創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius 作:JNEXEL
ダイバーズの交流広場第6区画、その某所。ジプシー・ノアールは、プラネタリウムドームのような場所を訪れた。ただ鑑賞をしに来たというわけではない。何より天井には何の光も灯っておらず、暗闇と非常灯を除いては何も見えなかった。
「やっぱり待っていてくれたのね。リゲル・エンデバー君」
腕時計を操作し、側面についたライトで照らした。一番奥の席に向かってゆっくりと歩み寄り、そこに座る人物の耳元で囁いた。
「........また僕なのか....もう勘弁してくれ.....!」
青年は頭を抱え、ジプシーの声を聞くまいと首を振った。ジプシーは彼の隣に腰掛け、じっと様子を眺めた。
「私だってこんな事はしたくないです。でも私一人じゃどうにもならなくて....あなただってしたいんでしょ?家族を奪った人への復讐」
青年の耳に入った言葉がトリガーとなったのか、彼は手を震わせ悲鳴を上げた。唐突に沸き起こる怒り、嘆き、苦しみ、恨み。その全てが同時に青年の脳に押しかけて、精神の安定が崩れていく。
「僕が殺したいのは奴だけだ!!関係のない人なんて巻き込みたくない!!ぁああ.....うわぁあああ!!!」
彼の叫びをジプシーは苦痛さを滲ませた顔で聞いていた。やはり彼を利用する気にはなれなかった。いくら装ってみても彼女自身の根となる部分が邪魔をする。
(だけどやらなきゃ行けないのよ。私の正義がそうしろって言うんだから)
ZeuSの敷地内にあるラボの地下室に、諒馬は戻って来た。雨が降っていた為か全身ずぶ濡れだった。
「雨が降るなんて聞いてねぇよ....最悪だ」
隣の部屋に向かい、ロッカーから新しい服を出して着替え始めた。鏡に映る背中だが、首の付け根付近に深く刻まれた傷が。どこかで怪我をしたというよりは、手術痕のようにも見えた。着替え終わる頃にラボの方から奏の声が聞こえた。諒馬は急いでパーカーを着ると、ラボへ向かった。
「あ、水崎さん。お疲れ様です」
「雨凄かったろ?俺とした事が予報見てなかったからびっくりした」
「確かに....バスがかなり遅れるくらいでしたから」
「あれ?常岡のやつは?」
奏は来ているが、弘の姿はなかった。諒馬は給湯室でコーヒーを淹れ、奏のデスクに置いた。
「多分バスとかの遅れかと....ありがとうございます」
「そっか.....ちと席外すから待ってるか先にダイバーズに行っててくれ」
諒馬はそう言い残し、部屋を後にして再びロッカールームに入った。昨日遭遇した、英梨からの一言が諒馬の頭の中をグルグルと回っていた。
『比良坂 舞夜さんが命を落とした事が、実は誰かに仕組まれた事だとしたら....?』
舞夜の死は諒馬自身が招いた事だったはずが、その裏で陰謀が絡んでいた。不確定な事でありながら諒馬の胸中に渦巻き続ける、不気味な感覚に彼女の言葉の現実味を感じつつあった。
「そんな馬鹿な事が.....俺が殺してしまったんじゃなかったのか.....」
自分が恨まれ続ければそれで済んだこと。しかし諒馬の覚悟とは裏腹に変わりつつある真実は、彼を追い詰めようとしていた。実感のない記憶しかない彼には、情報と記録以外に頼れるものがない。地下の入口からドアが開く音がした。弘が到着したようだ。諒馬はすぐさまロッカールームを出てラボに戻った。
「悪りぃ、遅れた〜.....!」
弘がタオルで髪を拭いながらドラグハートをデスクの上に置いた。
「まぁ、仕方ない。この雨だったんだ。さて始めるぞ」
諒馬と弘はそれぞれの椅子に座り、ダイバーズの世界へと飛び込んだ。交流広場第8区画。国際ネットワークの中でも特に再開発が進んでおり、嘗ての面影は消え失せSF映画の様な未来都市となっていた。先にスワンが来ており、リョウマらの到着に気づきオープンテラスから出て来た。
「後は比良坂さんだけですね....全くお姿見ないですけど」
「舞夜なら後で来るはずだ。スワン、どうした?」
リョウマにはスワンの様子がおかしく見え、歩みを止めた。
