこの”掃除するからくり”は、箒と指輪とリボンからなります。
アリスから渡された箒は、ヒノキの柄に目の細かいソルガムのしなやかで柔らかい穂体を持つ洋風の箒でした。穂を柄に括りつけている部分がフリルをあしらった黒のギンガムチェックの布地でカバーされていて、ゴシックな見た目が可愛らしいです。
明るい緑色をしたリボンはすでに、右側の髪を結っている三つ編みを留めているところにつけています。こちらはレースで縁取られていて、色や大きさは違いますがアリスがショールを留めているリボンタイに似ています。
魔理沙は箒を小脇に抱え、懐から文様の刻まれた銀の指輪を取り出し、左手の中指にはめました。すると、どうでしょう。
「こいつ……動くぞ!」
支えなおした箒は穂先が床につくやいなや、見えない何かに操られるようにして床を掃く動きをし始めました。魔理沙は腕にはいっさい力を入れていません。
指輪をつけている者から魔力の供給を受けて、箒が自動で床を掃く。掃除するからくりというのは、仕組みはわかりませんがそういったものであるようでした。
魔理沙は、これには素直に感心しました。もともと好奇心が旺盛で、こと魔法的なものには目がない性分です。
にわかに沸き上がってきた探究心と愉快な気持ちとが、ここへ来て掃除をすることになった経緯のおかげで少々沈んでいたこころをいくらか晴らしました。気分が少し軽くなったところで魔理沙は箒を誘導し始め、いよいよ掃き掃除を開始しました。
【§バーチャルウォール】
廊下の奥の突き当りまで、あと半分ほどの距離に差し掛かりました。
どこまでいっても変わり映えのしない濃い煉瓦色の光沢ある石床を掃くのにどうにも飽きがきてしまった頃、魔理沙は扉が並んでいる側の壁が大きくえぐられている場所までやって来ていました。
廊下の半分ぐらいの幅で、コの字型に壁で囲われた奥行きのある空間には床がありません。その代わりに地下へ下りている階段があって、階段を下りきった先の少し奥まった突き当りの壁には、幾何学模様のようなレリーフが施された両開きの大きな樫の扉が見えています。おなじみの地下図書館への入口です。
「図書館と言えば……」
広大な館内の数えきれないほどの書棚。その天板の上や収納されてる本の天、人が滅多に立ち入らない通路のどれも例外なく、埃が積もっているのを思い出しました。
埃があるなら、掃除をしない道理はありません。その際に本がうっかり掃除に巻き込まれて紛失してしまうことがあるかもしれませんが、それは魔理沙からすると仕方のないことなのです。魔理沙にとって面白そうな本、好みの本ならなおさらです。
「必然であり、偶然だな」
うんうん、と頷きながらひとりごちて、魔理沙は箒を床から離し小脇に抱えて階段に向かいました。
ところが。
階段に足を踏み入れようとしたら、なぜか体が勝手にくるりと踵を返して、やって来た方向に逆戻りしてしまいました。
「なん……だと……!?」
もう一度階段に向かってみますが、同じことになります。何をされたのかさっぱりわかりません。
試しに魔法で宙に浮いて天井のほうから、あるいは天井と床の中間ほどの高さから進もうと試みましたがやはり、迂回するかのように戻されてしまいます。
廊下を往く妖精メイドたちが、入り口で行ったり来たりを繰り返す魔理沙を不思議そうに眺めながらそばを通りすぎていきました。何人かは何事も無く図書館に入って行きます。
頭の中に疑問符を浮かべながら改めて周囲を見てみると、階段入口の端の床に小さな黒い箱のようなものが置いてあるのに気が付きました。
魔理沙は思い出しました。これは結界を発生させる魔法具です。これが置いてある先にはこのからくりは入れないのだと、アリスから聞いています。
この装置がからくりにとっての見えない壁を創りだして、掃除をする範囲を区切ることができるとか何とか。先行して搬入、設置されているとは知りませんでした。
いずれにせよ今の魔理沙には階段に立ち入ることができないのは明らかです。
「ちぇっ……」
魔理沙はしぶしぶ図書館侵入を諦めました。
「捗ってるかしら?」
背後から突然声がして、魔理沙が振り返るとそこには、メイド服姿の銀髪の少女、咲夜がいつの間にか立っていました。その手にはウエストから伸びる細い鎖に繋がっている銀の懐中時計。つい先刻まで廊下に咲夜の影も姿も無かったにも関わらず突然あらわれたのは、能力で時間を止めてここまでやってきたためでしょう。
咲夜は怜悧な印象の整った顔に微笑を浮かべていて、魔理沙が館にいるのを咎めたりしません。美鈴から知らせを受けて、アリスの使いとして魔理沙がやってきたのを知らされたのでしょう。
「様子を見に来たわ」
「ありのまま今起こったことを話すぜ」
階段を降りようとしたら、いつの間にか引き返してた。種は案外チャチなものだったぜ――魔理沙はいかにも神妙な面持ちでそう話してから、やれやれだぜとわざとらしく表情を崩し、手の平を上にして肩を竦めました。
「せっかく万年埃を掃除してやろうと思ったのにな」
懐いていたうろんな考えはどこ吹く風で魔理沙が言うと、咲夜はにっこり笑顔で言います。
「殊勝ね。それじゃ、いつかやるお掃除のときには手伝ってもらおうかしら」
「あー。あいにくだが大掃除の日はきっとたぶん用事が入ることになってるんだぜ」
「人手はあればあるほど助かるわ。何しろ一度も掃除したことないから」
「うえっ……そうなのか?」
図書館大掃除を手伝うとの約束をとりつけられそうになってしどろもどろになっていた魔理沙は、耳新しい事実に思わず訊き返しました。
「わたしがお屋敷に来るより前も、掃除したことがないとパチュリー様がおっしゃってたわ」
「おいおいそれは」
図書館、というかこの洋館について詳しいことは知りませんが、建てられたのは少なくとも一、二世紀前どころの話ではないことは魔理沙にも直感的にわかります。
ということは、咲夜の能力によって空間が拡げられたおかげで、何百年かで積もりに積もった埃が図書館全体に薄く伸ばされて存在していることになります。
「道理でほこりっぽいはずだぜ……」
パチュリーの喘息の症状が善くならないのも納得です。
「ん? でも、まてよ……?」
「そ。一部だけ、あの子がね」
見上げてきた魔理沙の疑問を察して、咲夜が頷きます。
こっそり忍び込んで隠れて本を読んでいる魔理沙は、図書館の奥の方や端っこがたしかに埃まみれなことを知っています。でも、パチュリーがいつもいる円卓の周りはそんなことはありません。一度も掃除してないと言うには、キレイなのです。
咲夜は、小悪魔が主人のために図書館全部は無理でも、パチュリーのいつもの居場所の周りだけはしっかり掃除していると言っているのです。
