創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius 作:JNEXEL
監査法人からの依頼で、ZeuS事件を追うリョウマ・アルキメデスこと水崎 諒馬は常岡 弘という男と遭遇する。彼はどうやら後輩がダイバーズに閉じ込められたと言う、出来事の真相を追っていた。て言うかいきなり殴りつけて来て、意味分かんない事言ってくるし何なのアイツ!はぁ、疲れるなぁ....まぁでも、馬鹿っぽそうだしセンスはまぁまぁあるから利用はできると思うけどね!
と言う訳で第3話、どうぞ!
ダイバーズから戻って来た諒馬は、早速ビルドブレイズの戦闘データを、サーバーから自身のコンピュータにコピーした。ビルドシステムにプールしたガンプラのデータをもとに、ビルドブレイズも相応に手を加えよう考えていた。当然ビルドブレイズはビルドシステムに最適化されている。それ程に手をつけなくてもいいのではと思っていたが、諒馬は何かに気づきマウスのカーソルを止めた。
(対戦機体のデータ取り込みがかなり遅くなっている.....何が原因だ?)
すぐさまキーボードを叩き、コンパイラにコマンドを入力した。すると、ダイバーズにおけるビルドブレイズの稼働状況が表示された。諒馬は食い入るようにモニタリングしているステータスを確認し、各種制御値を紙にメモした。そうしている内に、諒馬は突然手を叩いた。
「あ....コレか!機体の仮想ストレージ!コイツがもうパンパンになったってことか....鬱陶しくて通知消してたのがまずかったかぁ......最悪だ」
ビルドシステムへ逐一対峙した機体のデータを取り込ませるのは、ビルドブレイズそのものの稼働時間を縮める上に、ビルドアップが完結するのに遅れが発生してしまう。そこで諒馬は、機体内部に一時的にデータをプールするための仮想ストレージを搭載することで、ビルドアップ完了までの時間を短縮する方式を考案していた。その結果は良好だったようだが、ストレージである以上その容量は無限ではない。おまけにデータを採取しているのは主に戦闘中だ。残り容量の低下を警告する機能まで付けたにもかかわらず、諒馬自身でそれを停止させてしまった。明らかに自身の判断ミスである。無論、仮想ストレージの容量が一定値を下回ると自動でビルドシステムへエクスポートするようになっているが、フルカスタマイズされたガンプラを相手取った場合、データ一つを取ってもそのサイズは素組のものに比べると遥かに大きいのである。転送するのにも時間がかかってしまうのだ。
「となればビルドブレイズを更に弄ろうたって、イチからやり直しになるんだよなぁ.....あ、そう言やあ確か、常岡とか言う奴がいたな!アイツの機体にでも作り変えとくか....その上で俺の機体も用意すれば、元ビルドブレイズは代替機にもなるし、腐らせずに動かし続けるから、定期的にメンテする事になって面倒だけど......うぉお!!喜んでも仕方ないけどこれなら行ける!」
一人歓喜すると、早速通販サイトを開きガンプラの物色を始めた。素材にできるキットはいくらか持っているが、コアとなる物は新たに用意したかった。弘用にもそれを選別し、注文を確定させた。そして諒馬は到着日までに自分用機体の新たなOSと実物の設計を済ませるのを、携帯電話のリマインダーアプリに記録した。しかし唐突に諒馬の高揚したテンションが、まるでゲーム機のリセットボタンを押したかの如く元通りになった。机の端に置かれている額縁を取り、眉間を押さえながら天井を仰いだ。蛍光灯以外は打ちっぱなしコンクリートの壁。それしかなかった。
「こうしてやって行けば、いつか君に辿り着くんだ....絶対に見間違える事なんてしない....絶対にだ」
1週間後。スパーリングを終えクールダウンをする弘のもとに、2つ下の後輩がやって来た。
「あーあ....一歩及ばず、かぁ...先輩やっぱ強いわ」
「ちっと踏み込みが良けりゃ分かんなかったろ?駆け引きも大事だけど、思い切りの良さっつーもんも勝負決めっからよ!」
「にしても先輩本当にダイバーズ始めたんですか?言ってくれれば教えましたけどね」
「何いってんだよ、悠長にやってられないから体当たりでやりながら覚えてくしかねぇっての.....ぁあそうそう、俺運営の奴と知り合いになったわ」
弘が着替えながらそう言うと、後輩はぎょっとして振り向いた。
