創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius 作:JNEXEL
天才ガンプラダイバー....えぇ?のリョウマ・アルキメデスこと水崎 諒馬は、比良坂 舞夜との再開を経てクラックゾーンの修復に乗り出す。そんな中再びアーネストのジプシー・ノアールの、ノアールロータスが襲いかかってきた。何の因果か暴走しかける舞夜を抑えつつも、ジプシーを追うリョウマ達。しかし後一歩の所で伏兵によって取り逃がしてしまう。さてどうなる第11話!
じ、自分で天才って言っちゃうんだ....あ、今回は神宮寺
英梨がお送りしました〜!
周囲を貫くメガ粒子の奔流。廃棄コロニーの半分が吹き飛び、その勢いもろともビルドレイザー達は宇宙へと放り出された。リョウマはレーダーから敵の反応が消え、悔し紛れにシートの膝掛けを叩いた。
「敵は一人じゃなかったと何故....!読んでいなかったなら、天才の名が廃る....!」
交流区画に帰還すると、見覚えのある男が声をかけてきた。リョウマは彼を見るや足を止め眉をひそめた。その男とは、グロックだった。
「よっ。さっきの戦い、ちと覗かせてもらったよ」
「何?」
「そう怖い顔するなよ。ここん所妙な動きをする奴がいるもんでな....もしかしたら〜と思ったけど、今回はハズレだ。安心しろ」
「どういう事だ?」
リョウマに怪訝そうな顔をされ、グロックは近くの椅子に腰掛けた。
「ZeuS事件の事をまだほじくり返してる連中は、あんたらだけじゃないって事だ。どうもその女はお前さんと、その両親....んで、百崎 翼との関係を嗅ぎ回っている」
「女って.....一体誰の話をしている」
暫し間を置き、グロックは口を開いた。
「神宮寺 英梨だ。お前もよく知ってるだろ?何かしらで協力してんだからよ」
「あの人が....成程、理解は出来る....実感の無い記憶ばかり持ってる俺に当たるよりは、確実だものな」
「だから奴にも気をつけろ。背中を刺されるようなことにならねぇ様にな?Ciao!」
グロックはそう言うとリョウマの肩を叩き、そのまま姿を消した。ひとり残されたリョウマは現実でもやらねばならぬ事が増え、胃が痛みそうだった。
「皆は先に戻ったみたいだな....まぁ、それはそれでいいか...」
ウィンドウからカレンダーを呼び出すと、今日の日付を見て唇を噛んだ。
「確かに今日だったな......舞夜......」
リョウマはすぐにダイバーズから意識を引き戻した。
やはり弘も奏もラボを後にしていたようで、荷物が消えていた。諒馬は一通り忘れ物が無いか確かめた後、ロッカーからスーツを出して着替え始めた。そしてラボを出て車に乗り込み、エンジンをかけた。これから向かう場所は、諒馬にとってある意味かけがえのない地である。東京からはそれなりの距離があり、道中で花束を買いながら向かう事にした。1時間近く高速道路を走り、少し脇道を通ると片田舎の景色が見えてきた。砂利道に車を停め、花束を片手に進んだ先は墓地だった。目的の墓の前に立ち止まり、花束を置いて合掌する。
「まぁ....今年もいらしてたんですね?」
「どうも......去年本当に亡くなったと聞いた時から、毎年会いに行こうと決めていたもので」
少し老いた女性が現れ、諒馬は挨拶しながら立ち上がり墓石に水を掛けた。墓石には、"比良坂 舞夜"と刻まれていた。
「ありがとうごさいます。きっと娘も喜んでいると思います....旅立っても愛してくれる人がいるんですから」
「私はそんなんじゃ.....」
言いよどむ諒馬に、舞夜の母は首を横に振った。
「以前にも仰ってましたね。でもそうやってご自身を責めないで下さい。....事件の話は聞いております。でもそれは、あなただって被害者の一人じゃありませんか」
「だけど実験に加担して、命を奪ってしまったのは変わりのない事実です。償う事すら、烏滸がましいのは分かっています....」
