※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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-これまでの創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius-
天才エンジニアでありガンプラダイバーのリョウマ・アルキメデスこと水崎 諒馬は、ZeuSの監査法人からの依頼により過去に起きた事件の、調査に乗りだした。とんでもない脳筋大学生の常岡 弘と、小さくてもパワフルな女の子の白鳥 奏、俺を知る謎めいた美女 比良坂 舞夜の4人で時に笑い、時に涙ありの....とは行かず、それぞれに迫る事実と向き合い続け、戦いから逃れることはできないまま時間が過ぎて行く。アーネストの勢力が更に禁断の技術に手を出しているはずだ。この先俺達はどう戦いダイバーズを取り戻すのか。2ndSeasonで全てが明らかになる!それではどうぞ!


Season2-Build to "NEXT"-
File.19 再構築へのCOUNTDOWN


アーネストホールディングス。日本における仮想世界技術の最先端を行く企業5社で構成される、"企業連合"の内の一角であり、現在はその主宰として君臨している。本来アーネストは、仮想世界におけるCGのリアリティと高度な物理演算を活かした都市開発シュミレーターを強みとしており、その業績で拡大し企業連合入りを果たしていた。ZeuSが存在していた頃は、そういった分野で技術提供を行い、No2と囁かれて来た。しかしZeuSの完全な消滅をきっかけに急速に開発力を上げ、今や企業連合のトップに立っているのである。無論連合内でも競争が無いわけではない。しかし、独禁法の存在する理由が競争を停滞させていた。そう、仮想世界技術と言うのは極度の寡占市場なのだ。当時の5社の影響があまりにも強く、新興企業は軒並み淘汰されるか、傘下に収められてしまうのが関の山だった。しかも政府が積極的に競争を促すために、手を加えているにも関わらずこのような状況が動くことの無いまま、ZeuSが消えた。消えても同じ様にアーネストが座に付き、依然として4社で体制を維持し続けた。とある記者が言う。「もはや企業連合は文字通りの存在になってしまった。あそこへメスを入れても、刃をそのまま飲み込むほどの力を持ってしまった」のだと。当然これを、外部の人間は良しとしない。アメリカの調査会社の報告によると、内部腐敗が恐ろしく進んでおり、この状況はどの国を見てもここまで酷いものはない。と酷評する程だった。外資の力さえ通さぬ日本の仮想世界企業連合は、最早1つの聖域と化していた。業界再編すら起きることも無く今に至るのが、動かぬ証拠である。

「はぁ〜......何でこんなデカ過ぎる企業を敵に回す事になるのか....人生何が起きるか分からんもんだね」

東京、青山にある出版社"Romanesque"。編集室の一角でわざとらしく気怠げな声を上げる、女記者が一人。神宮寺 英梨である。"リゾートから国際情勢まで押さえる女"と業界内ではそれなりに名が通っている。しかし本人にとってはどうでもいい事だった。今彼女が担当している案件が、謂わば"運命そのもの"であるからだ。