本にかじりついて一切動かないパチュリー。飲食も眠ることも必要としない魔女ですから、それこそ置物のように長時間、周りのことは関知せず疲れ果てるまで本を読み続けます。
主の命じる僅かな用事の他で、小悪魔から掃除を提言することは、主従間の交流の数少ない貴重な機会なのでしょう。
得心がいった魔理沙は、咲夜から視線を外してなんとはなしに廊下の奥に視線をやりました。
相手の関心が自分に向くことがあまりない――とても身に覚えのあるそれが、魔理沙に自分とアリスとのことを思い出させました。
【§スケジュール設定】
その日もその日とて。
魔法の森のアリスの家では、魔理沙はソファに座って本を読み、アリスは人形作りに余念がありませんでした。
魔理沙の視線の先で、アリスは完成したばかりの人形に、最後の仕上げとしてお化粧をしたり、髪を結ってリボンを付けてあげたりしています。
アリスが慈しむように触れ、見つめる先の人形。いつのころからか、魔理沙はその位置に自分が居たいと願うようになっていたのでした。
森で初めて偶然に出会った時からでしょうか。
いびつな月の異変解決に誘われた頃からでしょうか。
感情をあまり出すことのない人形のように整ってる顔が、人形たちと向かい合う時だけ、柔らかく優しげにほころぶのに気付いてからでしょうか。もう覚えていません。
少しだけ目を細める、あの愛おしげな微笑みを自分に向けてくれたらどんなに良いだろうと、どうしてだか思ってしまうのです。
ほっそりとして長い上品な白い指で、人形にするように髪や頬を優しく撫でられたらどんな心地がするのだろうと、うっかり考えてしまうものなら、そわそわと心が落ち着かなくなるのです。
知り合って以来頻繁に押しかけ……いや遊びに、本を読ませてもらいにアリスの家に通っています。訪れる度にお茶を出してくれる程度には、関係は良好だと魔理沙は自負しています。
けれど、会話に区切りが付くとアリスは、あとは好きに本を読んでいて良いとばかりに魔理沙を放っておくのです。同じ部屋にこそ居ますが、魔理沙にかまうことなく、人形を作ったり手入れをしたり、魔法の研究をしたりします。
来訪の口実を本にしているのも良くなかったのでしょうが、それよりも、他人のすることには興味が無いと、前にアリスが言っていたのを魔理沙は知っていました。その他人という分類の中に自分が含まれているかもしれないと思うと、魔理沙は気が気でなくなって、胸の奥の深いところにまるで折れ落ちたつららが刺さったかのようにずきりと冷たく痛い感じが走るのでした。
開いて立てた本越しに、ともすれば冷たく見えるアリスの大人びた美貌の横顔をこっそり見つめます。アリスがこっちに向きそうになると慌てて本に顔を隠して、しばらくしてから再びアリスを見遣って、もうこちらを見ていないことがわかると溜息をつく、などということを繰り返す日々です。
もっと、こっちを見て欲しい。そう思うのですが。
自分に真っ直ぐ、弾幕はパワー、アウトドア派の行動派……なはずの自分なのに、いざアリスを前にしてあの深い蒼の瞳に見つめられると、なぜだか頭がぼうっとしてしまって、得意の皮肉も上手く言えなくなって、意地を張るのと強がりを言うのとで精一杯になってしまいます。まったくもって自分らしくないと思うのですが、魔理沙はこうしてじりじりとした気持ちを抱えて本越しにアリスを見つめることしかできないのでした。
そんな魔理沙の胸のうちをきっと知る由もないアリスは、近ごろ神社や紅魔館でも見かけるようになった縦長の薄いカメラを持つ方の鴉天狗の新聞記者から、自律して掃除をするからくりの写真と情報を見せてもらって以来、今日も掃除人形の制作に取り組んでいました。
ふとしたタイミングで始まった会話の中で、人形制作の捗り具合に話が向いて、アリスは初めの段階としてまず魔力をエネルギーとして動く箒を作って、その試運転がこれからということを魔理沙に語ったのです。
「それ、わたしがテストしてやるよ」
魔理沙はこれだとばかりに一も二もなく申し出ました。今のように同じ部屋に居るだけなのではなく、アリスと一緒に何かをしたり話をする時間がもっと持てると魔理沙は思ったのです。また、少しでもアリスの役に立てたらうれしいという気持ちもありました。
アリスを見つめるまなざしには、わざととった恩着せがましい態度とは裏腹に期待をありありと宿らせていたのですが、魔理沙はそれに気づいていません。
「……そう? それじゃ、お願いするわ」
申し出の唐突さに驚いたのか、アリスはほんのかすかに目を見開きましたが、一瞬だけ間を置いた後、すぐにいつもの理知的な表情に戻ってそう答えました。魔理沙は手を貸してやるぜと口で言いながら、内心では、やったと声を上げて喜びました。
アリスがおさげにリボンを結わえてくれました。銀の指輪と洋箒を渡されて、使い方を教わって、じゃあさっそく動かすか、という段になったところで、アリスはちょっと待っていてと言い置くと机に向かいました。
ペンを手にして机の上に広げてあった紙の下端に何かを書きつけます。その紙を四つ折りにして、洋封筒にしまって封をすると、それを魔理沙に手渡しながらアリスが話し始めたのは、箒を試行する場所についてでした。
――からくり箒の試運転を紅魔館で行う予定があったとは、さすがに予想外でした。
紙はたぶん便箋で、折るときに見えた紙面はすでに文字で埋まっていました。アリスが書き加えたのは、当初の予定を変更して魔理沙が向かう旨を伝える内容なのでしょう。
これでは、何かを一緒にしたり話をするどころか、一緒に居ることすらできません。しかし今から断る方法も方便も思いつかなくて、魔理沙は仕方なく紅魔館へと向かうことにしました。
魔理沙には、アリスが自分をどう思っているのか、やっぱりわかりません。
こちらから申し出たとは言え、遊びに来ていた自分にからくりの試運転の代行をあっさりと任せるあたり、アリスにとって自分はやはり居ても居なくてもかまわない存在なのかもしれない、そんな思いが過ぎった魔理沙のこころに、不満と不安が暗い影を落としました。
そして、これからの時刻的に、いつも楽しみにしている午後のお茶のご相伴も逃すこととなり、さらにがっくりしたのでした。
【§お掃除モード】
視界の両端に何かがにゅっと入ってきて、魔理沙ははっと我に返りました。
同時にそれは首のまわりに回ってきて、さらに肩には予期せぬ重みが後方にかかってきて魔理沙はのけぞるようによろけてしまいました。
「っとと!」
ぽふ、と背中を何かに支えられて後ろに倒れずに済みました。一体何がと胸元を見れば、咲夜の腕が魔理沙の背後から回ってきていたのでした。端から見ると咲夜が魔理沙におぶさるような格好になっています。
「なんだよ咲夜、いきなり」
「掃除するからくりの上に乗ると猫度が上がると聞いて」