諒馬は俯きながら墓を見つめ、無意識の内に拳を握っていた。ZeuSに入社してから、海外支社に赴任する前日までの記憶が、実感の無いものばかりなのが歯痒くて仕方が無かった。舞夜の母は諒馬を家へと招き入れた。諒馬の立場からすれば、舞夜の実家である。この時代にしては敷地が広く、古風な日本式の邸宅と言った趣がある。先祖代々地主だったらしく、農業も営んでいたと言うから納得がいく。だが夫婦は高齢で生前の舞夜も継ぐことは考えていなかった事もあり、近い内に引っ越す事になるらしい。舞夜の母はそんな話をしながら、タンスからある物を取り出して諒馬に差し出した。
「先週見つかったんです。手紙も一緒だったので、きっと水崎さんにプレゼントする予定だったかと」
「これを....私にですか?」
真っ白な小さいが長い箱と、便箋が1通。諒馬は先に箱の封を開けた。中には緑地に黄色のラインが入ったネクタイが。ネクタイの大剣の裏には、赤と青の糸で刺繍された鳳凰が描かれていた。ネクタイピンまで付属しており、歯車の刻印がなされている。諒馬はこれを見た瞬間言葉を失った。唯一残っていた記憶、実験の直前に舞夜から聞いた言葉が蘇る。生前の彼女は、快活のそのもので開発チームのムードメーカーだった。実感が薄くとも、これだけは嘘ではないとはっきり言える事だった。諒馬はネクタイを握りしめ項垂れ、肩を震わせた。
「俺は.....君を失いたくなかった....!」
嗚咽混じりに吐き出される、舞夜への感情。今まで全く人を愛せなかった彼が、唯一心を寄せられた人間。それが比良坂 舞夜だったのだ。ダイバーズで再会した彼女も間違いなく本物だが、何かを失った形でしかなく諒馬は言いようの無い恐怖を感じていた。否、聞くのが怖かっただけに過ぎなかった。少し落ち着いてきた頃に、舞夜の母が戻って来た。盆に湯呑みとお茶請けのお菓子が乗っていた。
「あの娘がここまで好きになるなんて、やはりあなたは悪い事をするような方では無いわ....最後に家に帰ってきた日、"結婚したい人ができた"って喜んでたもの」
「それが俺だった....何て冗談なんだ....。今更ですけど、俺は事件の事はざっとしか話してないはずです。なのにそこまで知ってる様な言い方を....?」
墓前での会話に引っかかりを感じていた。前に来た時は事件について、自分が関わった事と舞夜の命を奪ってしまった事への謝罪しかしていなかった。本来ならただ責められるだけのはずが、諒馬まで被害者の一人だったと理解されているのは妙な話だった。
「朝方来たんです....記者の方が。確か、神宮寺...と仰ってました」
「神宮寺.....!?何でここに....何の為に....?」
舞夜とは無関係である、英梨がこの家の場所を知っていた。記者である以上どこかの伝を使えば知ることも出来ようが、いきなりやって来て接触を図るのは常識外である。挙句ZeuS事件の話をしてしまった。諒馬は彼女までも敵に回ろうとしているのか、全く推し量れず戸惑いを隠せなかった。
東京拘置所。ある一室を訪れたのはシューインこと、東郷 純一だった。面会の相手はあの百崎 翼である。何故か監視の為の警官が入出せず、面会室を壁を隔ててこそいるが、純一と翼だけしかいなかった。
「やはりあなたの予測通り、水崎は動き始めました。指示に従いビルドシステムの開発も進めさせています」
「そうか....監査法人もこのタイミングで全てを回収しきるつもりなのだろう。東郷...次の手はすぐに実行出来るのか」
翼の態度は英梨が来た時とは180度変わって、以前のような雰囲気に戻っていた。かつての戦いで大きな犠牲を払ったが、事前に対策を講じていた。それが間に合った結果、その犠牲すら帳消しに出来たのだ。買収した弁護士を利用して自らを偽り、刑事もジャーナリストである英梨さえも欺くのに成功していた。
「問題ありません。新たな戦力の確保も完了しています。後はジプシーにビルドレイザーのデータを採らせるだけです」
「排除せねばならぬ敵は3つ。一つはROMANESQUEの記者....神宮寺。もう1つは門松教授....最後は行方を眩ませた徹・アルマーニュ....それさえ潰えてくれれば、私の目的に大きく近づける。アーネストには息のかかった者達もいる。なれば後一歩、か」
