※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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File.46 目覚めるSPARKLE!

「さて、実験を始めようか」

顔を洗い終えた諒馬は、ビルドスパークルをスキャナに置きガンプラダイバーズへと、意識を飛び込ませる。奏も後を追ってログインした。とは言え現在の戦争状態では、何一つ満足なテストができる保障はない。恐らくかなりの確率で実戦の中で実証する以外ない、その様な事態になる可能性が高い。ガンプラダイバーズ交流広場第3区画に到着した二人は、狙われぬよう身を隠しつつ安全にバトルエリアへ移動できる場所を探し始めた。

「あれ?いつの間にか服変わった?」

リョウマはふとスワンの姿が、普段の赤いレザージャケットではなく、桜色の和装に変わっているのに気づいた。

「あれ、もう気づきました?やっぱり私らしく在ろうとしたら、この姿に行き着きました」

スワンも若干照れ臭そうにはにかむ。なるほどな、とリョウマは返し人気の無い通路を探しては奥へと歩く。普段ならば何気なくどこでも歩けたはずの交流広場。それが今ではいつ命を狙われるか分からず、表立って動く事すら危険を伴う世界と化した。リョウマもスワンもこの異常極まりない状況に、胸が痛む。

(急速にチームが増えたり、チーム同士で連合を組み始めたりしたんだろうな......しかも世界中の国からも.....)

リョウマは手元にウィンドウを呼び出し、開発者コマンドを入力して権限を適用した。チームや、連合と呼ばれる大規模勢力が急速増え始めており、やはり戦争の様相を呈しつつあるのは間違いないが、リョウマが驚いたのは、世界各国の部隊の名を騙る組織の存在だ。ガンプラダイバーズでは規約上、実在する軍事組織の名称は使用禁止となっていた。しかしあろう事か現在は、それすらも許されるようになったようである。これもブルームーンを潰すためだけに用意した、治安維持規約によるものなのか。定かではないにしろ、リョウマにはそうとしか思えぬ話だ。

「世界中がダイバーズで戦争しようとしている......最悪なんてもんじゃねぇ。何でこうなるまで誰もおかしいなんて思わなかったんだ....!」

悔しさから無意識に拳を打ち付ける。だが突然スワンに手を引かれ、リョウマは思わず転びそうになった。このタイミングのわずか後、リョウマの遥か後ろで爆発が起きた。

「爆弾をここで使うなんて.....!隠れてください、リョウマさん!」

スワンはリョウマを急いで隠れさせる。襲撃者の殺意の度合いが、常軌を逸する物だと許せなくなった。ガンプラダイバーズで殺し合いをするなんて、絶対にあってはならない事。怒りが込み上げてきた所で、今度はリョウマがスワンの手を引いてこの場からの離脱を試みた。

「許せない気持ちは分かるが、俺達から攻撃する訳には行かない!俺達はダイバーズを守るために戦ってるんだ、今自分からやりに行けば意味が違ってしまう!倒すべきはアーネスト....それだけでいい!」

「でも、あれを見過ごしては....!」

「どの道俺達で徹=アルマーニュと百崎翼を告発できれば、後は法が奴らを裁く!マスコミが好きそうなネタになるだろうな、全ての真実が明るみに出ればこの馬鹿げた戦争も終わりを迎えるはずだ」

しかしリョウマ達の行く手を阻む存在が姿を現した。紫のフードを被った集団が前後に飛び出し、銃やナイフの切っ先を向けて来たのだ。しかもそのナイフと言うのは、クラックゾーンを生成する機能を持った、例の得物である。

「やっと会えたなぁ....水崎ィ......!」

集団の中から出てきた男に、リョウマは違和感を覚える。

「シューインだと?......いや...何かが違う!?」

「いいや、俺は俺だよ.....クククッ.....!今一度.....俺とお前でダイバーズを再生しようじゃないか!!ハハハハハッ!!」

シューインがけたたましい笑い声を上げながら呼びかける様は、正しく異常の一言である。だがリョウマは屈することなく、彼を拒む。

「戦争を起こして強引に技術革新を起こそうとする....だがそれは人類の発展に貢献する技術ではない。俺は、あなたとは違う」

「笑わせるなァ!!お前が素直に協力していれば、こんな戦争にはならなかったんだよ!結局どいつもこいつもこの戦争を望んでたのさ!」

「......悪い、とも思わないがあなたと言葉を交わすのは難しいようだ」

リョウマは迷いなくウィンドウからその場にいる人間を対象に選び、バトルエリアへ強制転移させた。

 

