※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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File.18 再結束したTRUST&TRUST

パラサイトスパイダーは一箇所だけ糸の密度を高めている場所があり、そこへ飛び退いた。アストレイノワールの蹴りが壁に突き刺さり、瓦礫が散った。ウェルスは急いで機体を浮き上がらせ、マントの中からやや小ぶりのマシンガンを構えさせた。アストレイノワールが装備した銃は、上部に妙に大きな弾倉を備えていた。モニターにも「残弾数:100」と表示がされている。

「仕方ない、多少見られようが足止めが先だ」

アストレイノワールは網の目を抜けながらビームマシンガン"キャリコBMG"を連射した。ウェルスはかつての愛機で気づかぬ間に、高速射撃と狙撃を両立させる眼を身に着けていた。この経験はアストレイノワールでも活き、マシンガンの連射と反動がありながら狙いはほぼ正確だった。パラサイトスパイダーも着弾を回避する為に、トランポリン状に重ねた網に着地するのを諦めて、高速でジグザグ移動をする程だから実力は本物だ。しかしパラサイトスパイダーはライン状のバイザーを光らせると、猛烈な速度で飛び上がり腰のヲルタースパイダーを変形させ、クローユニットへと形を成して、アストレイノワールに掴みかかった。アストレイノワールは自由落下を利用して距離を取りつつ、キャリコBMGを撃ち込むがクローの中央部は六角形のビームシールドが張られており、破壊は出来そうになかった。

「ウェルスさん!後退してください、私がやります!」

アストレイノワールの横をF91-Mが通り過ぎる。

「勝機があると言うのか!?」

「ありません!....でも希望はある!」

スワン自身も愚行だとは思っていた。しかしこういう時、出来る事は全て試すしかないとも考えていた。ウェルスに比べると経験に乏しいが、無知の力と言う物も馬鹿にはできない。唯一彼に負けないと言えるのは、度胸だ。例え臆病でも、それを乗り越えるなら相反する自らの強みを押し出していくのみだ。F91-Mは光の翼を羽撃かせ、ジェットペネトレイターのブースターを点火した。加速は最大点に到達し、亜光速によりF91-Mは光の槍になったのも同然の力を手に入れる。

「貫け.....!貫けぇえええ!!!」

パラサイトスパイダーが巨大な爪を引かせようとしたが、間に合うはずが無かった。物質の限界加速度をもって衝突されては、為す術もなく砕かれてしまう定めから逃れる事はできない。そしてショットランサーを参考に作られたジェットペネトレイターの貫通力は、元よりビームシールドなぞ簡単に突き破れるのだ。ヲルタースパイダーは一瞬にして穴を穿たれ爆散した。その直後、パラサイトスパイダーを覆っていた黒い瘴気が消え失せ、バーニアすらも停止して真っ逆さまにエンジェル・ハイロゥへ落ちていった。

「このまま逃がすかよ.....動けよドラグハート!」

弘は居ても立っても居られず、ドラグハートを起き上がらせたが、パワーが低下していて稼働時間が殆ど無くなっていた。エンジェル・ハイロゥによる影響なのか分かるはずもなく、弘は気合で強引にドラグハートを走らせる。

「パワーが無かろうが何だろうが関係ねえ!奴から聞き出さなきゃなんないんだよ!!」

ようやくドラグハートはパラサイトスパイダーの落下予測ポイントに到達したが、その時点でエネルギーが切れ膝から崩れ落ちた。スワンもウェルスも息を呑んだ。あわや大惨事を迎えるか。その瀬戸際だった。そんな時に現れる存在は常に一つだ。

「ウェポンビルドアップ!」

ウーンドウォートのギガンティックアームユニットが伸び、ドラグハートとパラサイトスパイダーを掴んで地面に寝かせた。その場にいた全員が状況を掴めず、巨大な腕の根本へ視線を動かした。赤と青のアシンメトリーなカラーリングのモビルスーツ。天才と名乗る男の機体。後はお分かりだろう。ビルドレイザーガンダムが駆けつけたのだ。

「何やってんだよ常岡.....ボロボロになっちゃってさ。まぁでも、どんだけ本気なのかやっと分かった。お前にしちゃあ上々じゃねぇの?ドラグハートが板についてるみたいだしな?」