「っ、耳元で囁くなっ」
魔理沙の帽子はいつの間にか咲夜の頭の上に移動しています。耳を覆う髪ごしに囁かれて、くすぐったさに思わず肩が竦み上がりました。文句を言う魔理沙に、咲夜はあら失礼と言ったものの離れる気は無いようです。
咲夜の物言いは冗句の声色を含んでおらず至って冷静なものでした。本気か本気でないか定かではありませんが、真面目ではあるようです。このメイドはいつもそんなところがあります。
咲夜もまた、ひきこもりをやめたほうの新聞記者から自分からひとりでに掃除をするからくりについて話を聞き及んでいるようでした。
「知ってるぜ。猫を乗せて動かすんだろ? 外の世界の連中が考えることは本当によくわからないぜ」
こんなことで猫度とやらが上がるのなら好きにすればいい、魔理沙はそう思いながら、咲夜に抱きつかれたまま箒を再び動かし始めました。
咲夜は上に乗ると言いながらその実、ほとんど宙に浮いています。魔理沙の肩に抱きついて、脚を後ろになびかせている状態です。
そのため重くはないけれども、なにぶん体格が一回り違うので、こうして後ろから抱きつかれると、魔理沙は咲夜の腕の中にすっぽりと収まってしまいます。動きづらい上に、咲夜のおさげが頬に当たってくすぐったいです。
そんなわけで、廊下で繰り広げられる情景は、箒が西向きゃ咲夜は東、といった具合なのでした。
「この試作機、いただきたいわ」
「それはアリスに言ってくれ。わたしに言われても困る」
「そっちのではなくて」
「あー?」
「……何を遊んでいるのよ」
何のことだと魔理沙が聞き返そうとしたとき、小さくとも良く通る、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきました。地はもっと高いほうの声なのに意識的に低く出している、そんな感じの声です。
魔理沙が咲夜ごと体で振り返ると、パチュリーと小悪魔の二人がやって来るところでした。
パチュリーは淡い紫の長衣をふわふわとたなびかせながら、重力を感じさせない足取りで歩み寄り、二人の前で足を止めました。
その少し斜め後ろに、飾り気のない落ち着いた黒のワンピースにネクタイの姿の小悪魔が控えます。
「めずらしいな、パチュリーが図書館から出歩いてるなんて。こりゃ槍が降るぜ」
「……レミィとフランに協力してもらって鼠の巣穴に降らせようかしら」
パチュリーがアメシストのジト目でじろりと魔理沙を睨みます。
「パチュリー様。もうよろしいのですか?」
箒を停止しておどける魔理沙の肩越しに、咲夜が言いました。
「ええ。もう済んだと、この子が呼びに来てくれたから。部屋をありがとう」
重ねた分厚い本数冊を両手で抱えている小悪魔が軽く頷きます。パチュリーのそばでゆるく微笑む小悪魔の顔は、魔理沙の目には誇らしいというより、嬉しそうに見えました。
図書館と居室を掃除する間、舞う埃で喘息の発作が起きないよう館の部屋を借りていて、掃除が終わったので戻るところなのでしょう。
小悪魔がパチュリーを呼びに図書館を出るところを魔理沙が見なかったのは、別の出入口を通って行ったために違いありません。
「それで。それは何の遊びなのかしら」
「パチュリー様。近ごろの外の世界の猫は、掃除をするからくりの上に乗るのだそうですよ。ですからこうして、少しでも猫度を上げようと思いまして」
魔理沙に抱きついたままいたって真面目な顔と声で答える咲夜に、パチュリーは、はあ、と溜息をつきました。
「……何とも幻想郷的ね。鼠が悪さを働けなくなるのはいいけど、猫が他の仕事をしなくなるのではね」
パチュリーは憂色な面持ちで額を抑えながら言いました。
「わたしは構わないけどレミィが何て言うかしら。……あら? 魔理沙、それ」
「ん?」
パチュリーが指さした先、自分の胸元を魔理沙が見ると、おさげにつけているリボンがいつの間にか赤色に発光していて、明るくなったり暗くなったり点滅を繰り返していました。
「おぉ。これはたしか、<ruby>充魔<rt>チャージ</rt></ruby>してくださいのサインだぜ」
魔理沙はこのリボンが着用者の魔力残量を知らせるためのものであることをアリスから聞いていました。残量が充分なときは明るい緑色で、残量が総量の五分の一を下回ると赤色に変わります。そこからさらに一定の量まで減ると、今のように赤色で点滅するのです。
「ああ、たしか家で休むのだったかしら。部屋使う?」
「いや、施術してある場所でないとだめなんだそうだ」
腕を解いて前に回り、リボンを眺めながら言う咲夜に、彼女の頭上から帽子を取り返しながら魔理沙が言いました。
「なるほど。魔力が切れたら補充に戻る仕組みで、自律というわけね」
「活動のサイクルが大きいオートマトンってとこだな」
パチュリーに請け合いながら指輪を外し、箒が動かないことを確認してから、魔理沙は箒にまたがります。
「邪魔したぜ。じゃあなー!」
宙に浮いた自分を見送りのように見上げてる三人を置いて、魔理沙は長く広い廊下をひとっ飛びして館を後にしました。
目指す行き先は自宅のベッド……ではなく、アリスの家です。
魔力を充魔するには、”ホームベース”と呼ばれるところで休む必要があり、紅魔館にはまだ設置しておらず、もちろん魔理沙の家にも無いので、充魔サインが出たらアリスの家へ戻るように言われていたのでした。
【3.お掃除が終わったら】
【§ホームベース】
陽は西に傾いて、じきに夕焼けになろうかといったところです。
「おかえり」
アリスの姿がいつもの部屋に見当たらず、魔理沙が家の中を探して歩くと、廊下のドアの一つが少し開いていて、アリスの声はそこから聞こえたのでした。
ドアを開けて中に入ると、毛足が高めの柔らかい絨毯が魔理沙を出迎えます。
魔法の明かりが灯る室内には、壁付けされた品の良い洋風のクローゼットとチェスト、ドレッサーなどの調度品。窓のそばにはベッドが置かれていて、その部屋はどうやらアリスの私室のようでした。
椅子を引いたアリスが魔理沙のほうを向きます。アリスは書机で何やら書き物をしていた最中だったらしく、机の上には数冊の本と書きかけの白紙の本が開かれていました。
「魔力がなくなるまで、動かしてきたぜ」
言いながら魔理沙はアリスに指輪を差し出します。期待半分、不安半分の心持ちです。
「箒は玄関に置いてきた」
「ん、わかったわ、ありがとう。……あとは休んでいていいわよ」
指輪を受けとったアリスは特に表情を変えることもなくそう言って、また元のように机に戻りペンを動かし始めたのでした。
これにはさすがに、おもしろくないとかつまらないとかを通り越して、魔理沙は悲しい気分になってしまいました。