「本当の話を聞かせてください。比良坂さんは....!水崎さん!」
リョウマが無視して立ち去ろうとし、スワンは食い下がらんと着いてきた。弘は何事か分からず、ただ呆然と見ていた。しかし妙な気配を感じ取り、思わず振り返った。黒いスーツ姿の女と、その後ろを歩く男。全体にウェーブのかかった髪型を見て弘は愕然とした。
「.......まさか....!?」
リョウマはふと気配の少なさに気づき、スワンを避けて周囲を眺めた。どこにも弘の姿は無く、二人の間に悪い予感が過ぎった。スワンも同じことを考えていた。
「水崎さん....!」
「あのバカどこに行きやがった!」
来た道を逆行して走り、弘の捜索を始めた。ログインステータスを確認した所、彼の居場所はこの区画の中との事だが、ここまで様変わりしたのであればリョウマにも探し出すのは困難だ。駅と思しき建物の前で舞夜にぶつかり、二人揃ってよろけた。
「どうしたのですか、諒馬....!」
「ま、舞夜....!弘の奴がいなくなっちまったんで、今探してる所だ。お前の手も借りたい」
「.....了解。発見次第連絡します」
舞夜は頷き、電子の揺らぎと共に姿を消した。思いもよらぬタイミングで出くわし、話が出来ずじまいとなった。
「望!どこに居んだよ返事しろ!...クソッ....見失った....けどアイツは間違いねぇ...望なんだ....!」
弘は路地の奥までやって来ており、対象の人物を見つけられずに苛立ち混じりに壁を殴った。それでも諦めきれず、路地を抜けて大通りに出た。その様子を窓屋根から眺める男が一人。グロックだ。近くを通りかかろうとした弘を呼び止め、飛び降りた。
「何かお探しかい?」
いきなり屋根から飛び降りて来た男に弘は絶叫し、大きく後退りした。
「どっから出て来てんだよアンタ!?....や、屋根から....??」
「そんなこたぁどうだっていいんだろ?お前さんが探してるのはコイツかな?」
グロックがジャケットの中から出してきた写真。弘はそれを見るや引っ掴むようにして奪い取り、凝視する。やや全体的にウェーブのかかった髪に、とてもスポーツ選手とは思えぬ顔立ち。間違いないと弘は確信した。
「な、何で分かった?」
「今しがた鉢合わせしたもんで。けどを彼を連れていた女....割と悪い噂ばかりだ。きっと彼は利用されてる」
女、と反芻しながら記憶を辿る。確かに一瞬だけだが、望と見られる男と一緒に女のような人影もいた。弘はグロックに視線を戻すや否や、すぐに走り出した。
「マジかよ....!済まねえ、助かったぞ!」
走り去る弘を、グロックは溜息をつきながら見送りサングラスをかけた。
「間接的にあの"子猫ちゃん"を潰さにゃあならん....ま、俺が手を下すより早いだろうさ....お?やっぱり来たか」
足音のする方へ目を向けると、リョウマの姿が。リョウマは左右を見渡しながらこちらへ向かっていた。だが向こうにも気づかれ、緊張が走った。
「やぁ水崎君。随分と慌てているな?」
「今はお前に構ってはいられない。退け」
「おいおいそれでいいのか?」
そのまま通り過ぎようとするリョウマの肩を掴み引き寄せた。互いに睨み合い、一瞬の静寂が訪れる。
「どう言うつもりだ?」
「次のお前さんの予定を言い当ててやろうか。ブルームーンに接触して、JOKER事件に関する情報を手に入れる。違うか?」
何の脈絡も無く言い当てられ、リョウマは驚きを隠せなかった。言葉を発さなくなった彼に追い打ちをかけるかの如く、グロックは続けた。
「けど残念だったなぁ。ブルームーンはもう存在しない。時代の流れだ。そういう自警団的組織は今のダイバーズにそぐわない。だから解体されたとしてもおかしくは....ねぇよな?」
「解体....だと....?馬鹿な!そんな話は聞いた覚えがない!」
そんな話は初耳だった。リョウマは狼狽し視線を別の方に逸した。
「信じるも信じないもお前の自由だ、水崎 諒馬君。あぁそう、お前さんが探してる奴はあっちに行ったよ。これは嘘でもなんでもねぇ。それじゃ、Ciao!」