この状況に救われたと感じたのは、他の誰でもなく弘自身だった。

「リョウマ.....何でお前.....」

「お前涙もろ過ぎんだろ....何でこんなんで泣いてんだ、気持ち悪りぃよ」

「うるせぇ!!そう言うのは黙ってるもんだろ!」

二人のやり取りがいつも通りだった。スワンはよかった、と胸を撫で下ろしウェルスに礼を言おうと振り向いた。しかし彼の姿は忽然と消えていた。コンソールには一通のメッセージが。

"これで依頼は果たされた。お前のような人がいるおかげで、アイツも道を踏み外さずに済んだのかも知れない。逆に俺が感謝しなければいけない事だ。今回は俺のお人好しと言うことで請求は無しにする。仲間を大事にな"

スワンは改めて個人的に、ウェルス達の店に立ち寄る事にした。F91-Mが着地し、ビルドレイザーのそばまで歩いた。

「成程な.....これは俺達への警告と見たほうがいい」

リョウマはパラサイトスパイダーが消失した跡をじっと見つめ、唸った。黒く焼け焦げになった場所をズームアップし、呼び出したキーボードを叩き始めた。モニターの表示が一気に変わり、ミニウィンドウを除けばほぼ真っ暗な画面に、緑の文字が羅列された。システム領域内に進入するとこうなるようだ。勿論これは開発者だからこそ出来る方法なのだが。

「常岡....バトルエリアを離れたら全ての状況を覚えてるだけでいい、どんなものだったか話してくれ。スワンもだ」

「あの黒い煙みてぇの....やっぱり何かあんだな」

弘もパラサイトスパイダーの、あの変わり様には違和感があった。スワンも同様に、思い返してみると戦っている間、肌を伝う痛みにも近いプレッシャーを感じていた。リョウマはアクセスを終了すると、交流広場へ転移しようとした。その矢先、スワンがいきなり声を上げて天を指差した。3機のレーダーが同時に反応を示し、リョウマと弘も慌てて空を見上げた。

「おい....クラックゾーンじゃねぇか!?」

「何で目の前にいきなり出来る....何てこった....いや、待てよ....嘘だろ....」

クラックゾーンから伸びる腕は、青と黒に彩られ、かつ細身だった。前腕裏のスラスターカバーが目に留まり、リョウマはますます開いた口が塞がらなくなった。何とあろう事か、AGE-1ナイトシーカーがクラックゾーンから出て来たのだ。3人とも呆気にとられ、ナイトシーカーが降り立つのをじっと見ていた。

「....申し訳ありませんでした。力を貸すことも出来なければ、その後の処理も出来ず....不覚にもあの中に閉じ込められていました」

舞夜はトーンこそは詫びを入れていると伝わるが、あいも変わらず表情がなく無機質なままだった。流石のリョウマも責める気は無かったが、この事実をどう受け止めるのか考え倦ねていた。

「い、いや.....無事ならいい。だけどどうなっている?クラックゾーンから出て来たという事は、入って来なきゃいけないはずだ。何故無事で済んだ?」

「それは私にも見当が付きません。ですが、クラックゾーンの中には、未知の空間に繋がっている可能性がある....その発見にはなったかと」

話を聞いている内に、スワンの中にまた沸々と疑念が増していく。本当に比良坂 舞夜は、何者なのか。この一点に尽きてしまうが、その大きさは加速度的に増えていく一方だった。

 

交流広場第1区画。ようやくリョウマ達が戻って来たので、エリィはうんざりしたような顔で椅子から立ち上がった。

「一体どんだけ待たせれば気が済むのよ!あぁもう寝ちゃったから話す順番忘れたでしょ!?」

「そんなに怒る事....だよなぁ....それは悪かった。にしてもよく切り抜けられたよな、そっちにあんな才能があってなんてさ」

「あぁ......うん、まぁね....」

リョウマとエリィは、水崎夫妻の研究にまつわる事実をやり取りする際に何者かの銃撃を受け、身の危険を感じて逃走していた。その時逆に犯人を特定して対面したのだが、エリィはある事を告げた。そのまま犯人は逃走、自由の身になったリョウマは弘を迎えに行ったのである。