寂しくていじけた気分が、腰掛けるつもりだったベッドに魔理沙を飛び込ませます。ばふん、と音を立ててうつ伏せにベッドに倒れ込んでも、書くことによほど集中しているのか、アリスは何の反応もしませんでした。
リボンの色が、赤の点滅から明るい橙色の継続点灯に変わります。魔力の供給が開始されたサインです。
それとは関係なく、胸の奥の何かがぎゅううと萎み切って、息が詰まるような痛みを魔理沙にもたらしていました。
ヘッドボードに並べてあるクッションの一つを引き寄せます。
身体は全く疲れていませんが、魔力の大量消耗のおかげで頭が少し重い感じがして、休息が必要なことには変わりありませんでした。
魔理沙はうつ伏せで腕に抱えたクッションに顔を埋めて、鼻の奥がつんとする感覚を堪えようとしました。
そうやって、どのぐらい経った頃でしょうか。魔理沙はベッドの片側が不意にやんわりと沈むのを感じました。
「おつかれさま」
「………………おつかれなんだぜ」
ずいぶん間を置いてから、魔理沙はもぞもぞと身じろぎして、声のほうには見向きしないで背中を向けました。クッションを枕にして、手足を前に投げ出します。
「……魔力切れなんだ。お言葉通り、少し休ませてもらうからな」
そう言って、魔理沙は目をつむりました。
”ホームベース”とやらのおかげか、魔理沙にはアリスのベッドがとても心地良いものでした。重たく感じる頭もちょっとは軽くなってる気さえします。それでも、落ち込んでうつうつとした気分は晴れません。
「そうね。……回復、しなくちゃね」
後ろ髪が動く感じがしました。アリスが髪に触れているのでしょう、手で掬っては髪の自然なクセと重力にまかせてふわふわと落とす、そんな感じです。魔理沙は知らないふりをします。
すると、今度は、アリスは頭を撫でてきました。
魔理沙はそれに反発するように目をぎゅっと強く閉じました。
腹立たしく惨めな気分になったのです。人をこんな気分にさせておいて、今頃になって機嫌を伺おうなんて虫が良すぎる、と魔理沙は思いました。わたしはもう寝るんだから、知らない。と無視を決め込みます。
時折感じる、髪の中に入り込んで地肌に触れる指先の感触が心地良いです。それを理不尽に悔しく思っているさなか、魔理沙は顔の前に何かが置かれた気配を感じました。
「魔理沙」
アリスの声は存外にずっと近いところから聞こえてきました。魔理沙は思わず目を開きます。最初に見えたのはベッドに衝いたアリスの腕で、身をよじって顔を仰向けると、アリスの顔がすぐ近くでした。
意表外のことに体が固まってしまいます。頬に手を添えられて、顔を上げさせられたと思ったとたん、目の前がアリスの顔でいっぱいになって、そのあと、唇にやわらかな感触が落ちて来ました。
「……っ……」
とっさに呼吸を止めて、目をぎゅっと閉じます。
それはすぐに離れていって、実際にはほんの短い間だったのですが、魔理沙にはとても長く感じられました。
瞼をゆっくり、おそるおそる上げていきます。焦点の合わない近さにアリスはまだいて、その顔はよく見えません。
「……、……んぅっ」
何か言おうとして、言葉に迷っているうちに、薄く開いただけに留まった唇に再びくちづけされてしまいました。
仰向けの体が強張ります。反射的にアリスを押しのけようとした魔理沙の腕は、力が入るそばから抜けていってしまいます。
「っ……ふ、……」
唇を唇で挟むように、食まれます。何度も、何度も。
柔らかさと、時折漏れる湿った吐息の感触に、体をぞくりとしたものが走り抜けました。
胸には締め付けられるようなせつない痛みが広がって、魔理沙はそれに耐えるように、わずかに眉根をよせて無意識に再び目を閉じていました。
くちづけされたことで頭に血が昇るより先に、唇から伝わってくるアリスの熱が頭の奥を甘く痺れさせて、熱に浮かされるような感覚が魔理沙を支配していきます。
他の全部の感覚が遠のいていって、全神経がアリスと触れ合っているところに集中されていくかのようでした。
意識がアリスから与えられる感触のみでいっぱいになったころ、唇はゆっくりと離されていきました。
「……急速<ruby>充魔<rt>チャージ</rt></ruby>」
ぼうっと微睡んだ目で見上げる魔理沙に、すぐ真上から降ってきたアリスの声は、いつもよりすこし低くて、湿っている感じがしました。
かつてになく間近で見るアリスの顔は、いつもの感情をあまり感じさせない顔なのに、どこか違って見えます。空の色をした蒼い瞳はどちらかで言えば冷たいほうの色なのに、今ばかりは熱を感じられる不思議な色に見えました。
「少しは元気になった?」
体を起こしたアリスが魔理沙の頭を撫でながら言います。いつもと違う蒼い瞳に見つめられて、魔理沙は視線をさまよわせました。
たしかに気疲れに似た精神疲労感は軽減されています。言った通り、アリスは魔力を少し分け与えてくれたのでしょう。
けれども。
「……ゆっくりお休みなさいね」
そう言ってベッドから立ち上がりかけたアリスの袖を、魔理沙の手が掴みました。
――けれども、満たされないのは、魔力だけではないのです。
「なに?」
「……」
ベッドに座り直してアリスが問います。私室に沈黙が落ちて、なかなか訪れない言葉をじっと待つアリスに、魔理沙はややあって、ようやく口を開きました。
「………………もっと」
ごくごく小さな、か細い声でした。
耳にしたアリスは目を細めて愛おしげな微笑みを浮かべたのですが、魔理沙は恥ずかしさのあまり俯きかげんに視線を逸らしていたので、見ることはかないませんでした。
伸ばされたアリスの手が魔理沙の肩をそっと押します。
ベッドに仰向けに戻された魔理沙の顔の横に、アリスは腕をついて、ゆっくりと上体を下ろしていきました。
【§日々のメンテナンス】
「ふ……ぅ、んっ……」
ときどき、息継ぎを促すかのように唇が離され、そのたびに漏れる息の音が恥ずかしく思えて、魔理沙の意識はいっそうやるせなく揺さぶられました。
いっときは凍えて冷えきっていた魔理沙のこころは、暖められ熱せられて今や蕩け始めてさえいます。
無意識にアリスの腕を掴んでいた魔理沙の手は、いつの間にかアリスに捕らわれていました。あどけなさの残る魔理沙の右手は、大人びたアリスの左手に指を絡められ、ベッドに縫い止められています。
唇を食まれ、吸われ、かすめるように舌で舐められて、魔理沙の意識はアリスから与えられる唇の感触と熱とで再びいっぱいになっていきました。
「あ……、なに……?」
不意に違和を感じて、魔理沙がお腹に意識を向けると、そこにあったのはアリスの右手でした。ブラウスの上をお腹から胸のほうへと上がってくる手に、魔理沙は反射的に体を固くして、手のひらに触れているシーツを無意識に掴みました。
「充魔のついでに……点検よ。何か拾ってきてしまっていないか、ね」