「え、それマジすか!?」
「けどソイツぁ何も知らなかったんだよ。ただまぁ、目的が同じってんで味方につけた!これで勝ったも同然だぜ!」
「けど藤堂先輩、生きてるかどうかも分かんないんじゃなかったんですか....そんな人がダイバーズにいるって保証ないでしょ!」
「望の奴は必ずダイバーズに居る。何せアイツの叔母さんが最後に見たってのが家の中だってんだ.......しかもあの時ゃアイツはダイバーズにのめり込んでたしよ。じゃなきゃ説明付かねぇ」
着替を済ませ、弘は部室を後にした。その時、携帯電話に着信が入りヘビーメタルの着信メロディが流れた。しかし携帯電話のスリープを解除して見れば、見覚えのない番号が表示されていた。
「.......何だこの番号?まぁいいや、もしもし?」
「ビンゴ!当たったよ〜....はぁ、よかった!!常岡 弘だろ?」
突然名前を言い当てられ、弘は携帯電話を放り投げそうになった。ところが、電話の主の声に若干引っかかるものがあり、そのまま通話を続ける事にした。
「何だよオメェ.....リョウマ・アルキメデス....ってか!?」
「うわぁお!ダイバーネームで呼ばれたの初めてじゃねぇかこれ!?いやぁ感激感激。こないだ協力するって言ったろ?住所はSMSで送っとくから、そこに来てくれ。そんじゃ、SeeYou!」
「おい、待て!テメェどこで俺の番号っ....切れやがった.....」
教えた記憶のない自分の番号を特定して来たリョウマと言う男を、弘は信じられる気がしなかった。敵に回すと厄介な分、タチが悪い。彼から届いたSMSには確かに住所が記されていた。これをGoogleMapで検索し、出発した。
「大学から割と遠いなぁ.....てかZeuSってアレか。望が行きたいって言ってた会社か。まさかあの野郎が居るってのかよ、ひぇぇ....」
電車を何本か乗り継ぎ、ようやく到着した。やはりZeuS社屋の目の前だった。しかし人影を一切感じず、都会のど真ん中と言うの建物の新しさの割には廃墟じみた雰囲気を漂わせていた。弘がきょろきょろと辺りを見渡していると、左奥のドアが開き諒馬が出て来た。
「着いたら連絡しろよ。友達同士だってそうやるだろ?」
「別に俺とお前はダチじゃねぇわ!てかゲームの時そのままじゃねぇか....」
ダイバーズで会った時と、今の彼を比べても顔が何一つ違わなかった。
「何で変える必要あんの?俺はこの通りイケメンで天才だから、それはナンセンスだね」
「うわっ.......自分で言う辺り引く」
正気を疑うような目で見る弘に、諒馬はやれやれと肩を竦め建物の中へ進んだ。やはりまだ新しいという事もあってか、居住感はない。
「ここ会社だったんだろ?何でこうなってんだよ」
「お前知らないのか....ZeuSは倒産してんの。軽くニュースにもなってんだぜ?」
「ぁあ?俺ニュースとか見ねえよ。でも天気予報とかスポーツの試合とかなら普通に見てんな」
「どうでもいいよ、んなもん見たって。大学生がそんなんでいいのかって言いたくもなるよ」
歳が近い人間に、かなり上からの言い方をされるのは弘は気に食わなかった。
「ほぼ同い年の癖にオッサンみてぇな事言ってんじゃないぜ....」
「俺30だよ。再来月で31だ。充分オッサンでしょ」
「はぁ!?お前その見た目で30は無理でしょ!?」
「これでも見たら信じるだろ」
諒馬が徐ろに財布から運転免許を出し、弘に突きつけた。確かに弘の生まれた年の丁度9年前が生年月日となっていた。しかし割に合わぬ程諒馬の顔つきは若く、見る人間によっては弘と同い年にしか映らないだろう。
「えぇ....冗談だろ......」
「人を見た目で判断しちゃいけないんだよ?単細胞君」
「るせぇ!何が単細胞だ!人は多細胞生物だろうが!」
「ムリに背伸びなんかする段階でアホだ」
諒馬と弘は地下のラボにやって来た。ここに来るまでに人の気配はなかったので、本当にここに居るのは諒馬1人と言う事になる。弘はますます諒馬が何者なのか分からなくなった。
「ダイブデバイスは持ってるだろ?お前に試してもらいたい....つーかこれから使わせる機体がこれだ」
諒馬が持ってきた箱の中には、カミキバーニングをベースとしたガンプラが入っていた。肩に青い大型装甲が取り付けられており、その下からフィンとバーニアが顔を覗かせている。アンテナも大型化しており、カミキバーニングが本来持つ勇猛な印象が強まっている。しかし弘はカミキバーニング自体見たことが無かったので、全て諒馬が自作したのだと思ってしまった。