「ねぇ高岩。ちょっと手、貸してくれないかなぁ?お願〜い!」

向かい側に座っている、体躯の良い男に声を掛ける。英梨とコンビを組むカメラマンの高岩である。頭にバンダナのように巻いているタオルがトレードマークである。

「そりゃ神宮寺さんの頼みなら喜んでやりたいですけど、編集長が絶対に駄目だって言うんですよ....本当、すいません」

「まぁ、そうなるのも当たり前だよね〜....高岩には家族がいるんだし、余計な心配かけさせたくないもんね.....しののん君は韓国に取材だし....参ったなぁ」

英梨はカレンダーを横目で見ながら、上唇と鼻の間にペンを挟み背もたれに身を預けた。英梨の机にはモニター3台と接続されたデスクトップマシン、ノートマシンとタブレットが1台ずつ、手帳が2冊置かれていた。ネットの情報やこれまでの現地取材の結果をまとめて作った資料から、記事を組み立てていくわけだが遅々として進まなかった。それも当然である。この事件はどこまでも闇が深く、底がない。英梨が踏み込んで行くほど、新たな事実が現れる。それならまだしも、表現に困ってしまう物にぶつかると地獄行きへと話が変わる。英梨もこの仕事を始めて10年目になる。しかしここまで複雑怪奇な事件は、生まれて初めてだろう。むしろ他のベテラン記者でも、経験したという人間はそう多くはいない。単なる大量殺人なら、そこまで難しいという事はない。犯人が分かればやることが決まるからだ。だがZeuSの一件は、それらとは一線を画するものだった。確かに死亡者は出ていたが、身元となる親類たちまで殺されている。唯一生き残った人間もZeuSと何らかの関わりを持ち続けていた。そして、運良く生きていた当事者達は人格か記憶を"奪われていた"。挙句事件の規模は世界中に及ぶ勢いだったのに対して、被害や物事の動きが余りに閉鎖的だったのだ。これがZeuS事件の真相究明を余計に困難にさせる要素であった。豊島 遙への取材に成功したのは、明らかに幸運と呼べる話である。勿論関わりのあった人物達との接触もあったが、彼らは皆いちプレイヤーでしかない。ZeuSの凶行に巻き込まれただけの、単なる一般人だ。中にはかなり前からZeuSにより身体に手を加えられた人間もいたらしいが、誰一人としてはっきりと口にはしなかった。PTSDを患った者もいたはずであろう。英梨は無理に話を聞き出すことは考えず、飽くまでも彼らから口を開くまで待つ事にしていた。ただの雑誌記者と言う認識であれば、何も困ることはなかったが一人の人間としての繋がりができてしまった。英梨はただ自分の性格を呪うしかない。

(門松教授.....私は今とんでもない場所にいるのかも知れません。きっとあと一歩踏み出せば、二度と引き返せなくなるくらいの、そんなギリギリに立っていてもおかしくない。これが私の運命なんですか?.....私自身には全く解りません。10年近くもこの事件を追い続けることが、私の人生になってしまうなんて....)

鏡に映る彼女の顔は、どこか暗い影を落としていた。以前のような肌の艶はくすんでしまった。目の下にも薄っすらと隈が浮き上がっていて、不摂生が表に出ている。誰かの力を借りようにも、ZeuS事件に深く関心を持つ人がどれほど居ようか。他社の知り合い記者を頼っても、きっと事件に手を出そうと考える人はいない。最早腫れ物に触る勢いであるのは明白だった。この事件を現実から切り込めるのは、もう英梨しかいなくなっていた。

 

都内某所にあるアーネストホールディングス本社。その最上階にある部屋に、グロック・ルーツこと結城 秀晃が訪れた。と言うのは、ある人物からの呼び出しを受けて馳せ参じた訳である。

「よっ....大将。いきなり呼び付けて何だい」

「ふふ....君はいつも僕に対して対等であろうとするよね。その態度は気に入らないが、腕は確かだから文句はつけられないよ。結城 秀晃」

椅子を回して向き直る、白緑色の髪と紫を帯びた瞳を持つ青年。中性的かつ、何処の国の人間かすらも見当がつかない見た目をしていた。徹・アルマーニュ。ZeuSの倒産と同時期に、このアーネストのCEOに就任した男である。経営の界隈では彼は"彗星の如く現れた若き雄"と称されているそうだが、徹本人は興味が無いようだった。

「僕の予想より早く事が進んだみたいでね。各国の首脳陣も、計画にサインを入れようとしている」

「水面下だってのに、よく派手に動いたもんだな。凄過ぎて仕事になりやしない」

秀晃が徹の机から林檎を取り上げ、角に腰掛けながら一口齧った。徹は別段咎める気もなく、普段の事の様に笑いデスクトップマシンのモニターを彼に向けた。

「80カ国の賛同も得られれば、最早世界の総意と見ても間違いない。先進国とその衛星国家が進むのを見れば、自ずと他の国達も動き出すさ.....これで僕の計画は勝手に完成へと走り出す事になりそうだね」

「ハハハハ!少しいない間にここまでやったのか!やっぱ大将は違うなぁ....。閉塞した世界を再び動かす為に、わざと戦争を引き起こそうたぁ、俺みたいな普通の人間じゃあ考えないね」

秀晃はサングラスをジャケットの胸ポケットに差し、再び林檎を口にした。徹もモニターを自身に向け直すと、席を立ち窓から街を見下ろした。

「本物の戦争なんて起こす気は無いよ。ダイバーズと言う、無限に広がる戦場を使うのさ。人間の進歩は技術と共にあった。これは恐らく人類が存続する限り、絶対の条件だ....そしてもうひとつの絶対条件がある。それは、戦争だ」

