創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius 作:JNEXEL
ZeuSの監査法人から依頼を受け、事件の真相の調査に出たガンプラダイバー"リョウマ・アルキメデス"こと水崎 諒馬は、ダイバーズに後輩を奪われたという男、常岡 弘と出会う。諒馬はビルドブレイズガンダムのデータをフィードバックする際に、機体のモデルチェンジを思いつく。弘用にカミキバーニングガンダムをベースに、デチューンしたビルドシステムを搭載したドラグハートガンダム、そして自分用に新たにビルドレイザーガンダムを製作した。弘を呼び出し、それぞれの機体のテストを兼ねた対戦を始めるが、それを監視する紅い影の存在があった。あーあ、頭で考えない奴がいるとやっぱり大変だ。教えなきゃいけない所が山積みって、何の冗談だ?
さて気を取り直して第4話どうぞ!
ビルドレイザー達を見下ろす真紅のMSは、音を立てずに華麗に着地した。シルエットからするとスローネドライだが、ファルシアや煌ギラーガのパーツと棘のような装飾も見られ、まるで薔薇のようであった。二人のMSのモニタにも機体名が表示された。
「ガンダムノアールロータス.....?ガンダム顔でもないのに....?」
「何だよアイツ....」
弘は目の前のMSから放たれるプレッシャーを肌で感じ取ったのか、額から汗が吹き出た。直感的に、あのMSは危険だと分かる。しかし、真紅のMSから聞こえる声が二人を驚かせた。
「結構、いい機体に乗っておられるのですね?お手柔らかにお願いしますね....ふふっ」
「めっちゃいい人じゃねぇか...」
ミステリアスでありながら、男心に突き刺さるような声音。弘は思わず接触したくなったが、ビルドレイザーの手がドラグハートを押し退け、我に返されてしまった。
「おい、リョウマ!」
「間違いなく今の様子を見られている。今のうちに叩く!」
リョウマは照準をノアールロータスの頭に合わせ、トリガを引いた。ビルドライフルから放たれる、超弾速のビームがノアールロータスの顔面に命中するが、相手はそれを意に介さず飛び上がり、リアアーマーから茨めいた剣を引き抜き真上から斬りかかってきた。ビルドレイザーはドラグハートを押し退けてこれを回避、ビルドライフルを数発放ちながら距離を取る。ノアールロータスのダイバー、ジプシーはロックをビルドレイザーからドラグハートへ切り替え、ペダルを踏み機体を加速させた。
「今回はそうですね....様子見のつもりですから、こう立ち回りましょうか」
ノアールロータスが茨の剣を左右から挟み込むように振るった。ドラグハートは片方の剣を刀で弾き返し、右にステップして一気にダッシュして距離を詰めた。
「声から分かるぜ美人さんよ!不意打ちなんて罪な事するもんじゃねえ!」
「あらあら....お熱い心をお持ちなのですね?そう言うのも、好きですよ?」
「えっ....!?ぁあっ!?」
ドラグハートが刀で突きを放つ既のところで、ノアールロータスは流麗な身のこなしで相手の背中に乗り上げ、そのまま背後を取ると茨の剣の電磁拘束を解き、鞭のようにしなる得物を振り抜きドラグハートに叩きつけた。
「さて、これは見たことがないでしょう!」
「何だよ今のは.....!」
「あの馬鹿何してんだッ!?」
ビルドレイザーがビルドライフルを撃ち、ノアールロータスの注意を引いた。ノアールロータスが振り向いたタイミングでビルドレイザーは、ライフルを撃ちながら脚部タイヤを使った高速移動で接近する。ノアールロータスは茨の剣を鞭と剣に切り替えながら、光弾を跳ね返し接近を拒むが、ビルドレイザーの速さが一歩上を行った。ビルドレイザーが鞭の一撃を躱して、回し蹴りをノアールロータスの膝に叩き込んだ。ビルドレイザーの踵のタイヤには、微細な刃が無数についている。それが高速で回転しながらぶつけられるとどうなるか、想像に難くないだろう。ノアールロータスの膝装甲が斬り裂かれ、内部のフレームまで抉った。そのまま逆方向に回し蹴りを頭にぶつけ、大きくよろけさせた瞬間にドラグハートを叩き起こし、体勢を立て直した。
「これは中々痛々しい攻撃ね....貴方もしかして、そう言う人?悪くないかも知れませんね?」
かなりの痛手を負ったにも関わらず、ジプシーは余裕有りげに艷やかな笑みを浮かべた。