戦いの舞台はなんと、またしてもMSサイズに巨大化した都市であった。この景色はリョウマもスワンもよく見覚えのあるものだった。

「ここ.....ZeuSの敷地内ですよ!」

「だろうな。ランダムとは言え悪趣味過ぎる」

ビルドスパークルとF91-Mは、旧ZeuS社屋の目の前に降り立ちビームサーベルで自動ドアを溶断、内部へと進んだ。しかしそのタイミングを狙ってか、同時に同時に多数の反応がレーダーに現れる。

「スワン、避けろ!」

上階の廊下にズラリと並ぶ、狙撃手達。リョウマは咄嗟にF91-Mを押しのけさせ、死線を掻い潜り右手にビルドライフルを形成し廊下を破壊して、連中を引きずり出した。モニターには"トゥルーパー"と表示されている。改めて敵の姿を見たリョウマは、言いようの無い苦しさを感じずにはいられなかった。顔面を覆い尽くす白銀のバイザー、必要最低限程度の銀装甲、物量に物を言わせた闘いに特化した仕様は、ガンプラダイバーズを楽しむための機体とは甚だしく乖離した存在であった。精々作品として評価するとすれば、正暦のモビルスーツを彷彿とさせるデザインであることくらいか。

「やるしかない。スワン!」

「はい!推して参ります!」

ビルドスパークルはビームサーベルを再びアクティブに、F91-Vはグラビティエッジに手をかけ、それぞれ敵陣の中へ突入する。

「貴様らがブルームーンの差し金か!何故俺たちの邪魔をする!?」

トゥルーパーの1機が、中折式のビームライフルから光の刀身を生成し、斬りかかる。それをビルドスパークルは同じくビームサーベルで弾き返し、ビルドライフルを数発放った。

「俺はそんなつもりはない!いい加減目を覚ませ!こんな戦いに、なんの意味があるってんだ!?」

「誰も死なないが戦争ができる!人は闘争本能の中で生きるのが自然だ!」

他のトゥルーパーがビームランスを片手に近づいた。ビルドスパークルはすかさず左手にスクリュー・ウェッブをビルド、勢いよく左右に薙ぎ払い接近を拒否した。

「だがそれは、他人を傷つけるのを許しているのと同じって、気づけ!」

F91-Vは鮮やかな太刀さばきで、トゥルーパー達を薙ぎ倒していた。狙撃が来ようものなら斬撃の一つで相殺し、近付きつつある物は居合で一閃して両断する。おまけに小型MSの利点を最大に活かし、攻撃の回避と反撃をほぼ同時に遂行できており、スワンは今一度自分には刀の方が扱いやすいのだと認められた。だがそれは頭の片隅での話であり、やはり無為な争いを求める彼らを止めるのに、どこまで戦えばいいのか苦心していた。

「あなた達は直線的過ぎます!血を流さなければ、戦争をしていいなんて!」

逆袈裟から突きに繋げ、近場にいるトゥルーパーを全て撃破した直後、真上から強烈な殺意が襲いかかる。スワンでさえも感じるこの意思。スワンは弾かれるようにレバーを引きF91-Mを後退させる。しかし殺意の塊は着地するやいなや、F91-Mの眼前にまで迫り赤熱化した刃を振り下ろしてきた。素早くグラビティエッジで受け止め、鍔迫り合いに持ち込むが推力で負けているのか少しずつ押され始める。