「まぁ確かに?今の俺達の生活を支える技術の大半は、元は戦争の道具になったり、そのはずだった物。その流用とか応用だしな?」

「百崎 翼と僕は同じ物を見ていたはずだけど....彼は自分の為に計画を作ってしまった。その結果は惨憺たる物だったのは、君も知っているだろう?だけど僕は違う....僕はただ、世界再構築のきっかけを与える為に.....仮想世界戦争という概念を持ち込むのさ」

「その下準備で、俺達を動かしたんだろ?しっかし、翼の配下にいた奴はどうする?いつ処理しちまう?」

「君の好きなタイミングで、好きなやり方で構わないよ。いずれにせよ、実働部隊が必要になるのもあと少しなんだ....あのような人柱を使わなきゃならないのは、水崎 諒馬と神宮寺 英梨を消す時までだからね」

徹は席に座り直し、モニターを不敵な笑みを浮かべながら眺めた。どこかで盗撮したであろう、諒馬と英梨の写真が映っていた。

「ブルームーンを消しちまったんだ、後は楽に進むかも知れないぜ?じゃあな、大将。いい報告待ってな?Ciao!」

秀晃が手品を使って、食べかけの林檎をミニバブルタワーにすり替えて机の上に置いた。そのまま彼が部屋を去るのを見送ると、徹は内線のコールに応答した。

「僕だ。アメリカは余程威厳を保ちたいと見える....分かったよ、ビデオ会談の機会を設けるように頼んでくれ。後は僕が引き受けよう」

部下の連絡を受けた後の彼は、何処か楽しげであった。

 

-創造戦士ガンプラダイバーズ Side:Genius 2ndSeason Build to "NEXT"-

 

諒馬は弘に連れられ、望の眠っている病室にやって来た。棚に置かれた花瓶の水を入れ替え、近くの椅子に腰掛けた。

「なるほど....心電図とか見ても"ダイバーズ病"だって分かる。典型的な例だ」

「ダイバーズ病?何だそれ?」

「先週くらいからいきなりテレビでそう呼ばれ始めたんだよ。ダイバーズで意識とか人格を失っちまったままの奴を、そう呼び始めた。正直誰が何の為に、そんな馬鹿な呼び名を考えたんだか....」

弘の再合流から1ヶ月が経つ。諒馬達は普段通り、クラックゾーンの修復や翼の信奉者を謳う連中を摘発したりと、少しずつではあるが状況の改善に努めていた。諒馬個人はそれと並行して、過去のZeuSにまつわる情報を集めたり、解体されたと言う"ブルームーン"のメンバーとの接触を図ったりと、休む暇もなく動き続けていた。望は未だに目を瞑ったまま、深い呼吸を続けている。いくら触れたとしても目を覚ます事はない。

「これで信じる気になっただろ、望の話は嘘じゃねぇ。あの変な機体に乗ってんのだって....!」

「確かにお前の親友の事は事実だと分かった。けどそれとこれは話が別だ。あの機体がアーネストの手の者だとしたら、必ず倒さなきゃなんない。例え乗っている奴が彼だとしてもな。お前の超感覚についても色々と調査の余地はある」

「助けねぇって言いたいのか」

「助けるのはあくまでもお前の仕事だ。俺や舞夜が倒し切らないうちに、コクピットブロックを引きずり出しておけば、被害は少なくて済む」

諒馬の淡々とした返しに、弘は怒りと焦りを感じパイプ椅子の端を殴った。

「ふざけんなよ!もし間に合わなかったら望はこのままだってのか....!そんな事絶対にさせねぇ......!」

弘に睨まれるが、諒馬は顔色一つ変えず席を立ち病室を後にしようとした。

「俺だって....これ以上、余計な犠牲を出したくないから....そうならない為に戦ってんだぞ....!」

噛み殺すように呟き、ドアを閉めて歩き出した。しかしここで予想外の人物と鉢合わせしてしまう。眼鏡をかけたスーツ姿の男だ。鋭い目付きと表情に乏しい顔は、見紛うはずもない。東郷 純一だった。諒馬は彼を見るや否や、踵を返し別方向へ行こうとした。しかし純一は見逃すはずも無く、諒馬を呼び止めた。