「何が言いたいんですか、あなたは。さっきの様子を見られたからには、放っては置かない!」
「え?さっきの様子って何の事でしょう?ごめんなさいね、このノアールロータス.....ロック距離が短い格闘機だから遠くの物はよく見えなくて」
ジプシーはやや申し訳無さそうに弁明するが、リョウマはそれを信じる気はなかった。彼女がただのダイバーとは到底思えないのだ。
「常岡!ストームブレイド、貸せ!」
「ビルドアップすればいいだろ!」
「馬鹿野郎!!」
ビルドレイザーはノアールロータスを蹴り飛ばすと、ドラグハートからストームブレイドを引っ掴んで分捕ると柄の上部にあるレバーを、上下に動かした。すると刀身から竜巻のような物が生まれ、それが段々刃に沿う形で細くなった。
「はぁああああああ!!セイヤァアアアーーーッ!!」
「これは....!?」
ノアールロータスが振るう鞭を切り落とし、勢いを殺さぬまま居合斬りで胴体を両断した。そのままノアールロータスは爆発によって四散し、勝負が着いた。
「今の彼女を逃すとマズい....常岡、行くぞ!」
「ちょっと待てよ!何で俺の武器を奪ったよ....!?」
ドラグハートに肩を掴まれるが、ビルドレイザーはそれを払い除け両方ともバトルエリアから転移した。
交流広場に戻ると、女が一人待っていた。声から察した雰囲気からして、彼女は間違いなくノアールロータスのダイバーだ。黒くウェーブのかかったセミロングの髪に、清楚さと妖艶さを見事に両立した顔立ち、黒いノースリーブブラウス、ベージュのバギーパンツと言った出で立ちをしている。
「お手合わせありがとうございました。とても楽しい戦いでした」
女はリョウマらの近くに歩み寄り、ペコリと礼をして微笑みを振りまいた。これに弘は完全に心を射抜かれた。
「まさかあなたの様な女の人でもここまで戦えるなんて、素直に尊敬っすわ!ちょっとフレンドにでも....えっと、ジプシー・ノアールさん」
弘がジプシーと握手しようとしたが、リョウマからの鋭い視線を感じあえなく手を引いた。しかし、彼女のステータスを見た所あるものが目に留まった。リョウマと同じ、銀の歯車のアイコンだった。つまり彼女もまた運営側の人間という事になる。
「運営の人間が、どうして平然とメインのアカウントでここを彷徨いているんですか」
リョウマの質問に、ジプシーは困ったように笑った。
「私もダイバーズは好きなので、息抜きに遊ぶ事はしますよ?」
「.....本当にそれだけですか」
ええ、もちろんとジプシーは頷く。弘はリョウマの肩を叩き、呆れたような顔で嗜めようとした。
「やめとけよ、ジプシーさん別に悪い人じゃねえだろ?こんだけ礼儀正しくてさ....さっきのアレはたまたま迷い込んだかもしんないだろ?」
「お前にはそう映るかもな。何も知らないからそう言うことが言える」
踵を返し去ってゆくリョウマを弘は大慌てで追いかけた。それを小さく手を振ってジプシーは見送ると、ウィンドウから紅茶を呼び出し近くのテーブルの席に座った。
(アレがZeuSの水崎 諒馬......想像以上に危ない人ですね、彼は。アーネストがここを担っていると言うのに、ZeuSの亡霊がまだここにいるなんて現状は、打破しないと行けませんね)
足音が近づいてきたので、振り向くとグロックが「よっ」と手を振りながらやって来るのが見えた。
「私の作戦中なので、邪魔は控えてもらえます?」
ジプシーがくすりと笑いながらコーヒーをウィンドウから呼び出し、彼に差し出した。グロックは彼女の隣に座ると、コーヒーを一口飲んだ。
「随分と躍起になってるもんで?アレが、水崎 諒馬と常岡 弘か」
「何の繋がりもないのに、何故それを...!?」
「シューインの旦那から聞かされたのさ。そんな事より、拾えたんだろ?見せてくれよぉ、ジプシーちゃん」
ジプシーの質問の真意を見抜いたか否か、グロックに躱され軽くため息をついた。
「外から観測した程度ですが、ビルドシステムは形成の精度が上がっているようですね。ですが前とは違う機体を使っています」
「そりゃあそうだろ。ビルドブレイズの事ぁ、結構目に触れるような動きしてたもんなぁ。今のアイツの立場じゃ、派手に暴れまわって誰かの目の敵になるのはリスクでしかない。て事はアイツの拘束も解いとくか」