「なっ.....!?」

「だが貴様は戦っているぞ?」

黒い霧に包まれたMSから聞こえるのは、やはりシューインの声だ。神経を逆撫でするトーンにスワンは歯軋りするも、リョウマの言葉を胸中で反芻し冷静さを維持する。

「そんなあなたがいるからでしょう!!罪を認めるべきです、あなた達は!」

「何が罪だ.....百崎社長は、人類の行く末に革命を起こされる人だ!その為にダイバーズがあると言うのに、貴様らの様な俗人風情が単なる娯楽とすげ替えた!」

「人の未来は!誰かが勝手に決めていいものではありません!」

スワンの意思に呼応し、F91-Mのミノフスキーブースターが開放、光の翼を発するのと同時に全身を金色の光が帯び始めフェイスカバーが左右に開かれた。グラビティエッジから青い輝きが放たれ、ヒートサーベルの刀身を圧壊させてしまう。シューインは驚愕しグラビティエッジを凝視した。

「何ィ?」

「これで決めます!どうかご覚悟をッ!」

振り下ろしたグラビティエッジは、接触する装甲を潰しながら引き裂いた。重力変容技術によって、刀身を軸とした小規模なブラックホールを生成して対象物を破壊するのだ。黒い霧のMSがよろけたところで間髪入れず、光の翼をはためかせ瞬間的に亜光速まで加速、居合斬りで撃破した。これにはリョウマも唖然とし、トゥルーパーを往なしながら「マジか」とこぼす程だ。だが現実は生易しいものではない。

「私がこれでやられると思ったのか!勘違いも甚だしいッ!.....ハザードォオオオ!!」

周囲に散った黒い霧が掃除機に吸い込まれるかの如く集まり、歯車型のエフェクトを高速回転させ、何かを形成し始めた。ビルドスパークルとF91-Mはそれぞれの火器を撃ち込むが、尽くかき消されてしまう。やがて霧と歯車が弾け飛び敵の本性が顕となった。胴体そのものはイフリートコラプスそのものだが、"眼"を目の当たりにしたスワンは、身の毛がよだつ感覚に襲われた。

「これが、モビルスーツ.....?」

本来ドムと似通ったモノアイが瞼のようなパーツで埋められており、その中からぬるりとはみ出す形で"眼"が露出したのだ。ぎょろりと動き出したそれは、ビルドスパークルを凝視する。

「エヴィルイフリート......私はお前よりも先にッ!ハザードを物にしたのだッ!」

エヴィルイフリートは駆け出し、ヒートサーベルを再形成して横薙ぎに振るう。ビルドスパークルがスクリュー・ウェッブで武器を拘束するも、エヴィルイフリートがサイドアーマーから射出したダートビットによって、引き裂かれた。そこから腕部ビームバルカンを掃射してビルドスパークルの行動を制限させ、凄まじい速度で背後に回り込みX字の斬撃を浴びせる。だがビルドスパークルも素早く反応し、踵にホイールをビルドして攻撃を既の所で避けきり、後ろ回し蹴りで差し返した。夥しい数の刃を生やしたホイールが衝突し、装甲を抉り取るがシューインは別段驚きもせず、狂ったような笑い声を上げる。

「無駄だよ....!お前では俺に勝てないッ!!」

「クソッ!ここでやられてたまるか!ビルドアップ!」

最上段から兜割りを仕掛けられるが、間一髪で腕で受け止める。ビルドスパークルへのアップデートに伴い、ビルドシステムも形成可能な物質の種類が増えており、場所は限定されるがVPS装甲や、対ビームコーティング、ナノスキン装甲などの、特殊装甲材までビルド出来るようになっていた。

「ハザードに、脳まで冒されたようだな!?やはりグロックか.....!」

だがリョウマの思考を奪うかのごとく、また新手が戦場に降り立つ。黒い稲妻が上階の窓を突き破り、音を立てることなく着地した。

「最悪だ....!まさかハザード二人分を相手にしなきゃなんないなんてな....!」

「私が足止めします!リョウマさんは目の前に集中して!」

「.....頼んだ!」

F91-Mが先行し、黒い霧を発するMSへ接近した。まだ限界稼働状態にあり、多少は太刀打ち出来るとスワンは見た。

「はぁっ!!」

軽く浮き上がり、頭上から袈裟懸けに斬りつけた。だが黒い霧のMSは身を反らすだけで避け、腕に備え付けの刃を回転させ、逆に切り返した。F91-Mは残像を利用して躱すと、リアアーマーから再びビーム・マシンガンを引き抜き、注意を引き付けるべく放ちながら小さく距離を作る。