「まさかここでも会うことになるなんてな。水崎」

「何でここで鉢合わせすんだよ.....ストーカーのつもりか?」

「昔を懐かしむ権利すら私には無いというのか.....相変わらず、冷たい奴だ」

両者の間に緊張が走る。互いの表情などもはや仮面に過ぎず、本心の読み合いに近いやり取りをしている。

「東郷さん....あなたは既に百崎 翼から離れない道を選んでいる。その時点で過去から前に進めてない....違うか?」

「それはお前とて同じ事だ、水崎。何故ZeuSである事に拘る?ビルドシステムを完成させたいなら、アーネストに来てからでも遅くはない....何故だ?」

「ほぅ?....俺を消そうとした奴が言う台詞とは思えないな....悪いが、あなたに構っている暇はない」

諒馬が去ろうとする際、純一は舌打ちして彼の肩を掴み引き寄せた。

「何故分からない?時代はもうアーネストの物だ。新たな体制で新しい時代を創る事の何が不満なんだ....!?」

「言ったはずだ.....ZeuSがしてきた事の傷跡は、簡単に悪用できる。お前達はあれをどうするつもりなんだ、残したままにしてどうしようってんだ?封鎖したとしてもクラックゾーンは....全部見つかっていないだけで、新しいのがどんどん出てくる。悪用でもされてみろ、何が起こるか分かったもんじゃない!同じ歴史の繰り返しになるかも知れないんだぞ....!」

「だがお前一人で全てを修復なんてできるものか」

睨み合う両者。やはり彼らの考えは交わることは無かった。否、初めからそうするつもりがなかった。

「.......その為のビルドシステムだ」

諒馬は純一の手を払い除け、階段を降りた。過去に縛られているのはどちらも同じだが、どう終わらせるかで進む未来が変わってしまう。諒馬は二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、例え風化する原因となろうとも傷跡をすべて消して新しい時代を迎えたかった。きっと記憶を消される前の自分が最後に遺したビルドシステムは、その為にあるのだと信じていた。本当はそうでなくとも、今の自分の手で作り変える。決意は揺るがなかった。

 

ガンプラダイバーズ 交流広場第5区画。中世ヨーロッパ風の町並みが広がるこの地を、舞夜は駆け抜けていた。家屋の陰に隠れ、息を整え再び走り出した。まるで何かから逃れるように。

(アーネストは一体何を考えている....!?ダイバーにクラックゾーンを作らせるなどと....!)

舞夜が左手に持っているのは、紫翠色の歪な形をしたナイフだった。これはコピー品で何の効果もないが、舞夜はこれの本物が起こした現象を目の当たりにしていた。黒いフードを被った集団がこのナイフを使い、交流広場にクラックゾーンを作ったのだ。舞夜は咄嗟に運営に匿名で連絡を入れ、対処を任せ例のナイフのコピーを作り逃走しているのである。恐らく黒フードの連中は、一つだけではない。遠くから舞夜の動向を見ている可能性は十分にあり得る。クラックゾーンに関する技術を持っているのはアーネスト以外に無い。個人レベルで技術を会得しているならば、尚更恐ろしい話でもあるが。

「おい、こっちだ!」

左側から呼ぶ声が聞こえ、舞夜はぎょっとして足を止めてしまった。路地から出てきた青年に腕を掴まれ、そのまま走り続けた。どうやら彼は先程の黒フードの集団とは無関係らしく、時折舞夜と後の様子を気にしていた。角を2つ曲がった頃には追跡の様子もなく、振り切れたのが分かった。

「ありがとうございました。あなたは?」

青年はサングラスをかけたまま舞夜を安全な場所まで連れ出した。

「名乗る程じゃない。安心しろ、お前らとも深く関わる気はない........水崎さんによろしく言っといてくれ」

「水崎さん....?諒馬.....何故.....!?」

青年の姿が見えなくなり、舞夜は呆然と立ち尽くした。ウィンドウから呼び出したベージュのコートを羽織り、内ポケットに例のナイフのコピーを仕舞い大通りへ出る。舞夜は肌で感じとっていた。事態はもう誰にも止められぬ勢いで、最悪の方向へ進み続けているのだと。




-次回予告-
ウェルスの経営するカフェにやって来た客人。その正体を知るウェルスは、彼から託されたある品物に衝撃を受ける。そして怜の父親である門松教授が帰国した。彼は英梨と諒馬に何を伝えるのか。全てが動き出そうとしていた。

次回、創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius
File.20 PHILOSOPHIAE DOCTORの帰還
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