顔は寄せたまま、唇がぎりぎり触れない距離のままで、アリスが言います。声は、彼女にしては珍しく、かすかではありますが魔理沙には楽しげに弾んでいるように聞こえました。
「異物の取り込みは故障の原因になるわ」
「っ、……してないぜ、そんなこと、っ……」
図書館でそのようなことをしようと考えたことは、もちろん言いませんでした。
アリスの手は、ベストの下のブラウス越しに魔理沙の胸を探ってきます。
さわさわと撫でるような手つきに、時折体をぞくんとしたものが走り抜けて、そのたびに魔理沙の肩は勝手に竦んでしまいました。
胸からもたらされるくすぐったいとも心地良いともつかない慣れない感覚が、魔理沙の呼吸をたびたび詰まらせます。
「は、ふ……っ、んっ……」
さらにくちづけまでも再開されて、息はますます上がる一方でした。
胸を不規則に上下させている魔理沙とは対照的に、アリスの呼吸はいっさい乱れていません。
「疑われても仕方ないわ、魔理沙は」
ゆっくりと顔が離されていって、焦点が合う距離にまでなります。
「……わたしのこころを、いつの間にか持っていってしまったあなただもの」
ぼんやりした視界に見えたアリスの顔は、かすかに微笑んでいて、ほんの少し、頬に薄く赤色が差しているように魔理沙には見えました。
「……?」
けれども、慣れない感覚に翻弄されて思考が鈍っているせいか、魔理沙にはアリスの言うことがよくわかりませんでした。まどろんだ目でアリスを見上げながら、小さく首を傾げます。
その様子にアリスは眉尻を下げ、少し困ったというふうに目を細めて微笑むと、それからふたたび魔理沙に唇を重ねました。
魔理沙の胸をブラウスの上から漫ろに探っていたアリスの手は、さんざん散策してようやく満足したのか、ふとその動きを止めてベストの下から抜け出て行きました。
「うん、なにもないわね。なにも」
「なんだと、どーゆー意味……んんっ」
強調された”なにも”に文句を言いかけた魔理沙をくちづけることで封じておいて、アリスは魔理沙のスカートのほうへ手を伸ばします。
「こっちもみてみないと」
「ば、ばかっ、そっちにだって何もないぜ」
「パニエの中とか、あやしいわ」
魔理沙はシーツから手を離して、服の上を這い下がっていくアリスの腕を慌てて掴んだものの、気怠さのような感覚に囚われてる体はなんだか重く満足に力が入りません。
「手探りじゃわからないわね。分解しないと」
「分解、って」
「脱がすわ」
真顔できっぱりと言い切って、アリスは魔理沙のスカートのウエストに指を掛けて留め金を外しました。
その端整な顔からは相変わらず、感情や考えが読めません。
「うう……もう好きにしろ……」
説得できる気がしなくて、魔理沙は抵抗を諦めました。
「……ほら、なにもないだろ」
恥ずかしそうに体を縮こまらせながら魔理沙が言います。
それまでの流れからスカートを脱がされるのは理解できるのですが、キャミソールとドロワーズを残して他を全部剥がされたのは意味がわかりません。
そして、アリスまで服を脱いで、ブラウスとショーツだけの姿になっているのもよくわかりません。
魔理沙のスカートを検めた後、自分のと魔理沙の服をきちんと畳んでベッドサイドに乗せているアリスに魔理沙がそれを言うとアリスは、
「だって、しわになるもの」
と答えました。意味がわかりません。答えになっていないような気がします。
「次は、異常がないかの点検ね」
「い、異常なんて」
「魔法具の副作用が出ているかもしれないわ。あのからくり、もともと人形用に作ったものだし」
再び肩を押されて、魔理沙はベッドに戻され、アリスはその右腕の横に色白のたおやかな脚を崩して座りました。
アリスの手が魔理沙の顔に伸ばされます。思わず目をつぶって体を固くした魔理沙ですが、指の背で頬を撫でられ、もう一方の手にも顎の下をくすぐるように指を這わされると、体の力はすぐに抜けていってしまいました。
アリスの指が、心地良い。閉じた瞼の裏で魔理沙はアリスが人形に触れているときの様子を思い出していました。
白魚のような手から伸びる、しなやかで細い白い指。綺麗に整えられた爪、慈しみを込めて優しく人形を撫でる手つき。
ひそかに願っていたそれに、魔理沙は触れられているのでした。
薄目を開けて見上げると、アリスは穏やかな微笑みをたたえて魔理沙を見つめています。
無性に心地良くて、幸せで、魔理沙は喉を撫でられる猫のように顎を少し持ち上げながら、アリスの人形たちもこういう気分なのかもしれない、とぼんやり思いました。
露わになった喉をアリスが指の背でくすぐります。
「……っ」
顎沿いに滑ってきた指に耳元を探られて、思わず肩が竦んでしまいました。
首筋に戻ってきた指は、喉元のくぼみをなぞり、鎖骨を探るように撫でて、さらに下へ降りていく気配を見せます。
点検だなんて、どこまで本気なのか。魔理沙にはわかりません。ですが、アリスに触れられるのは、恥ずかしいけれどイヤではなくて、むしろずっと触れられていたいとさえ思っている自分がいて、魔理沙は自分で自分がわからなくなってきました。
胸をキャミソールの上からアリスの手がゆっくりと下がって行きました。みぞおちから、脇腹へ。
「んぅっ……」
キャミソールの裾から入り込んだ指に、薄い肉付きの下にある肋骨のひだをたしかめるようになぞられて、魔理沙は思わず声混じりの吐息を漏らしてしまいました。
「どうかした?」
「……くすぐったい、ぜ」
瞼を開けてぼうっとした目でアリスを見上げます。
「くすぐったいだけ?」
アリスは目を細めて微笑みながら、指先を何度もそこを這わせました。
くすぐったいのと同時に沸き起こる、心地良いとは違う感覚。アリスのあのしなやかで綺麗な指に撫でられてると思うとその感覚がますます募り、魔理沙は堪えたくてシーツに指立てました。
不意に、胸元を撫でていたアリスの手が、キャミソールの下に潜ったまま上へと滑らされます。
「あっ、やっ」
淡いふくらみを手のひらに捉えられて、思わず漏らしてしまった声は、自分で今まで出したためしのない高い声でした。
そのままさぐるように撫でられて、更に上がりそうになる声を魔理沙は必死に飲み込もうとします。
「ふっ、んぁっ……」
薄いやわみを掬い上げるように寄せて、親指と人差し指の間でふにふにと揉まれて、慣れない感覚が胸からじんわりと広がっていきます。
「アリスが触ると、なんか、ヘンだっ……!」
波紋のように伝わってくるその感覚に、体の奥がもぞもぞして魔理沙は身じろぎしました。
「そんなとこ、自分で触ってもいつもは何ともないのに……っ」
「ふうん? どうしてかしらね」
戸惑う魔理沙を他所に、アリスは手を休めません。手の動きが布地に伝わり、胸の頂点がキャミソールに擦れて、ぞくぞくした感覚を魔理沙にもたらしていました。