「えっ.....!?ふ、増えた!?」

僅かに動きが途絶え、スワンが戸惑う。しかしそんなことも束の間、黒い霧のMSはアクロバットなジャンプをしながら、同じ姿の機体を生み出した。分身なのかとスワンが考える間もなく、黒い霧MS達は左右と上空からF91-Mを取り囲む。青く輝く凶刃がスワンを睨んだ。

「囲まれたってぇ!」

F91-Mは力強く光の翼を羽撃かせ、自ら敵の懐へ飛び込む。質量を持った残像をフルに活かし、相手を撹乱させた後左下にいる方目掛けメガマシンキャノンを斉射した。その狙いは見事に的中し、分身体となった2機が消失して本体の身動きを封じることに成功したのだ。F91-Mが猛烈な速度で斬り上げるのを、黒い霧のMSが弾き返し剣戟の応酬が幕を開ける。

「この動き、達人の域に来てる.....!」

一切の無駄がなく、的確にF91-Mの攻撃を受け流した上で着実に反撃の布石を置いていく。これがハザードの持つ力なのかとスワンは、焦りを募らせた。一方、ビルドスパークルのリョウマはエヴィルイフリートの、執拗なまでの攻撃に未だ反攻の緒が掴めずにいた。

「こうなったら......使うしか無い、のか....!」

ヒートサーベルを蹴り飛ばし、少しの余裕を作ってリョウマはコンソールの"HAZARD"に、指を重ねようとした。しかし脳裏に蘇る光景が、彼を思い止めてしまう。そこへ情け容赦なく振り下ろされる鉄拳を受け、数メートルも打上げられ地面に叩きつけられた。

「俺とは違うと言ってたなァ.....まさかそんな意味だったとは、期待はずれもいい所だ」

エヴィルイフリートがビルドスパークルの、頭部アンテナを掴んで持ち上げる。シューインの嘲る笑い声と共に、光の棘をまとった拳を打ち込まれコクピットハッチが凹んだ。後一撃食らえば、撃墜される――。リョウマは首を左右に振り、意を決しハザードを起動させた。

「こんな状況で仲間一人残す訳には行くか!ハザードビルドアップ!」

ビルドスパークルの装甲の隙間から黒霧が噴出し、エヴィルイフリートを弾き飛ばした。赤と青のオッドアイの輝きが強まり、ビルドスパークルにハザードシステムの力が宿る。ビルドレイザーに比べ機体構造の信頼性が向上した事も手伝い、リョウマ自身にかかる負荷も幾ばくか抑えられていた。

「行くぞッ!」

「ヒャハッ....ハハハハハッ!」

ビルドスパークルはビルドライフルを放ち先手を打ちながら上階へと飛び上がった。エヴィルイフリートも素早く追従し、両腕からビームバルカンをばら撒き行動範囲を狭めんとする。しかしビルドスパークルは小器用に弾幕をすり抜け、左手のビームサーベルで突きを放った。エヴィルイフリートも反応してヒートサーベルで斬り結び、サマーソルトキックで切り返す。それをビルドスパークルは受け止め、背負投の要領で地面めがけスイングした。

「まだそんなもんだろう!ハザードの力の真髄を使いこなせていないようだなァ!」

「何っ!?ぐわぁあっ!?」

投げられる直前に、エヴィルイフリートが全身のバーニアを噴射、姿勢を強引に保ちビルドスパークルを逆に天井に叩きつけた。間髪入れずエヴィルイフリートはヒートサーベルを交差させ、猛烈な勢いでビルドスパークルへ突進する。ビルドスパークルが頭部バルカン砲で勢いを削りながら、コピペシールドをビルドし辛うじて直撃だけは免れた。しかし推力と衝撃を完全には相殺しきれず、天井を突き破り更に上のフロアへと投げ出される事となる。エヴィルイフリートに再び接近をかけられる前に、ビルドスパークルはビルドライフルを連射し牽制した。当然エヴィルイフリートはヒートサーベルで光弾を斬り捨てつつ、ジグザク軌道を描きながらビルドスパークルの眼前に到達、左右の剣を挟み込むように斬りかかる。