「アイツって.....あの子は水崎 諒馬への切り札では?」
釈然としないジプシーに、グロックは舌を鳴らしながら指を振った。
「そうだよ。けど、俺はもう一つの方法を思いついた。おっともう時間か...Ciao!」
グロックが何かを思い出したかのように転移し、この場から姿を消した。
「シューインが呼んだというあの男....掴めなさ過ぎる....」
ジプシーはグロックの座っていた椅子を睨む様に眺め、紅茶を口に含んだ。
「おい.....おい!!お前今のはどう言うんだよ!?俺から武器取った事も、ジプシーさんにガン飛ばしたりしたのも!なんも説明してねーじゃねぇか!」
弘は先程からのリョウマの態度が気に食わず、我慢の限界を向え胸倉を掴み壁に押しやった。だがリョウマは壁に押し込まれる前に足払いをして転倒させ、その勢いを利用して脱した。
「お前から武器を借りたのは、ストームブレイド自体ドラグハート固有の武器として、インプットしているからだ。ジプシー・ノアールは見るからに怪しいから信用出来ない。恐らく俺たちが気づくよりも結構前から観察していたはずだ」
「見るからに怪しいって、あんな良さげな人がそう見えんのかよ!」
「発情期の猿みたいに暴れるなよ、面倒だからさ。運営の人間が何の用もなしに、ダイバーズにやって来るなんて普通は有り得ない。運営体制が変わってから、それが更に厳しくなっているのに、ジプシー・ノアールはそれをすり抜けて俺達の前に現れた。これは何か裏があるはずだ」
ZeuS運営時代から、運営と開発に関わる人間がダイバーズに入り込む行為は原則として禁じられている。それは現在も変わらず、規約として存在しているのだが、ジプシーと言う女が何のマスクデータも使用せずにダイバーズを訪れリョウマと接触した。これはリョウマからすればかなり恐ろしい事で、真意を疑わざるを得なかった。開発者にもプレイする権利は当然ある為、特例として同じパーソナルデータを使い別個のアカウントを用意する事もできる。その場合、例のアイコンは表示されないものになるが、その方法から考えても彼女はメインで使用しているアカウントでダイバーズに入ったという事になる。唯一例外があるとすれば、広報スタッフだがそうした場合別の運営アイコンが表示される。よってこの条件も除外出来る。
(俺が特例措置でここに来れているのは、その理由も含めてアーネストの連中だってよく知っているはず....そんな奴らがなぜ規約を破ってまで俺達と接触を.....?)
1人思考するリョウマを他所に、弘は路地裏を抜けて公園エリアに向かった。粗相をしたリョウマに代わってジプシーに謝罪しようとしたが、それまでいたはずの場所には彼女の姿は無かった。
「あ〜こりゃ完全に警戒されたかも知んないなぁ....これも目的から外れんなって意味なのか....」
弘はとぼとぼと公園の外周を歩きながら、マッチングを開いた。
「よぉ、旦那!早速で悪いが奴を解放するぞ」
巨大プラズマボールの陰からグロックが現れ、シューインの肩を指で突いた。何かを実験していたらしく、シューインはノートマシンを閉じた。
「どういう意味です?当初の計画から大きく外れる事になると言うのに」
「奴を見つけた時、旦那は"水崎 諒馬と関係のある人間だ"つったよな?今の内に娑婆に放り出しときゃ、奴さんを仕留めるのがぐっと楽になる」
グロックがポケットから出したのは、パッチ型の発信機だった。それを見たシューインは眉を顰めた。
「あなたにはそれが必要ないはずでは?」
「そりゃそうなんだけどよ。のっけから怪しまれちゃ話になんねぇだろ?キー、借りてくぜ」
グロックはそう言うとラボのドアを開け、地下へ続く階段を降りた。かなり暗く、足場もぼんやりとしか見えないがグロックは何の迷いもなく、スタスタと階段を降りていく。
「しっかし、旦那もいい趣味してんねぇ。ダイバーズの地下、SECTORを再開放してんだからよ....あの中に内包してるもんを使えば、水崎 諒馬だけじゃない。ブルームーンとか言う厄介な連中だって排除出来る。自分が手を下さなくても勝手に、作戦の下地は出来上がるってんだから.....さてと、今から女の子を口説くんだ。ちと格好ただしとくかね」