その立ち上がりかけていた先端を、アリスの指が捉えます。
「はぅっ、んっ……!」
不意打ちで訪れた、より直接的な刺激に魔理沙は体をびくんと跳ねさせました。
「そこ、あっ、だめっ……!」
「ここも、くすぐったい?」
口調はあくまで優しく訊ねながら、アリスは可愛らしい抵抗を返してくるそこを、揃えた二本の指先で下から押し上げるように、くにくにとつつきます。
「どんな感じ? 教えて?」
「っ、……すごく、へんな感じ、だっ……」
とてつもなく恥ずかしいのに、そのことを形容させようとするアリスに魔理沙は反発を込めてぶっきらぼうな物言いをしたのですが、与えられている刺激に言葉を途切れ途切れにさせられて全く効果を成していませんでした。
アリスは、魔理沙の頬を撫でていた手を胸まで降ろすと、キャミソールを持ち上げているもう一方の突起を、薄い布地の上から指先で捉えました。
「ひゃっ、あうぅっ!?」
布越しにごく軽く指で挟み、摘んでは離すを繰り返して、啄むように。
直に触れている方は、指の腹で撫でるように触れると、途端に魔理沙の声が裏返りました。
「りょうほう、いっぺん、なんてっ……、だめぇっ……!」
胸の左右で異なる刺激に翻弄され、魔理沙はぎゅっと目をつぶります。視界が閉ざされれば知覚を補おうと聴覚や触覚がより鋭敏になるのを、今の魔理沙は思い出せませんでした。
胸の先端に触れているのが、アリスのしなやかな白い指だと思うと、その映像がありありと瞼の裏に描かれてしまって感覚がますます魔理沙を苛みます。
背が弓なりにしなっていって、魔理沙の意志とは関係なく、もっと触れて欲しげに薄い胸を突き出す格好にまでなってしまいました。
お望みどおりに、とばかりアリスの指はその動きを少しづつ早め強めていきます。
「ひ、あっ……! ん、く、ぁっ、はぁっ……!」
強まっていく焦がされるような痺れる刺激に、魔理沙の背はますます反っていきました。
全身をふるふると震わせて刺激に堪える魔理沙にはおかまいなしで、アリスの指は優しく、けれども容赦なく小さい未熟な二つの蕾を責め立てます。
「ふああぁっ! やぁっ、ぁっ、あっ、ああぁっ!」
もう限界、とばかりに魔理沙の顎が上がります。掴んでいるシーツが大きく皺を寄せ、閉じることのかなわなくなった口から明らかな嬌声が高く上がり始めたとき、アリスは可憐な突起を苛む手指をようやく止めました。
「ふはぁっ、はあっ、ぁっ、はっ、はあぁぁ……」
「……良好ね。敏感過ぎるぐらい……」
アリスのそんなつぶやきは、魔理沙には届きませんでした。
魔理沙は荒い呼吸を繰り返し、切なげに眉根を寄せて目を閉じて、シーツから浮かせていた背を徐々に降ろしながらベッドに沈んでいきました。
上下する小さな薄い胸の上では、立ち上がりきった突起が薄い布地をつんと押し上げています。
端麗なアリスの唇の端がかすかに上がるのを、未だ目を閉じたままの魔理沙が見ることはありませんでした。
呼吸が落ち着くのを待たず、アリスは魔理沙にくちづけます。小さな唇の瑞々しい弾力を味わうように食んでから、弛緩してゆるく開いているそれに、舌を滑り込ませました。
「ふ、ぅんっ……っ」
強い刺激の余韻にまだ全身が痺れていた魔理沙は、舌をアリスにたやすく絡め取られてしましました。
熱く柔らかいそれに優しく撫でるようにされると、首筋を慣れないぞくりとした感覚が走ります。
息苦しさがなくなっていくのと入れ替わりに、魔理沙の胸を満たすのは、甘さを伴う切ない苦しさでした。
それは体じゅうに広がりつつ、積もっていって、魔理沙の体の深いところを次第に疼かせていきます。
アリスは指だけでなく舌でさえも、こんなにも自分を翻弄させるのだと魔理沙は充分に思い知ることになりました。
「は……ぁ」
アリスが唇を解放すると、魔理沙の濡れた小さな薄紅の口からは切なげな溜息が漏らされました。
キスの最中に胸までめくられていたキャミソールから、力の抜けきった腕と頭を抜かされます。
脱がせたそれをベッドサイドの畳んである服の上に載せ、アリスは魔理沙の顔の横に腕を衝いて覆い被さると、顔を寄せて髪が流れて露わになっている魔理沙の額にくちづけしました。
唇を降ろしていって、鼻の頭へ、唇へ。頬に、首筋にとキスを落としながら辿り着いた先、赤に染まりかけの小さな耳の端を唇に咥えました。
「ふぁっ……!?」
ひくっと魔理沙が肩を揺らします。
「ここも弱いのね……」
「ふ、ぅ、やっああぁっ……」
その呟きにさえも魔理沙は敏感に反応し、アリスが耳朶を口に含んで舌先でくすぐったり、耳のうしろを舐め上げるとその度にふるりと震えて、その体からは力が抜けていきました。
力なく押しのけようとしてくる魔理沙の右手を、また左手で捕まえてベッドに重ねておきながら、アリスは空いている右手を幼げな胸に伸ばします。
桜色の突起の立ち上がりを白い指がたしかめるようになぞると、魔理沙はぴくんと体を震わせました。指の頭でそそけ立たせるような動きで撫でて、つど震える魔理沙の反応を充分に楽しんでから、アリスは手のひらを滑り降ろしていきます。
なだらかな曲線を撫で、へそをなぞり、与えられる刺激に波打つ下腹に差し掛かった時、アリスのその手を魔理沙が弱々しく掴んできました。
「だめ、そっちはっ……!」
「……そっち、って?」
すっかり赤く染まって熱を持った小さな耳に、アリスは囁くように問いました。掴んでくる手に、きゅっと力がこもるのを感じます。
「っ……」
「どうして、だめなの?」
なかなか応えない魔理沙に、アリスが耳殻に熱い吐息を吹き込みながら囁くと、魔理沙は、くぅ…と鼻がかった息を漏らしてふるりと体を震わせました。ねえ?となおも耳元で問うと、観念したかのように、唇をわななかせながら、口を小さく開きました。
「…………おかしく、なってる……から……っ」
声を詰まらせながら言う魔理沙の両の手には、いたいけな力がさらに込められてきました。
上体を起こして覗きこんだ魔理沙の顔は、茹だったように熱っぽく赤く染まっています。羞恥をこらえるよう眉を寄せ、下げた目尻に涙を溜めた金眼で、アリスを見上げてきていました。
「おかしいなら尚更、ちゃんとたしかめなくちゃね?」
「ぁっ……!」
アリスの手はあっさりと魔理沙の手を逃れ、ドロワーズの下にたやすくするりと潜り込んできました。手にはほとんど力が入らなくて、魔理沙にはアリスの手を掴むまでが精一杯だったのです。
太腿の間にいつの間にかアリスの膝が入っていて、閉じることはかないません。行く手を阻むもののない指の先が、ついにそこに到達しました。
「ふぁ、……ああぁっ……」
魔理沙は顔を背け、左手でシーツを掴みました。
アリスの指が辿り着いたそこは、ひどく柔らかくて、かつ熱い潤いで満たされていました。