「承知しております。これにて報告は以上です。失礼致します」
純一は深々と礼をすると面会室を後にした。
「旦那もよく働くねぇ〜....」
待合室へ向かおうとした矢先、背後から声が聞こえた。振り向くとそこには40代そこらの、独特の色気を持った男が立っていた。グロック・ルーツこと結城 秀晃である。
「勝手にうろつかないでもらえますか。迷惑行為以外の何物でもありませんよ」
純一はため息混じりに呟き、待合室に向かった。いきなり後ろから何かが飛んできたので、すかさずキャッチするとその物体の正体は、缶コーヒーだった。秀晃は拍手をする素振りを見せながら、席に座った。
「Bravo!真後ろから不意討ちのつもりだったんだがなぁ...やっぱお宅、後ろにも目がついてんじゃないの?」
「もし取れなければ私は怪我をしていたと言う訳ですか....警察の目の前でよくそんな事できますね」
「誰の目にも事故としか映らねぇだろ、こんな事。しっかし、あの百崎 翼.....転んでもただでは起きないって所は凄いよなぁ。これじゃあ倒してくれた連中も、どうなる事やら」
「自身の敗北も、計算の内だった....そう言われれば今回の動きにも納得が行く。我々は彼の行動をより早めるための、下地を作る事に専念すれば良い」
翼は自らの退陣までも視野に入れていたのだろうか。純一もそれは計りかねていた。しかし現実に諒馬が動き出して、かつてのZeuSの存在が世間に再び知られようとしているならば、影響力を取り戻して蘇ることは簡単にできてしまう。翼が警察の一部を買収したと言うのだから、準備さえ済んでしまえば取引に及ぶのは容易に想像できる。
(なるほどねぇ.....悪い事じゃあないんだが、先に一枚噛ませといて正解だったかもな)
待合室を去る純一を横目で眺めつつ、秀晃は欠伸をした。
「そうだ.....後一歩で、ダイバーズはこのまま歴史を刻むんだ。なぜお前はそれをリセットしようとするんだ....水崎」
純一は空を睨むように見上げ、拳を硬く握った。あれ程の凄惨な事件を経ても、ダイバーズをこのまま残していても問題は無いはずだった。しかし諒馬の行動はそんな動きに逆行するものでしか無い。純一の目には、これまでの歴史を無かった事にしようとしているとしか思えなかった。ビルドシステムが本当にダイバーズを変えるとも信じていない。自身も使って見て感じたのは、ただ一方的に相手を嬲り殺すだけの力そのものである。このような物が実装される前に翼によって凍結されたのならば、それは間違った判断では無いはずだ。やがて目の前に1台の車が止まった。純一はドアを開き助手席に座った。
「城島か。ビルドレイザーのデータは?」
運転席にいる女、"城島 結利香"は問われるとやや申し訳無さげに純一を見た。
「申し訳ありません、データは採れましたが....要求量には届きませんでした」
「いや何....こちらも要求し過ぎたと思っていたから、不問にしておこう。今のビルドレイザーでは、まだこちらが求める力には到達していないだろう」
城島はアクセルを踏み、エンジンを始動させた。
「あそこに収監されているのですね?百崎 翼は」
「でなければ何故私がこんな所まで出向く必要がある」
純一は適当に返し、膝の上でノートマシンを開いた。
「ふふっ.....それもそうでしたね」
車は拘置所からアーネスト本社社屋の地下駐車場へ向かう。道中で検問が実施されていたが、特に気にせず車を走らせる。
「イフリートコラプスも調整が済んでいる。後はそちらのノアールロータスにも、手を着けておきたい」
駐車した直後、純一からノートマシンの画面を見せられた。どうやら先程の戦闘リプレイから純一が改良プランを見繕っていたようだ。結利香はその内容に目を通し、小さく頷いた。
「大規模な改修は望みませんが、ライフルの静音性....でしょうか」
「であればそれで行こう。裏からいじれば簡単にできる内容だ」