グロックはポケットからアトマイザーを出し、服に軽く噴霧した。ほのかなシトラスの香りを纏い、目的の部屋へ足を踏み入れた。床から青いスポットライトが1機のMSを照らしている。四方の壁から白いレーザーが機体に刺さっており、拘束しているかのようであった。否、この部屋に仕掛けられている機能によってこの機体は、コントロールを封じられているのだ。グロックは機体を見上げると、両手を広げ愉快そうに笑い、発信機付きのパッチを投げて取り付けた。
「結構早くなったが、おはようさん。今日がお前の復活日だ」
白いレーザー光が消え、次に青いスポットライトが消えた。そして天井の照明が点灯し部屋は再び青の光に染まった。
「ガンダムAGE-1 ナイトシーカー....だっけか?んで、比良坂 舞夜。これで晴れて自由って訳だ!」
グロックの声がコクピットに反響し、パイロットたる女が痛みに呻きながら瞼を開けた。深い紫の髪と瞳に、病的なほど白い肌。オリーブ色のミリタリージャケットに紫と黒のボーダーシャツ。そして黒いスキニーパンツの姿をしている。しかし彼女の体の至るところから機械の駆動音めいた音が聞こえる。機体が正常稼働を再開したからそのような音が聞こえたのか、比良坂 舞夜にはどうでも良い事だった。機体と同時に目覚めたのか身体を満足に動かせず、息も荒くなっていた。彼女の目はじっと、モニターに映るグロックを睨んでいた。
ある日。都内にあるカフェに、一人の少女がやって来た。黒く長い髪をサイドテールに纏めた、ごく普通の少女である。名を"白鳥 奏"と言う。店の中をしばらく歩いていると、目的の人物を見つけその席へ向かった。席に座っているのは、ノートマシンをで何か作業をしているハンチングキャップを被った、銀髪の女だった。
「神宮寺さん、お久しぶりです!電車の遅れで急に時間ズラシをお願いして、すみませんでした...!」
黒髪の少女に声をかけられ、神宮寺と呼ばれた銀髪の女は画面から顔を上げた。
「あ!奏ちゃんおっ久しぃ!どーせ今日はオフ取ってるし、別にいいよー」
神宮寺 英梨。週刊誌を刊行している"ROMANESQUE"と呼ばれる会社に所属する、記者である。彼女の取材範囲は非常に多岐に渡り、政治からゲームまでを網羅する。かつては"JOKER事件"、"ZeuS事件"と言ったガンプラダイバーズにて発生した事件を取材していた。英梨は「うりうりっ!」と言いながら奏の髪を強めに撫で、ノートマシンを彼女に向けた。
「この人です!私を助けてくれた人....!でも、何でこの人だって行き着いたんですか?」
奏が画面に映る写真を見て、手をパチンと叩いた。英梨は一度ノートマシンを自分に向け直し、再び奏に見せた。
「ダイバーネーム リョウマ・アルキメデス。本名は....水崎 諒馬。今はもう無くなってるけど、ZeuSって会社で研究員をしていたみたいね。会社更生手続きはして、今は賠償負債を清算しているらしいけど、それも先月で完遂の目処が立ってたってのよ。その上でこの人は何故か動き出してる。ZeuSの人間としてね」
「ZeuSって確か、前にダイバーズを運営してましたよね?潰れてなくなったんじゃないんですか?」
「登記上も消滅してるから、法人格としても終焉ね。とは言え事件後からかなり間を開けてるって....何かありそうよね」
説明をする英梨は何処か楽しそうだが、奏は少し気が重くなりそうだった。テレビのニュースで少し知った事だが、自分の知り合いが犯人扱いされていた。更には、親友の一人からダイバーズでの交流を絶たれてしまった。どれもこれも事件を起こしたZeuSが原因としか思えなかった。そして自分を救ってくれた男もまた、ZeuSの人間であった。
「あ....ごめんね、奏ちゃん。怜ちゃんの事思い出させちゃった?」
英梨から心配げに見つめられ、奏はゆっくりと首を振り力なく笑った。
「あの娘は、自分の使命を自覚しただけだと思いますから....きっと、皆の為に戦っています....ブルームーンとして」
[次 回 予 告]
ROMANESQUEの記者、神宮寺 英梨から情報を得て白鳥 奏は遂に諒馬との接触に乗り出す。彼に助けてもらった事への礼と、行動の目的を知る為にZeuSの元社屋を訪れる。そこで諒馬と邂逅するが―。
次回、創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius
"超高速のMASTERPIECE"
私も真実を知りたいんです!全ての真実を!