潤いは無毛の幼い小さな丘から溢れ出てドロワーズの内側までも湿らせています。
手指をドロワーズと丘の間に差し入れ、唇のようなふっくりした形に沿い這わせて指を交互に擦り合わせると、アリスの指はたちまち蜜まみれになりました。
「こんなに濡らして……いけないわ」
「やっ、やあぁぁっ……!」
触れられているというだけでも恥ずかしいのに、ドロワーズの中でこもって弱まるはずの水音はやけに大きく耳に届いて、魔理沙は恥ずかしさで意識が蒸発してしまいそうでした。
指はさらに、丘の谷間に割り入ってきます。より鋭敏な谷の内側をくすぐるように探る指が、高らかに音を立てるたび、体の奥にじんじんとした波動が甘く響いてきて、魔理沙の意識は羞恥とそれとにどんどん削られていきました。
「……はやくなんとかしないと、大変ね?」
手指が出ていく感触、それにすら魔理沙は身を震わせました。
アリスの指がドロワーズのウエストにかけられても、体の奥を疼かせているものが魔理沙の抵抗を阻み、最後の着衣はあえなく足から引き抜かれていきました。
アリスが戻ってきます。肩の横に左腕を衝き、覆い被さるように上にきて、なだらかな下腹に手を這わされても、下腹を撫でた手指が内腿の間に滑りこんできても、ひどく恥ずかしく、だめと思うのに手足は言うことをきかなくて、魔理沙の体はアリスを受け入れてしまうのでした。
ほころんで薄く開いた幼い唇は、蜜をまとわせていて滑りが良く、ふくらみに宛てがったアリスの指先はなんなくつるりと谷あいに入り込んでいきました。
熱く瑞々しい弾力の柔肉を掻き分け、探り当てた源泉の入口を、アリスは中指の先でくすぐるように撫で始めます。
「ふぁあっ? あ、ゃ、あぁっ……っ」
熱を持ってじんじんと疼くそこで、アリスが指でどうしているのか、魔理沙にはちゃんとはわからないし、あまりの恥ずかしさに知りたいとも思いません。
アリスの指が動かされるたび、甘い感覚が沸き起こって体の奥をきゅうきゅうと疼かせます。
「あっ、ぁっ、や、んぅっ、あぁっ……っ」
魔理沙のこころは着々と、そしてすぐに追い詰められてしまいました。頭の芯まで響いてくるようなこの疼きは、もどかしくて、ずっとされていたらおかしくなってしまいそうです。
彷徨うあどけない手が、指に当たったアリスの腕をすがるように掴みます。
涙で潤んだ金の瞳で、助けを求めるよう見上げたそこには、かすかに目を細めてこちらを見つめてくる蒼い瞳がありました。
「あり、す……っ」
魔理沙の震える両手が伸びてきて、アリスの頬を包みました。弱々しい力で引き寄せてきて、アリスはされるままに魔理沙に顔を寄せていきます。
唇が、触れ合いました。わずかに離されて、またすぐに触れてきます。それは何度も、たどたどしく繰り返され、次第にされるがままだったアリスからも重ねるようになり、いつしか深く口付け合うまでになります。
「んっ……、ん……」
「んぅ、……ふ、ぅ……、んんっ……」
弛緩して開いた唇に舌を差し入れると、魔理沙から求めるように触れてきました。
つたない動きの魔理沙をアリスは優しく絡めとり、お互いに擦り付け合うようにして熱を分かち合います。
魔理沙の手は、すがるようにアリスのブラウスの肩を掴んでいました。
広いところを舐め、側面を撫で、裏側をくすぐって。充分に求めて水音が立つまでになったころ、やがて離され、はぁ…と漏らされた濡れた吐息はどちらのものともつきませんでした。
「……善くなるように、治してあげるから」
切なげに眉を寄せて、乱れた呼吸を繰り返す魔理沙の頬に口付けながら、アリスは緩慢に動かしていた濡れた指を、さらに奥に進めました。
潤んでいる窪みに、ひたと中指の先を宛てがいます。そのままそっと押し込んでいくと、つぷりと沈み、アリスの指先は柔らかく熱い感触に包まれました。
「っは、ああぁぁ……っ」
首の力が抜け、魔理沙の頭がベッドに落ちます。魔理沙は体を震わせながら、絞るような声とともに息を吐き出しました。
「ふ、あ、ぁっ……ありすぅ……っ」
「……っ」
アリスもまた、指に感じる潤った熱に息をつきます。そこはひどく狭くて、内奥を目指すには酷な気がしてくるほどでした。
指先を退いて、指だけの弱い力で、再び先端を沈ませます。それを繰り返して、ごく浅いところにだけ、中指の節の一つ目までをつぷつぷと抜き差ししました。
「あ、あっ、……あぁっ、く、ふっ、んぅ……っ」
窪みのまわりの濡れている柔らかい感触は、魔理沙の呼吸とは別のリズムで、ひくひくとした微震をアリスの指に伝えてきていました。
魔理沙の膝が動いて、あどけなさの抜け切らない脚が、アリスの裸の太ももを弱々しい力で締め、柔く滑らかな内腿を擦り付けてきます。
閉じれない脚を擦り合わせるかのようなその動きに、魔理沙の望みを察して、アリスは指を沈ませた後くっと押し曲げ、浅いところにある膨らんでいる部分に触れました。
は、は、と浅い呼吸を繰り返す魔理沙の幼げな鎖骨に唇を這わせます。そうしながら、指先で触れているそこを押し上げるように、何度も、中指の腹で擦るように撫で上げました。
「っあ、く、あぁぁっ……! んんっ、はあぅっ、あぅっ……!」
今までで一番、体の奥に近いところ、でした。
アリスの指に圧されて沸き起こる、より直接的な刺激は魔理沙の体の奥を疼かせると共に、頭の芯にまで染みいってくるかのようです。
自身を苛むそれを堪えたくて、アリスの肩を掴んでいる手に思わず力が篭ります。胸のあたりにきていたはずのアリスの肩は、いつの間にか、胸より下のお腹の方に移動しているのでした。
アリスの唇は、柔らかな感触を胸に落としながら下りていきます。
やがて淡い膨らみへと達して、もたらされる刺激の予感に背筋をひくっとした緊張が走る中を、アリスが桜色の頂点に唇で触れました。
「ああぁっ……!」
幼く薄い上体が、ふるっと震えます。
二度、三度と触れるだけのくちづけを繰り返すうちに少しづつ抵抗を増してくるそこ。
ぴんと立ち上がりきったところで、いたいけなその突起をアリスは唇で捉えました。
捉え挟んで、挟み引いて離し、再び捉えて。
「ぁ、ふあっ、ぅ、あんんっ……それ、やっ、ああぁっ……!」
唇が離されるたび、魔理沙の胸にはじんっとした鋭い甘い痺れが沸き起こり、体を駆け抜けて手足までも痺れさせるかのようでした。
アリスはついばみを繰り返しながらも、熱い潤みを浅く穿っている指を休ませません。
胸から、体の奥のほうから送り込まれる刺激は繋がり、合わさって、体の真ん中が捩れてしまうと思わせるほど魔理沙を苛みました。
「あっ、あっ、やぁっ、ああぁんっ! ああぁっ……!」
魔理沙はその通りに身を捩って、背を反らせていき、それにともなって肉付きの薄い胸も突き出されていきます。