「とにかく、皆座って。今のうちに伝えられる事は全部伝えときたいから。まず私は、当時の開発者の一人に会ってきた。水崎さんは覚えてないでしょうけど、豊島 遙さんから聞いたの」

やはりリョウマは覚えていないと言うより、知らなさそうな反応をした。

「豊島 遙....いや、分からない」

「ええ、分かってたよ。そんで、結論から言わせてもらうと水崎さんのご両親は、ハザードシステムを開発していた。その結果、水崎さんの妹さんが亡くなった」

あまりに突然過ぎる話に全員が愕然とした。無理もない話である。ただのゲームを作っているのに、人が死ぬなど過労死か病死以外では想像がつかない。況してや更に無関係であるはずの、水崎 諒馬の妹が死去するなど、もはや訳が分からないではないか。

「ハザードシステムって何だよ....?リョウマの妹だぁ....?」

と弘。

「水崎さんの妹さんが.....??」

スワンは恐る恐るリョウマに視線を向ける。しかし当のリョウマは、釈然としない顔をしていた。

「俺に妹なんて居ない.....結構前に戸籍確認したけど、俺は一人っ子だった....妹なんて、どういう冗談だよ」

エリィは頷き、話を続ける。

「その通りで、水崎さんには本当に妹さんはいなかった。だけどその子は別の人の妹さんだった。顔も似ていない中学生そこらの女の子を、勝手にこの人の妹にでっち上げて実験に使ったって訳。しかも自分の子供がいる、夫婦がねぇ...」

「何だよそれ.....お前の両親って、相当やべぇ....て言うかどうかしてるってレベルじゃねぇぞ」

弘の言う事は尤もだった。リョウマも「ああ」と呟き、足を組み直した。

「昔から変な何かを信仰してたからな。新興宗教にのめり込んで....プログラマーって言う論理を扱う仕事をしていながら、そんな事の繰り返しだった。両親揃って精神不安定も良いところだ....正直意味が分からねぇんだよ。結局俺の為に貯めてくれてたはずの預金にまで、手を付けて百崎家の何かに投資しやがったしな。だから大学の学費は、ギリギリになって自分で奨学金とバイト代をぶち込んで、何とか確保した位だ。何の心配もしなくていいと言われた後にこれだぞ。んで、そんな親がどこにいるんだよ....と思ったら俺のだったなんて、笑い話になりやしない。挙句人様の娘を殺したってさ.....もうこうなったら笑うしかないってのか....!」

過去については大学卒業までは覚えていた。次第に語気が強まり、顔にも怒りと憎しみが見え隠れした。だが人の娘を殺した事実は、諒馬自身にもある。そこだけは本当に笑えなかった。この親にしてこの子ありとでも言いたいのか、と吐き捨てたくもなるような話だ。舞夜はエリィの話に間違いがないのを確かめるように、視線だけで頷いた。

(間違いない....水崎夫妻はハザードシステムの開発の為に、外部から人間を引き込んでいた。諒馬に妹がいないにも関わらず、親自身がそう偽って名乗らせた....ここまでする理由は簡単だ。百崎家への忠誠を形として残す為に他ならない。問題は、なぜ水崎夫妻がああまでして先代の社長と、最後の代となった百崎 翼に信奉したのか....)

しばしの沈黙の後、エリィは再び口を開いた。

「死因は脳のダメージ。人間には処理しきれない量の情報がフィードバックされて、文字通りパンクした....脳細胞の死滅量がとんでもなく跳ね上がって....のがメカニズムかも知れないわね。医学は専門外だからそこまでにして、それでハザードシステムが何なのかというと、一言で言えば"人間を超える為に人間をやめさせる"物。別にプレイヤーの為になるとか、そんなんじゃなくて百崎と水崎夫妻の単なる技術への追求によって、形になろうとしていた。でも当時の百崎 翼によって凍結された....理由は"人に危害を加えるのみならず、死に至らしめる物は容認してはならない"。そこだけは聞こえはいいんだけどね。ZeuS事件では結局使われなかったみたい」