「お前これ作ったのか!?まるで売りもん見てぇじゃんかよ!」
「何言ってんの。これ、カミキバーニングから作ってんだよ」
諒馬は弘の言う事が奇妙に思え、首を傾げた。すると弘もカミキバーニングを反芻しながら、首を傾げる。 弘はガンダムのことは全く知らないのだ。否、アニメなどの文化には然程明るくない位に縁がなかった。
「もしかしてガンダム知らない....?」
「知らねぇ。ガキの頃に見たポケモンとかドラゴンボールなら分かるけどよ.....小学校卒業する時にはもう見なくなったなぁ、そういや。漫画は読むけどそんなんでもない」
「えっ!?じゃあ何でゼノンフェースって、割とマイナーな奴持ってんの!?」
諒馬の言うゼノンフェースに弘はピンと来なかったが、彼から見せられた写真でようやく思い出した。
「俺に向いてるとかって後輩から貸してもらった奴だわそれ。そんなに珍しいのかそれって」
「そりゃあね。けど分からない奴に説明しようが、今の俺にもそこまで余裕無いから置いとく。とにかく操縦が出来て戦えてるなら、今はそれで十分だ」
突然諒馬はテンションを変えて、椅子や机を動かし弘のスペースを確保した。部屋の奥からデスクトップマシンを持ち出して設置すると、弘にも手伝わせた。とは言え弘はコンピュータにはめっきり暗かったので、機材の持ち運びを担った。10分程で設営が完了した。
「これでお前の使える場所が確保できた.....俺の目的はただ戦うだけじゃない。ビルドシステムの完成も兼ねている」
「ビルドシステム?ぁあ!?あのチートかよ」
「チートじゃない、れっきとした仮想空間拡張用のツールだ。元々ダイバーズはリリース当初から、オープンワールドになる予定だった。けどZeuSが運営している間に実装されなかった。これにはビルドシステムの開発に関わる問題が絡んでいると俺は見た」
「いきなり一人で語ってんじゃねぇ、分かるように説明しろ」
諒馬は口をぽかんと開けてしばらく黙り、また肩を竦めて弘用のガンプラをスキャナの上に置いた。
「まぁ、言葉の意味なんて後から調べればいくらでも出てくる。とにかく今お前がやる事は、この機体....ドラグハートガンダムをテストする、それだけだ。ゼノンフェースと同じ、純粋な格闘機だから扱いやすいはずだ。すぐにダイバーズにアクセスして準備してくれ」
畳み掛けるように指示され、弘は不満が爆発しそうになった。だがこの得体の知れない男に迂闊に手を出せばどうなるか、見当もつかない。格闘技のスポーツマンシップのような考えもあり、実行には移さず粛々と準備に取り掛かった。諒馬も新たに作り上げた機体、ビルドレイザーガンダムをスキャナの上に置いた。ガンダムジェミナス01をコアに据え、アストレイ系のフレームやガンダムアスタロトのサイドアーマーを組み込んでいる。腰パーツのみはビルドブレイズから継承しており、現行キットの運動性を手にしている。序に両足もビルドブレイズから引き継いでいる。
「さぁ、実験を始めようか!」
二人は同時にダイバーズへ意識を飛び込ませた。
リョウマが予め設定しておいたショートカットツールにより、ビルドレイザーとドラグハートは交流広場第一区画のバトルエリアへ直接転移した。ガンダムファイトの舞台ともなったランタオ島のリングに、2機は降り立った。
「お前も新型用意してたぁ!?」
弘はリョウマが乗っている機体が、以前とは全く異なる姿をしているのに驚きを隠せなかった。
「そのドラグハート、元々ビルドブレイズなんだよ。デチューンしたビルドシステムもあるし、見た目に面影なくても実質同じ機体だ。だから俺も新しいのを用意した....早速やってみようぜ!俺の天才っぷりに酔い痴れるな、これは!」
まず先手を取りに行ったのはドラグハートだ。地を蹴りダッシュしながら、ジャブを当てに行く。それをビルドレイザーは手で払い除けながら踵のタイヤを回転させ、真後ろへ退くとそのままドラグハートの周囲を高速で回り始めた。
「何だよこの動き!?気持ち悪りぃんだよ!!」
ドラグハートがビルドレイザーの来る位置に拳を叩き込むが、既に背後を取られていた。ドラグハートが振り向くよりも早くビルドレイザーがビームサーベルでX字に斬りつけ、再びタイヤを使って素早く距離を取った。