「待て!ブルームーンが解体されたと言うなら、何故話が広がらない!」
リョウマが問い質そうとしたが、グロックはヘラヘラと笑いどこかへと去ってしまった。
「一体何だってんだよ.....ブルームーンが消えたって......もしかして"アント"も....」
近くの椅子に腰掛け、頭を抱えた。グロックの言った事から推測するに、ZeuSともう一つの事件に関わった組織は今はもう存在しなくなったと考えられる。もしそれが事実なら、リョウマの行動予定がすべて崩れ去ってしまう。振り出しに戻るということは無いにしても、これまでの流れからするとかなり状況が悪くなっている。突然リョウマの元に通知アラートがやって来た。
「あ、やべ......常岡の事すっかり忘れてた!最っ悪だ......」
リョウマはコートの襟を正し、急いで現場へ急行した。
「常岡さん!常岡さん!ここに居るんですか!?返事してください、常岡さん!」
テムズ川の側に建てられた金色の時計塔ビッグ・ベン。その上空を飛行するF91-M。イギリス・ロンドンを再現した街並みのバトルフィールドに、スワンはやって来た。一番最初に弘からの通知が来ていたので、取り急ぎ向かった次第である。しかしドラグハートの姿は見当たらず、スワンに不安を与えた。
「反応だけはあるのに、機体はどこにも.....なッ.....これは!?」
時計塔を支点に張り巡らされた緑のビームカーテン。スワンは既視感を覚えF91-Mに制動をかけた。廃棄コロニーで見たものと全く同じであった。
「だけどここを抜けなければ.....駄目、だよね....やるしかない」
リアアーマーからビームサーベルを引き抜き、光の糸を切り払いながら先へ進む。時計塔から離れ、市街地上空へ差し掛かった時。
「やっぱり....ッ!!」
左前方からビームの雨が降り注いできた。F91-Mは咄嗟にビームシールドを構えやり過ごし、ジェットペネトレイターのビームマシンガンを撃ち返しながら、公園の中心に着地した。しかし執拗に撃ち込まれる光の雨の、出処がつかめずスワンは防戦に持ち込まれる。スワンは注意深く敵の挙動を予測し、状況打開の機会を伺った。
「右へ左へ行ってる.....ジグザグ挙動なら!」
スワンの脳内に何かが閃く感覚がし、それに従ってレバーを動かした。F91-Mが左右に半円を描く軌道で地を滑走しつつ、サイドアーマーから予備のビームシールドを放り投げた。そのシールド発生器は投げた瞬間に爆発した。
「そこッ!!」
爆発した周囲をビームマシンガンで薙ぎ払い、敵を炙り出した。やはり敵は、流線型の装甲を纏う漆黒のMS―ノアールロータスだった。
「面白いやり方で探り当てましたね?でも猫は可愛がってあげないと、簡単に牙を剥くと分かっていて?」
ジプシーは看破される事など想定済みで、全く慌てることなくスワンの奇策を評価した。ノアールロータス自体の武器もかなり変わっていた。今までの様な茨の双剣ではなく、黒に染められた本体に緑に発光するパーツを嵌め込んだ、一組の盾と剣を得物にしている。リアアーマーにはビームアサルトライフルを懸架している。より中近距離戦を意識しているのだろうか。
「猫は実家でも飼ってましたから、世話の仕方くらいは!でも、今のとは何とも関係ありませんよ!」
F91-Mが地を蹴り、大きく羽撃いた。背部から翼状に伸びる"ミノフスキーブースター"のカバーが開き、青白い光を発する。それに逆行するかの様にノアールロータスは、建物の上にフワリと着地しV地を描くように他所へと飛び移った。緑光の網を華麗に潜り抜け、その隙間からビームアサルトライフルを放つその様は、まるで映画に出てくるような、腕利きの女スパイのようであった。
「ここまで来れたとしても、既にこの場所は私の独壇場になっているの」
「そんなの....!」