頭が振られて、金の髪がシーツを打ちました。堪えるようぎゅっとつぶった目尻から、溜まっていた涙がこぼれてこめかみを伝い、金髪の中へと消えて行きます。
魔理沙のそんな様子を、断続的に跳ねるあどけない胸の上から、かすかですが明らかに熱を滲ませている蒼の瞳がじっと見つめていました。
唇と中指とを器用によどみなく動かしながら、アリスは伝った雫に濡れている手首をひねって、他の指と同様に蜜にまみれた親指で、谷間のはじまるあたりの部分を探りました。
「っあ! そこ、は、っ……!」
少し触れられただけで、腰が砕けてほどの快感をもたらすそこを、アリスの親指が掠めるように触れてきました。
たったそれだけなのに、足のつま先まで痺れるような感覚が駆け抜けます。
さらに指の先を探るように動かされて、頭の奥まで響いてくる痺れが、魔理沙の背を反らせて顎を上げさせました。
一番敏感なところを探られて、否応なく意識がそこに集中します。そのさなか、不意に胸の突起がきゅうっと吸い上げられました。
「ふああぁッ?!」
するどく甘い刺激が、魔理沙の胸を貫きました。それとほぼ同時に、浅いところを圧し撫でていたアリスの中指が、その動きを強め早めて、膨らみをえぐるように穿ち始めました。
「あッあぁッ! ありすっ、だめぇっ! ッあ、ヘンに、な、……ッ、あぁぁんっ……!」
送られてくる異なる刺激が、重なり合って強まって。相乗して魔理沙の内側で暴れているそこへさらに、探り出された充血した芯に親指が押し付けられました。
「~~ッッ!!」
ぎゅっと目をつぶって、声にならない声を喉から発しながら、魔理沙は弓なりに背を反らせて、体をびくっと大きく跳ねさせました。視界が、意識が、何もかもが一瞬で真っ白に染まります。
「――っああぁっ、ああぁぁああっっ……!」
蜜であふれた谷間では、熱い潤みに沈む中指をきゅううと締め付けながら、親指の先ではびくびくとひきつるような震えをアリスに伝えています。
ブラウスを掴む手は爪立てられ、足のつま先はシーツに突き立てられて。
「っあ、はああっ、ああっ、ああぁっ……!」
途切れ途切れの声を上げるたびに幼い腰がひくんと揺れ、それは回を追うごとに徐々に小さくなり、最後には小さな肢体をどっと脱力させて、魔理沙はベッドに沈みました。
唇から解放した桜色の突起は痛ましいほど立ち上がりきって、太ももの間から引き上げたアリスの手は、蜜でぐっしょりと手首まで濡らされていました。
「はっ、はぁっ、はー、はー……」
忙しなく肩を上下する魔理沙の、滲んだ汗で額に張り付いた髪をアリスは指先でどけてやります。
「充魔するどころか、魔力消耗しちゃったわね……」
目を閉じて切なげに眉を寄せ、荒い呼吸を繰り返す魔理沙には、アリスの満足気な声色でうっとりとこぼされた呟きは、おそらく届いていないでしょう。
届いていないといえば――アリスの秘めた想いもまた、魔理沙には届いていないのでした。
いつも作業をしている机の上の卓上鏡や、窓硝子。それらに映る魔理沙の姿から、魔理沙の想いをアリスは察していたのですが――こちらをしきりに意識する魔理沙の様子がとても可愛くて、ずっと見ていたくて、アリスは魔理沙の想いを知りながら気付かぬふりをしていたのでした。
鏡や窓に映る姿をひそかに愛でられていたとは、魔理沙はつゆほども気付いていません。
可愛いものを愛でるには、ときにこころを鬼にせよ。それが、この人形遣いのモットーだったのです。対象だけでなく、自分にも、です。
しかし今回、拗ねてふて寝する様子や、恥ずかしそうに自分から「…もっと」とくちづけを求めてくる魔理沙の様子が、アリスの精神を打ちのめしてあまりあるほどに可愛かったので、アリスの自制心はあえなく臨界を迎えたのでした。
荒かった魔理沙の呼吸はいつしか一定に落ち着いて、おだやかな寝息へと移っていました。
未だ熱の冷めやらない小さな肢体にシーツを纏わせ、自分も同じシーツにくるまりながら、アリスは魔理沙を背中から包み込むようにして、ぎゅっと抱きしめます。
隙間なく体を密着させて。
――少女充魔中……。
【4.こんなときは】
【§別売品】
「んあ……あ、れ? わたし、なんで裸……って、アリス?」
「ん……起きたの?」
「あ、ああ、起きたの、ぜ……って、んっ、んんーっ?!」
「んー…」
「っ、ふはあっ……な、なな、なんでキス……?! あ、寝る前……あぅぁぁぁあああ」
「――好きよ、魔理沙。ずっと前から、あなたのことが好きだったの」
「ええっ? ……ううぅっ、ありすっ……」
「ん……」
「ん、んっ……」
「……お風呂に入りましょうか。そのあと、ご飯にしましょ。泊まっていくでしょう?」
「………………ぅん」
その後、お風呂であんなことやこんなことをされ。
夜になって再びのベッドでもそんなことをされてしまうのですが、それはまた別のお話。
【§お客様ご相談窓口のご案内】
午後の日差しに照らされる、紅魔館の正門前。
門柱にもたれる美鈴の察知範囲に入ってきたこの無機質な気配は――
「アリスさんの人形……?」
見えざる力でふわふわと浮いている洋装の少女人形が、こちらへやってくるのが見えました。
美鈴の前までやってくると携えていた封筒を差し出し、美鈴がそれを受け取ると、ぺこりとおじぎをして森の方へ帰っていってしまいました。
小さくなっていく人形の姿を目で追っていた美鈴の横に、突然現れる気配があります。
「アリスからね?」
「そのようですね」
こういう登場の仕方には慣れきっているので、驚くようなことはしません。声の主に請け合って、美鈴は咲夜に封筒を手渡します。
咲夜は、受け取った封筒から手紙を取り出しその場で一読すると、
「残念ねぇ」
と肩を竦めました。首を傾げる美鈴に、みる?と言いながら手紙を渡します。
あの現品こそ欲しかったのに。咲夜のそんなつぶやきを耳にしながら、美鈴が見た書面には――
”――このたびは実地試験のご協力、まことにありがとうございました。
当方の都合により、残念ながら製品の開発は見合わせることにいたしました。
プロトタイプは当方自家用に転換しますとともに、今後の制作の予定はございません。……”
【§アフターサービスと保証】
(取扱説明書、と題された書きかけの文書はここで終わっている)
かっとなってやった。
アリマリねちょが書ければ何でもよかった。
今も後悔していない。
奥手なかまって魔理沙と、考えの読めないお姉さんアリスのアリマリ、でした。
9月ごろにツイートした不条理ネタが元です。一部のシチュネタをフォロー先のある方に許可をもらって使わさせて頂きました。多謝!
文中の見出し的なアレらは某自律掃除機の取説風にして遊んでみたものです。
敬体で書くのが楽しかった(小並感)
楽しんでいただけたら幸いです。