用事が済み、ラボへ戻ろうと家の敷地を出た矢先、諒馬はハンチングキャップを被った銀髪の女と鉢合わせした。否、待ち伏せされていた。入ってきた時は別の場所から進んだ為に分からなかった。
「いつからここにいたんですか....神宮寺さん」
ゆっくりと歩み寄り、帽子のつばを上げ笑みを浮かべたのは、やはり英梨だった。
「いやぁ〜、今しがた戻って来たばかり。いやいや、嘘じゃないですよ?」
「まぁ、それはいい....それより聞きたい事があります。何故事件の内容を話したんですか。あのまま何も言わなければ、ただ俺が恨まれるだけで済んだかも知れないのに!」
「あぁ〜それね。実は私、そちらの事も同時に調べてたのよ。当事者....と言うか被害者とも顔見知りだったから急いで裏取って、事実をありのまま話してきた。だってこれからダイバーズを元に戻そうとする人が、ずっと憎まれっぱなしじゃぁね?」
英梨はそう言うと笑顔を消して、訝しむような顔で諒馬を見つめた。
「でもね、あなたもあなたで胡散臭くなってきたなぁってね。事件の当事者で、しかもZeuSの人間だったのに何も話さないなんてさ」
「よく言われる。だけど俺は、ZeuSに入社してからの記憶は殆ど無い。何でこうなったのか、知っているだけで覚えてはいない....だから何もかも実感が薄すぎる」
「知っているだけで、覚えてない?」
「全部門松教授とニュース、掘り出してきた資料から事件の内容に触れた....そんだけだ。もうあなたには色々頼めなくなって来ました。俺の事まで調べ上げる気なら、勝手にしてください」
諒馬は吐き捨てるように言い残し、自らの車に乗ろうとするが英梨はそれを呼び止めた。
「だったらこれは知らなかったと思うけど?あなたのご両親が、百崎 翼の下で何を研究して、何をやらかそうとしてたのか」
両親と聞き諒馬はドアを閉めようとする手を止めた。聞いた話では、諒馬と同じくZeuSで働いていたのと、翼に強く心酔していた事しか知らない。諒馬の視界が歪み、英梨を凝視した。
「やめろ....あんな奴らの話なんて....!」
「でも知らなきゃなんない事だし、遅かれ早かれ向こうも知ってるから手札に使われるでしょ?追々詳しい事は調べるけど、確実な事は言える。どう?知りたい?今ならタダで教えたげる」
英梨の予測は尤もだった。アーネストの連中、特にシューインの一派であればその事実を振りかざして、諒馬を再起不能に陥れる可能性が高い。そうなる前に知っておけばそのリスクは回避出来る。しかし、心から憎しみを感じていた両親の話など、諒馬は聞きたくもなかった。だが、聞かねば余計な苦しみを味わうのもまた事実だった。英梨の次の一言が、否応無しに覚悟を決めさせた。
「比良坂 舞夜さんが命を落としたのは、向こうの連中によって仕組まれた事....だとしたら?」
「舞夜が.....!?何の冗談だ!そんな事は誰も言ってなかった....!!」
「そう。教授も多分知らなかった....と言うかあの人も聞いただけだと思う。だから言えなかったのよ....確証なんてなかったんだから....あ、ちょっと話まだ終わってないでしょ!?」
「確証がないなら話さないでくれ....だけど知らなきゃマズいってのは分かった。詳細がハッキリしたら聞かせてもらう....それが最後になるはずだ」
そう言うと諒馬はドアを勢いよく閉じ、車を発進させた。英梨は去り行く車を遠目に見送りながら、石垣に寄りかかった。
「ええ、言われなくても調べてやるわよ....上塗りの記憶しかない人に、救わせるわけには行かないもの。それも違う意味で"自分を失っている"んだから....」
[次 回 予 告]
英梨から両親にまつわる事実に触れられそうになり、動揺する諒馬。それは戦いにも現れ、判断力を失いかける。そんな状況にも構いなく現れるアーネストの手先達。その中にはあのビルドシステムを搭載したイフリートも、黒いウヴァルも居た。
次回、創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius
File.12 CRUELな宣告