ビームシールドで光弾を払い除け、ビームサブマシンガンで応戦するF91-M。機体サイズの小ささを利用して小器用に潜り抜けるが、かなりの密度のビームカーテンだ。全方位から接触せぬように動かねばならず、スワンはかなり神経を使いながらの立ち回りを強いられた。しかし、ここで予想外の出来事に遭遇してしまう。F91-Mがビームマシンガンで網を撃ち破ったのと同時、ビームカーテンを伝う円筒形の端末が背後に回り、超弾速のビームを撃ち込んできたのだ。音も前触れもなく放たれる凶弾にスワンが対応できるはずも無く、コクピットを揺らす衝撃でコンソールに額を打ち付けた。F91-Mは鉄塔の中腹に衝突し、真っ逆さまに運河に落下した。
「きゃあっ!?ど、どこから.....敵は一人じゃない....嵌められたって事!?」
スワンは額を擦りながらレバーを前に倒し、機体を起き上がらせた。幸いにも川は浅かったようだが、内部に水が入り込んだとすれば一気に最悪な状況に傾くだろう。このゲームの水陸両用の利点はそこにあるのだが、F91-Mはどちらかと言えば宇宙での戦闘で強みが活きるタイプの機体だ。一時的であっても入水は百害あって一利なしである。F91-Mが水面から浮き上がり、幹線道路を滑走しながら空中へと飛翔した。その様子を遥か遠くから虎視眈々と見つめる異形の影。そのシルエットはまるで蜘蛛と人間を足したかの様。パラサイトスパイダー。この機体の名である。
「頼むから.....堕ちてくれ!」
コクピットに座するはリゲルだ。機体中央から射出したワイヤーにビームを這わせて、半永久的にビームカーテンを維持する機能を有し、これを利用してインコムを走らせて死角から敵を狙い撃つ。ノアールロータスが何の狙いがあってか、不得手な囮役をしているのでそれに合わせている。リゲルはF91-Mが浮き上がろうとするのを見逃さず、トリガーを押そうとするがその手前で真下からの衝撃に舌打ちした。
「おいテメェ!!話聞いてんのか!!望は何処だって聞いてんだよ!!」
パラサイトスパイダーが立っていた建物が真ん中を突き破られ、倒壊寸前になった。リゲルは急いで機体を急上昇させ、別の建物へ退避しようとしたが煙から飛び出した闘士―ドラグハートにしがみつかれ地面に引きずり降ろされた。
「何でこうしつこいんだ、弘!僕はやらなきゃいけないことをしているんだよ!」
ノアールロータス以外からの通信を遮断している為に、自分の正体を弘に知られずに済んでいる。腰の可変ユニット"ヲルターパラサイト"を分離させ、膝からビームサーベルを引き抜いた。だがドラグハートの拳はそれよりも数倍速く打ち出された。上段ストレートのパンチが僅かにずれたものの胸部装甲に命中し、更に膝蹴りが飛んできたがこれは何とか受け止め切った。
「ボクサーを目指してるって言うお前が蹴りなんて!」
「クソッタレが!いい加減喋りやがれッ!俺はお前なんかとやり合ってる暇はねぇッ!!」
弘はここに来るまでに強く感じ続けた気配を信じるしかなく、目の前に立ちはだかるパラサイトスパイダーから聞き出す事しか考えなかった。炎を纏った拳の乱打を浴びせ、腹部にアッパーカットを突き刺し、浮き上がった所へ手甲から発振させたビーム刃で真横一文字に斬りつけた。リゲルは機体を吹き飛ばされながらも器用に姿勢制御を行い、自分の得意な間合いまで距離を取った。しかしそれにしても、あのMFタイプの機体は妙に慣れた動きをしているように見えた。ジプシーから聞かされていたのは、弘が自分を探す為にダイバーズにやって来たと言う話と、バーニングガンダム系統が彼の機体に当たるという情報だけだった。確かに目の前にいるのはジプシーから齎された情報の通りだが、動きからしてゲームが苦手な弘ではないと思った。
「あれは弘じゃない....アイツがここまでやれるなんて事....ないよな.....だったらコイツは何なんだ....!」
パラサイトスパイダーが左腕からガトリングガンを展開し、砲火を開始しようとした矢先別方向からの射撃を受け、ドラグハートがバランスを崩して転倒した。建物の陰から現れたのは、左右対称のシルエットかつ十字の顔をしたガンダム・ウヴァルだった。そしてそのパイロットは―グロック・ルーツだ。
「やぁ待たせちゃったか?リゲル君。今日は旦那までここに来てっから失敗は出来ない。だから、俺が少し手を貸してやろうと思ってな?」