「こんの野郎!!正々堂々と戦えよ!こんなんじゃテストにもなりゃしねぇ!!」
「だからって手を抜いたんじゃ何にもならないだろ?ビルドレイザーだって完成したの昨日なんだから、俺だってテストしなきゃなんないのは同じなの」
ビルドレイザーは一瞬で距離を詰め、ビームサーベルで突きを放とうとした。その刹那、ドラグハートがリアアーマーから刀を抜き放ち、ビームサーベルを弾き返して鍔迫り合いに持ち込んだ。これにはリョウマも驚き、戦意を高揚させた。
「とか言いながらやるようなったじゃねぇか!」
「うるせぇ!条件が同じなら真正面から突破してやろうってんだ!」
ビルドレイザーが左に回り込みビームサーベルで袈裟斬りを仕掛ける。そこへドラグハートが刀を振り抜き弾き返す。だがビルドレイザーは弾き返された反動を利用して昇竜斬りを見舞った。しかしドラグハートも負けじと反応し、ビルドレイザーの腕を掴んで地面に放り投げた。
「いやぁ、流石本職は凄いなぁ....だったらこっちも本職を見せてやるとしますか!ウェポンビルドアップ!」
ドラグハートが刀を最上段から振り下ろすが、ビルドレイザーは一歩も動かなかった。ビルドレイザーの双眸が光を放つと、機体の周囲にファクトリーが形成されドラグハートを弾き飛ばした。
「ぁあ!?それ使うのか....いや、待てよ。俺のにも積んでんだよな!っしゃあ!ウェポンビルドアップ!」
ドラグハートの周囲にも同様のファクトリーが作られ、武器を形成した。ビルドレイザーはやや小ぶりなバヨネット付きのビームライフル、ドラグハートはタクティカルアームズの柄に細い刃が付いた剣を手にした。ビルドレイザーが持っているのが如何にも武器だったが、ドラグハートが手にしているのは、かなり貧弱そうに見える得物だ。これには弘はがっかりした。
「何だよこれダッセぇな!?」
文句を言われ、リョウマは口を尖らせた。
「ダサいとか言うなよ、その武器はドラグハートのメイン武器みたいなもんだからさぁ。さて、ビルドライフルの実験を始めようか」
ビルドレイザーがビルドライフルを数発放った。引き金を引いた瞬間にドラグハートが大きくよろけた。装甲にはかなり小さな穴が空いていた。
「何だ今の!?撃たれたのか俺!?」
「まぁ、弾速は今の所最高クラスだと思うよ、これ。ホラホラ、反撃しないと穴だらけになるよ」
「やってやらぁ!!」
ビルドライフルの光弾を突っ切り、ドラグハートは貧弱そうな剣"ストームブレイド"を振り上げた。ビルドレイザーが素早く反応し、ビルドライフルのバヨネットで弾き返すが、何かに押されたような形で僅かに後ろへ下がった。
「お....ぉお!?思ったより威力ある!!」
「言ったろ?俺の天才っぷりに酔い痴れるってな!どう?最っっ高でしょ!うわぁ!?ちょっと、少しはドヤ顔させろよ!」
「んな事知るか!!一泡吹かせるまでよ!」
ドラグハートが刀とストームブレイドの二刀流でしつこく斬りかかる。斬撃の数々をビルドレイザーはひょいひょいと躱し、ビルドライフルの銃口をドラグハートの顔に向けた。
「これでチェックメイト.......何だ....?他の熱源反応?」
「何か警報鳴ってんな....おい、リョウマ!アレ....じゃねぇのか!」
ドラグハートの指差す先を見ると、真紅のMSが空中から見下ろしているのを目にした。特徴からすると、ガンダムスローネ系とヴェイガン系だと推測出来るが、ジャミングされているのか何度モニターの解像度を上げてもその姿をはっきりと、視認することが出来なかった。
「何だ、アイツは........」
地上から見上げて硬直する2機のガンダムを前に、真紅のMSのダイバーは愉しげに微笑んだ。
「成程、彼がそうなのですね?あなたの大事な物を頂きます。この、ノアールロータスで.....うふふっ....」
[次 回 予 告]
テストを終えて交流広場に戻って来た、諒馬と弘に接近する謎の美女。ミステリアスな雰囲気を持ちながら気さくに接する彼女に、弘はテンションが上がってしまう。だが諒馬だけは彼女から感じる、違和感を拭えずにいた。果たして謎の美女の正体とは。
次回、創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius
"File.4 MYSTERIOUSな一輪の薔薇"
あんな綺麗でいい人が何だってんだよ諒馬!!