「そこだけまともな判断してたんですね....わっ...エリィさん?」

隣で話を聞いていたスワンは、エリィに抱き寄せられ何故か撫でられていた。美少女好きのエリィにとって、スワンは本当に愛くるしくて堪らない。しかも無意識に実行しているのだから恐ろしい。だがスワンを除く者達は、エリィの話を真顔で聞いている。否、弘はうつらうつらと眠気を必死に耐えていた。

「今考えたけど、百崎 翼が自分の計画で使おうとした"条件を満たす人間"を先に潰されないように、ハザードシステムを封印した....だとしたら辻褄は合うよな」

「私もそれは考えたのよ。でも豊島さんの手帳には違うことが書かれていたの。"ハザードシステムはそれを受け入れられる器としての機体が無ければ、本来の機能を使えないまま人格までも蝕まれる。これを自在に操るのは私一人でなければならない"って言う元側近の証言があってさ.....」

「常岡達の戦いを観察していて、今の話を受けて思ったのは.......ハザードシステムがナイトロに近い物なのかも知れないって事だ....強制的に人間を辞めさせる。だから百崎 翼はデルタカイに拘っていたのか....いや、飽くまでも推測だし決め手が無いから、自信はない....まぁ辻褄なら合わなくもなさそうだってくらいだな」

リョウマは以前に聞いた情報から、翼の使う機体がデルタカイそのものや、その中のパーツを含んでいる事が共通項として挙がったのに気づいた。恐らく翼はナイトロに耐えうるデルタカイを利用して、更にハザードシステムにも適応する"究極の機体"を完成させて、計画を完全な物にするつもりだったのではないか。しかし肝心の計画の目的と言うのは、門松にもハッキリしなかったので、諒馬も知る所ではなかったが。

 

ここは何処なのだろうか。真っ青な電子空間の中な気がする。なぜ氷が溶けてしまったのだろう。なぜ、自分は身動きがとれないのか。青い髪の女は視線を下げて全てを察した。心臓に向かって繋がった鎖。やはりまだ私はあの男に縛られている。女は目を伏せ唇をきゅっと結んだ。

「よぉ、お目覚めかい。氷のお姫様」

声のする方へ顔を向けると、グロックが立っていた。特に嘲る様子もなく、ただ親戚や友人の子供に会うような調子だ。

「お前に逃げられそうになったんで、大慌てで拘束し直した。前の"檻"よりは暇しなくて済みそうだろ?まさか比良坂 舞夜と心理的接触するなんて、俺の想像を遥かに超えてくれるな?んん?」

グロックは愉快そうに笑いながら、女の頬をそっと撫でた。女は憎しみ一杯に睨みつけるので精一杯だった。心臓と繋がっている鎖の力なのか、全身がまともに動かない。逃げ出す為に身じろぎをするなど不可能である。

「飽くまでも喋らないつもり、か....ま、んな事俺はこれっぽっちも興味がないんでね。まだ恨んでんのか?俺がブルームーンを淘汰させたこと」

「ふざけるな.....ッ!!アレはお前がやった事だ.....ブルームーンを無理矢理解体させる様に仕向けた奴が何を!!」

「途端に口を開くようになったじゃないの、レイ・ブルームーン、だっけか....しおらしく黙ってりゃ、思い出すことも無かったろうにな....ハハッ」

「何がおかしい!?」

「時代の変化に追いつけない組織なんて、残しても仕方ねぇだろ。それに、ミナ・ツバクラメに並ぶかも知れない、"化け物"になる可能性がある奴が引っ張ってるなんて、皆怖がるに決まってんだから....尚更だな。"Evolve.ν-Type"さんよ」

「化け物.....!?何の話をしている!」

胸の内では分かっていた。いくらか制御が効くようになったとしても、自分の中に秘めた力は"異常"なのだと。それを狙ってグロックはブルームーンを潰して、レイを拘束している。利用されるという事も、当然予想していた。現に目の前の青い鎖は、レイの力を侵食し続けやがて精神さえも心の奥底へ引きずり込もうとしているのだ。この男から逃れる術など、もはやどこにも無いのかも知れない。

 

(創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius 1stSeason My Progres"S" 終了。2ndSeason Build "NEXT"へ続く。)




[次 回 予 告]

ファースト・シーズンが終了しました。セカンド・シーズン第一話(File.19)の公開日は近日中にお知らせします。お楽しみに!
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