グロックの声を聞いた瞬間、リゲルは顔を憎しみで歪め唇をきゅっと結んだ。弘も新手の登場に驚きを隠せず、冷たい汗が服に滲んだ。
「あんな所にも隠れてやがったのか....聞いてねぇぞ....!でも関係ねぇッ!!俺がまとめてぶっ飛ばしてやらァ!!」
ドラグハートが飛び起き、猛烈な加速を以てウヴァルの懐に飛び込むが、拳の軌道を読まれたのか右手を引っ掴まれた。ウヴァルの十字の"目"が鈍く光り、それが弘を無意識に震え上がらせた。
「果敢にも立ち向かってきたお前を称して、教えてやるよ。これはウヴァルスターク....ま、お前さんのことだからすぐに忘れちまいそうだが?教えといて損はないと思うんで、取り敢えずな?」
ウヴァルスタークの左手はガンダムフレーム共通のパーツではなく、まるで悪魔の名を体現したかのような、鋭い爪を備えていた。
「これはほんのご挨拶だ」
爪がドラグハートの手甲に食い込み、じわりじわりと穴を穿ちはじめた。
リョウマのビルドレイザーはかなり遅れて、このバトルエリアに到着した。しかしリョウマの面持ちは、普段とは180度も変わって苦しげであった。今しがた聞かされたブルームーンの解体、そして先日に英梨がちらつかせた両親の話。その上弘の捜索も来ている。次から次へと状況が悪くなって行くせいで、リョウマ自身にも焦りが見え隠れしていた。
「.....街全体が罠になっている訳ね....滅茶苦茶だ」
リョウマはわざと落ち着き払ったかのように独り言ちり、ドラグハートの反応のある方向に進もうとした。その矢先、足元に何かが飛来し道路を爆砕した。ビルドレイザーが一旦後ろへステップし、煙の先を凝視した。爆煙から睨む"一つ目"。それを目にしたリョウマは全てを理解した。アーネストの刺客らによってこのロンドンの街全体が罠となり、何かを追ってきた弘を連れ戻そうとするリョウマ達を一度に始末する。もしくは弘達を餌にリョウマを引き摺り出し、抹殺するか。このどちらかに絞られた。いずれにせよ、こちらがアーネストの手によって誘き出されたのは違いない。
「まんまと釣られたってのか.....我ながら情けないな。あのイフリートまで現れるなんて、ただ事じゃない気もするけどな」
煙の中からゆらりと姿を見せるイフリートコラプス。
「また会えたな、水崎」
既に変声機能は使わず、シューインはそのままリョウマに語りかける。
「前程驚きはしないという事は、私が誰なのかすでに分かっているんだな?流石に忘れられてれば悲しくもなるが」
「開発チームの中で百崎 翼に最も近かったのは東郷さん、アンタだけだ。アーネストが絡んだのが分かった時点で疑念のような物はあった。余地無しって事さ」
リョウマは淡々と返し、コンソールに手を乗せた。
「こんなくだらない事をしてまで俺を懐柔したいのか?だとしたら、らしくない手を使ってんだな」
「お前の力は俺も信じていたからな....だが水崎夫妻の実験から全てが変わった。百崎社長は初めからそれを予見していた。仮想世界に新たな時代が来る事を。それがもうすぐ来ようとしている!それをお前に邪魔されるわけには行かない。だから排除すると決めたのだ」
「成程、分かりやすい。確かに俺の戦いは、そちらに逆行してるものな。だけど俺は.....ダイバーズを在るべき姿に戻す。それだけだ」
イフリートコラプスがヒートサーベルを引き抜き、ビルドレイザーも両手を翳しフラガラッハ3ビームソードを形成した。両者は睨み合いつつ攻撃の機会を伺う。この静寂を破るのは、どちらが先か。
[次回予告]
弘の独断専行を諒馬に咎められるのは最早逃れる事のできない話だった。しかしあの蜘蛛のMSこそ弘が探していた親友が乗っていると信じて疑わなかった。
その頃、比良坂 舞夜は転移ポイントを書き換えられ、別のバトルエリアへと閉じ込められてしまう。そこで彼女は蒼穹のガンダムと邂逅を果たす。
次回、創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius
File.13 告死するBLUEBIRD