「やらせるかよ!」

ビルドスパークルがコピペシールドで阻み、機体の表面から全方位レーザーを放射。エヴィルイフリートを跳ね飛ばし難を逃れた。

「うっ.....!?マズい、暴走だけは.....けど、ビルドシステムの汎用性がここまでの物になるなんてな。流石天才ってところだぜ.....」

リョウマの意識が弱くなったのを合図に自らハザードシステムを解除する。これ以上の戦闘継続も恐らく自身を不利にしかねないと考えるが、相手はそのような事は意に介さず攻めてくる。エヴィルイフリートが再び起き上がり、ビームバルカンを撃とうとする瞬間を狙い、ビルドライフルで顔面を貫いた。まるで西部劇のガンマンの様であるが、リョウマにはそれを感じる余裕もなく、相手の目を閉ざせただけでも儲け物だった。ビルドスパークルはビームサーベルを床に突き立て、穴を開けて下階へと帰還した。何としてもスワンと合流して撤退の機会を作るしかない。リョウマはビルドスパークルを急がせる。

「あまり長く戦う方が危険だ!一旦退くぞ!」

リョウマの指示を耳にし、スワンも意識を素早く切り替えた。しかし黒霧のMSとの格闘戦が伯仲しており、上手く切り抜けられるタイミングが見つからない。

「でも、この機体をどうにかしないと!」

「俺に任せりゃいい!ビルドアップ!」

ビルドスパークルの右腕が緑の光に包まれる。そして黒霧のMSの側頭部に拳を叩き込み、対角線上の壁に激突させた。F91-Mも限界稼働をオーバーロード寸前まで酷使したせいか、出力が低下しミノフスキーブースターが自動停止した。

「ありがとう、ございます...........リョウマさん?」

礼を述べるが、リョウマの反応がなくスワンはもう一度呼びかける。だが返答があったのは数分も経ってからだった。彼の声がかすかに震えており、スワンはますます不安を感じる。

「一体どうしました?リョウマさん!」

再び間を置いて、リョウマはようやくスワンに見た物をありのままに伝えた。その声は酷く震え、当惑と後悔が深く入り混じっており、スワンにも衝撃を与えるものだった。

「あの機体.......前にも戦った事があると思ったが......まさか......」

ビルドスパークルの視線の先、壁に半ば埋もれた青いMS。霧が完全に消えた事でようやく正体が白日の下に晒された訳だが、それが彼に残酷な事実を突きつけた。青と黒に彩られた忍者、ガンダムAGE-1ナイトシーカー。比良坂 舞夜の愛機である。リョウマは以前にも似たような状況に遭遇したが、当時弘に足止めをされていた。その意味がこの真実にあるのだとすれば、取り返しのつかないミスをした事を自覚せざるを得ない。ビルドスパークルのバーニアを全開にし、ナイトシーカーの元へと駆けつける。高トルクモードによって頭に凹みを作られていて、他にも創傷や裂傷が刻まれているのを見るに戦いの激しさを、ありありと示しているかのようである。

「舞夜.....舞夜ッ!!」

ビルドスパークルのマニピュレータを、ナイトシーカーのコクピットハッチに触れさせ、必死に呼びかける。だが返事がないどころか、駆動音の一つもしない。リョウマの唇がわなわなと震え、瞳が忙しなく揺れる。まさか、グロックの言うように運命が進んで行くのだろうか。大切な人を2度もこの手で失わせるのは、最早水崎 諒馬のカルマと言うべきものとなっていた。だがそれを認める事はリョウマには出来なかった。必ず救う方法はある。でなければ天才を名乗る意味がないではないか。彼女とは1つだけ約束をしていた――天才の名に恥じぬよう、生きていく事を。上階の天井が崩れ、エヴィルイフリートが舞い戻ってきた。動けなくなったナイトシーカー諸共ビルドスパークルを蜂の巣にする算段か、両腕からビームバルカンを掃射する。

「いけない!離脱します、比良坂さんをしっかり繋いでください!」

F91-Mが両腕のビームシールドを展開し、防ぎながら交流広場へと全員を離脱させた。一人残ったシューインは興醒めしたかのようにハザードを解き、自身もまたバトルエリアから転移するのだった。

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